新築マンションで「利回り5％超は過去の話」とされる今、達成できる物件を全国で探してみた

投資マンションを買うとき2015年くらいまでは、「利回り5％超」が買ってよい物件の目安だった。しかし、マンションの価格高騰が騒がれる今、「利回り5％超」の物件を探すのは至難の業となってしまった。しかし、本当にそうなのだろうか？ 1件もないのだろうか…？ 全国で分譲中のマンションから、想定利回りが高そうな物件を探してみた。（住宅評論家・櫻井幸雄）※新築販売時の記事です。

投資目的のマンション購入でよく聞く「利回り」って何？

　投資目的でマンションを購入する場合、「利回り」が重要な目安となる。「利回りって、何？」という方のために説明すると、利回りはそのマンション住戸を賃貸に出したときに稼げる収益の割合のこと。

　たとえば、4000万円で買ったマンション住戸を賃貸に出し、毎月10万円の家賃が入ってくるとする。毎月10万円なので、1年間で120万円。この120万円は4000万円のマンション住戸が稼ぎ出したお金なので、120万円を4000万円で割ると収益率が出る。計算すると「0.03」。つまり3％が、その場合の利回りとなる。

　実際には、年間120万円の賃貸収入があっても、大家として負担しなければならない費用があるし、賃借人が入らない期間が生じるもの。それらを勘案すると実際の利益は下がる。現実的な利回りは3％より下がってしまうのだが、上記の計算で算出した利回り（表面利回りとか単純利回りという）は「買う」「買わない」を決断するときの目安として重宝がられている。

かつては「利回り5％超」物件が多かったが……

　投資目的でマンションを買う場合、2015年くらいまでは「利回り5％超」が、買ってよい物件の目安とされていた。

　先の例で言えば、4000万円のマンション住戸を買うなら、年間で4000万円の5％以上、つまり200万円以上の家賃を稼ぎ出してくれるのなら合格と考えられたわけだ。
　
　年間200万円以上の家賃収入を得るためには、毎月の家賃は17万円以上にしないといけない。投資家はそれだけの家賃を設定できるかどうか、を見極めて購入を決めていた。そして、2015年くらいまでは、その条件を満たす新築マンションが少なくなかった。

　銀行に現金を預けてもほとんど利子が付かない超低金利の時代、「利回り5％超」は魅力が大きい。それで、現金を持っている富裕層が盛んにマンションを買った、という事情もあったわけだ。
　
　ところが、全国的にマンション価格が上昇した今、新築マンションで「利回り5％超」の物件を探すのは至難の業となってしまった。
　
　新築マンション価格が高騰している都心部では利回り4％でも無理。3％になれば御の字で、物件価格が高騰した都心部では利回りが2％台というケースもある。もっとも、マンションは一戸建てよりも、転売や賃貸活用がしやすいという利点があるため、近年は「利回り4％」でも合格という考え方が広まってきた。

　逆に言うと、新築マンションで「利回り5％超など、遠い過去の話」ということになってきたわけだが、本当に過去の話なのだろうか。全国で分譲中のマンションから、想定利回りが高そうな物件を探してみた。

新築マンション価格が割安な地方都市
札幌、福岡、千葉、名古屋はどう？

　まず目を付けたのが、東京都心より新築マンション価格が抑えられている地方都市。札幌、福岡、さらには千葉や名古屋であれば、利回りの高いマンションが見つかるのではないか。
　
　札幌や福岡でも、近年は新築マンション価格が大幅に上昇している。それでも、東京の中心部よりはまだ安い。が、一方で、家賃相場も抑えられている。地方の人は高い家賃を払うなら、マイホームを買ってしまう。高い家賃を出すのは転勤族に限られることがネックになる。

　家賃相場が安いと利回りは上がりにくい。今後、開発が進むなどの理由で、賃貸相場が上がってくれば、利回りも上がるだろうが、現状では利回り3％台のものがほとんど。福岡県博多市内で分譲されている「MJR博多ザ・レジデンス」のように一部に割安住戸（1LDKが3010万円など）がある場合、利回り4％を超えそうな物件が見つかった程度だ。

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特殊事情があるマンションならば、高い利回りも
「幕張ベイパーク ミッドスクエアタワー」は候補に

　現在、一般的な分譲マンションで、「利回り5％超」の条件をクリアすることは難しい。

　そこで、特殊な条件を備えた物件を探してみた。特殊な条件で販売価格が安くなっているマンションや、特殊な条件で賃貸相場が高くなっているマンションを探してみたわけだ。一つ候補となるマンションが、首都圏の郊外エリアで見つかった。
　
　千葉市内で三井不動産レジデンシャル他が分譲している「幕張ベイパーク ミッドスクエアタワー」だ。

 「幕張ベイパーク」はJR京葉線海浜幕張駅から徒歩15分という郊外立地なのだが、販売は好調。その理由の一つが、有名進学校に近く、子育てファミリー層に人気が高い立地であること。そして、分譲価格は割安と評価されている。

　学校も含めて環境の良さが高く評価されているのだが、エリアにはファミリー向けの賃貸マンションが少ない。そのため、分譲・超高層マンションの住戸を貸し出すと、広めの3LDKで20万円以上の家賃相場が形成されている。

　郊外で駅から離れた立地なのに、家賃相場が異常なほど高いのだ。そのため、仮に家賃18万円としても、4800万円程度の3LDKで4％台の利回りに。家賃20万円の設定ならば、5％台の利回りも期待できるマンションとなっている。

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名古屋市は意外にも利回り5％超物件が見つかる
注目は「プラウドタワー名古屋丸の内ステーションマークス」

　もう一つ、「利回り5％超」のマンションを見つけやすいのが、愛知県の名古屋市。なかでも、名駅（名古屋駅）に近い場所だ。名駅の近くといえば、リニア中央新幹線の開業を見越して、マンションブームが起きている場所として知られる。大型マンション、超高層マンションが次々に売り出され、分譲価格も上がっている場所と認識している人も多いだろう。

　それは事実なのだが、じつは昨年から供給過多の状況が生まれてしまい一部に価格を抑える物件が出ている。

　たとえば、野村不動産が販売している「プラウドタワー名古屋丸の内ステーションマークス」では、3月23日時点で先着順販売されている住戸で、58㎡台1LDKが3900万円台からの設定。上層階21階の73㎡台3LDKでも7900万円台になっている。

　3900万円台の住戸は1LDKといっても58㎡の広さがあるので、2LDK並みに広い。建設地は、地下鉄桜通線・鶴舞線の丸の内駅まで徒歩2分となり、名古屋駅と久屋大通駅の間に位置しているため、利便性の高さも備える。

　この3900万円台・1LDKであれば、賃貸に出したときの家賃相場は高く、私の計算では5％を超える利回りが期待できる。

　同じく野村不動産が販売している「プラウドタワー名駅南」では、モデルルームや商談ルームとして使われていた住戸が特別価格で販売されている。2住戸を取り上げると、56㎡台2LDKが4598万円、約71㎡台の2LDKが5698万円となっている。こちらも、名古屋駅徒歩9分の立地上、家賃相場は高く高い利回りが期待できるだろう。

　つまり「プラウドタワー名古屋丸の内ステーションマークス」と「プラウドタワー名駅南」は、供給過多で「需要と供給のバランスが一時的に崩れた」という事情などにより、分譲価格が抑えられ、高利回りを実現するマンションということになる。

※文中の「利回り」は、すべて単純利回りで計算している。

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