<関西・中部圏版>大阪や名古屋などの新築・中古マンション市場動向は?注目物件や最新市況を解説【2024年4月版】

2024年4月20日公開(2024年4月19日更新)
神納まお:フリーライター

大阪を中心とした関西圏と名古屋を中心とした中部圏は東京に次ぐ日本3大都市圏。2023年の関西・中部圏の新築マンション市場動向のほか、2024年2月分の関西・中部圏新築マンションと中古マンションの市況について解説する。

<関西・中部圏版>2023年の新築マンション市場動向は?

 まずは、大阪を中心とした関西地方、そして愛知を含む中部圏における2023年度の新築マンション市場動向について見ていこう。その後、2024年2月度の解説をしていく。

※関西(近畿)圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県
※中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県

 2023年は前年比で供給は減少したものの価格は上がり続けていて、全体の市況としては悪くなかったようだ。

 2023年民間分譲マンションの発売戸数は6万5,075戸、前年比で-7,892戸、10.8%減。エリアによって多少の差はあるものの、前年と比べおおよそ1割減少という結果だった。また国内の新築マンション供給戸数は2022年から2年連続で減少。地価が高い状態にあることに加えて、資材費や人件費の高騰などから建設コストも一段と上昇しており、価格も高値が続く可能性が高いだろう

 ちなみに過去最多の供給戸数は30年前となる1994年の18万8,343戸。その時から比べると、およそ3分の1に減っていることになる。1990年代前半は購入メイン層が40代の団塊世代だったが、2023年は購入メイン層の団塊ジュニア世代が50代に入るため、購入層の高齢化から、ニーズが減退していることもあるのだろう
 
 エリア別に見ていくと、下の表の通りだ。

 近畿圏の減少率の高さが目立つが、用地不足に加え、価格改定による売り止めや定借物件の増加が関係していると言えそうだ。中部圏の減少は戸数にすると200戸に届かず、大型マンション1棟分なのでほぼ前年並みと言えそうだ。

2023年近畿圏分譲マンション価格と単価

 販売価格を見てみると、近畿圏は1戸当たり4,666万円(前年比+0.7%)、㎡単価が79.0万円(+同2.1%)と11年連続の上昇。ただし県別に見ると大阪府と滋賀県が下落している。一方で兵庫県と京都府、和歌山県はいずれも2ケタアップしている。兵庫県と京都府については引き続き駅前立地などで激しい用地取得競争が繰り広げられているからだろう。

 中部圏は販売価格のデータがないが、不動産経済研究所によると、名古屋市の平均販売価格は4,108万円(2022年は3,587万円、14.5%上昇)。建築費の上昇だけでなく、好立地での用地取得競争による土地取得価格のアップが反映されている。

 2024年の発売戸数の見込みは、関西圏1万6500戸(7.2%増)、東海・中京圏6500戸(5.8%増)と共に増加予定だが、建築費は下がっていないため販売価格が大きく下がることはないだろう。

関西・中部圏の新築マンション市況【2024年3月】

 ここからは、関西・中部エリアの新築マンション市況について、詳しく見ていく。

関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)

2024年2月の新築分譲マンションデータ

 2024年2月の新築分譲マンション発売戸数は1,059 戸、対前年同月比27.1%増、対前月比45.7%増。3カ月連続で前年同月を上回った

 契約率は77.1%、前年同月比+25.5%、前月比では+8.6%。平均価格は7,398万円、前年同月比で2,343万円+46.4%)で過去最高値となった

 1㎡当たり単価は117.3万円で、37.6万円(+47.2%)。前年同月比で戸当たり価格、㎡単価ともに4カ月連続のアップである。販売在庫数は2月末時点 3,043戸、前月末比222戸の減少となった。

 高額物件の「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」1期販売など市街地で1億円以上の物件が多かったことが平均価格を上げている。

 エリア別に見ると、大阪市内の平均価格は前年同月比+122.3%の1億748万円。ただし、大阪市を除く大阪府、神戸市を除く兵庫県、滋賀県では平均価格は下がっている。

 2024年3月の発売戸数は、前年同月並みの1,400戸程度の見込みとなっている。

中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)

 名古屋を中心とする中部エリアは月別のデータがないが、マンションデベロッパーや用地担当者などへヒアリングしてみると、全体的に集客の数は低下してきているようだ

 原因としては、マンション価格の高騰で顧客の購入マインドに変化が出てきた可能性がある。もともと東海圏は名古屋のような大都市でも戸建て志向が強いが、建設費高騰の影響が少ない一戸建てにシフトする傾向がみられるという

 しかし、東海エリアを経済的に支える自動車産業は好調を維持しているため、ただちに在庫が増加したり需給バランスが崩れたりすることはなさそうだ。
 
 マンション用地の動きは昨年までの積極的な買いモードから一時停止しており、無理なく仕入れる程度になっている。マンション想定の用地を計画変更する可能性もありそうだ。

 千種区池下駅近くの「ライオンズマンション覚王山」は近隣の反対によって2年着工が止まっていたが、ようやく工事がスタートしている。

関西・中部圏の中古マンション市況【2024年2月】

 次に、中古マンションの市況を見ていく。全体として高値が続く中、好調に推移しているといえる

 平均価格は、関西圏の2982万円(10.0%増)、中部圏の2315万円(3.3%増)と、三大都市圏でそろって1割近い上昇。成約件数は、中部圏の496件(0.6%減)と関西の1415件(2.4%減)とそれぞれ減少した。

関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)

中古マンションの市場動向や需給状況【2024年2月】

 平均成約㎡単価と新規登録物件数が前年同月比1割以上、上回っている。これは高値が続いていることと、供給が増えていることを示している

 成約件数をエリア別にみると、取引状況にエリア差がある。大阪市は6カ月連続で増加する一方で、大阪府東部と京都府他、和歌山県は2ケタ減となった。神戸市は7カ月連続で減少。市街地に人気が集まっているように見えるが、神戸市はいわゆるタワマン規制(※)の影響が出始めているとみることもできるだろう。

※神戸市は3年ほど前から中心部で、建物の容積率の上限を設定するなど、事実上、高層のタワーマンションを建設できないように規制を設けた。

中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)

中古マンションの最新の市場動向や需給状況【2024年2月】

 成約件数は496件とほぼ前年並み、新規登録物件数は2145件と前年より1割近く増えている。

 成約件数の伸び悩みに比べて新規登録件数の伸びが大きいのが気になる。供給は多くなり、成約が増えていないからだ。成約件数の減少と新規登録の増加が続けば、需給バランスが崩れ価格が下がる可能性がある。

 エリア別に見ると、成約件数496件のうち7割を占める愛知県での取引が中部圏の動向を左右する。愛知県の成約件数は前年同月比1割減、平均成約㎡単価では8.4%増なので、中部圏のデータにほぼ一致する。

 多くのエリアで平均成約㎡単価の上昇が続いている。それは新築の建設コストアップによる価格上昇によって、引き上げられている形なので、新築価格が上がる以上は上昇が続くだろう。しかし、供給が増えすぎると落ち着く可能性もある。

今月の注目のマンション「グランドメゾンThe覚王山向陽町」

「グランドメゾンThe覚王山向陽町」現地東側から。2024年3月中旬の取材時点(筆者撮影)
「グランドメゾンThe覚王山向陽町」現地東側から。2024年3月中旬の取材時点(筆者撮影)

 次に、今月の注目マンション「グランドメゾンThe覚王山向陽町」を紹介する。

名古屋市千種区向陽町に位置する高級住宅街にセキスイハウスが完成させた「グランドメゾンThe覚王山向陽町」は、5階建てで17戸の低層マンションだ。

 海抜38mの丘の上にあり、2階や4階からは周囲の景色が楽しめる。交通アクセスは良く、周辺には教育施設や医療機関、ショッピングエリアも充実。販売価格は1億4,990万円から1億9,990万円だが、1等地といえる高級住宅街の立地、セキスイブランドの仕様設備をトータルで考えるとこの価格でも高くはないかもしれない。

 ぜひ一度、現地を確かめに行ってほしい。

「グランドメゾンThe覚王山向陽町」現地現地、北側道路(筆者撮影)
「グランドメゾンThe覚王山向陽町」現地現地、北側道路(筆者撮影)

まとめ

 2024年もマンションの価格は高騰している。このまま好調な株価を維持すれば、マンション市況にも良い影響を与えそうだ。ただ、郊外や地方ではマンション価格の高騰によって購入の先送りシフトもみられる。富裕層に引っ張られているデータもあり、表に出ている数字を額面通り真に受けるわけにはいかないだろう。

 大手だけでなく広く賃上げが進むかどうかもポイントになる。賃上げによっては郊外のマンション市況も回復できそうだ。

 しかし株価にしても賃上げにしても、近畿・中部エリアが首都圏と同じタイミングで影響を受けるとは限らない。マイナス金利の解除で気になる住宅ローンについては、メガバンクの動きがポイントになるのは言うまでもない。金利動向によっては、実需が追いつかずバランスが崩れる可能性もある。

 4月1日から国土交通省の「不動産情報ライブラリ」サービスがスタートした。不動産価格や都市計画情報、周辺施設情報などを地図に重ね合わせて表示できる。さらに過去の成約価格も表示されるので、不動産購入の検討者にとっては便利なサービスになるかもしれない。

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