2020年に開業したJR山手線の高輪ゲートウェイ駅。現在、その周辺で行われている再開発事業「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、約9.5haにも及ぶ広大な敷地を対象としており、その規模は都内最大級だ。1年後に街開きが行われる予定だが、どんな魅力ある街が形成されるのだろうか。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
都心最大級の再開発プロジェクト「TAKANAWA GATEWAY CITY」
JR山手線の新駅として2020年に開業した「高輪ゲートウェイ」駅。山手線では1971年に開業した「西日暮里」駅以来の新駅だ。JR東日本は、その新駅周辺で都心において最大規模といわれる「TAKANAWA GATEWAY CITY」の開発を進めている。
「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、高輪ゲートウェイ駅を中心とした広大な敷地の中に、ホテル棟、商業棟、オフィス棟、文化創造棟、住宅棟などの建物のほか、駅前広場などのパブリックレルム(公共施設)を設置する計画。
高輪ゲートウェイ駅はそもそも、JRの東京総合車両センターを再開発した駅で、駅周辺にはほとんど何もない状態。そのため、ゼロから街づくりが始まるという、都心やその周辺では極めてレアなケース。
2024年度中に複合棟が開業し、その他の棟も2025年度に次々に開業、駅周辺は大きな変貌を遂げることになる。1年後には、街開きが行われる予定だ。
複合棟には、MICE施設(コンベンション、カンファレンス、ビジネス支援施設)、オフィス、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設など多様な機能を持つ施設が設置される予定。日本だけではなく、世界中から訪れる人々のニーズに応える機能と品質を備えた複合都市を目指しているのだ。
近未来的な印象を作り出す、新駅「高輪ゲートウェイ」
高輪ゲートウェイ駅は2020年3月に開業、山手線としては49年ぶりに誕生した30番目の新駅。駅の造りは、これまでの既存の鉄道駅のイメージを大きく塗り替えるものになっている。
イメージ図にあるように、コンコースからは空の色や雲の流れ、さわやかな風を感じることができ、これまでの「駅」の概念を超える開放的な空間が形成されている。
駅舎は高さ約25m、長さは約120mで、地上3階、地下1階の構成。地上1階がホーム、2階に改札、デッキ、コンコースや鉄道テラスなどのイベントスペースなどがある。鉄道テラスからは、ホームや街の賑わいを望めるほか、隣接する車両基地に停車している電車などが眺められ、鉄道好きにはたまらない空間だ。
すでに新駅を利用したことがある人ならご存じだろうが、空間の新しさだけではなく、さまざまな斬新な仕組みが採用されている。
たとえば、駅構内には日本ではまだ珍しい、無人AI型決済が可能な店舗「TOUCH TO GO」を設置。また、ホーム2階には日立製作所が開発したAI案内ロボットが、利用客に対応してくれる。しかも、日本語だけではなく英語、中国語、韓国語にも対応可能だ。
複合棟の目玉は、都心最大級のMICE施設とマリオット最高級ラグジュアリーホテル
TAKANAWA GATEWAY CITYの商業棟、オフィス棟には、従来のような商業施設やオフィスの集積だけではなく、都心最大級のMICE施設が設けられる。
MICEとは、会議(meeting)、研修旅行(incentive travel)、国際的な団体が行う会議(convention)、各種の展示会やイベント(exhibition・event)の頭文字を取った造語だが、広さ約1640㎡、天井高7mの無柱空間が広がり、国内だけではなく国際的な大型会議、学会、フォーラムなどを開催できるコンベンションホールになる。各種の展示会やイベントも可能で、用途によっては2分割、3分割でき、ほかに大小7室の会議室も用意される。
これらの施設を利用する人たちなどのためのホテルも設けられる。マリオット・インターナショナルが展開する最高級ラグジュアリーホテル「JWマリオット」が首都圏に初めて進出する。
客室数は約200室で、スパ、レストラン、バー、ラウンジ、宴会場なども備えたホテルとなる。宿泊料などは日本人からすれば、相当な高額になりそうだが、極端な円安が進行しているだけに、インバウンド客にとってはそれなりの宿泊料ということになるのかもしれない。
公園と一体型となった「文化創造棟」は、日本の四季を感じられるデザインに
文化創造棟は、イメージ図にあるようなユニークな建物で、まちのコンセプトである「100年先へ文化をつなぐ」という考えのもと、伝統と未来をつなぐ文化を生み出し続ける場になるとしている。
こちらの棟は、地上6階、地下3階建てで、各フロアはらせん状に行き来できるホワイエ(劇場やホールなどの、入口から観客席までの広い通路)やロビーを介してつながる構造となっている。
各種展覧会、ライブ、パフォーミングアート、イベント、学びなど、さまざまな文化フォーマットに対応する場となり、たとえば、地下3階には固定席最大1200席、スタンディング約2000名収容のホールが設置される。演目に合わせて客席数を変更でき、段床式・平土間式による自由な舞台レイアウトが可能で、近未来型のホールになる予定だ。
住宅棟は分譲なし。外国人向けの高級賃貸が中心か
そして、一番北側、田町寄りに建設が進められているのが住宅棟だ。地上44階・地下2階建ての超高層マンションで、2025年度の竣工予定だ。
低層部にはインターナショナルスクールが設置され、中層部分に一般の賃貸住宅、高層部分に国際水準の高級賃貸住宅が入る。
分譲となれば、立地の良さからいってもかなりの高額物件になり、それでも競争倍率何倍もの人気になるのは間違いないが、残念ながら分譲住宅はなく、すべて国際水準の賃貸住宅になる予定。外国人ビジネスワーカーを念頭に置き、テラス型住戸を含むレジデンスになる。
低層部のインターナショナルスクールとともに、多言語対応の子育て支援施設も設置されるので、外国人ワーカー、その家族にとって暮らしやすい環境が形成されるのではないだろうか。
高輪ゲートウェイ駅周辺の家賃相場※は、3LDKが35.27万円、4LDKが74.41万円。新築でかつ立地条件に恵まれた住宅棟だけに、とてもそんなレベルにおさまるものではないだろう。
専有面積200㎡以上の住戸も設置される見込みで、そうなると最高200万円、300万円といった賃料になると想定される。それでも、いまの円安の時代、外資系企業や外国人ワーカーにとってはさほどの負担にはならないのかもしれず、すぐにも満室になるだろう。(※住宅情報サイト アットホームから。2024年5月時点の情報)
2025年の街開きに向け、不動産価格は上昇するか
このTAKANAWA GATEWAY CITYの開発を推進しているJR東日本では、2025年3月の街開きに向けて、2024年3月と5月に「TAKANAWA GATEWAY CITY街開き前年祭」を開催、約1年後に迫った街開きに向けてのムードを盛り上げている。
TAKANAWA GATEWAY CITYは、都内最大規模の再開発プロジェクトであると同時に、JR東日本が手がける事業としても過去最大規模なのだ。それこそ本腰を入れたものになるだろう。
住宅棟に分譲マンションがなかったことは非常に残念だが、1年後に出現する新しい街が、周辺の不動産価格を上昇させるのに一役買うのだろうか?
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