新築マンションは、建物が完成する前に販売される「青田売り」が一般的。室内がどのようになるのかは、プラン集などの詳細な間取図で確認するしかない。その際、ぜひチェックしたいのが天井から出っ張った梁(はり)やダクトの「梁型(はりがた)」だ。中には大梁がドーンと垂れ下がった“ギロチンマンション”のケースもあり注意が必要だ。
内覧会で初めて足を踏み入れて愕然?
最近はインターネットで買い物をする人が増えている。スマホやパソコンで「いいな」と思って注文したら、届いた実物がイメージと違った、という経験をした人も多いだろう。
新築マンションでも実は、数千万円という高額の買い物にもかかわらず、これと同じことが起こる。なぜなら、新築マンションは、建物が完成する前に販売される「青田売り」がほとんどだから。大型物件ではモデルルームが設置されるが、その場合もせいぜい1つか2つの間取りプランのみ。ほとんどの住戸については、プラン集などに掲載されている詳細な間取図で確認するしかない。
しかし、建築の素人である一般人が間取り(平面)を見ても、空間(立体)がどんなふうになるのかイメージするのは難しいだろう。
最近のマンションは和室をなくして床をなるべくフラットにしているが、天井については意外にあちこちに「梁型(はりがた)」と呼ばれる出っ張りがあったり、梁型を含めて天井の一部が低くなっている「下がり天井」だったりすることがある。
いざ建物が完成し、内覧会の際、初めて足を踏み入れてみると、室内の雰囲気が思っていたのと違って愕然、といったことが起こりえるのだ。予定していた家具が置けないといったこともありえる。
「梁型」はなぜできる?
マンションの天井に「梁型」(出っ張り)ができる原因は、2つある。
ひとつは、大梁(おおばり)や小梁(こばり)だ。
大梁は建物全体を支える重要な構造部材で、住戸の四隅にある柱と柱をつなぐように設けられている。通常、大梁の上にコンクリートの床スラブ(上階の床スラブ)が乗るかたちになっており、戸境壁に沿った天井や、間口(スパン)に当たる共用廊下側やバルコニー側の天井に出っ張ることが多い。
小梁は、コンクリートの床スラブの振動を抑え、遮音性を高めるために大梁の間に掛けられる。大梁よりは小さいが、室内の天井に出っ張ることがある。
「梁型」ができるもうひとつの原因は、排気ダクトだ。
具体的には、キッチンと浴室の排気ダクトを共用廊下側かバルコニー側に通す必要がある。飲食店やオフィスではわざとダクトをむき出しのままにすることもあるが、マンションでは通常、排気ダクトをボードで囲う。それが天井に「梁型」(出っ張り)として現れるのだ。
以前の記事で触れたが、「二重天井」であれば、こうした大梁や小梁、あるいは排気ダクトなどの梁型をある程度、隠すことができる。しかし、「直天井」であれば、室内にそのまま出っ張ることは避けられない。
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間取図で点線が2本、部屋の中央を通っていたら最悪
プラン集などの詳細な間取図では、こうした天井から出っ張っている「梁型」や、梁型を含めて天井の一部が低くなった「下がり天井」の箇所には、点線が入っている(インターネット上の間取図は簡易なもので、点線が入っていないことが多い)。
点線が壁際にあればまだいいが、6~7畳くらいの部屋の中央付近に点線が通っている場合は要注意だ。点線が1本なら、その部屋の半分くらいは「下がり天井」になっている。下がり天井になっている部分は、天井高が2.1~2.2ⅿ位のことが多い。ふつう、マンションでも洋室の天井高は2.4~2.5ⅿが目安なので、それより20~30㎝も低い。背の高い人には特に、圧迫感があるだろう。
「もっとひどいのが、部屋の中央付近を点線が2本、通っているケースです。その場合、天井の真ん中に大梁がデーンと出っ張っているとみて間違いないでしょう。大梁の高さは住戸の間口の広さや階数によって変わりますが、60~70㎝程度あることが多い。すると、二重天井であっても室内に40㎝くらい垂れ下がることになり、その部分は、室内の床から2ⅿほどの天井高しかありません。このように部屋の天井を分断する大梁のあるマンションを私は、『ギロチンマンション』と名付けています。室内に圧迫感がある上、照明器具が設置しにくく、将来のリフォームも大きく制約されるなど、住む人にとって何も良いことはありません」
こう語るのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。
碓井氏によると、中高層マンションの全体形状は一般に横長の立方体。建物の外周(外壁)に沿って柱が並び、柱と柱を結ぶ大梁が通っている。この場合、建物の長辺の両端にあたる住戸の前で共用廊下を止め、その先を部屋にすると、柱と柱を結ぶ大梁がそのまま室内に中に入ってくるのである。
こういう設計をすると、中住戸(両端ではない住戸)なら4.5畳くらいになる共用廊下に面した洋室が、マンションの両端にある住戸では7畳ほどの広さになる。間取図で見ると、広くて良さそうに感じるかもしれないが、実際の住み心地(居住性)は大きく損なわれている。
マンションの両端にある住戸は、3つの面に窓などの開口部があり、通風・採光に優れ、独立性も高い、いわゆる「角部屋」として人気だが、「ギロチン」は意外な盲点といっていいだろう。
構造設計を丁寧に行えば「ギロチンマンション」は避けられる
こうした設計が行われるのは、つまるところは共用廊下の延長部分を部屋にすることで、容積率ギリギリまで建物の床面積を増やそうとするからだ。居住性よりも事業採算を重視する売主(デベロッパー)の体質が表れているといえる。
「本来、構造設計の段階で少し丁寧に検討すれば、こうした『ギロチン』は十分避けることができます。工事費のアップもたいした額ではありません。ところが、そうした手間とコストを惜しむのが三流デベロッパーなのです」(碓井氏)
自分が検討している住戸では大丈夫でも、他のタイプの住戸でこうしたギロチン(室内に垂れ下がる大梁)を平気でつくるような売主は、全体的に購入者への配慮が足りない可能性が高い。
新築マンションの検討にあたっては、平面だけでなく室内を立体的にイメージすることが極めて重要だ。
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