東京都荒川区の「西日暮里」と言えば、JR山手線、京浜東北線のホームから有名進学校「開成学園」の校舎とトレードマークのペンと剣が見えることでおなじみだ。地価の上昇で注目され、都内の主要な駅へのアクセスは乗換なしで行ける利便性が評価されている。さらに駅前の再開発計画が進められ、2025年には大きく変貌すると期待されている。今回は西日暮里の街力に迫ってみよう。(フリージャーナリスト・福崎 剛)
東京駅へ15分、新宿駅まで20分のアクセス
JR山手線駅の一つとして知られる「西日暮里」は、乗換なしで東京駅まで15分、池袋駅なら12分、新宿駅までは20分程度と高い利便性を誇る。東京メトロ千代田線を使えば、小田急線とも連絡しており、大手町や日比谷、国会議事堂前、赤坂、表参道を通り、代々木上原へも1本で出られる。また、隣の日暮里駅へも歩いて10分もかからない。
すぐ隣の日暮里は駅前の再開発で高層ビルが建ち、日暮里舎人ライナーや京成線の接続もあり、「住みやすい街」として既に注目を集めているが、駅の西口側には広い墓地が続いており、エリアによって評価は大きく分かれそうだ。
その点、西日暮里は下町の風情を残しながらも、駅前の再開発が進み、5年後にはさらに地価も上昇すると期待が高まる。
2025年を目指す、西日暮里の駅前再開発
西日暮里の駅前再開発は、どういう計画なのだろうか。荒川区役所の公式サイトに再開発の概要が紹介されているので、その一部を紹介しよう。
西日暮里駅を中心に、駅東側の地域街づくりが構想されている。
とはいえ、西日暮里駅地域街づくり構想の中で、まだ検討中の計画も多い。いま最も計画が具体化し再開発事業計画を進めているのが、駅の北東側の地域になる。
ここは、「西日暮里駅前地区市街地再開発準備組合」が再開発の施設計画の概要をまとめている。それによれば、高さ約180メートルの超高層ビル施設が2025年には完成する見込みとなっている。
西日暮里の北東側に大きな商業施設や公共ホール、広場が出現することで、人の移動など街の賑わいの創出が期待されている。駅周辺の殺風景な景観も一変するだろうし、ペデストリアンデッキが完成すれば、歩車分離が進んで安全性も高まるだろう。まだ、再開発計画には見えない部分もあるが、これから住む地域としては、発展が見込まれることが大切で、大いに狙い目だ。
将来性を見込んだ地価の上昇も
では、再開発を見込んだ西日暮里の地価は、どのくらい上昇する可能性があるのだろうか。
2018年の東京23区の基準地価では、荒川区が最も上昇率が高く、約8.7%も伸びた。隣接する北区や板橋区なども5〜7%の上昇率だったのである。
JR山手線の中古マンション相場を調べると、近隣の駅の同じ規模の物件と比べ、西日暮里が一番手頃だ。専有面積70㎡のマンションで、西日暮里の物件は4,294万円で、日暮里なら約350万円高くなり、4,646万円となる。
交通の利便性が西日暮里より低い、田端駅や鶯谷駅周辺の物件相場が高くなっていることから考えても、現時点での西日暮里は山手線内では割安な地価だと言えそうだ。
実際に国土交通省の公示価格の過去3年間を比べても西日暮里は上昇している。住居表示が西日暮里2丁目54-8では、2017年に約76万円/㎡だったが、翌2018年には約84万円/㎡にアップ。さらに2019年には約92万円/㎡近くに地価が連続して上がってきているのだ。これから駅前再開発が進むために、まだまだ地価は上がると予想できる。
子育て世代の人口増が顕著
荒川区は、区内西側の武蔵野台地から荒川・墨田川沿いに広がる地域で、東京都の北東部に位置する。少子高齢化で多くの街で人口減少が進む中、荒川区は人口が1998年から増加傾向にあり、約22万人ほどだ。
最も人口増が著しいのは、大規模開発による南千住地区で、1975年には区内人口全体の16.5%ほどの割合だったが、2005年には約18%、2015年には約22%となっている。また、それに続いているのが西日暮里、東日暮里エリアだ。西日暮里は2005年に9.5%だったが、2015年には11%に伸びている。
つまり、人口が増えている荒川区の中でも、西日暮里・東日暮里エリアは住みやすい人気地域であると言っていいだろう。また、人口が増えているといっても、荒川区の場合は30〜40代の生産年齢人口の比率が高く、いわゆる子育て世代が増えていることが読み取れる。
待機児童数も年々減少
荒川区は共働き・子育て世代のために、保育所等の待機児童を減らす取り組みを続けている。その結果、2017年(平成29年)は待機児童数が181名だったが、2018年には80名までに減らし、23区内でも入園しやすさは3位になった。
このほか、一時預かりの「こども家庭支援センター子育て交流サロン」や「乳幼児ショートステイ事業」を展開し、保護者の病気等で育児が困難になった場合には、一時預かりや乳幼児を宿泊させて預かる制度も実施している。
さらに、独自に保育士の育成の支援のため、「荒川区保育士入学準備奨学金貸付制度」を創設するなど、区内の保育園・私立幼稚園の人材確保をはかっている。こうした行政支援も共働き・子育て世代には魅力と映っているようだ。
水害リスクが低い西日暮里の西側
荒川区は、荒川流域にあたるため、江戸時代より荒川・隅田川が氾濫するたびに被害を受けた地域だ。低地である地理的条件ゆえに、川沿いから広域に渡って非常に水害のリスクは高くなっている。
「荒川区防災地図(水害版)」でも荒川区が水害に弱いことが一目でわかるほど、ピンクに塗り分けられた地域が広い。ピンクの色が濃いエリアは、2階までの浸水や屋根まで浸かるリスクがあるというわけだ。近年の異常気象でゲリラ雷雨など、局所集中豪雨で一気に水害へと広がることも珍しくなくなった。防災の観点から見れば、荒川区は決して立地がいいとは言えない。水害リスクが高いからだ。
しかし、その中で薄いベージュカラーに塗ったエリアは水害リスク
「西日暮里のマンションは買い時か?」のまとめ
◆JR山手線駅の一つとして知られる「西日暮里」は、京浜東北線、東京メトロ千代田線、日暮里舎人ライナーと合わせて4路線が利用可能と高い利便性を誇る。
◆荒川区は待機児童を減らす取り組みが奏功し、子育て世代の人口が増えていることから、暮らしやすいエリアと言える。
◆西日暮里駅周辺は、水害リスクが比較的低く、荒川区内では好立地である。
◆交通利便性に劣る田端駅や鶯谷駅周辺と比べても地価が安く、現時点での西日暮里の地価は山手線内では割安と言えそうだ。また、過去3年間西日暮里の地価は上昇し続けている。これから駅前再開発が進むことを考えると、まだまだ上がると予想できる。
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