兵庫県三田(さんだ)市は兵庫県の南東部、六甲山地の北側に位置する自然豊かな都市である。三田市は1980年代から大小さまざまなニュータウンの開発が行われ、1990年代まで高い人口増加率を誇ってきた。近年では、三田駅前で大規模な再開発が行われ、関西の中でも注目を集める市の1つとなった。今回は、三田駅前開発が最終局面に差し掛かった三田駅エリアのマンション価値について深堀りする。(ライター、宅建士:杉山明熙)※トップ画像:JR三田駅 (出所:PIXTA)
兵庫県三田市は、大規模ニュータウンや緑豊かな環境が残る田園都市
三田市では大小さまざまなニュータウンが開発されてきた。代表的なニュータウンは、フラワータウン・ウッディタウン・カルチャータウン・テクノパークの4団地で構成されている「北摂三田ニュータウン」だ。
北摂三田ニュータウンは三田市の人口の中で占める割合も高く、市の経済の中心地と言っても過言ではないだろう。フラワータウン駅とウッディタウン中央駅前には大規模な商業施設があり、ニュータウンに住む人たちにとって欠かせない施設である。
また、三田市が誇る自然環境にもスポットを当ててみたい。三田駅の北側に位置する兵庫県立有馬富士公園では、全体を「出合いのゾーン」「休養ゾーン」「山のゾーン」に分けて目的に応じた利用ができるようになっている。公園内の有馬富士自然学習センターは、三田の自然を五感で感じて学べる体験型自然学習施設だ。
さらに、毎年春になると約1億本の芝桜が咲く三田芝桜園も三田市では欠かせないスポットの1つである。全国でも珍しい芝桜を専門とした庭園で、日本最大規模を誇っている。三田市は、大規模なニュータウンと豊かな自然が存在するバランスのよい都市だといえる。
犯罪率の低さがファミリー層の安心につながっている
三田市がファミリー層に人気な理由の1つとして、1,000人あたりの犯罪件数(犯罪率)の低さが挙げられる。三田市と周辺都市における令和5年の総犯罪件数と1,000人あたりの犯罪件数は以下の通りである。
都市名 | 人口 | 犯罪数 | 人口1,000人あたり |
---|---|---|---|
三田市 | 105,432人 | 477件 | 4.5 |
神戸市 | 1,497,802人 | 12,014件 | 8.0 |
西宮市 | 483,929人 | 3,110件 | 6.4 |
三木市 | 72,652人 | 435件 | 5.8 |
引用:兵庫県警察「地域の犯罪情勢」
この表を見てわかるように、三田市は周辺都市と比べて1,000人あたりの犯罪件数が少ないことがわかる。特に、近年の再開発事業で三田駅前が整備されたことにより街が明るくなった点も、安心して暮らせる理由と言えるだろう。
JR大阪駅や新幹線停車駅へのアクセスが魅力の三田駅
三田(さんだ)市の主要駅である三田駅は、JR宝塚線と神戸電鉄の2路線が乗り入れている。JR大阪駅まで約45分、兵庫県の繁華街である三ノ宮エリアまでは約50分のアクセスである。
また、新幹線停車駅の新神戸駅まで約40分、大阪国際空港(伊丹空港)まで約1時間のアクセスで、遠方への移動にも悪くない立地と言えるだろう。
また、神戸電鉄公園都市線を利用すれば、三田市が誇る大規模なニュータウンへアクセスできる。「フラワータウン」駅や「南ウッディタウン」駅、「ウッディタウン中央」駅は、三田市のニュータウンに住む市民の足として欠かせない駅となっている。
三田駅前の再開発事業が進行中
三田駅周辺に目を向けてみると、駅前は後に紹介する「三田駅前再開発事業」により近年大きな発展遂げてきた。再開発地区をA、B、C、Dブロックに分け、すでにA、B、Dブロックの事業が完了している。
この再開発事業により、2005年にはAブロックに三田駅前を象徴する「キッピーモール」や駅前広場が整備された。キッピーモールはペデストリアンデッキで三田駅と直結しており、多くの専門店や飲食店が軒を連ねている。
さらに、キッピーモールの南側であるBブロックには、2017年にハートシティと呼ばれる住宅・店舗棟や高齢者施設棟が整備された。Dブロックには2002年に開業したホテルがあり、有馬温泉などの周辺観光を楽しむ観光客で賑わっている。
最終局面を迎えている三田駅前再開発
先述したとおり、三田駅周辺では再開発地区がA、B、C、Dブロックに分けられ、残りCブロックのまちづくり事業が進行中である。Cブロックは三田駅前再開発事業の中心に位置しており、今回が最大のプロジェクトとされている。
現在、Cブロックは老朽化した低層建築物や空き地、雑居ビルや木造家屋などが混在するエリアとなっており、アーケードのある商店街が昔ながらの雰囲気をかもし出している。Cブロックの再開発事業の目的は以下のとおりである。
⽼朽化し耐震性が不⾜する建築物が密集し、未接道敷地や細分化した敷地が多い本地区を再開発し、建物の不燃化や耐震化による都市の防災性能の向上を図る。交流拠点となるにぎわい広場やシンボルロードとなる通りと連続性のある商業・業務施設、駅近接の良好な住宅など、都市機能を複合的に集積し、既に市街地再開発事業が実施された3地区と⼀体性を図ることで、三⽥市の⽞関⼝における市街地再開発事業の集⼤成にふさわしい街を形成する。
引用:三田市「阪神間都市計画事業 三田駅前Cブロック地区第一種市街地再開発事業」
下の画像は、公表されている三田駅前再開発の完成予想パースだ。
三田市の設計方針によると、三田駅前に幅30mのシンボルロードを軸としたオープンスペースを整備し、既存の街とつながる風景を形成するとのこと。また、多くの世代が集う住環境や商業・業務施設が複合した「三⽥らしい魅⼒ある街」の形成を⽬指すとしている。
具体的には、敷地の南側にコの字の地上20階建て、540戸の住宅棟(分譲マンション)が建設される。また、敷地北側には商業業務棟(商業施設)が配置され、屋外の3階ににぎわい広場、4、5階に緑地を整備し、開放的な空間を形成する予定だ。商業業務棟には物販や飲食などの専門店や医療施設、公益的施設などが入る。さらに、敷地北側には自走式駐車場棟も配置される計画である。
また、駅前の安⼼安全な歩⾏者ネットワークの形成を図るため、AブロックやDブロックを結ぶネットワークデッキが整備される。
Cブロック再開発事業のスケジュール(予定)は以下のとおりである。
・令和6年7月:施設建築物工事着工
・令和9年1月:施設建築物(住宅棟1期・商業棟)竣工
・令和9年10月:施設建築物(住宅棟2期)竣工
引用:三田駅前Cブロック地区市街地再開発組合「事業スケジュール」
Cブロックの再開発事業により、現在営業中のキッピーモールに匹敵する商業施設が開業するため、三田駅前の人の流れが大きく変わることが期待される。
また、540戸の大規模分譲マンションが完成すれば、駅前にもう1つの大きな街が形成されることになる。三田駅前再開発事業がすべて完了すれば、三田駅前が新たな街としてさらなる発展が期待できるだろう。
兵庫・三田駅エリアの中古マンション価格
ここからは、三田駅エリアのマンション相場を確認してみよう。三田駅徒歩圏内の中古マンション価格の一例を以下の表にまとめた。
【三田駅エリア 中古マンションの販売価格】
間取り | 専有面積 | 交通 | 築年数 | 階数 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
2LDK | 58.21㎡ | 三田駅徒歩3分 | 築5年 | 14階建8階部分 | 3,380万円 |
2LDK | 57.61㎡ | 三田駅徒歩4分 | 築7年 | 11階建5階部分 | 2,250万円 |
3LDK | 69.17㎡ | 三田駅徒歩4分 | 築18年 | 13階建8階部分 | 2,880万円 |
3LDK | 72.73㎡ | 三田駅徒歩3分 | 築23年 | 14階建10階部分 | 2,780万円 |
※参考:住宅情報サイト「アットホーム」(2024年10月17日現在) |
駅近のファミリータイプの間取り(2LDK、3LDK)は、2,000万~3,000万円前後で推移していることがわかる。そこで、三田駅からJR宝塚線で約16分の場所にある、宝塚駅のマンション価格と比較してみよう。
【宝塚駅エリア 中古マンションの販売価格】
間取り | 専有面積 | 交通 | 築年数 | 階数 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
3LDK | 72.85㎡ | 宝塚駅徒歩7分 | 築19年 | 15階建3階部分 | 3,690万円 |
2LDK | 71.97㎡ | 宝塚駅徒歩9分 | 築21年 | 32階建9階部分 | 5,480万円 |
3LDK | 77.47㎡ | 宝塚駅徒歩12分 | 築24年 | 10階建2階部分 | 4,790万円 |
2SLDK | 67.91㎡ | 宝塚駅徒歩6分 | 築19年 | 15階建8階部分 | 3,990万円 |
※参考:住宅情報サイト「アットホーム」(2024年10月17日現在) |
三田駅と宝塚駅周辺のマンション価格を比較すると、築年数や専有面積の条件が類似している物件でも1,000万円近い価格差が出ている。もちろん利便性や都心までのアクセスに差があることは確かだが、ファミリータイプの物件を手頃な価格で購入できるのが、三田駅エリアの特徴だと言える。
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兵庫・三田駅エリアは「買い」か?
自然が豊かで、大規模なニュータウンが開発されてきた三田市。そんな三田市で行われている三田駅前再開発事業も、いよいよ最終段階を迎えている。再開発の最終エリアであるCブロックの整備が完了すれば、駅前の賑わいや人の流れに大きな変化が起こるだろう。
さらに、大阪や兵庫の主要都市に1時間以内でアクセスでき、新幹線停車駅や空港を利用する人にとって便利な三田駅は、犯罪率の低さからもファミリー層の人気も高い。
関西の中でここまで駅前の再開発事業に力を入れているエリアは、そう多くないと言える。将来的に多くの世代が集まり、住みやすい住環境や賑わいが期待できる三田市が、5年後の”買い”エリアとして位置づけられるのではないだろうか。
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