新築マンションの相場と売れ行きは? 人気物件、売れ残り物件から最新動向を探る!【2019年・首都圏版】

2019年6月7日公開(2019年6月7日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

2019年の新築マンション市場は、2018年末から高水準の在庫が積み上がっており、相場も高止まりしている。そこで、最近の新築マンションの人気物件、人気エリアだけでなく、売れ残り物件や人気がない間取りなどを分析することで、新築マンションの今後の動向を占ってみる。

【年次集計】首都圏の「売れ残り物件数」は大幅増!

 まず、首都圏における年次別の売れ残り物件数の推移を見てみよう(データは、不動産経済研究所の「マンション・建売市場動向」を参考にした)。

 直近に発表された2018年末の売れ残り物件数は9,552戸。今回集計した2014年以降、最も売れ残り物件が多かった。特に最も売れ残り物件が多かったエリアは東京23区で3,608戸、2017年末(2,610戸)と比べて約1,000戸増えている。その他のエリアでも売れ残り物件が増加した。

 近年の新築マンション購入検討者の特徴として、購入後のマンションの資産価値を求める傾向が高い。そのため、東京23区の好立地マンションの需要は決して低いわけではない。しかし、それでも新築マンションが売れ残ってしまう理由として考えられるのが、価格の高止まりだ。

 価格については以下のグラフを見て欲しい。

 首都圏全体で、2018年の新築マンション平均価格は5,871万円。前年の平均価格(5,908万円)と比べてわずかに下落した。

 しかし、内訳を見ると値下がりが起きたのは神奈川県と埼玉県のみで、東京23区は7,142万円(前年7,089万円)と、依然価格の上昇が続いている。

 近年のマンション建材費の高騰に加え、都心部では訪日外国人などのインバウンドやオリンピックを見越してのホテル・宿泊施設開発ラッシュが続いている。マンション用地となり得る土地の価格が需要拡大によって上昇し、新築マンション事業者も高値での用地仕入れを余儀なくされ、それが販売価格にも影響しているようだ。

 しかし、価格帯が7,000万円台の新築マンションは、一般消費者が簡単に購入できるものではない。それは、以下のグラフのように、新築マンションの供給数と契約数から算出される契約率にも現れている。

 2018年の年間累積契約率(売れ行き)は、なんと77.5%。現在、不動産経済研究所が公開している2010年以降のデータで、初めて80%を割り、最も契約率が低かった。新築マンション価格の高止まりが続く限り、首都圏全体の在庫数は膨れ上がる傾向にあるのだ。

2019年首都圏新築マンション市況解説

 では次に、足元の2019年の新築マンションの価格、契約率(売れ行き)はどうなっているのだろうか。以下のグラフを見てみよう。不調であることに大きな変わりはない。

 2019年1~4月の平均価格は、前年同期と比べて3~7%ほど高い価格帯で推移している。直近、2019年4月の首都圏全体の新築マンション平均価格は5,895万円で、前年同月(2018年4月は、5,548万円)よりも6%上昇した(+347万円)。

 2018年末から繰り越された売れ残り物件が2019年に入ってからも圧迫しており、2019年4月時点での売れ残り物件数は7,748戸。前年同月比で20%以上も増加している(2018年4月は、6,443戸)。

 なお、契約率は65~67%台を推移しており、前年比で横ばいだった。

 2019年の1~4月の新築マンション市況において、特に不調なのが東京23区エリアだ。詳細は以下を見て欲しい。 

 東京23区の平均価格は、

1月7,577万円(前年同月6,196万円)
2月7,842万円(前年同月7,223万円)
3月7,744万円(前年同月7,093万円)
4月6,856万円(前年同月6,762万円)

と、いずれも前年よりも価格が上昇している。

 契約率は、

1月58.7%(前年同月73.4%)
2月72.0%(前年同月69.8%)
3月73.3%(前年同月70.7%)
4月66.8%(前年同月61.7%)

と、2月以降は前年比でわずかに上振れしているものの、依然として芳しい数字ではない。価格の高止まりによって、手が出ない消費者が多く、売れ行きが鈍化しているようだ。

新築マンション購入層の「二極化」

 では次に、どんな物件が売れているのかを探るため、新築マンションの契約率を「価格帯別(2019年4月の首都圏全体)」で見てみよう。

 価格が2,500万円~4,000万円の契約率は70%、4,001万円~5,500万円は66.8%、1億円以上は76.7%と、3つの価格帯で4月平均の契約率64.3%を上回った。

 しかし、供給数が705戸と最も多い5,501万円~9,999万円の新築マンションでは、契約率は59.0%。平均契約率を割る結果になっている。

 首都圏の新築マンション市場において、4月の平均価格(5,895万円)を下回る新築マンションと、1億円以上の超価格帯マンションが好調な一方で、ボリュームゾーンになっている5,000万円後半~1億円未満のマンションが敬遠されているという二極化が起こっているようだ。

 そもそも1億円を超えるマンションは、供給数が少なく、資産家や富裕層といった一定層に需要が高い。都心部に位置して好立地物件で資産性も高いため、投資目的で購入するケースも少なくない。

 2018年1月から2019年4月までの即日完売した物件で、平均価格が1億円を超えた2物件のうちの一つを紹介しよう。近年は、「完売」と言っても1物件を数回に分けて販売しており、本当の完売ではないので、また購入できるチャンスはある。

■完売した「パークコート文京小石川 ザ タワー第1期」の概要
所在地

東京都文京区

販売戸数/総戸数 178戸/571戸
即日完売発表 2019年3月
平均価格 13,234万円
アクセス 都営三田線「春日駅」直結

 2019年3月に第1期の販売が開始した「パークコート文京小石川 ザ タワー」。平均価格1億3,234万円という高価格帯で 178戸発売され、第1期分については、即日完売した。

 進学や教育熱心な子育て世代に人気の文京区に位置し、都営三田線「春日」駅直結というアクセスの良さもあり、高く注目されている物件だ。居住用だけではなく、子育て世代への賃貸を目的とした投資目線でのニーズも高い。

 2019年6月7日からは、第2期が販売開始予定だ。

■「パークコート文京小石川 ザ タワー」の販売概要 ※2019年6月7日現在
受付期間

2019年6月7日(金)~2019年6月9日(日)

販売戸数 137戸
販売価格 6480万円(1戸)~2億8500万円(1戸)
間取り 1LDK(8戸)・2LDK(72戸)・3LDK(57戸)
専有面積 43.23㎡(5戸)~106.01㎡(1戸)
バルコニー面積 6.94㎡(17戸)~19.01㎡(16戸)
パークコート文京小石川 ザ タワー詳細はこちら

 最多販売価格帯は1億900万円台・1億1,000万円台と、エグゼクティブ層に向けた強気な価格になっている。

トレンドは「都心東部近郊」「駅徒歩10分強」「リーズナブル」

 1億円を超える高価格帯マンションが限られた層に高い需要がある一方、一般の購入検討者にも傾向があるようだ。キーワードとなるのは「都心東部近郊」「駅徒歩10分強」「リーズナブル」だ。

 2018年1月から2019年4月において即日完売が発表された物件数は35、その中で即日完売10件と最も多かったのが東京都台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区からなる城東地域だ。

 特に江東区、江戸川区での即日完売情報が多い。2019年に入ってからも、この傾向は顕著だ。以下が、特徴的な物件だ。

プレサンス ロジェ 西葛西

 「プレサンス ロジェ 西葛西」は、2019年1月に第1期販売戸数9戸、平均価格5,381万円が即日完売した。東京都江戸川区・東京メトロ東西線「西葛西」駅徒歩10分に位置し、総戸数83戸、地上12階建てのマンションだ。

 販売価格は、2019年1月の東京23区新築マンション平均価格6,196万円を下回っている。

■ルネ南砂リバーフィール(東京キラリスナプロジェクト)

 「ルネ南砂リバーフィール(東京キラリスナプロジェクト)」も江東区の新築マンションだ。2019年3月の第3期1・2次では、平均価格5,021万円で30戸が販売され即日完売した。2020年1月竣工予定で15階建て総戸数267戸。

 東京メトロ東西線「南砂町」駅徒歩13分と少し距離があるものの、現在の販売価格で3LDK南向け3,900万円台~という、割安な価格が魅力だ。

■リビオシティ・ルネ葛西(TOKYO ALOHA PROJECT)

 2019年3月に第5期(終)で、平均価格4,555万円で25戸が即日完売した「リビオシティ・ルネ葛西(TOKYO ALOHA PROJECT)」は東京都江戸川区・東京メトロ東西線「葛西」駅より徒歩18分のアクセスだ。14階建て総戸数439戸で、2,019年8月下旬の竣工予定だ。同物件は、2018年3月から第1期販売を開始、以降高い頻度で即日完売し、2019年3月に全戸の販売が終了した。

 最寄り駅徒歩18分と決して好アクセスではないが、平均4,000万円台という価格が最大のポイントになっている。

 これら2019年の都内23区の即日完売物件からも、「東京都城東地域」の新築マンションが人気だ。その理由として「リーズナブル」な価格帯が上げられる。

 2019年3月に発表された23区の公示地価を集計してみると、台東区を除く城東地域が下位を占めた。この低い土地価格が、割安な価格帯に反映されている。

 そして、前述の3物件は「駅徒歩10分強」という点でも共通している。一般的な指標である1分=80mで換算すると、10分強は800m以上の距離だ。4000万円台、5000万円台という価格は譲れないが、駅からの距離を妥協することで、「駅徒歩10分強」の物件が選ばれているようだ。

【関連記事はこちら】>>江東区の「新築マンション人気ランキング」
>>江戸川区の「新築マンション人気ランキング」

船橋市も「即日完売」が多い人気地域

 2018年1月~2019年4月の即日完売数が5と、次に多かったのが船橋市だ。
 船橋市も城東地域と隣接しており、城東地域の延長線として人気が高いエリアだと考えられる。

 しかし、船橋市の即日完売の全てが「メイツ東船橋」という点では、ピンポイントな人気物件という見方も考えられる。

■「メイツ東船橋」の販売状況
即日販売時期 戸数 平均価格(万円)
2018年6月 1期1・2次 45 4231
2018年12月 2期7・8次 5 3980
2019年2月 2期9~13次 9 3981
2019年3月

2期14・15次

3期1・2次

14 3989
2019年4月 3期3次 3 4015

 「メイツ東船橋」は、2019年8月下旬竣工予定。総戸数164戸、9階建てのマンションだ。アクセスは、JR総武線「東船橋」駅徒歩11分、JR総武線「津田沼」駅徒歩18分、京成本線「船橋競馬場」駅徒歩15分と「駅徒歩10分強」というキーワードに当てはまる。

 直近4月の千葉県の新築マンション平均価格は4,162万円で、同月の「メイツ東船橋」は4,015万円と、こちらも平均価格よりも割安でリーズナブルな価格帯だった。

 同物件は2019年7月から第4期1次の販売が予定されている。城東地域や船橋市はJRや地下鉄、私鉄が充実しており、都心へ20分程度でアクセスできることから、今後も高い需要があると考えられる。

■「メイツ東船橋」の販売予定 ※2019年6月7日現在
予定販売戸数

未定

予定販売価格 2,900万円台~4,100万円台※100万円単位
予定最多価格帯 3,700万円台※100万円単位
間取り 2LDK+S(納戸)・3LDK
専有面積 64.66㎡~69.90㎡
バルコニー面積 11.45㎡~13.38㎡
専用庭面積 14.75㎡(月額使用料:230円)
管理費(月額) 10,900円~11,800円
メイツ東船橋詳細はこちら

【関連記事はこちら】>>千葉県の「新築マンション人気ランキング」

2019年4月首都圏売れ残り物件はどこにある?

 直近2019年4月までの新築マンション市況には大前提として購入層の「二極化」がある。

 都心好立地で利便性の高い1億円以上の高価格帯マンションは富裕層を中心に需要が高く、一方で一般購入者には都心好立地の6,000万円~1億円の物件は敬遠され、5,500万円未満の新築マンションに食指が動いている。2019年4月の首都圏全体の販売平均価格は5,895万円だが、多くの購入検討者には割高に映っているようだ。

 そして、5,500万円未満の人気物件は東京城東地域や千葉県船橋市に集中し、駅からの距離は「徒歩10分強」が妥協点になっているようだ。

 これらを踏まえると、駅近物件だとしても6,000万円~1億円未満の物件は売れ残る可能性が高い

駅近でも売れ残る新築マンション

 駅近でも売れない物件の例として、「シティタワー国分寺ザ・ツイン」を紹介しよう。

 同物件は、JR中央本線「国分寺」駅直結でイースト(地上35階・地下2階)・ウエスト(地上36階・地下3階)、2棟からなる総戸数583戸のタワーマンションだ。低層部には三越伊勢丹グループの商業施設「ミーツ国分寺」をはじめとした、さまざまな商業施設や店舗が入居し、国分寺駅の様相が大きく変わった一大プロジェクトだ。

 「シティタワー国分寺ザ・ツイン」は、2018年2月に完成済の物件で、第1期販売はそれより2年前の2016年2月。2016年2月に発売された第1期70戸、販売価格7,400~12,800万円は即日完売し好調な滑り出だったが、完成後1年以上経った現在も販売中だ。

 2019年6月現在の販売概要は下記だ。

■「シティタワー国分寺ザ・ツイン イースト」の販売概要 ※2019年6月7日
販売戸数

19戸

販売価格 4,998万円~8,998万円
最多価格帯 6,900万円台(4戸)
間取り 1LDK・2LDK・3LDK
専有面積 41.27㎡~80.71㎡
バルコニー面積 11.44㎡~19.95㎡
シティタワー国分寺ザ・ツイン イースト詳細はこちら
■「シティタワー国分寺ザ・ツイン ウエスト」の販売概要 ※2019年6月7日
販売戸数

10戸

販売価格 6,352万円~12,990.6万円
最多価格帯 8,200万円(2戸)
間取り 2LDK・3LDK
専有面積 55.91㎡~80.03㎡
バルコニー面積 12.54㎡~26.83㎡
シティタワー国分寺ザ・ツイン ウエスト詳細はこちら

 2019年4月の東京都下の新築マンション平均価格は5,385万円。「シティタワー国分寺ザ・ツイン」の価格帯はそれよりも1,000万円以上高額な物件が多い。

 駅直結という利便性で、中には1億円以上価格帯もあるが、1億円以上を購入できる富裕層は、東京都下の国分寺市よりも資産性の高い23区内に流れている可能性も考えられる。

 「駅近物件が人気」という定説は現在でも信じられている。しかし、首都圏を外れてなお市場の平均価格を大きく上回った、言わば中途半端に高い物件は、富裕層からも一般購入者からも選ばれにくい「売れ残り物件」になる可能性がある

 なお、売主は完成物件でもあまり値下げをしないことで知られる、住友不動産。すでに完成から1年以上経っており、法律上は「新築マンション」ではなくて、「未入居マンション」扱いになるが、それでも、値下げに応じない可能性もある。

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