グランドヒルズ恵比寿(旧:シティタワー恵比寿)の価格、スペックを大分析 
完成後も値引きなしで売り続ける「住友方式」は成功するか?

2020年5月25日公開(2024年4月10日更新)
櫻井幸雄:住宅評論家

住友不動産が販売する「グランドヒルズ恵比寿」(旧:シティタワー恵比寿)は、2019年に竣工済みの新築マンションだ。完成後も値引きをせずに売り続ける「住友方式」で販売を続けている。また、現時点で購入を決めても入居は1年後の2021年だという。一等地に建つ高額マンションという特異性をもつ物件だが、この独自の販売方法は受け入れられるのだろうか。(住宅評論家・櫻井幸雄)※新築販売時の記事です。

販売開始は2017年、
2019年の完成後も長期販売が続く

シティタワー恵比寿 外観
「グランドヒルズ恵比寿」は地上23階建ての高級タワーマンション

 「グランドヒルズ恵比寿」の販売が始まったのは、2017年のはじめ。今から3年前である。それから2年経った昨年(19年)3月には建物が完成。その後も、新規分譲が続いている。

 新築分譲マンションは、建物ができあがるまでに売り切るもの、と考えている人からすると、不思議な売り方ということになるだろう。が、事業主の住友不動産からすると、珍しい事例ではない。同社の新築マンションには、建物が完成してから10年間も売り続け、ようやく完売したマンションもある。

 建物が完成した後、何年経っても値引きせずに売り続け、状況によっては価格設定が上がることもある。それが、不動産業界で「住友方式」と呼ばれる売り方。20世紀まで、多くの不動産会社が「建物が完成しても売れ残っている住戸があると、値引きする」方式をとっていたのだが、住友不動産はずっと値引きしない方式をとっていた。

 ちなみに、2015年以降は他の不動産会社も「住友方式」を採り入れるケースが増えている。結局は、値引きをせず、時間をかけて売り続けたほうが得は大きいと分かってきたこと、値引きをしないことで正価を納得してもらいやすい(値引き期待で、買い控える動きがでない)ことが、その理由。加えて、2015年以降、新築マンションの供給戸数が大幅に減り、一つひとつのマンションを大事に売ってゆこうという動きになったことも、「住友方式」が増えた理由である。

 毎年、マンションを大量販売していた時代は、「ひとつの仕事を短期間に終わらせ、次に移る」スピードが求められた。だから、売りあぐねた住戸は手っ取り早く値引きして売り切られた。今は、そういう時代ではない、ということだろう。

グランドヒルズ恵比寿(物件詳細はこちら)
グランドヒルズ恵比寿価格12,500万円~40,000万円
完成時期2019年3月
交通JR山手線「恵比寿」駅 徒歩8分、JR埼京線「恵比寿」駅 徒歩8分、湘南新宿ライン宇須「恵比寿」駅 徒歩8分
所在地東京都渋谷区恵比寿一丁目47番-1外(地番)
間取り1LD・K、2LD・K、3LD・K
専有面積40.72㎡~97.43㎡(一部トランクルーム面積1.64㎡~1.65㎡含む)
物件の特徴総戸数310戸
  • 【完全予約制】地上23階建て・全310邸大規模タワーマンション
  • 【住友不動産のマンション】羨望の街『恵比寿』で都心の眺望を優雅に愉しむ
  • 【2駅5路線利用可能】JR山手線「恵比寿」駅徒歩8分、日比谷線「広尾」駅徒歩13分
施工西松建設株式会社
売主住友不動産株式会社

価格は60㎡が1億2000万円など
3LDK2億円の超高額住戸も!

 「グランドヒルズ恵比寿」が、販売開始された2017年は、都心マンションの価格上昇が顕著な時期だった。その結果、「都心マンションは高くなりすぎ。まもなく暴落する」という予測が広まり、2017年1月には「暴落は秒読み」という大胆な予測まで出されていた。しかし、この予測は外れ、2020年4月時点で暴落は起きていない。

 「グランドヒルズ恵比寿」が販売を開始したのもこうした時期だ。分譲価格2億円を超える3LDKの住戸があったため、「高くなった都心マンション」の代表として扱われたこともあった。当時、都心部では新築物件が減り、特に山手線内側では総戸数が200戸を超えるような大規模マンションが姿を消していた。山手線内側で唯一の大規模タワーといえるマンションが「グランドヒルズ恵比寿」だった。

 「グランドヒルズ恵比寿」に高額の3LDK住戸があったため、「高い」印象が生まれたのだろう。しかし、実際は、飛び抜けて高額というわけでもなかった。

 たとえば、六本木のミッドタウンに隣接する「パークコート赤坂檜町ザ タワー」が販売され、短期間に完売したのが2015年から16年にかけて。その分譲価格は「平均坪(3.3㎡)単価は約1000万円」だったので、80㎡の3LDKが2億5000万円のレベルとなっていた。

 これに対して、「グランドヒルズ恵比寿」では、15階の約75㎡住戸で約1億7000万円、約60㎡住戸で約1億2000万円(いずれも間取りは2LD・K)など。山手線内側では、特に高額というわけではない。そのため売主は、時間をかければ、確実に売れてゆくという自信があるのだろう。販売はゆっくり進んでいる。

再開発で沸く渋谷に近い好立地
羽田空港新飛行ルートの影響は?

 「グランドヒルズ恵比寿」の大きなメリットは立地の良さと言える。建設地の恵比寿は、渋谷の隣駅だ。現在、渋谷駅周辺では規模の大きな再開発が進行しており、渋谷駅周辺に今後所有権分譲のマンションが生まれることは考えにくい。そのため、恵比寿駅徒歩圏のマンションは注目度を上げている。

 渋谷だけでなく、麻布や広尾、中目黒、代官山に囲まれているのも、恵比寿の魅力だ。「グランドヒルズ恵比寿」の建設地は、JR山手線恵比寿駅の東口側。恵比寿駅東口から徒歩7分で、山手線の内側に位置する場所である。周囲には食料品店、酒屋、花屋などの個人商店が多く、飲食店も豊富。そのなかには隠れ家的有名店もある。もともと恵比寿は、白金エリアの富裕層が日々の買い物や外食のために訪れた場所。有名店が多いのも当然である。「グランドヒルズ恵比寿」の建設地は、交通量の多い通りから一歩奥に入った場所で、こちらも隠れ家的な好立地条件となる。

 一方で、今話題の「羽田空港新飛行ルート」の下にあたる、という立地特性もある。そこで、飛行機の音が気になるところだが、幸いなことに、同マンションは完成済み。購入を検討している住戸で、飛行機の音の聞こえ具合を確認することができる。私は、窓を閉めた状態で、まったく気にならなかったが、聞こえ方には個人差があるだろう。実地で確認できるのは、大きな利点となる。

エントランスは意外と質素
利点は、ハイスペックな室内仕様と眺望の良さ

 地上23階建て全310戸の超高層大規模マンションなのだが、エントランスは、どちらかというと控えめ。公道から少し入ったところに、二重のガラスドアがあるだけだ。エントランスに続くホールも2層吹き抜けのような大空間ではない。ちょっとだけ天井が高く、広めのスペースが設けられているだけだ。都心のバブリーなマンションを期待すると、ちょっと拍子抜けするかもしれない。しかし、実際の購入者には、これくらいで十分、という評価もある。

 住戸内の質は高く、玄関からLDに向かう廊下とトイレ、洗面所の床は天然石張り。キッチンにはディスポーザーと食器洗い乾燥機が標準設置されるのだが、プレミアム住戸の食器洗い乾燥機はドイツ・ミーレ社の大型サイズだ。システムキッチンと洗面台のカウンターは天然石。そして、LDには天井埋め込み型カセットエアコンが付き、一部住戸の寝室にも天井埋め込み型カセットエアコンが付く。

 都心マンションでは1億円台でも、住戸内はスタンダードレベルの住戸が増えてきた。これに対し、「グランドヒルズ恵比寿」は価格に見合う質の高さを備えている。これは、同マンションの隠れた長所となる。

 加えて、実際の建物内で驚いたのは、眺望のよさだ。「グランドヒルズ恵比寿」は、地上23階建てであるため、超高層マンションとしては特に背が高い建物ではない。しかし、建設地周辺には14階建て程度の建物が多いため、上層階は都心各方向への眺望が開ける住戸が多くなる。住戸によっては、六本木ヒルズや東京タワーの姿が見事なほどきれいに見える。その眺望を満喫するため、同マンションの住戸は窓が大きい。リビングにコーナーサッシを備える住戸もある。建物が完成しているマンションであるため、眺望のよさや日当たりを実地で確認することもできる。それも、同マンションの利点である。

販売中住戸の入居は1年後
理由は、室内整備の効率性か?

 「グランドヒルズ恵比寿」で現在販売中の住戸は、「即入居」ではない。昨年末から、「入居予定は来年21年の4月」と設定されている。すでに入居している住戸もあることを考えると「即入居」となってもおかしくない。それをほぼ1年後の入居にしているのは、引き渡し前に内装の手直しや設備機器のチェック、整備を行うからだ。

 引き渡しの時期を先に設定した理由は、手直しやチェックは、ある程度の戸数をまとめて行ったほうが仕事の効率がよいからと推測される。

 1年先といっても、新築マンションを買うときの完成までの“待ち時間”としては短いとも受け取れる。だが、すでに入居済みの住居もある完成物件では果たしてどうだろう。もしこのやり方がうまくいけば、今後他の不動産会社に広まってゆくのかもしれない。

グランドヒルズ恵比寿(物件詳細はこちら)
グランドヒルズ恵比寿価格12,500万円~40,000万円
完成時期2019年3月
交通JR山手線「恵比寿」駅 徒歩8分、JR埼京線「恵比寿」駅 徒歩8分、湘南新宿ライン宇須「恵比寿」駅 徒歩8分
所在地東京都渋谷区恵比寿一丁目47番-1外(地番)
間取り1LD・K、2LD・K、3LD・K
専有面積40.72㎡~97.43㎡(一部トランクルーム面積1.64㎡~1.65㎡含む)
物件の特徴総戸数310戸
  • 【完全予約制】地上23階建て・全310邸大規模タワーマンション
  • 【住友不動産のマンション】羨望の街『恵比寿』で都心の眺望を優雅に愉しむ
  • 【2駅5路線利用可能】JR山手線「恵比寿」駅徒歩8分、日比谷線「広尾」駅徒歩13分
施工西松建設株式会社
売主住友不動産株式会社

【関連記事はこちら】
>> 渋谷区の「新築マンション人気ランキング」神宮前、代々木、初台、恵比寿など注目エリアのおすすめ物件は?【2020年4月版 】
>> 「グランドヒルズ南青山」の価格、スペックは ?

  • RSS最新記事
 

注目記事>>新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説
 

【注目の大規模物件】 【新築マンションの基礎】
HARUMI FLAG(晴海フラッグ)
三田ガーデンヒルズ
グランドヒルズ南青山
パークタワー勝どきミッド/サウス
ワールドタワーレジデンス
パークタワー西新宿
新築・中古マンションの市場動向
最新の新築マンション相場や価格は?
値引きをする会社はどこ?
「音」のトラブル!遮音性の確認法
管理のチェックポイント
住み心地を決める「階高」
◆新築マンション人気ランキング
TOP