コロナ禍で長く続く我慢の時代、白い車や白い靴などなぜか白の商品が売れているという。住宅でも、同様に白が人気となっているのだろうか。最近のマンションの外装色を調べてみた。(住宅評論家・櫻井幸雄)
暗い時代に白い商品が売れるのは、明るさを求めているから?
景気後退期や大きな自然災害が起きたときには、白い商品が売れるとされる。白い車が売れるし、白いスニーカーや白いTシャツが売れるわけだ。
スニーカーの場合、「汚れが目立たない」という理由で、黒を選ぶ人も多い。その点、白は汚れやすいのが問題になるというデメリットもあるはずだが、気分が落ち込むとき、「白で明るくなりたい」「無垢な白でリセットしたい」という気持ちになるのは理解できる。
住宅でも同様の現象が起きているのだろうか。急きょ、調査してみることにした。
人気の新築マンション32物件を調査
コロナ禍の今、人気を集めるマンションにはどんな色が多いか。それを調べるため、まず、極めて人気が高い新築分譲マンションを全国からピックアップし、その外装色を調べることにした。
調査期間は、2021年5月1日から7月31日までの3カ月間。元になったのは、私が継続的に行っている「新築マンションランキング」のデータである。現在販売中の物件については、モデルルーム来場者数と資料請求数が特に多いマンションを抽出。また、販売開始前の物件では、資料請求数が特に多いマンションを抽出した。
この方法で、特に注目度が高い、人気マンションと判定された全国の31物件を選び出し、そのなかに白い外装色のマンションはどれくらいあるのかを調べたのが、下の表だ。これらの物件は、短期間に売れてしまう可能性の高い人気のマンションで、すでに完売したものも含まれる。
この31物件のうち、外観が白いマンションはどれくらいあるのか。この「白」は純白に限らない。白っぽい色合いも含め、完成予想図から表面となる側の色が白と判定される物件数をカウントした。
その結果、表面外装の8割以上、ほとんどの部分が白と判定されたマンションは11。外装の一部に白が用いられているマンションは12。合計で23の物件に白の外装色が用いられていた。率にして、約74%で白を基調としたマンションになっていたわけだ。
ただし、ほとんどが白になっているマンションの数は11なので、全体の35%ほど。あまり多くないと思う人もいるかもしれない。
かつてのマンションの外観色の主流は、茶系など重厚感ある色
だが、従来は白い分譲マンションはもっと少なかった。原因として、UR都市機構が公団と呼ばれていた昭和期に盛んにつくった賃貸マンションの多くが真っ白だったことが挙げられる。民間の賃貸マンションにも、白い外観のものが目立つ。
そこで、各不動産会社は賃貸マンションと差別化を図るため、レンガ調カラーや茶色、グレーなど重厚な印象を与える濃い色を分譲マンションに採用してきた。そのため、まれに白い分譲マンションが登場すると、かえって新鮮な印象を受けたものだ。
その白いマンションが今、超人気マンションの35%を占めている。やはり、コロナ禍の今、白いマンションが好感をもって受け入れられている状況はありそうだ。
もちろん、「外装が白」という理由だけで、マンションが売れるわけではない。立地や広さ、価格を総合的に判定して人気が高いマンションに、たまたま白っぽい外観が多かった、だけかもしれない。
ただし、ここで取り上げた31物件は、すべて大人気物件。抽選に当たらないと購入できないマンションも含まれる。そこまで人気が高まった理由の一つに「白だから」ということがありそうだ。
白いマンションのもう一つの特徴とは?
そして、白いマンションに共通する、ある特徴も多くの人の購入意欲をかき立てたのかもしれない。白いマンションの特徴とは、建物の形状が変化に富み、個性的であることを指す。
というのも、単純な形の建物を白くすると、病院か学校のように見えてしまう。外装を白くしてかっこいいのは、凹凸が多く、個性的なフォルムのマンション。白いマンションは形が独創的でもあるため、人気が高まった、と考えられるわけだ。
また、今回リストアップしたマンションは、総戸数100戸未満の小規模物件が中心。小規模の場合、インパクトを強くするため、個性的な外観や白の外装色が採用されやすい。
今回のリストにはないが、昨年完成した「レ・ジェイド辻堂東海岸」も比較的小規模な白いマンションだ。海に近い場所に白いマンションが建つと、青空や南洋植物とのコントラストが美しい。人気となり、すでに全戸完売している。
ただし、白は小規模物件だけに用いられるものではなく、大規模でも形が凝っているマンションは白を採用することがある。例えば、東京都北区王子に造られる「ガーデンクロス東京王子」だ。この「ガーデンクロス東京王子」は凝った外観のつくりで、白い外装の大規模マンションとなっている。
【関連記事はこちら】
>>「ガーデンクロス東京王子」の価格や特徴を分析!
中古マンションも白なら、売りやすい?
今は、白いマンションが魅力的に見えるという現象が起きている。これは、自宅を中古マンションとして売ろうとしている人にとっても注目だ。というのも、自宅マンションが白い外観ならば、売却のチャンス到来となるからだ。
白いマンションならば、中古価格が上がるかもしれない。売値が上がらなくても、自信を持って、売り出すことができるだろう。
ただし、中古マンションの中には、「以前は白かったんだけどねえ」という例もある。白い外壁が汚れてねずみ色になった、というのではない。吹き付けタイル仕上げのマンションならば色の変更がしやすいので、「大規模修繕のときに色を変えてしまった」というケースがあるのだ。
白を濃い色に塗り替える、もしくは、白と緑、白と茶色のツートンカラーに塗り替えるケースもある。「白いマンション」が注目される時代が来るのを分かっていたら、塗り替えなかったのに、と残念がるケースも出てきそうだ。
コロナ禍の今、「ありきたりではないマンション」を求める人が多い。個性的なマンションを求める人にとって、白いマンションは明るさとともに強いインパクトを与えるに違いない。
◆ガーデンクロス東京王子 | ||||
価格 |
未定 |
入居時期 |
2021年11月下旬予定 |
|
交通 | JR京浜東北・根岸線「王子」駅(南口)より 徒歩9分 他 | 所在地 | 東京都北区堀船2丁目20番17、18(地番) | |
間取り | 3LDK | 専有面積 | 66.94㎡ ~ 72.16㎡ | |
総戸数 | 300戸 | 来場者数 | - | |
売主 | 西日本鉄道、三菱地所レジデンス、関電不動産開発首都圏事業本部、ジェイアール東日本都市開発 | 施工会社 | - | |
※データは2021年8月26日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
注目記事>>新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説
◆新築マンション人気ランキング |