東武東上線の上板橋駅は、池袋駅から準急で7分ながら、やや地味な街というイメージがある街だった。しかし、駅南口で進む大規模な再開発によって、そのイメージが大きく変わりつつある。上板橋駅周辺で初めてとなるタワーマンション「シティタワーズ上板橋イースト/ウエスト」が誕生する。(フリー記者・後藤利恵子)
目次
住む街として評価の高い上板橋駅周辺
東京都板橋区の上板橋地区。東武東上線上板橋駅は、東武東上線池袋駅から準急利用で約7分。池袋駅でJR埼京線に乗り換えれば新宿駅や渋谷駅まで20分圏内とアクセスが良い。それでいて家賃や物価が抑えられていることから、住む街として評価が高いエリアである。
上板橋駅の周辺には幾多の商店が連なる。人気の和菓子屋「石田屋」などの古くからの商店のほか、「蒙古タンメン中本本店」、予約困難な大衆酒場「須賀乃湯」などの若者に人気の店も多数ある。
駅南口から川越街道に伸びる上板南口銀座商店街は飲食店、クリーニング店などが並び、川越街道近くには地域密着型のスーパーマーケットもある。
さらに、川越街道を越えて歩くと住宅街になり、広大な緑地が広がる。この城北中央公園は城北地区最大の総合公園で、運動場・テニス場などのスポーツ施設も兼ね備えている。
現在、その駅南口一帯において「上板橋駅南口駅前地区第一種市街地再開発事業」が進められている。
治安面を見てみると、ダイヤモンド不動産研究所の治安の良さランキングでは、東京の市区町村の中で、板橋区は対象の51エリア中25位(168人に1件)となっている。
【関連記事】>>東京都の治安ランキング! 犯罪が少なく安全に暮らせる市区町村はどこ?【2025年版】
上板橋駅南口で進められている再開発事業とは
上板橋駅南口にはいくつかの課題があった。木造住宅密集エリアの存在である。南口の旧川越街道、および脇道沿いに木造住宅が立ち並び、防災性や耐震性での不安があった。
また、上板橋駅南口には北口と違ってもともとロータリーがなく、自動車、自転車、歩行者の動線が重なり、とくに通勤や通学の時間帯は混乱をきたしていた。
こうした課題を改善し、南口駅前周辺の安全性、利便性を高めるために現在進められているのが、今回の「上板橋駅南口駅前地区第一種市街地再開発事業」 である。
駅前広場の新設
この事業は、駅前の約2.2haの敷地を整備する複合再開発で、駅前広場、東街区、中街区、南街区に分けて開発が進められている。
約3,900㎡の駅前広場(交通公園)が新設され、ロータリーがつくられる。バス停留所やタクシー乗り場、また地下には1,500台規模の自転車駐輪場も設けられる予定で、自動車、自転車、歩行者の動線を明確に分離することで、利便性、安全性が確保できる。
さらに駅前広場から2階の駅構内へ繋がるエレベータデッキが設置される。デッキは駅構内から東街区に建設される「シティタワーズ上板橋イースト」へもつながる。
東街区、中街区、南街区
東街区と隣の中街区には、新築マンション「シティタワーズ上板橋イースト/セントラル」が建設される。東街区(イースト)は26階建て、中街区(セントラル)は19階建てのツインタワーとなる。
タワーの低層部に商業店舗、上層部に住戸がつくられ、2棟合わせて425戸が配置される。また、川越街道に面した南街区には、5階建ての事務所と店舗が建てられる。
南口に新設される駅前広場から川越街道に向けての約210mの区間に、幅約16m、2車線の区画道路「板橋区画街路第8号線」が敷設される。災害時にも自動車や人の移動がスムーズになる。
なお、後続区域となっている西地区は、2021年に準備組合が設立されており、現在、組合設立をめざし、事業を推進していく予定である。
※都市建設委員会資料 令和6年6月12日 まちづくり推進室地区整備課「上板橋駅南口駅前地区のまちづくりの状況について」
全体完成予定は2028年
各工事の完成予定は以下の通りとなっている。
駅前広場:2025〜2028年頃
東街区「シティタワーズ上板橋イースト」: 2028年
中街区「シティタワーズ上板橋セントラル」:2027年
全体完成(街区・道路・広場含む):2028年頃
2025年11月時点では、南口の駅前周辺は仮囲いがされ、解体作業などが進められている。
新築マンション「シティタワーズ上板橋」が誕生
今回の再開発事業で誕生する 「シティタワーズ上板橋 イースト/セントラル」は、上板橋エリアにとって初のランドマークマンションとなる。
「シティタワーズ上板橋イースト/セントラル」物件概要
<イースト>
予定価格:未定
交通:上板橋駅徒歩1分
階数:地上26階建
総戸数:313戸
間取り:2LDK~3LDK
専有面積:55.32㎡~105.66㎡
完成予定:2028年5月予定
入居予定:2029年4月下旬
施工:大成建設東京支店
売主:住友不動産
<セントラル>
予定価格:未定
交通:上板橋駅徒歩2分
階数:地上19階建
総戸数:112戸
間取り:1LDK~3LDK
専有面積:39.24㎡~70.06㎡
完成予定:2027年9月上旬
入居予定:2028年4月下旬
施工:長谷工コーポレーション
売主:住友不動産
「シティタワーズ上板橋イースト/セントラル」は、合わせて約5,303㎡という敷地面積となる。
イーストは上板橋駅から徒歩1分で、駅からペデストリアンデッキ(空中回廊)でつながる予定だ。駅から少し離れたセントラルでも徒歩2分という近距離で、この立地が魅力だ。
「シティタワーズ上板橋 イースト/セントラル」は、「ZEH-M Oriented」基準。「ZEH(ゼッチ)」とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略。ZEH-M Oriented断熱性の向上と省エネ設備の導入により、住棟全体の年間一次エネルギー消費量を現行省エネ基準値から20%以上削減する省エネ住宅のことである。
また、内廊下が採用され、ラウンジやコンシェルジュサービスをはじめ、テレワークラウンジやフィットネス、キッズルームなどの充実した共用施設がつくられる計画となっている。
駅徒歩1分という立地に加え再開発物件という希少性は、今後の上板橋駅周辺の不動産市場にも影響を与えると考えられる。
ただし懸念点が2つある。ひとつは、この旧敷地には大型のパチンコ店があり、マンション建設後に、1階にパチンコ店が入居する予定となっていることだ。
もうひとつは、イースト棟の313戸のうち66戸、セントラル棟の112戸のうち29戸が非分譲住戸となっている。これは、地権者住戸の割合が比較的高いということだ。地権者住戸が多い物件は、管理組合の運営に支障をきたすケースがある。
販売中の新築マンション「パークホームズ上板橋」
上板橋の新築マンションとしては、2025年6月に完成した「パークホームズ上板橋」もある。パークホームズは三井不動産のメインブランドとしての評価が高く、高級感は他の物件と一線を画している。
予定価格:7,900万円台~1億円台
交通:東武東上線上板橋駅徒歩6分
階数:地上9階
総戸数:138戸
間取り:3LDK
専有面積:65.27m²~77.20m²
完成:2025年6月
入居予定:2026年04月下旬
施工:長谷工コーポレーション
売主:三井不動産レジデンシャル
東京23区の新築マンションの10月の平均価格は、1億5,313万円。(出典:不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年10月」)。それを考えると、「パークホームズ上板橋」はまだ手が出しやすい価格だと言える。
上板橋駅周辺の不動産価格の相場
最後に、上板橋駅周辺の不動産価格の相場を見ていく。
上板橋の不動産相場は、板橋区内でも「堅実で安定した実需エリア」として評価されてきた。池袋駅まで10分以内という交通の利便性と、活気あふれる商店街や地域密着型のスーパーマーケット、公園などの生活インフラが整い、ファミリー層を中心とした継続的な需要がある。
中古マンションの相場を見てみると、上板橋駅周辺は3,130万円(10年前比+64.2%)。板橋区全体では3,849万円(10年前比+68.2%)となっている。
上板橋駅周辺の中古マンションは平均築年数が1996年で、駅までの平均距離が徒歩8分となっていることから、相場は低めに算出されている。
※価格は2022年時点
※参考:上板橋駅の価格はダイヤモンド不動産研究所の「上板橋駅(東京都)の中古マンション価格推移は+24.9%(10年後予想)!今後の相場は高騰する?」上板橋の価格は「東京都板橋区の中古マンション価格推移は+29.8%(10年後予想)!今後の相場は高騰する?」から
ただし今後の上板橋の中古マンション価格は、再開発事業により上昇していく可能性がある。
【関連記事】>>上板橋駅(東京都)の中古マンション価格推移は+24.9%(10年後予想)!今後の相場は高騰する?
まとめ
「上板橋駅南口駅前東地区 第一種市街地再開発事業」により、上板橋駅周辺の街は大きく変わっていくだろう。商店街のもつ親しみやすさは残しつつも、南口駅前の景観が大きく変わり、「住みたい街」としての人気が高まることが予想される。
また、新築マンション「シティタワーズ上板橋」の誕生は、街の新たなランドマークマンションとなり、不動産の相場全体の底上げに寄与するだろう。
上板橋駅周辺は、今後、暮らしやすさと将来性を兼ね備えた新たな東京のベットタウンとして注目を浴びる街になりそうだ。
注目記事>>新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説
| ◆新築マンション人気ランキング |



