2023年12月、新築マンションの販売戸数、契約率、平均価格など総じて低調な結果となり、今後の動きに注意が必要となった。中古マンションに関しては引き続き好調な結果を示している。今月も2023年首都圏不動産市場を振り返りつつ、2023年12月度の首都圏新築・中古マンション市況を解説していく。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
2023年首都圏マンション市場総括と2024年の不動産市場
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、
新築マンションの価格動向は地域差が顕著
2023年(年ベース)の首都圏新築マンション発売戸数は、2万6,886戸で前年比9.1%の減少となった。都心を中心に高級・高額住戸の分譲が増える一方で、東京23区以外のエリアの供給が減り、2年連続3万戸を割る水準となった。
最高価格45億円の三田ガーデンヒルズなど都心高額マンションの発売が増え、東京23区の平均価格は前年比39.4%と大きく上昇。1億1,483万円と初めて1億円の大台を突破した。また、価格が大きく上昇したにもかかわらず、契約率は70.3%と3年連続7割を上回った。なお、契約率が最も低かったのは埼玉県の61.0%、最も高かったのは千葉県の77.7%。
東京23区の平均価格は、前年比で大きく上昇しているが東京都下は+3.7%、千葉県は+4.0%で、埼玉県は−7.5%。価格動向では、地域差が顕著だ。
2024年の供給見込みは3万1,000戸となっており1都3県すべてが増加する見込み。販売在庫数は、前年同期比で+368戸とほぼ横ばいだが、地域によって需給が緩むかもしれない。
コロナ禍以降の3年間で、中古マンション成約㎡単価は3割上昇
首都圏中古マンション成約㎡単価の推移
一方、2023年の首都圏中古マンション成約件数は、前年を1.6%上回る35,987件。1㎡当たりの成約単価は、首都圏平均71.90万円/㎡となっており、前年比で6.9%上昇した。
新築マンション市場と異なるのは、地域による上昇率の差異が小さいこと。東京23区の1㎡当たりの成約単価は、前年比5.4%上昇の105.71万円で首都圏平均の上昇率を下回る。コロナ禍の3年間で、首都圏中古マンションの成約㎡単価は約3割も上昇している。
上昇率は、2021年8.4%、2022年の12.4%、2023年6.9%となっており直近1年間が過去3年で最も低い。2024年は、中古マンション価格の上昇率がさらに鈍化するかもしれない。
2024年のマンション市場は東京湾岸エリアに注目が集まりそう?
新築マンション市場で供給増が期待できるのが勝どき・月島・晴海などの東京湾岸エリアだ。4月以降に始まる「HARUMI FLAG SKY DUO」の販売に加え2024年1月には、「グランドシティタワー月島」の第1期販売がスタート。「ザ 豊海タワー マリン&スカイ」の販売も2024年4月下旬に予定されている。
新規物件の豊富なラインアップは、中古マンション市場の活性化にもつながっていて「ブランズタワー豊洲」や「パークシティー豊洲」などランドマーク性の高い大規模タワーの中古物件は高値で取引されている。2024年は、千葉駅などでも大規模タワーマンションの供給が予定されており、周辺の中古価格に影響が出そうだ。
また、首都圏の新築戸建て市場は、成約物件価格が首都圏平均4,070万円と前年比1.4%下落で3年ぶりに前年を下回っている。成約件数は、前年比10.2%の伸びであるものの、東京23区も成約平均価格が6,086万円で1.6%の下落。マンションと戸建てが異なる動きであることには留意したい。
最新の首都圏新築マンション市況【2023年12月度】
次に、2023年12月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。2023年12月度は、首都圏新築マンションの販売が総じて低調だったということを表している。今後の動きに注意したいところだ。
首都圏の新築マンション市場動向2023年12月
2023年12月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べ218戸増加の5,975戸。契約率は、前年同月比8.7ポイントダウンの66.1%となっている。
また、首都圏新築マンションの1戸当たり平均価格は、前年同月比で25.4%アップの6,970万円。エリア別では、東京23区が前年同月比で8.9%アップの9,041万円。東京都下が5,143万円、神奈川県6,475万円、埼玉県4,784万円、千葉県4,930万円。東京都下のみが前年同月比でマイナスとなった。
販売在庫は6,287戸で、前月よりも1,472戸の増加。2023年12月末の販売在庫は5,919戸だったので、昨年対比で在庫がプラスとなった。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。
地域別で見ると、好不調の目安となる契約率70%を上回ったのは、千葉県のみ。ただし千葉県の供給戸数は、前年同月比で大きく減っている。
首都圏の中古マンション市況【2023年12月度】
続いて中古マンション市場を見てみよう。新築マンションとは異なり、2023年12月も好調な結果となった。
首都圏の中古マンション市場動向2023年12月
2023年12月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比3.7%上昇の2,941件と7カ月連続で対前年比プラスになっている。 成約価格は、前年同月比9.4%上昇の4,784万円。平均成約㎡単価も対前年同月比7.0%上昇の74.82万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、44カ月連続となる。
また、2023年12月の新規登録物件の㎡単価は、74.23万円となっていて前月よりも+2.2%、前年同月比で+1.7%となった。
2023年11月の新規登録件数は、対前年同月比で1.2%増加の14,744件。在庫件数は、先月よりも減少し46,528件となっている。前年同月比で11.7%増加しており高水準が続く。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが2023年夏以降は、鈍化している。
次に地域別の中古マンション動向を見てみてみよう。
2023年12月度の成約㎡単価は、千葉県以外は前年同月比でプラスに。前月比で見ると、マイナスの地域が目立つが、都下以外の成約件数は前年同月比で伸びており堅調さは維持されているとみていいだろう。
「徳川山」と称された歴史あるエリアに「リジェ代々木上原テラス」誕生
次に今月の注目マンション 「リジェ代々木上原テラス」を紹介する。
「リジェ代々木上原」は、小田急小田原線・東京メトロ千代田線代の々木上原駅から徒歩5分の、かつて徳川家が所有し「徳川山」と称された歴史あるエリアに建つ総戸数12戸の高級レジデンスだ。
「リジェ」は、大京が提供する分譲マンションブランドの中で最上位のブランドとして、立地を限定し最高水準のグレードを目指したシリーズ。本物件は、首都圏において21年ぶりの分譲となる。
敷地は、標高40.2mの高台の「第一種低層住居専用地域」に位置し、敷地の西側が低いため、閑静な住宅街を見渡す眺望や豊かな光と風を感じる開放感を享受できる。
敷地面積は、1,100㎡超もあり建物は、別荘のようなたたずまい。大きな開口部、ゆとりあるバルコニー、一部のルーフバルコニーにグリーンを施し、自然との調和をはかっている。
全戸玄関扉の横に各住戸専用の宅配ボックス「ライオンズスマートボックス」を導入している。駐車場は全12戸に対し、18台分の区画を確保し(設置率150%)、水平循環式の屋内地下機械式駐車場とすることで、風雨の影響を受けにくく、防犯性にも配慮。ハイルーフ車や電気自動車(EV)など多様な車種に対応している。
間取りは、全てタイプが異なる2LDK・3LDK(85.85㎡~214.37㎡)の12戸。リビングなど居室の天井高は2.65m超、サッシ高は約2.18mの広々とした空間設計を取り入れている。
高さ規制の厳しい第一種低層住居専用地域のマンションでは、実現しにくいゆとりがあるのが特徴だ。戸数規模を抑えたことで、住戸のプランニングにも無理がなく、各住戸の独立性も高い。1000㎡の敷地を有するのに、総戸数12戸と戸数規模を抑えたプランニングの成果と言えるだろう。
標準で海外製食洗機や大判タイル張りのバスルームを採用するなど、ハイグレードな設備仕様も魅力。建物は、断熱性能を高め、省エネを実現する「ZEH-M Oriented」仕様を採用し「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」による第三者認証を取得している。
既に一部の住戸が分譲済みで売れ行きは好調。戸数規模が小さく駐車場が150%という点も、高く評価されている。好調な売れ行きは、丁寧なプランニングの成果といえるだろう。
世界的な株高傾向もあり、富裕層の購買意欲は旺盛だ。「リジェ代々木上原テラス」のようなブランド立地の供給は限られており、こうしたプロジェクトは今後も注目を集めそうだ。
首都圏マンション市場では、先に動いたほうが有利な状況が10年以上続いている
マンションの価格は右肩上がり
「リジェ代々木上原テラス」に限らず、都市部の好立地マンションの売れ行きは堅調だ。日経平均株価は、3万6,000円を超え、バブル期の最高値に迫りつつある。首都圏中古マンション成約㎡単価の推移の過去10年間のグラフが示すように、価格は右肩上がりで先に動いたほうが有利な状況は、10年以上続いている。
必ずしもすべてのマンションが値上がりしているわけではないが、インフレ基調が続く中では、早めに動くのが得策だろう。
総務省が2024年1月30日に発表した住民基本台帳に基づく2023年の人口移動報告によれば、東京圏は12万6,515人の転入超過で前年比2万6,996人の拡大。うち東京23区は、5万8,489人の転入超過で2022年の転入超過数2万1,420人を大きく上回る。都市への人口回帰の動きは、今後の賃料や不動産価格にも影響するだろう。
住宅ローンの借り入れには慎重に
2024年で留意したい点は、大規模な金融緩和を続けている日本銀行の動向だ。2023年は、マイナス金利は維持したものの「10年物金利について上限1%をめどに」としたことで長期金利は上昇した。2024年には、マイナス金利を解除するとの見方もあり、多くの人が利用している変動金利も影響を受ける可能性がある。
将来的にゼロ金利が解除され金利が引き上げられれば、市場環境も大きく変わる。筆者が経験したバブル期は、「価格はどうせ上がるのだから、借りられるだけ借りたほうが得」という話をよく耳にした。
中古マンション価格が3年で3割上昇という急な価格上昇には、既視感を抱き、当時を思い出す。バブル崩壊後に行き詰まったのは、借入額が過大だった人や企業だ。購入資金に余裕がない人は、住宅ローンの借り入れには慎重になるべきだろう。インフレが進むということは、かつてのような金利のある時代になるということ。長期的な視点で、購入プランを立てることをおすすめしたい。
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