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大阪「中之島」エリアのマンションは”買い”か? 再開発が続く大阪有数のビジネス街の今後と、開業予定のなにわ筋線による影響とは

2024年8月1日公開(2024年9月10日更新)
杉山明熙:ライター

「中之島」エリアといえば、古くから大阪を代表するビジネス街として知られている。特に注目が集まり出したのは、2012年の大阪府市統合本部会議で、重点的に開発を推進する街の一つとして指定されたときだ。2031年に中之島を通る「なにわ筋線」が開業予定だという点も大きな影響を与えている。今回は、再開発事業が続く中之島エリアのマンション価値について分析する。(ライター、宅地建物取引士:杉山明熙)

中之島は古くから大阪の経済や行政の中心地

中之島の風景
大阪市北区にある中之島の風景(出所:PIXTA)

 中之島エリアは、大阪市北区にある堂島川と土佐堀川に挟まれた東西に長い中洲の地域である。周囲のエリアとは多くの橋でつながっており、「淀屋橋」や「天神橋」など架かっている橋が地域名として浸透しているところもある。

 中之島エリアには、大阪市役所や日本銀行大阪支店、大阪中之島美術館などの施設が立地しており、古くから大阪の経済・文化・行政の中心地として発展してきた。大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館など、戦前から残る歴史的建造物があるエリアとしても知られている。

レンガ造りの大阪市中央公会堂
レンガ造りの大阪市中央公会堂(出所:PIXTA)

 さらに、中之島エリアは周囲を川に囲まれた立地であることから、川辺空間が地域住民や観光客の憩いの場となっている。大阪が「水の都」と呼ばれるように、水辺の景色を楽しめるテラスやカフェなどが軒を連ねている。

 中之島東部に位置する中之島公園は、明治24年(1891年)に大阪市で初めて誕生した公園で、敷地内には芝生広場や野外劇場、図書館や美術館まである。また、中之島公園はバラ園が有名で、園内には約310種類、およそ3,700株のバラが咲いている。

中之島の発展の歴史と現在の姿

 中之島エリアの開発は、大坂の豪商である淀屋によって1600年代から始まった。江戸時代には各藩の蔵屋敷が立ち並び、面している堂島川や土佐堀川を利用して、全国各地から物資が集まるエリアであったことから「天下の台所」として栄えたのである。明治時代以降は、大阪のビジネスや商業の中心として発展し、現在のビジネス街の原型を作ってきた。

 古くから栄えてきた中之島だが、大阪の他のエリアと比べて、現在は評価されにくい一面もある。交通アクセスが、京阪中之島線「中之島」駅に直結しているのみで利便性がそれほど高くないためだ。

 また、ビジネス街の側面が強く夜間人口が減るため、飲食店が少なく観光客の呼び込みができていないことや、都心部にもかかわらず大型国際会議の開催が少なく、国際ビジネスの面が弱い点なども挙げられる。今の中之島で見られるのは、ビジネスマンの姿がメインである。

2031年に開業予定の「なにわ筋線」

 中之島エリア全体には、2008年に開業した京阪中之島線のなにわ橋駅、大江橋駅、渡辺橋駅、中之島駅の4駅が設置されている。京阪中之島線を利用すれば、JRと地下鉄が乗り入れている京橋駅や、京都の繁華街である京都河原町駅までアクセスできる。

 また、渡辺橋駅は土佐堀川を挟んだ地下鉄四つ橋線肥後橋駅と地下街を経由してつながっており、京阪中之島線で唯一、他の路線と地下通路により乗り換えができる駅だ。さらに、地下街を経由すれば、大阪を代表する街である梅田エリアまで徒歩で向かうことができる。

 そんな中之島エリアの交通アクセスだが、2031年開業予定の「なにわ筋線」により、さらなる利便性の向上が期待されている。今の京阪中之島駅がある場所になにわ筋線が乗り入れる予定で、大阪駅やJR難波駅と直接つながることになる。それにより、大阪府唯一の新幹線停車駅である新大阪駅や、関西国際空港へのアクセスが一層良くなるだろう。

なにわ筋線
2031年開業予定のなにわ筋線で利便性が向上する(出所:JR西日本「なにわ筋線路線図」)

中之島エリアのまちづくり方針とは

 中之島エリアでは、2025年の大阪・関西万博やなにわ筋線の開業と並行して、近年大規模な再開発事業が行われている。

 再開発事業が行われるきっかけになったのは、2012年の府市統合本部会議で取りまとめられた「グランドデザイン大阪」と「都市魅力戦略会議」で、「大阪・新大阪」や「なんば・阿倍野・天王寺」とともに、重点的に開発を推進するエリアとして、まちづくり方針が示されたことだ。

 中之島エリアの再開発事業は、まちづくりコンセプトを下記のようにエリアごとに設定している。

・3丁目:「グローバルアメニティビジネスゾーン」 
・4丁目:「ミュージアムコンプレックスゾーン」 
・5丁目:「グローバルコミュニケーションゾーン」 
・6丁目:「プレミアムライフゾーン」
中之島エリアの再開発事業のまちづくりコンセプト
中之島エリアの再開発計画(出所:中之島まちみらい協議会「中之島まちづくり構想について」)

 ここからは、大規模な再開発が続く中之島4丁目、5丁目、6丁目のまちづくりを紹介する。

ミュージアム機能を核とした中之島4丁目のまちづくり

 「ミュージアムコンプレックスゾーン」をコンセプトにした中之島4丁目では、2022年に新設された大阪中之島美術館をコアとしながら、国立国際美術館、大阪市立科学館とともにミュージアム機能の集積エリアとするまちづくり方針を示している。

中之島4丁目にオープンした未来医療Nakanoshima Qross
(出所:Nakanoshima Qross公式サイト)

 また、中之島4丁目では2024年6月に「未来医療」の産業化拠点である「Nakanoshima Qross」がグランドオープンした。未来医療とは、現在提供されている最先端医療よりもさらに先の医療のことを指す。

 Nakanoshima Qrossは3つの施設に分かれており、未来医療の共有を牽引する「中之島国際フォーラム」、実践のための「未来医療MEDセンター」、未来医療を創造する「未来医療R&Dセンター」で構成されている。

再開発エリアを3つに分けて事業を行う中之島5丁目

 開発面積約9.6haの中之島5丁目地区では、ホテルや商業、業務や住宅などのさまざまな機能が集積するエリアを形成する計画である。大阪市は2023年8月に中之島5丁目地区を「中之島5丁目地区計画」として原案を公表した。

 この計画では、開発地区をA、B、Cの3つに分けて開発するとしている。

中之島5丁目地区
中之島5丁目の地区計画(出所:大阪市「地区計画原案の概要 説明図2」)

 それぞれの土地利用の方針は、以下のとおりである。

・A地区
関西国際空港や新大阪駅等へのアクセスが可能ななにわ筋線新駅前の立地にふさわしい質の高い都市空間の創出や、国際競争力の強化やにぎわい創出に資する業務、商業、宿泊、居住又は情報・通信機能等の複合的な機能の導入を図る。

・B地区
既存の国際会議場施設などMICE機能(※)を活用するとともに、A地区との連携を図りながら、国際競争力の強化や国際交流拠点の形成に資する業務、商業、宿泊、居住又は医療機能等の複合的な機能の導入を図る。
(※MICE機能:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取ったビジネスイベントなどの総称)

・C地区
周辺環境に配慮・調和した教育機能の導入を図る。
(※引用:大阪市「中之島五丁目地区地区計画」)

 中之島5丁目の区画整理事業は、2025年度の完了予定である。まちびらきの予定時期は公表されていないが、2031年のなにわ筋線開業と時期を合わせることも予想される。

 また、「関西の迎賓館」として有名なリーガロイヤルホテル大阪が大規模改修され、2025年にリニューアルオープン予定となっており、今後も中之島5丁目の注目度が高まっていくだろう。

小中一貫校や中之島GATEターミナルで注目を集める中之島6丁目

 中之島エリアの西端である6丁目では、「働く・住まう・憩う・楽しむという多様なライフスタイルが享受できるプレミアアムライフゾーン」を形成するというコンセプトで再開発が行われる。

 中之島6丁目のまちづくりで注目を集めているのが「中之島GATEターミナル」の整備だ。「中之島GATEターミナル」は、2025年大阪・関西万博の来訪者を市内の観光拠点に誘客するための拠点としての枠割が期待されている。また、水辺のレストランや物販など、賑わいを創出する施設としての役割も目指しており、2025年4月の万博開幕までの完成を予定している。

中之島6丁目のまちづくりで注目を集めている「中之島GATEターミナル」
中之島6丁目で開発が進む「中之島GATEターミナル」(出所:大阪府「イメージパース」)

 さらに、中之島6丁目では2024年4月に大阪市立中之島小中一貫校が開校された。開校の背景には、大阪市内の高層マンションの建設が相次ぎ、教室不足が深刻化していることが挙げられる。

 学校には、屋上に設けられた人工芝のグラウンドや可動式の床で水深を調整できるプール、屋内にもグラウンドが設けられている。また、英語教育の充実や高性能パソコンを活用した学習などが行われ、子育て世代のファミリーからの注目度も高いと言える。

中之島エリアのマンション相場は? 

 ここからは、中之島エリアのマンション相場をみてみよう。

【中之島エリア 中古マンションの販売価格】

間取り 専有面積 交通 築年 階数 価格
3LDK 75.31㎡ 中之島駅徒歩2分 2017年10月 55階建て46階部分 1億4,300万円
3LDK 80.77㎡ 中之島駅徒歩2分 2017年10月 55階建て9階 1億3,800万円
2LDK 58.06㎡ 中之島駅徒歩2分 2017年10月 55階建て30階 1億1,500万円
2LDK 74.81㎡ 中之島駅徒歩4分 2009年8月 34階建て22階 1億1,000万円
※参考:住宅情報サイト「アットホーム」(2024年6月30日現在)

 中之島エリアの中古マンションは数が限られており、エリア内には「ザ・パークハウス中之島タワー」や「グランスイート中之島タワー」といった1億円を超える高級タワーマンションがほとんどだ。

 一方、中之島エリアと同じく、重点的に開発を進めるエリアとして指定されている梅田エリアのタワーマンションと比較してみた。

【梅田エリア 中古マンションの販売価格】

間取り 専有面積 交通 築年 階建 価格
2LDK 83.83㎡ 地下鉄梅田駅徒歩3分 2022年2月 56階建て37階 1億9,500万円
2LDK 75.63㎡ 地下鉄梅田駅徒歩3分 2022年2月 56階建て35階 1億7,500万円
1LDK 53.47㎡ 地下鉄西梅田駅徒歩4分 2023年12月 49階建て23階 1億5,000万円
※住宅情報サイト「アットホーム」を参考(2024年6月30日現在)

 どちらのエリアのタワーマンションも1億円を超える物件ばかりだが、今後の再開発における伸びしろや、なにわ筋線開業の影響などを考慮すると、中之島エリアのマンションは今狙うべきだと考えて良いのではないだろうか。

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中之島エリアのマンションは「買い」か?

 長きにわたり、大阪を代表するビジネス街として発展を続けてきた中之島エリア。2025年の大阪・関西万博や2031年のなにわ筋線開業、さらには2045年のリニア中央新幹線の開業に向けて大規模な再開発が行われており、国内外からも大きな注目を集めている。

 2024年にオープンした「Nakanoshima Qross」や、2025年整備予定の「中之島GATEターミナル」、再開発によるホテルやオフィスビル、商業施設などの建設が進めば、より幅広い層が訪れる街になるだろう。

 交通面では、なにわ筋線が開業することで中之島エリアから関西の主要都市、さらには日本全国へのアクセスが良くなることが期待されている。また、関西国際空港とのアクセス性向上は、観光客の誘致に大きな影響を与えるだろう。再開発による不動産価値の上昇を考慮すると、中之島エリアは関西の中でも”買い”エリアとして位置づけてもいいのではないだろうか。

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