「新大阪」エリアは、大阪でも有数のオフィス街として知られている。大阪で唯一、新幹線が停車する「新大阪駅」を有し、さらに2037年にはリニア中央新幹線駅の新設が予定されているため、今後ますます発展が予想されている。そこで今回は、西日本の交通・交流拠点を目指す新大阪エリアのマンション価値について分析する。(ライター・杉山明熙)
大阪だけでなく全国へのアクセスも注目の「新大阪駅」
新大阪エリアは、大阪の繁華街である梅田エリアの北に位置している。大阪で唯一新幹線が停車する「新大阪駅」を有しており、東京駅と博多駅までそれぞれ約2時間半、九州新幹線が全線開業したことで鹿児島までも直接アクセスできるようになった。
新幹線だけでなく、新大阪駅にはJR東海道線、JRおおさか東線、大阪メトロ御堂筋線が乗り入れており、大阪はもちろん、関西を代表する駅まで1本でアクセスできる。
JR大阪駅へ約4分、なんば駅約15分、三ノ宮駅約35分、京都駅約25分というアクセスの良さが魅力だ。さらに、主要空港へのアクセスも良く、関西国際空港まで約1時間、大阪国際空港(伊丹空港)まで約40分で行けるため、飛行機を利用する人にも重宝される駅である。
近年注目すべきは、2037年開業予定(2024年現在)のリニア中央新幹線だ。新大阪駅にリニア中央新幹線が通れば、東京-大阪間を約1時間で行き来できるようになるという。そうなれば、ビジネス効果だけでなく観光需要も創出され、大規模な経済効果が見込まれるだろう。
新大阪は、ビジネス街と居住エリアが共存する街
新大阪駅は、大阪で唯一新幹線が停車する駅のため、「大阪の玄関口」と呼ばれることがある。新幹線を降りた人が、新大阪駅を経由して大阪の主要駅へアクセスすることから、そう呼ばれているのだ。
大阪で乗降者数が最も多いのは大阪駅なのだが、なぜ新幹線の停車駅にならなかったのだろうか。それは、新幹線駅の新設には広大な土地が必要であり、すでに複数の路線が乗り入れている大阪駅よりも、当時貨物線が中心で土地にゆとりがあった新大阪駅の方が適していたからだといわれている。
実は、「新大阪」という地名はない。3km先には大阪駅があることを考えると、新大阪駅を中心にした約1kmの範囲が新大阪エリアと言っていいだろう。そんな新大阪エリアは、大阪屈指のビジネス街として知られている。
新大阪駅前には高層ビルやビジネスホテルが立ち並んでおり、ビジネスマンが多く行き交うエリアだ。また、大阪は観光地としても魅力が多いエリアのため、駅前には多くの外国人観光客の姿も見受けられる。
新大阪エリアの特徴として、オフィス街とともに居住エリアが共存しているという点が挙げられる。駅前にはオフィスビルや雑居ビルが多いが、駅から少し離れれば公営住宅や分譲マンション、住宅が立ち並んでいることがわかる。
新大阪駅から徒歩15分の場所には市営住宅である新三国住宅があり、その周辺にも分譲・賃貸マンションが多く存在する。また、生活に欠かせないスーパーやコンビニも点在している。
新大阪駅近くには、小中学校や高校、公園が多いことも特徴の一つである。街を歩いているとランドセルを背負った子どもや部活帰りの学生の姿が多く見られた。学校が多く、子育て世代がたくさん住んでいることも、新大阪エリアの魅力だと言える。
2037年、リニア新駅開業に向けてのまちづくり方針
大阪府は、2037年のリニア中央新幹線開業を見据えて、2022年6月に「新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域まちづくり方針2022」を取りまとめた。これは、大規模なまちづくりによって、新大阪エリアを「世界有数の広域交通ターミナル」として開発する方針のことだ。
新大阪エリアのまちづくり方針では、新大阪駅周辺地域が担うべき役割として、以下の3点が掲げられている。
(2)広域交通ネットワークの一大ハブ拠点(交通結節機能)
(3)関西・西日本・アジアのゲートウェイ(都市空間機能)
引用:新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域検討協議会「新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域まちづくり方針の骨格(素案)」
まちづくりの対象地域はかなり広く、新大阪駅周辺を中心に、直近の鉄道の交通結節点である阪急・十三駅周辺、阪急・淡路駅周辺を含めた範囲が検討されている。いずれも、新大阪エリアからはやや離れた場所に位置している。
十三駅周辺は、商店街などの昔ながらの風情ある空間が残っているエリアだ。すぐ近くにある淀川では、毎年大変な賑わいを見せる「淀川花火大会」が開催されたり、バーベキューなどのイベントが行われたりしている。淡路駅は、土地区画整理事業や連続立体交差化事業を経て区画の整った街として賑わっており、駅前の商店街を中心に居住空間が共存しているエリアである。
【再開発の検討対象地域】
大阪府と大阪市では、新大阪エリアを世界有数の広域交通ターミナルとするために、「駅から街への空間の演出」や「高速バス拠点化」「大規模な交流施設や広域交通結節施設として人の空間の拡充」を目指している。いわば、東京・品川の「高輪ゲートウェイシティ」のように、交通・ビジネス・居住などの都市機能を整備し新たな国際交流拠点を築くプロジェクトといえるだろう。
2024年5月時点では、具体的な内容やスケジュールはまだ決まっておらず、まちづくりに関する協議が進められている状況だ。現状で考えられているのは、西日本最大の交通ハブ拠点としての機能を高めるための空間整備(新駅の開業、歩行者空間の拡充、バス停の集約など)や、MICE機能を備えた(大規模会議・イベントを開催会場)施設の建築、などだ。
10年以上先であるリニア中央新幹線の開業を見据えた長期的なまちづくりのため、今後のアイデアや方針に注目したい。
淀川や神崎川による水害リスク
大規模な地震があれば、津波被害が発生する可能性がある。そのため、海に面していることに加え、河川が多く流れている大阪では、マンション購入の際に災害への備えを確認しておくことが重要なポイントである。
新大阪エリアがある大阪市淀川区では、淀川、神崎川・天竺川・高川の氾濫、高潮および内水氾濫による浸水と南海トラフ巨大地震による津波浸水が想定されている。以下は、淀川区で公表されている、河川別の水害ハザードマップだ。
【淀川水害ハザードマップ】
【神崎川・天笠川・高川 水害ハザードマップ】
また、南海トラフ巨大地震が発生した場合の、津波被害のハザードマップも用意されている。
【南海トラフ巨大地震が発生した場合の津波被害ハザードマップ】
この水害ハザードマップによると、淀川近くの十三駅や新大阪駅の南側エリア、神崎川近くの三国駅や神崎川駅近くで浸水の深さ0.5〜3m未満、3〜5m未満が多い。そのため、このエリアでのマンション購入を考える際は、3階以上のマンションを選ぶことが望ましい。
ただし、このエリアには高層ビルが多く立っているため、大阪市が指定している「津波避難ビル」が多いのは安心材料だろう。津波や河川氾濫から身を守るためにも、このエリアに住む際は「津波避難ビル※」の位置を把握しておくことが重要だ。
※津波避難ビルとは、大阪市が指定する津波や洪水(河川氾濫)時の緊急的な避難先で、堅固な高層建物の3階以上の階などのこと。津波避難ビルは2024年4月現在、大阪市全体で約3,000棟が指定されている。
新大阪エリアのマンション相場はどうなのか
ここからは、新大阪エリアのマンション相場を見てみよう。
新大阪エリアの新築マンション相場
新大阪駅周辺で販売予定の新築マンション「ラシュレ新大阪URBAN CROSS」は、2LDK(60.41㎡)で4,990万円、3LDK(63.07㎡)で5,910万円となっていた。新大阪駅から徒歩11分の立地だ。現在、この周辺で販売予定の新築マンションはこの1物件のみ。
参考に、JR東海道線で1駅隣の場所にあるJR大阪駅周辺の新築マンション価格と比較してみよう。
大阪駅から徒歩5分の場所にできる超高層マンション「梅田ガーデンレジデンス」は、2LDK(60.71㎡)で8,900万円、3LDK(79.74㎡)だと1億5,000万円。こちらは高級マンションなので一概に比較はできないが、大阪駅から徒歩14分の「シエリアタワー大阪福島」は2LDK(60.55㎡)で7,360万円であった。その他の物件についても、2LDKはおおむね7,000万円台が相場となっている。
新大阪エリアの中古マンション相場
新大阪駅にある3LDKの中古マンション相場は2,766万円、4LDK以上が3,538万円となっている(2024年4月現在)。交通アクセスが良く便利な立地の割に、比較的購入しやすい金額で推移しているのは、築年数が40年を超えるマンションが多く立っているという理由が考えられる。
【新大阪駅周辺エリア 中古マンションの販売価格】
間取り | 専有面積 | 交通 | 築年数 | 階建 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
2LDK | 59.68㎡ | 新大阪駅徒歩8分 | 築4年 | 14階建て14階部分 | 3,980万円 |
3LDK | 68.95㎡ | 新大阪駅徒歩4分 | 築22年 | 14階地下1階建て5階部分 | 4,280万円 |
3LDK | 73.13㎡ | 新大阪駅徒歩10分 | 築18年 | 15階建て5階部分 | 4,480万円 |
3LDK | 75.90㎡ | 新大阪駅徒歩8分 | 築10年 | 12階建て10階部分 | 4,798万円 |
※住宅情報サイトアットホームを参考(2024年4月23日現在) |
では、大阪駅周辺の中古マンション価格はどうだろうか。
【大阪駅周辺エリア 中古マンションの販売価格】
間取り | 専有面積 | 交通 | 築年数 | 階建 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
1SLDK | 60.28㎡ | 大阪梅田駅徒歩7分 | 築10年 | 11階建て10階部分 | 5,800万円 |
3LDK | 59.68㎡ | 東梅田駅徒歩9分 | 築8年 | 13階建て2階部分 | 6,480万円 |
※住宅情報サイトアットホームを参考(2024年4月23日現在) |
このように、新大阪駅と大阪駅周辺のマンションを比較すると大きな価格差が見られた。都心に近いにもかかわらず、マンション購入のハードルが低いのが新大阪エリアの特徴だと言える。
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新大阪エリアのマンションは「買い」か?
関西有数のオフィス街、そして大阪の玄関口として発展を遂げてきた新大阪エリア。リニア中央新幹線の計画や「世界有数の広域交通ターミナル」の実現に向けて、新大阪エリアが現在大きな注目を集めている。
しかし、国内外からの注目度が高い新大阪エリアであっても、隣接する大阪駅のマンションに比べるとまだまだ手頃感がある。さらに、オフィス街と居住エリアの共存により、子育て世代やビジネスマンからの人気も依然高いままだ。
そして忘れてはいけないのが、関西の主要エリアへのアクセスの良さである。大阪はもちろん、京都や神戸へのアクセス力の高さは大阪随一だと言える。リニア中央新幹線開業計画を中心に、世界的な一大ハブ拠点を目指し再開発が行われる新大阪エリアは、大阪の中の”買い”エリアと位置づけてもいいのではないだろうか。
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