2024年9月の関西・中部圏のマンション市場(※11月現在では9月データが最新となる)は、先月に引き続き全体として好調を維持している。今月も関西・中部圏の新築マンション市場動向のほか、中古マンションの市況、注目のマンションなどについて解説する。さらに10月に発表された「近畿圏新築分譲マンション市場動向2024年度上半期」(株式会社不動産経済研究所)データについて分析する。
近畿圏新築分譲マンション市場動向2024年度上半期結果
株式会社不動産経済研究所は、近畿圏の新築分譲マンション市場動向2024年度上半期(2024年4月〜2024年9月)を発表した。主な指標を2023年度上半期と比較しながらまとめてみる。
近畿圏 新築分譲マンション市場動向 2024年度上半期
すべての指標で前年同期比を上回る結果となった。発売戸数は4.1%増の6,612戸で3年ぶりの増加、これに加え定期借地権付マンションが339戸供給されている。ただし、2010年代(2010年〜2019年)の平均値(10,047戸)を大きく下回る水準だ。10年前と比べて用地取得が難しくなっている現実がうかがえる。
契約率は75.5%と2年連続の70%台、1戸あたりの価格も5,393万円(14.8%アップ)、㎡単価も88.3万円(12.8%アップ)。価格は5年連続のアップ、㎡単価は4年連続のアップ。
特に価格はバブル期の1991年度上半期(5,436万円)に迫る高値となった。大阪市内の高額タワーマンションの影響が大きいとみられる。
関西・中部圏の新築マンション市況【2024年9月】
2024年9月の関西・中部圏の新築マンション市場は、おおむね好調に推移している。関西エリアでは戸当り価格、㎡単価ともに3割近く上昇しているにもかかわらず契約率は80.8%と好調を維持している。関西・中部圏の新築マンション市況について、詳しく見ていく。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
2024年9月の関西の新築分譲マンションデータ
2024年9月の新築分譲マンション発売戸数は1280戸、対前年同月比8.1%ダウン、対前月比102.5%アップ。2カ月連続で前年同月を下回った。
契約率は80.8%、前年同月比0.3ポイントアップ、前月比では8.6ポイントアップと、4カ月連続で70%超え。平均価格は5,841万円、㎡単価は98.2万円で、ともに2ケタアップとなった。戸当り平均価格、㎡単価ともに9月としては調査開始(1973年)以降の最高値を更新している。
未販売在庫数は9月末時点2367戸、前月末比23戸の減少となった。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。
平均価格をエリア別にみると、大阪市内の平均価格は前年同月比91.3%アップの6,732万円、㎡単価では60.7%アップの142.4万円。大規模タワーマンションの供給により大阪市部の価格・単価が大幅に上昇した。
神戸市の平均価格は8,217万円、前月に続き価格の高さが目立つ。神戸市は㎡単価でも100万円を超えている。
なお、2024年10月の発売戸数は1,200戸程度の見込みとなっている。2023年10月の発売戸数は1,293戸だった。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
愛知県を中心とした中部エリアについては、新築マンションの月別データはない。今回は、代わりに国土交通省が9月に発表した2024年7月時点の都道府県地価(基準地価)の動向を参照する。基準地価は、「全用途」「住宅地」「商業地」の動向を反映したものであり、ここでは「全用途」のデータを用いる。
全国平均では1.39%上昇している中で、中部エリアでは愛知県が2.8%、石川県が0.05%、三重県が0.01%、それぞれ上昇したが、他はわずかに下落した。
石川県は北陸新幹線敦賀延伸による効果で金沢市と白山市で上昇したが、一方で能登半島地震での被災エリアとなった能登地域が住宅地、商業地とも大きく下落した。輪島市では最大で17%の下落がみられ、下落率で全国1位となった。
石川県内で地価の二極化が起きているが、全国的に見ても大都市圏は上昇率が高く、地方ほど伸び悩み、または下落する状況が続いている。
今後の地価に影響を与えそうな材料のひとつに金利がある。住宅ローンの変動金利は上昇モードにあるが、都道府県地価調査の基準日は7月1日であり、日銀の追加利上げ決定など7月以降の金利動向は反映されていない。
住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
関西・中部圏の中古マンション市況【2024年9月】
次に中古マンションの市況を見ていく。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
近畿圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年9月】
近畿圏の中古マンション成約件数は前年同月比プラス6.4ポイント増、4カ月連続で前年同月を上回った。
新規登録物件数も21ヶ月連続で前年同月を上回った。成約㎡単価は15カ月連続で前年同月を上回り、引き続き高額な中古マンションに対する強い需要がみられた。
新規登録㎡単価は4カ月連続で前年同月を上回り、その上昇率は成約㎡単価を上回る。
成約件数をエリア別にみると、大阪府北部(池田市・箕面市・豊中市・吹田市・摂津市など)、神戸市、阪神間(尼崎市・西宮市・芦屋市・宝塚市・伊丹市)、京都市などが2ケタ増となり、主力エリアを中心に中古マンション市場の取引は活発に推移した。一方、兵庫県他(神戸市と阪神間を除く兵庫県内)と京都府(京都市を除く)では前年同月比で2ケタ減少。
成約㎡単価は大阪市と大阪府東部(門真市・守口市・枚方市・寝屋川市・東大阪市など)、奈良県は2ケタ上昇となった。大阪市は15カ月連続で上昇し、依然として高額物件に対するニーズが続く状況にある。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏(関西)の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。
公益社団法人近畿圏不動産流通機構発表「マンスリーリポート No.142 2024年10月号」をもとに編集部が作成
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
中部圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年9月】
成約件数は前年同月比3.4%ダウン、成約価格も平均で2,299万円と前年同月比3.5%ダウン。平均成約㎡単価と新規登録㎡単価もダウンという結果になった。成約状況・登録状況ともに専有面積の減少と築年数が古くなったことが原因のひとつとして挙げられる。
成約状況の専有面積は前年同月比0.86㎡減少、築年数は0.85年古くなっている。エリア別にみると、取引のメインとなる愛知が全体の傾向とほぼ一致している。
今月の注目のマンション (仮称)北浜タワーPJ
次に、今月の注目マンション「(仮称)北浜タワーPJ」を紹介する。東京建物株式会社は、大阪市中央区今橋1丁目(元「アーク北浜ビル」)に地上31階、高さ107mのタワーマンションを計画している。
ネーミングは「Brillia Tower 大阪北浜」となるかもしれない。
交通ロケーションについて
「(仮称)北浜タワーPJ」の交通ロケーションは、
・京阪本線「北浜駅」徒歩2分
※筆者の計測によります。エントランスの位置などにより変わることがあります。
現地の様子は
「(仮称)北浜タワーPJ」現地は解体後の更地で、現地看板によれば2025年5月下旬に着工し、2028年2月下旬に竣工する(予定)。
接道は北側と西側と南側の3方向道路、東側は10階建てビルが隣接している。
南側約80mの位置には、54階建て209mのThe Kitahama(ザ・キタハマ)がある。
南西側交差点の先には現在「三井住友銀行大阪中央支店ビル新館」があるが、建て替え計画があり、地上30階、高さ約143mの高層ビルを建設予定だ。
北側には道路を挟んで「大阪市立開平小学校」がある。
全体的な眺望でいうと、南西方面はこれから建つ高層ビルなども含め厳しくなるが、北・東方面は比較的良さそうだ。
「(仮称)北浜タワーPJ」予想価格は
「(仮称)北浜タワーPJ」の販売価格はいくらになるだろうか。現在北浜駅周辺に新築マンションは分譲されておらず、近くに物件はない。
ただ中古マンションの供給は比較的多い。
すぐ近くの中古物件は以下のような価格となっている。
・北浜駅徒歩4分のタワーマンション(総戸数311戸、築6年、
・同タワマンの6階、面積76.25m²で1億3,600万円(
・同タワマンの39階、面積96.47m²が2億5,
北浜エリアは供給が多くないため、特にタワーマンションの眺望が良い住戸はかなり強気の設定をしている。「(仮称)北浜タワーPJ」でも想像以上の高額住戸もありそうだ。
現時点ではプランの設定がわからないが、低層階でも坪単価で600万円前後、1LDKでも1億円近くまでいくかもしれない。高層階で3LDKなら3億円くらいはありえる価格帯になりそうだ。
まとめ
関西・中部圏の新築マンション市場動向および中古マンションの市況は好調といえる状態が続いている。
大阪市内では市街地での大規模タワーマンションの計画が増加しており、今後も高額物件の供給が続きそうだ。一方で名古屋市を含む愛知県を中心とする中部圏エリアでの不動産価格は落ち着きを見せている。リニア開業を控えている割には首都圏や関西圏のように高騰しない愛知県の現状については、次月で分析してみたい。
※関西圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県エリア
※中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県エリア
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