最新の新築マンション最新市況はどうなっているのか? 新築マンションに詳しい住宅評論家・櫻井幸雄氏が、最新の価格相場、売れ行き、人気物件について解説する。今回の調査からは、一部の都市物件に集中していた人気が、郊外を含めた幅広いエリアに分散されるという傾向が見られた。(住宅評論家・櫻井幸雄)
最新の新築マンション市況は?【2023年8月版】
継続的に行っている「新築マンション人気調査」の最新版がまとまった。
今回の調査期間は、2023年4月1日から6月30日まで。新年度が始まってからの3カ月間である。
この期間中、5月8日に新型コロナウイルスが感染症の5類に移行。マスクの着用は個人の判断に任されることとなり、3年間続いたコロナ禍にひと区切りがついた。
その後、来日観光客が増え、日本人の国内旅行も増加。経済活動が上向いたことを感じさせるニュースが続いている。
新築マンション発売戸数が減り、人気マンションの数も減少
では、マンション市況はどうか。
新規分譲マンションに関しては、「この5月から一気に回復」という状況にはない。というか、マンション販売に関しては、コロナ禍で販売戸数が落ち込んだ、という事実はなかった。落ち込むことがなかったので、回復するという状況もなかったのである。
2020年春から始まったコロナ禍でも新築マンション価格は上がり続けたし、値段が上がっても、販売は好調だった。だから、この5月から上向くこともなかったのであるが、逆に、下がったのではないか、とも思える状況が生じている。
そのことを示すように、人気物件と認定されるマンションの数が減っている。
1年前の2022年4月から6月期で、人気物件と認定される「人気倍率1.0以上」の新築マンションは全国で192物件あった。その半年後、2022年10月から12月期の人気物件数は136物件に減少。それが、今回調査では118物件まで下がったのである。
これは、新規発売物件数が減ったことと無縁ではないだろう。
以下は、2023年1月から6月まで、首都圏における毎月の新築マンション発売戸数と、前年同月比の増減率。不動産経済研究所の調べである。
首都圏における毎月の新規発売戸数と前年同月比の騰落率(実際には減少率)を並べてみると、いかに新規に発売されるマンション戸数が減っているかがわかる。
このままいけば、年間発売戸数が3万戸を切った2022年度の2万8632戸よりもさらに少なくなることが予想される。年間で2万4000戸や2万3000戸の水準まで下がることもありそうだ。
1999年から2005年まで毎年8万戸以上のマンションが発売されたのと比べると驚くべき少なさなのである。新規に発売されるマンションの戸数が減った。それは、否定できない事実だ。では、なぜ減ったのか。今回は、そこから人気マンションの分析を始めたい。
価格上昇期に新規発売戸数が減るのは、当然の現象
この数年、新築マンションの価格は上がり続けている。そのなか、新規発売戸数が減っている。それは、価格上昇で購入者が減ることを不動産会社が覚悟しているからだろう。
マンションが高額化すれば、どうしたって販売のスピードが落ちる。そうなってもよいように、不動産会社は発売戸数を減らす。数を減らして、じっくり売っていこうと考える。
だから、新築マンションの売れ行きが落ちたからといって、簡単に値下げは行わない。これが、マンション市況の基本的な動きとなる。
ここ数年、新築マンション価格が上がった理由として、建設費の上昇がある。建設費が上がった影響で、マンション価格が上がったのであれば、売れ行きが落ちても、価格を下げることはできない。売れ行きが落ちることを見越して、発売戸数を減らし、じっくり時間をかけて売って行こうという不動産会社の方針は理にかなっているといえる。
一方で、新規発売戸数が減ることによる購入者への影響もある。それは、「むしろ決断がつきやすい」ということだ。
多くの物件を見ずに決断する購入者
マイホームを購入するときは、少しでも多くの物件を見て、比較検討したほうがよい、と言われてきた、その結果、マンションの販売センターは、3つとか5つ見るのが当たり前。10物件くらい見る人が多い時期もあった。
しかし、今、新築マンションを買う人の「販売センター巡り」は極端に少ない。見学は2つか3つ……実際には1つ目の物件で購入を決意しているのだが、念のため「買わない」と決めている物件も「一応、見ておこう」という人もいる。
そもそも新規販売されるマンションの数が少ない。予算と住戸の広さ、都心までの距離を勘案すると、本気で検討する物件はさらに減る。
候補はせいぜい5物件。それらの情報をインターネットサイトやネット情報で研究すれば、本命を絞り込むことができる。だから、2つか3つの販売センターを回れば十分なのである。
投資目的で都心マンションを購入する場合、購入慣れしている人が多いので、さらに比較検討する物件数が少ない。検討する物件が少ないーーこれは、購入者にとって不幸な状況と思われがちだ。ところが、この状況は、購入者に「迷わなくてよい」という恩恵をもたらす。
新規に売り出される新築住宅が少ないときのほうが、購入の決断はつきやすいのだ。
それが幸運と呼べるかどうか、議論が分かれるところだろう。しかしながら、選択肢が多く、目移りして決断できない状況を「不幸」と感じる人は多い。決断したい時期なのに、どうしても決断できないからだ。
その点、物件数が少ない今は決断がつきやすい。買う側にとって、悪くない状況なのである。
「物件をそれほど多く見なくても、決断がつく」時期であるため、販売センターをいくつも回る人が減った。それは、販売センター来場者数と資料請求数で算出する人気倍率が総体的に下がることを意味する。
以上の動きが出たため、新規発売されるマンションが少なくなり、人気物件も全体的に減ったと考えられる。このような状況を踏まえた上で、今回の人気マンションを分析したい。
販売中の人気マンションは、東京23区内山手線外側立地
前回調査時、爆発的人気物件と判定される「人気倍率10.0倍以上」のマンションは0だった(その前は2物件あった)。それが今回は1物件出た。それを含め、人気物件の中でも、特に人気が高かったマンションの名前を挙げたい。
「準都心」と位置づけられる立地のマンションが高倍率を獲得
今回調査で、全国で最も高い人気倍率を記録したのが、東京都世田谷区の「パークホームズ深沢七丁目」(三井不動産レジデンシャル)の人気倍率「21.5」だ。続いて、東京都江東区の「リビオ森下リバーテラス」(日鉄興和不動産)が人気指数「7.1」と続く。
【完売】パークホームズ深沢七丁目
- 価格
- 9,890万円〜2億1,390万円
- 完成時期
- 2023年5月下旬竣工済
- 愛知県名古屋市中村区中島町2丁目42番1、中島町3丁目1番、則武本通3丁目43番1(地番)
- 東海道本線 「名古屋」駅 徒歩10分 (太閤通口)
- 間取り
- 2LDK~3LDK
- 専有面積
- 65.87~100.82㎡
- 総戸数
- 31戸(販売は27戸)
- 売主
- 三井不動産レジデンシャル
- 施工会社
- 川口土木建築工業株式会社
※データは2023年8月29日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
【完売】リビオ森下リバーテラス
- 価格
- 4,300万円〜1億5,900万円
- 完成時期
- 2024年5月予定
- 東京都江東区新大橋一丁目6番6(地番)
- 都営新宿線・都営大江戸線「森下」駅徒歩5分
- 間取り
- 1LDK~4LDK
- 専有面積
- 32.94~86.28㎡
- 総戸数
- 27戸
- 売主
- 日鉄興和不動産
- 施工会社
- 新日本建設株式会社
※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
いずれも、23区内ではあるが、山手線の外側立地。純粋な都心部ではなく、「準都心」と位置づけられる立地のマンションである。その分、価格は若干抑えられ、「パークホームズ深沢七丁目」は、約65㎡の2LDKが9890万円から、「リビオ森下リバーテラス」は約32㎡の1LDKが4300万円台からの設定だ。
2つのマンションは、最寄り駅、駅からの距離から見て、投資向きというより実需(自ら住む目的の購入者)向きの物件となる。実需層には、それくらいの価格が上限となる。だから、人気物件になっていると考えられる。
23区内では、1LDKが5600万円台からの設定となる「リビオ北品川リバーサイドテラス(倍率4.1)」や2LDKタイプが4798万円からの「プレディア西葛西(倍率3.6)」も高倍率マンションとなっているのだが、それらも実需向きマンションとなる。
住宅地系の場所に建設されるマンションが目立つ
東京市部で最高倍率となった「ザ・パークハウス 聖蹟桜ヶ丘」(倍率2.5)、神奈川県で最高倍率となった「ザ・パークハウス大倉山」(倍率2.5)、埼玉県で最高倍率の「Brillia 南浦和」(倍率3.0)、千葉県で最高倍率の「パークホームズ南船橋」(倍率3.9)だ。
23区内の人気物件と同じく住宅地系の場所で、納得感のある価格設定で人気を高めている。
値上がり期待ではなく、無理なく購入でき、住み心地重視の購入者が地道にマンション選びをしている様子を彷彿させる。
普通の人が普通に購入できるマンションが、人気を集めているわけだ。
首都圏以外の人気マンション
普通の人が普通に購入できるマンションが目立つのは、首都圏以外の場所でも見られる傾向。駅近の超高層マンションよりも、駅から5分以上歩いた場所で、中層・高層のマンションが目立ち、抑えた価格設定のマンションが数多くランクインしている。
たとえば、愛知県の名古屋では名駅周辺の超高層ではなく、栄エリアに近い「ローレルコート久屋大通公園」が倍率3.1になった。
大阪市内の「ローレルコート上本町五丁目」(倍率2.2)は、近鉄の大阪上本町駅まで徒歩1分の好立地ながら、2LDKが5018万円からの設定だ。
京都市中心部で最高倍率となったのは「ライオンズ鴨川東」で、倍率5.2。京都市民の間で「鴨川」の人気は高く、全国的にも高い倍率となった。
「ライオンズ鴨川東」マンションは価格未定。それに次ぐ倍率となった「パークホームズ四条河原町」は1LDKが5090万円からの設定で、「京都中心地のマンション」としては価格が抑えられている印象がある。そのせいか、京都市内では6物件が高倍率マンションとしてランクインしている。
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販売目前の物件で注目したい「杉並区」
今回調査の締め日となった6月30日時点でまだ販売センターを開けておらず、資料請求しか受け付けていないマンションの倍率を計算するのが、販売目前の人気倍率だ。
人気倍率「18.0」の「サンウッド浜田山」は即日完売か
この調査では、総戸数に対し2倍以上の資料請求が来たマンションを「人気倍率2.0」と算出し、販売前の人気物件と認定している。
販売目前の人気物件のなかで、今回最高倍率を出したのが「サンウッド浜田山」。人気倍率は18.0倍と驚異的な数字で、即日完売の可能性が高い。
実は、半年前の調査でも最高数値となったのは杉並区のマンション、「プラウド阿佐谷南二丁目」だった。同マンションは販売前の人気倍率57.4倍と、短期間に完売している。
前回も、杉並区の人気復活について解説したが、今回調査でも、杉並人気の高さが証明されたかっこうだ。
このほか、販売目前倍率が9.3となった「プレミスト千葉公園」や倍率7.0の「シティタワーズ板橋大山ノースタワー/サウスタワー」、「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」(倍率5.4)、「リビオレゾン横濱綱島」(倍率5.0)、「プレミスト昭島モリパークレジデンス」(倍率4.7)などが、首都圏で特に人気倍率の高いマンションとなった。
サンウッド浜田山(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2024年7月中旬
- 東京都杉並区浜田山3丁目936番35(地番)
- 京王井の頭線「浜田山」駅2分
- 間取り
- 1LDK〜3LDK
- 専有面積
- 35.04~70.57㎡
- 総戸数
- 47戸
- 売主
- サンウッド、京王電鉄
- 施工会社
- 松井建設株式会社東京支店
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
プレミスト千葉公園(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2025年1月予定
- 千葉県千葉市中央区弁天三丁目420-3(地番)
- JR総武線・総武線快速「千葉」駅まで徒歩9分他
- 間取り
- 3LDK~4LDK
- 専有面積
- 66.08~87.95㎡
- 総戸数
- 150戸
- 売主
- 大和ハウス工業、京成電鉄
- 施工会社
- 株式会社長谷工コーポレーション
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
リビオレゾン横濱綱島(物件詳細はこちら)
- 価格
- 3,900万円〜7,500万円
- 完成時期
- 2024年6月予定
- 神奈川県横浜市港北区綱島西三丁目132番(地番)
- 東急東横線「綱島」駅徒歩8分他
- 間取り
- 1LDK~3LDK
- 専有面積
- 33.30~63.42㎡
- 総戸数
- 30戸
- 売主
- 日鉄興和不動産
- 施工会社
- 風越建設株式会社
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
首都圏以外の人気物件は?
首都圏以外では、沖縄の「ザ・ライオンズ北谷伊平」が人気倍率「8.2」を記録。海が近い北谷でも伊平エリアは山側に位置し、リゾート色は薄い。一方で価格が抑えられるため、地元の実需層に人気がある。
そんな場所のマンションが注目されているのだから、地方でも「普通の人が普通に購入できるマンション」の人気が高まっているのだろう。
販売前の人気倍率6.9の「ブランズ伏見桃山」は京都市内の住宅地系の場所で、商業施設との一体開発のマンション。商業施設が隣接し、買い物の便利なマンションは日本中どこでも人気が高いのだが、近年、その人気ぶりに拍車がかかっているように感じる。
ザ・ライオンズ北谷伊平(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2024年4月(予定)
- 沖縄県中頭郡北谷町伊平1丁目12番1
- 琉球バス読谷線「伊平」バス停より徒歩5分琉球バス読谷線「伊平」バス停より徒歩5分
- 間取り
- 2LDK〜3LDK
- 専有面積
- 59.28~83.64㎡
- 総戸数
- 38戸
- 売主
- 大京
- 施工会社
- 株式会社大城組
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
ブランズ伏見桃山(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2024年7月予定
- 京都府京都市伏見区大阪町587、御堂前町616番1、618、新町四丁目465番6(計4筆)
- 京阪本線「伏見桃山」徒歩4分
- 間取り
- 1LDK~4LDK
- 専有面積
- 39.18~90.50㎡
- 総戸数
- 114戸
- 売主
- 東急不動産
- 施工会社
- 大豊建設株式会社
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※データは2023年6月30日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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