以下は、2020年10月の新築マンション最新市況です。
2020年10月の新築マンション最新市況はどうなっているのか? 新築マンションに詳しい住宅評論家・櫻井幸雄氏が最新の価格動向、人気物件について解説する。櫻井氏は「コロナ禍でも、もともと購入しようと考えていた人は購入を断念したりしない。ただ、ウィズコロナを意識した郊外大規模物件と中心地でも山手線外側の物件に人気が集まっている」と話す。
2020年6月から3カ月間の人気新築マンションを調査
コロナ禍による緊急事態宣言が解除され、閉鎖されていた販売センターが営業を再開したのは6月に入ってから。それ以降、各販売センターには、想定以上の来場者が集まってきたことは、すでに7月の市況レポート(次ページ)で報告したとおりだ。
「コロナ禍でマンションが売れなくなるのでは?」という予想から、「暴落が始まる!」といった予言まで出たが、すべてはずれたことになる。
では、6月以降「ウィズコロナ」の暮らしが模索され始めた時期に、どんなマンションが人気となったのか。
なかなか報道されることがない、リアルタイムのマンション市況を調査した。
この調査は、全国から人気マンションを見つけ出すもので、2013年から継続的に実施。週刊ダイヤモンド別冊などで発表を続けてきた。今回の調査期間は、6月1日から8月31日までの3カ月間。まさに、緊急事態宣言が明けてからの人気マンションを調査した。
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6月以降、人気マンションの数は想像以上に増えている
「現在販売中のマンション」で、人気物件を探す目安となる数値(倍率)は、3カ月間の販売センター来場者数とインターネットサイトからの資料請求数を基に算出している。
簡単に言うと、総戸数に対して多くの人が来場し、資料請求をしたマンションは人気がある、と判定。以下の計算方法により「販売中マンション(モデルルーム公開中)」の場合、「人気倍率1倍」以上が人気マンションとみなしている。
販売センターが開く前の「販売目前マンション(モデルルーム公開前)」の場合は、総戸数に対する資料請求数だけで計算を行い「人気倍率2倍」以上となるのが、人気物件の目安だ。
「販売中マンション」と「販売目前マンション」で高倍率物件を全国でピックアップしてみると、「販売中マンション」で高倍率物件の数は、コロナ以前とほとんど差がない。といっても、全体的に倍率は低めだ。人気倍率が1倍台、2倍台のマンションが大半を占めた。
通常は、人気倍率3倍以上となるマンションが多く見られたのだが、今回は大きな倍率のマンションが少ない。これは、まさにコロナ禍の影響だろう。
6月に営業を再開したマンション販売センターは1日の来場者数を減らした。打ち合わせテーブルを少なくし、来場者が重ならないように、予約時間も調整。混雑する土、日は、1日に迎え入れる客数を以前の半分くらいまでに絞っている。
その分、平日の来場者が若干増えているのだが、3カ月間の来場者総数は減った。そのため、人気倍率3倍以上の物件が少なくなってしまったと考えられる。人気倍率3倍以上の超人気物件は減ったが、人気物件の数自体は以前と変わらない。それには、調べた私も驚いた。
もう一つ注目されるのは、「販売目前マンション」の人気物件数が増えていること。コロナ以前と比較すると、ほぼ倍増だ。これは、インターネットサイトで新築マンション情報を調べ、気になるマンションに資料請求ボタンを押した人が増えたことを意味している。
これから販売されるマンションには、どんなものがあるのか、興味を持っている人が多い……ということは、今後も新築マンションの人気は落ちないことを予感させる。
新築マンション市況は、コロナの影響を受けなかったわけだ。
コロナ禍でも新築マンションを購入する理由
「コロナ禍で、マンション購入者が減るのではないか」と考えている人からすれば、「なぜ、こんな時期にマンションを買おうとするのか」と思うかもしれない。その疑問は、当然である。
そこで、私はチャンスを見つけては、販売センターで来場者にその理由を聞いてみた。多くの人が口をそろえたのは、
「そろそろマンションを買いたいと思っていたから」
というものだ。人生計画で、マイホーム購入を決めていた。そのタイミングがたまたまコロナ禍の時期に重なってしまったのだが、コロナ禍で計画を変更する気にはならなかった、というのである。
「コロナも、いずれ落ち着く」はずだから、コロナに惑わされず、「その先を考えたい」というのである。
コロナが収束し、元の生活を取り戻すまで、まだ長い道のりになるかもしれない。それでも、必ず収束する。そして、収束した後も人生は続き、いずれマイホームが必要になる。だったら、これまで計画してきたマイホーム購入を断念することはない。そう考える人たちが、マンションの販売センターに集まってきたのである。
さらに、「新型コロナウイルスも怖いが、巨大台風も怖い、首都直下型大地震の心配もある」と、大災害のリスクを気にする声も多かった。
自然災害のリスクを考えたとき、鉄筋コンクリート造のマンションは、やはり安心感が大きい。だから今、マンションを購入したい、と考える人は東京、大阪だけでなく、札幌や福岡といった地方都市でも多かった。
近年、地方では、台風や大雨の被害が多発している。土砂崩れや、河川の増水による被害は中心地よりも郊外エリアで起きやすい。
そして、大規模な停電や断水が起きたときも、中心地のほうが復旧は早い。地方の郊外に住む人にとって、地方中心地のマンションは安心感が大きく、購入希望者が増えた可能性がある。
今回の調査では、地方都市でも人気マンションが数多く出ている。その背景には、近年、自然災害が増えていることもありそうだ。
すべての人が、「今、マンションを買うべきだ」と考えているわけではないが、「やっぱり、今、マンションを買おう」とする人たちもいる。その数は、日本中で想像される以上に多かった。それは事実だ。
郊外や都心部に近いマンションに目立つ、高倍率物件
では、ウィズコロナの暮らし方が模索される現在、どのようなマンションが人気になったのか。
6月以降、まず来場者が増えたのは、郊外の大規模マンションだった。ステイホームの時期、「改めて、わが家の狭さが身にしみた」と言う人たちが、家賃と同レベルのローン返済で購入できる広いマンションを探した。
それが、郊外の大規模マンションが人気になった理由だ。 今回ランクインしたマンションでいえば、神奈川県の「ミラツカプロジェクト(仮称)」や、千葉県の「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」が、その例となる。
次いで来場者が増えたのは、都心部のマンション。といっても、超高額ゾーンではない。首都圏でいえば、JR山手線の内側ではなく、外側の23区内エリア。品川区や江東区、荒川区、台東区といった庶民的な色合いのある場所だ。
今回ランクインしたマンションでは、江戸川区の「オーベルグランディオ平井」、江東区の「ジオ南砂町」、葛飾区の「シティテラス新小岩」などがその例だ。 テレワークが推奨されても、多くの人は都心への通勤が復活している。その電車内は、かなり混雑しており、感染の心配が頭をよぎる。そこで、電車に乗る時間を短くできる23区内、山手線外側のマンションが注目されているわけだ。
コロナの影響は、このようなところに表れた。では具体的に、どんなマンションが人気になっているのか。
詳しくは、エリアごとに説明したい。
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