マンションの共用設備で非常に重要でありながら、あまり注目されていないのがエレベーターだ。マンションの規模に合った適正な台数や仕様になっているか、新築マンションを購入する際は是非チェックしよう。
50戸に1台では足りない!?
マンションのエレベーターの適正数は、建物の階数によって違いがあるが、よく言われるのは「50戸に1台」という割合だ。
「しかし、140戸のマンションで2基(140÷50=2.8)あれば十分とはいえません。少なくとも総戸数を50で割って、小数点以下の数字を四捨五入するくらいでないと、不足気味でしょう」
こう指摘するのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。
エレベーターの台数が少ないと、例えば朝の出勤時間帯、3階とか4階ではエレベーターがなかなか来ないか満員通過ばかりで、毎朝、階段を駆け下りなければならないことになる。
「これからの高齢社会に備えて、少なくとも総戸数を50で割って、小数点以下の数字を『四捨五入』すべきでしょう。できれば『三捨四入』が望ましい。これなら120戸のマンションでもエレベーターは3基ということになります」(碓井氏)
エレベーターホールまで50m以内かどうか
エレベーターは、建物内での位置も重要だ。
ポイントは、各階の一番遠い住戸からエレベーターホールまで50ⅿ以内にあるかどうか。50ⅿというのは、女性が重い荷物を持って運ぶときの限界と言われている。それ以上離れた住戸があるなら、2基のエレベーターの位置を離して配置するのが配慮ある設計だ。
碓井氏によると、理想を言えば、1フロアあたり2戸ないし3戸に1基のエレベーターがあるのが望ましい。いわゆる「2戸1エレベーター」「3戸1エレベーター」といわれるものだ。エレベーターが使いやすいだけでなく、住戸の独立性が高まり、間取りの設計にもいろいろ工夫できる。
・住戸の真ん中あたりに玄関を設けた、センターイン型の間取りができる
・両面バルコニーで(隣家と接する壁が減って音漏れの心配も減り)、プライバシーが高まる
【3戸1エレベーターのメリット】
・両端はセンターイン型、中央はワイドスパンの間取りとなる
・両端の住戸は、両面バルコニーでプライバシーが高まる
・ワイドスパンの間取りは、玄関入ってすぐの左右に、外廊下からの通風を確保したキッチンや洋室を設置可能
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もちろん、エレベーターの台数を増やせばそれだけ導入コストが増す。しかし、以前に比べるとエレベーター本体の価格も、毎月の点検費も、かなり安くなってきている。
無意味に豪華な共用施設をいろいろ付けるくらいなら、その分をエレベーターに回した方がいいというのは納得できる。
トランク付きエレベーターがあると便利
なお、エレベーターについては、複数台ある場合でも、9人乗りのトランク付きのエレベーターが1台あると便利だ。
これはエレベーター内の突き当たりの壁の下部分が観音開きになり、開けると長いものが乗せられるようになっているエレベーターだ。これがあると、救急車のストレッチャーで病人を搬送したりするときに大変役立つ。もし、ストレッチャーがエレベーターに乗らないとなると、非常階段を人手を使って運ぶしかない。
もうひとつ、エレベーターの仕様で大事なのが、P波センサーと停電時の自動着床装置だ。
大きな地震では、まずP波と呼ばれる縦揺れが伝わり、その後に大きな被害をもたらすS波(横波)が来る。P波センサーが付いていると、いちはやく地震を感知し、自動的にエレベーターを最寄り階で止めることができる(ただし、S波とP波がほぼ同時に到達する直下型地震ではあまり効果は期待できないといわれる)。
また、最近は「自動診断・自動復旧システム」といって、大地震でエレベーターが止まった際、メンテナンスの担当者が来なくても自動的に異常がないか確認し、問題がなければ動き出すシステム(高さ60ⅿ=約18階建て以下の建物に対応)がある。
マンションを選ぶ際、エレベーターのことを気にする人はほとんどいないだろうが、実はエレベーターがマンションでの生活に与える影響は、どんな共用施設よりも大きいことを肝に銘じておきたい。
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