マンションの共用施設としては「駐車場」も重要だ。自家用車を所有している人は、駐車場の台数と料金、サイズ、そして使い勝手は必ず確認したほうがいい。また、近年は駐車場の空きが増えて問題になっている。台数が多ければいいということではなく、将来の管理組合の財政に与える影響にも注意しておきたい。
最もポピュラーなのが「機械式駐車場」
以前の記事では、マンションの共用施設として必要なもの、あまり必要とはいえないものを取り上げたが、共用施設としてもうひとつ忘れてならないのが駐車場だ。
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マンションの駐車場には平面式、自走式、機械式の3タイプがある。
このうち、平面式駐車場は敷地が広くないと設置が難しく、最近はほとんど見られない。
2層や3層になった自走式駐車場も、敷地にある程度の余裕がないと設置が難しく、大規模マンションに限られる。
最もポピュラーなのは機械式駐車場だ。車を乗せるパレットがモーターで動くもので、上下にのみ動く昇降式や、上下左右に動くパズル式などがある。
自家用車の所有者は「駐車場率」に注目
新築マンションを選ぶ際には、自家用車を所有している人は、駐車場に駐車可能な台数と料金を必ずチェックしよう。台数については、住戸数に対する割合(駐車場率)がポイントだ。
駐車場率は、立地やマンションで異なる。東京23区内で最寄駅から徒歩10分以内のマンションでは50%未満というケースが多いようだが、郊外部や最寄り駅からバス便のような立地になると80%以上というケースも珍しくない。
「利便性の良い都心部であっても、1戸当たりの販売価格が7000万円台以上するマンションの購入者層は、マンション購入後もマイカーを所有し続ける人が多いです。そのため、敷地内の駐車場が足りなくなると抽選になり、抽選で外れた人はマンションの外で駐車場を借りなければなりません。マンションの外の駐車場は荷物の持ち運びなどに不便で、マンション内の駐車場と料金差があると不満が募ります。目安として、東京23区内などの都市部では駐車場率70%前後、郊外で最寄駅から徒歩15分以上なら駐車場率90%は欲しいところです」
こう語るのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。
マンションの駐車場は「使いやすさ」にも注意
碓井氏によると、マンションの駐車場に関しては、使いやすさにも注意が必要だ。たとえば、駐車場1台分のサイズ。かつては自家用車といえば「5ナンバー」(長さ4700㎜以下、幅1700㎜以下、排気量2000㏄以下)の車がほとんどだったため、駐車場1台分のサイズもそれを基準にしたものになっていた。
しかし、最近は「3ナンバー」の車に乗る人が増えている。駐車場もそれに応じたサイズでないと、マンション購入と同時に車も買い替える必要に迫られる。3ナンバー車の場合、1台分として5m×2.5mの広さは最低限、必要だ。
また、敷地内の車路の幅や切り返しスペースにも注意したい。車路の幅については、運転があまり得意でない人なら、最低6mないと車の出し入れにストレスを感じるとされる。
切り返しスペースは、車路の奥のほうにある車庫に車を出し入れする際に不可欠だ。少なくとも車路を5mほど延ばすか、スペースがない場合は機械式のターンテーブルを設ける必要がある。こうしないと、車を駐車するときには頭から突っ込んで駐車し、出庫するときはバックで出口まで運転しなければならない。これは平置き式でも機械式でも同じである。
「防犯対策にも注目してほしいですね。意外に、マンションの駐車場からの車の盗難や車上荒らしはいまだに多いのです。住戸については、指紋照合システムのオートロックやダブルディンプルキーで、十分とはいえないまでもセキュリティの改良が進んでいます。それに比べ、駐車場はまだ遅れていて、あるとしても監視カメラを設置する程度でしょう。これからは、無線対応のリンググリルシャッター(ステンレスの棒で組まれた格子状のシャッター)か、ロボットゲート(電動で開閉する門扉)が不可欠だと思います」(碓井氏)
「駐車場の空き」が管理組合の財務にもたらす、深刻な影響
ところで、マンションの駐車場率は高ければ高いほどいいかというと、実はそうでもない。マンションでは長年、「音」「ペット」そして「違法駐車」が3大トラブルといわれてきた。
しかし、20年ほど前から、自治体によっては売主に一定割合の駐車場の設置を義務付ける条例ができたり、住戸数に対して100%の駐車場があるのを“売り”にするマンションが増えてきたりして、違法駐車の問題は以前ほど言われなくなった。
むしろ、最近目立って増えているのが、マンション内に設けられた駐車場の空きである。人口の高齢化やライフスタイルの変化によって、自家用車を持たない世帯、あるいは持っていた自家用車を手放す世帯が増えているのが原因だ。
駐車場の空きは、マンションの管理組合の財務に深刻な影響をもたらす。なぜなら、駐車場料金の一部を管理費会計に組み込んでいるため、空きが増えると管理費会計が赤字になり、管理費の値上げが必要になるからだ。
また、機械式駐車場の場合、部品の交換や装置の入れ替えがおおむね20年程度の間隔で必要になり、そのコストもばかにならない。長期修繕計画にそのぶんの支出が組み込まれていないと影響は深刻だ。
「収支計画」と「長期修繕計画」で事前にチェック!
こうした問題を事前にチェックするには、管理組合の収支計画と長期修繕計画を確認するとよいだろう。
新築マンションは完成前に販売される「青田売り」がほとんどだが、1年目の管理組合の収支計画と長期修繕計画を売主の不動産会社と管理会社がつくっている。それを見せてもらうのだ。
収支計画では、駐車場の利用料をどれくらい管理費会計に組み込む想定になっているのかが、チェックしておきたいポイントだ。半分以上、組み込んでいるようだと不安がある。また、長期修繕計画に機械式駐車場の部品交換などの支出が組み込まれていないと、いずれ修繕積立金の値上げなどが必要になるだろう。
駐車場は快適なマンション生活には欠かせない共用施設だが、そのプランニングや駐車場料金の扱いには十分な配慮が必要だ。単に台数が多ければいいわけではなく、使い勝手や組合財政への影響をどう考えるか。売主の不動産会社のレベルを判断する目安にもなるだろう。
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