新築マンション「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」は東京・晴海の注目物件だが、本当に買いなのか、価格・スペック・立地を徹底的に調査してみた。他の物件との違いは、総戸数1450戸というスケールの大きさや充実した設備だけではない。完成後もじっくり時間をかけて売る「完成売り」が特徴だが、それを裏返せば、完成から時間がたってしまっているということ。それでも、資料請求数や販売センターの来場者数は高水準で推移している。人気の理由を探った。(住宅評論家・櫻井幸雄)※新築販売時の記事です。
希少になった都心大規模・高仕様のマンション
「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」は、今の日本のマンション業界にとって異質な存在だ。なぜなら、2年前の2015年9月に建物が完成し、マンション内での生活が始まっているにも関わらず、新築マンションとして販売を続けており、かつ、資料請求数や販売センター来訪者数が高い水準で推移しているからだ。
その理由は、今や希少になった都心部の大規模超高層マンションであるからに他ならない。2016年から東京の都心部、特に千代田区、中央区、港区といった超都心の3区では、総戸数が400戸を超えるような大規模超高層タワーマンションが激減している。
この都心3区にあって、購入可能な大規模超高層タワーマンションが、中央区晴海の「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」なのだ。銀座から2.2㎞圏に位置し、地上52階建てのツインタワーマンション。その建物には免震構造が採用され、長期優良住宅の認定を受けている。建物の質が高いのに加えて、全1450戸のスケールメリットで共用施設、サービスの内容が濃い。
例えば、2棟のタワー棟の間に低層部分があり、グランドエントランスが配置される。その内容が圧巻だ。天井高が最大で10mを超え、2階のグランドロビーまで上りと下りのエスカレーターが設置されている。
エスカレーターを上がると、これまた巨大なガラス窓の向こうに運河と都心方向の風景が広がる。左に歩くと、ホテルのようなフロントが……とまるで高級ホテルにいるような感覚が味わえる。
DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)(※新築時のデータです)
- 価格
- 5,980万円~12,980万円
- 完成時期
- 竣工済
- 東京都中央区晴海三丁目102番(地番)
- 都営大江戸線「勝どき」駅から徒歩9分
- 間取り
- 2LD・K~3LD・K
- 専有面積
- 55.77平米~100.01平米※住宅専有トランクルーム面積0.61平米~2.07平米含む
- 総戸数
- 1,450戸(住宅)、SOHO216区画、その他店舗2区画
- 売主
- 住友不動産株式会社
- 施工会社
- 三井住友建設
※データは2017年10月19日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
1階には24時間営業のスーパーマーケット
この他、広さ約200㎡の「サウナ付大型スパ」や43階の「ビューラウンジ&バー」などの共用施設も充実。さらに、マンションの1階には24時間営業のスーパーマーケットがある。
同マンションは冒頭に書いたとおり、2年前に建物が完成しており、スーパーマーケットもすでに営業中だ。だから実際に、建物の外観や共用部、そして検討する住戸を確認できる。
「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」の分譲が始まったのは2014年から。以後、3年の間、販売開始時点より分譲価格は高くなっている。私の取材メモをみると、2015年4月3日の時点で3LDKは6000万円台からの設定だった。しかし今、実際に購入可能な3LDKは7000万円台からとなる。
そのため、購入検討者からは、「最初より高くなった。ずるいなあ」という恨み節が聞こえてくる。現在分譲中の住戸は高層階が中心。だから、値段があがるのは当然ともいえるが、その分を勘案しても、それ以上に高くなっている。
3LDKは7000万円台からの設定
この価格上昇を「ずるい」と批判する背景には、「最初に決めた価格のまま売り続ける——それが、商売人の心意気ではないか」という思いがある。実際、昭和時代は「最初に決めた価格を最後まで守る」のが、当たり前だった。
昭和時代のほうが「心意気があった」からではない。当時は、住宅金融公庫(フラット35の前身)の融資付きで分譲されるマンションが中心で、「公庫融資付き」と呼ばれた。この「公庫融資付き」が、値上げを阻んだのである。
公庫融資は、国のお金で融資が行われた。そのため、物件に対する審査が厳しく、分譲価格も厳しく縛られた。不動産会社は、「このマンションは全戸3000万円〜4000万円で売ります。だから、その8割までの融資を付けてください」と申請を出し、公庫がそれを認める。何枚もの書類にいくつもの判が押されて融資が実行されるため、販売途中で「価格を上げたい」という変更がきかなかった。ちなみにいうと、「価格を下げる」という変更もきかなかった。
その住宅金融公庫は2007年に廃止され、以後、“公庫の縛り”がなくなり、市況に応じて値段を下げることも、上げることも容易になった。「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」が分譲を開始した2014年以降、不動産市況は大きく上がった。それに伴い、分譲価格が上がるのは、経済原則からみて、まったく正しい。
さらにいえば、「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」における価格上昇は、都心部全体の価格上昇ほど急カーブではない。
3LDKが7000万円台からという設定は、武蔵小杉やみなとみらい、国分寺や浦和の駅周辺マンションと同レベル。その価格帯で、中央区内の超高層マンションを購入できるのだから、納得できる範囲だろう。
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都心部の相場上昇にあわせた価格上昇
周りの物件価格が上がってきても、安い価格設定のまま売り続ければ、拍手喝采を浴びるだろう。しかし、拍手喝采した購入者は、自ら住むことなく、高値で人に転売して利ざやを稼ぐかもしれない。また、民泊でお金を稼ごうとするかもしれない。
相場を無視して安く売ることでマンションが金儲けの対象となり、転売や民泊利用などが横行すれば、まともな居住者に迷惑を及ぼすことにもなりかねない。
「DEUXTOURS(ドゥ・トゥール)」は、2014年に販売を開始したときから割安であったが、バカ安ではなかった。投資目的の人からすると、「まだ高い」と思われ、実需目的の人からすると「まあまあ納得」の価格設定で、その微妙なさじ加減を3年間守り続け、都心部の不動産相場が上昇したことにあわせて価格が上がってきたマンションといえる。
分譲マンションは、市況が悪化すれば値段を下げる。この「値下げ」があるなら、逆の「値上げ」もあり得る。これは住友不動産が目指す、不動産におけるグローバルスタンダード(世界基準)の考え方だ。そして、このグローバルスタンダードは、今、日本の不動産業界全体にも広がりつつある。
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