10年後、あの街の戸建て物件価格は上昇するのか、下落するのか? こんな疑問に答えるため、今回は「東京北部・埼玉エリア」にある戸建て物件の「現在(2018年)」と「10年後(2028年)」の推定価格を駅ごとに算出。10年後の騰落率やボラティリティから、その街のポテンシャルや不動産価値を診断してランキングを作成した。はたして、あなたの住む街はランクインしているだろうか。
推定価格は、「2018年10月時点で築10年」「100平米」「2階建」「木造」「駅から徒歩10分前後」「駅と同一区域」の条件を満たす戸建てをモデルに、株式会社おたにの不動産価格指定システム「GEEO」を用いて算出した。不動産は経済状態に影響を受けるが、今回の推定価格は平均シナリオのデータを使用している。
※騰落率が著しく高いものや公示地価との乖離が大きいデータについては、サンプル物件数などを考慮しながら除外したうえで、代表的な駅として100地点まで絞り込んだ。
2018年vs2028年の上昇率トップ10
まずは上昇率ランキングの上位10駅を見ていこう。戸建て物件価格が、2018年とその10年後となる2028年で、どれだけ上昇または下落するかを推定したものだ。
東京北部・埼玉エリアで1位になったのは上昇率59%の南与野駅(埼玉県さいたま市)だ。さいたま市は2001年に浦和市・大宮市・与野市が合併を行い誕生(2005年に岩槻市を編入)。駅の所在地である鈴谷は中央区(旧与野市)の南部に位置し、付近一帯は農耕地であった。
1985年の埼京線開業により駅周辺には工場や駐車場が立ち並ぶようになり、人口の増加に伴い戸建て住宅を中心とした住宅地が増えていった。2003年からは「南与野駅西口土地区画整理事業」がスタートし、駅西口へのロータリーの設置、街路の整備が行われ、戸建て、マンション、アパート、商業施設の建設が進んでいる。
JR埼京線の駅で快速停車駅ではないが、新宿駅まで約30分、東京駅へは赤羽駅でJR上野東京ラインに乗り換えて約50分で到着する至便性と、行政主導による美しい街区づくりが大きな魅力となっているのであろう。
3位は上昇率50%の坂戸駅(埼玉県坂戸市)である。東武東上線で池袋駅まで約50分。和光市駅で東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線に乗り換えられる。おなじく4位の若葉駅(埼玉県坂戸市)ともども、都市開発機構が埼玉県中部で展開している、“むさし緑園都市”の玄関口にあたる。
むさし緑園都市は1970年代の公団住宅の建設から始まり、台地と谷地が混在する土地や、道路、公園、緑地、下水道などの生活基盤の整備を図り、戸建てやマンションの住宅地開発が進んでいる。駅前も道路、街区ともども整備が行き届き郊外住宅街として豊かで落ち着いた景観が広がっている。
上昇率40%で5位の十条駅(東京都北区)も1位の南与野駅と同じくJR埼京線沿線である。新宿駅まで約15分。駅西口ロータリーより北に伸びる十条銀座商店街は、戸越銀座(東京都品川区)・砂町銀座(東京都江東区)と並ぶ東京三大銀座の一つ。また、帝京大学板橋キャンパス・帝京大学医学部附属病院など帝京大学グループおよび東京家政大学が集う学園エリアでもある。
駅西口前では”十条駅西口地区第一種市街地再開発事業”が都市計画決定されており、低層階には商業施設、高層階には約540戸の住宅が入居する40階建ての超高層マンションの建設が2021年の竣工予定で進められている。人の流れ、街の様相が大きく変わっていくことが予想されるエリアだ。
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下落率トップ5は東部線沿線が多いが、今後の発展に期待できる兆候も
続いて下落率ランキングの上位5駅である。東武線沿線で都心への所要時間が長い、乗り換え回数が多いなど交通の利便性の悪い地域が多いが、一時期の好況が一巡して落ち着いた印象を受ける。
そもそも東京北部・埼玉エリアは当ランキング18位から騰落率がマイナスに転じるなど全体的に低調気味である。しかし、現在も開発、再開発が進むエリアも多く、今後の行く末を見守る必要はあるだろう。
1位は-58%の朝霞駅(埼玉県朝霞市)。東武東上本線でひとつ池袋寄りの和光市駅で東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線に乗り換えられる。駅構内施設の開業や駅前広場の整備、駅東口近くでマンション建設が相次いでいる。
加えて、積水化学工場跡地に大型商業施設を含む宅地開発も進行中であることなどポテンシャルには高いものがある。しかし、東上線ひとつ先の朝霞台駅の下落率も-41%であることから、このエリアの景況が停滞期を迎えているのかもしれない。
3位は東武大師線の大師前駅(東京都足立区)。西新井大師は川崎大師などと「関東厄除け三大師」の一つに数えられている。駅北側は西新井大師を中心とした緑豊かな景観が広がり、南側は環七通りに沿ってマンションが立ち、低層階のアパートと戸建ての住宅が整然と並ぶ落ち着きのある地区である。しかし、西側での日暮里・舎人ライナー開業や西新井駅西口の日清紡績跡地の再開発などの影響で、従来の人の流れに変化が起きているようだ。
2028年の推定価格トップ5
上位3位は板橋区と北区。さすが東京都区内の地力の強さを見せつけた。1位は志村三丁目駅(東京都板橋区)。上昇率でも59%で2位となっている。そもそも志村は江戸時代に中山道の中継地点として集落が形成されていたところだ。さらには、1968年に日本住宅公団(現・都市再生機構)による高島平でのマンモス団地の造成を受け、都心への交通網として都営三田線が開業。大手町駅まで約30分で到着する。
周辺には緑豊かな公園が点在し、保育園、小中学校などの育児・教育環境も整っている。板橋区の都市計画推進地区に選ばれており、駅周辺の商業地の活性化や公園の再整備などが進められている。
5位の浦和駅(埼玉県さいたま市)は埼玉県庁舎およびさいたま市役所の最寄駅である。明治16年開業とさいたま市内で最も古い駅。JR湘南新宿ライン、JR上野東京ライン、JR京浜東北線の3線が利用でき、東京駅(上野東京ライン利用)、新宿駅(湘南新宿ライン)まで、それぞれ約30分で着く。昔から「鎌倉文士に浦和画家」と言わる文教都市として知られ、駅西側には高級住宅街が広がっている。現在も、さいたま市の都市計画では「県都の玄関口」として位置付けられ再開発が進められている。
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東京北部・埼玉エリア騰落率ランキング
戸建て物件推定価格の東京北部・埼玉エリアの駅別騰落率ランキング完全版(全100地点)を示す。
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