今月は2024年上半期の首都圏新築マンション市場を振り返りつつ、2024年6月度の首都圏新築・中古マンション市況を解説していく。また注目のマンションは「リビオシティ文京小石川」を紹介する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
首都圏マンション市場動向【上半期】
不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年上半期(1~6月)」によれば、首都圏新築マンションの2024年上半期の供給戸数は対前年同期比13.7%減の9,066戸。上期としては4年ぶりの1万戸割れとなった。平均価格は7,677万円、㎡単価は115.7万円で、前年同期に都心高額物件が大量供給された影響でともに10%以上下落した。
しかし、神奈川県、埼玉県、千葉県の平均価格が上昇しているように価格の上昇トレンドは変わっていない。また、初月契約率は67.0%で前年同期比5.7ポイントダウンしており、2020年以来4年ぶりの60%台となっている。
供給戸数は、都下、神奈川県、千葉県が増加したものの、東京23区と埼玉県が約3割減少。東京23区のシェアは36.6%にまで低下しており、上期のシェアが40%を下回るのは 2008年以来16年ぶりだ。なお、下半期は大規模案件の供給増で1.9万戸、2024年年間では約2.8万戸の見込み。
しかし最近の傾向を見るとさまざまな要因で販売開始が遅れる傾向にあり、当初見込みほど供給が増えない可能性も否めない。
首都圏の供給戸数が減った理由とは?
首都圏の供給戸数が減ったのには、理由がある。
建築費の上昇による事業計画の見直しやホテル需要などの増加でマンション用地の取得が難しくなっていること。さらに、施工上の都合で4月に販売開始予定だった「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」の販売活動が一時休止になったことも一因。販売休止で需要層の一定数が、ほかの新築マンションや湾岸エリアの中古マンションに流れた可能性が高く、中古マンション相場の上昇にもつながったと推察される。
また、市場性を見極めるため販売を先送りするケースも。渋谷区桜丘地区に誕生した大規模複合再開発「Shibuya Sakura Stage(渋⾕サクラステージ)」内に建設された「SAKURAタワー」、その16階~30階に位置する「ブランズ渋谷桜丘」だ。
地権者住戸が多くを占め一部の住戸は、賃貸や売買で流通市場に出回っているが、東急不動産の保有する住戸は未販売。希少な渋谷駅直結のマンションだけに市場価値を見極めてから販売していくという。ちなみに売り出し中の住戸の中には、坪単価が2500万円というケースも。
大規模再開発が進む品川駅徒歩圏の大規模タワーレジデンスとして注目されている「リビオタワー品川」も2024年7月に、2024年10月下旬としていた販売開始予定時期を、2025年3月上旬に変更している。また「グランドシティタワー池袋」や「グランドシティタワー月島」といった都心の超高層タワーが供給戸数を抑えるケースも目立つ 。
こうした注目物件の販売開始時期の変更や供給抑制の動きは、マンション購入層の行動に少なからず影響を与えそうだ。
首都圏の新築マンション市況【2024年6月度】
続いて、2024年6月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。株式会社不動産経済研究所によれば、2024年6月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べ12.8%減少の1,662戸。契約率は66.4%となっており、前月よりも10.4ポイントアップした。
また、首都圏新築マンションの戸あたり平均価格は、8,199万円となっており前年同月比では、1,649万円のアップとなっている。
販売在庫は5,418戸で、前月末よりも41戸の減少。2023年6月末の販売在庫は4,951戸だったので、昨年対比では増加している。なお、即日完売物件は1物件のみで、価格は上昇しているものの、売れ行きの鈍化傾向は続いている。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。契約率は先月に引き続き好調ラインの70%を下回る結果となった。
首都圏新築マンションの地域別の発売状況は、下表のようになっている。
エリア別の平均価格は、東京23区が1億1,679万円。東京都下が5,657万円、神奈川県が6,586万円、埼玉県が6,032万円、千葉県は6,220万円。東京23区は、前年同月比で+51.6%と大きく上昇している。
地域別で見ると、好不調の目安となる契約率70%を上回ったのは、先月に続き千葉県のみだ。平均価格、㎡単価ともに千葉県も大きく上昇しているが、㎡単価は、最も低い。買いやすさで選ぶと千葉県に目が向くということだろう。
続いて、中古マンション市場を見てみよう。
首都圏の中古マンション市況【2024年6月度】
公益財団法人東日本不動産流通機構によれば、2024年6月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比4.8%増加の3,259件となっており13カ月連続で前年実績を上回っている。
成約価格は、前年同月比7.5%上昇の4,956万円。平均成約㎡単価も対前年同月比7.9%上昇の77.95万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、50カ月連続となる。
また、2024年6月の新規登録物件の㎡単価は74.76万円となっていて、前月よりも0.2%上昇した。
2024年6月の新規登録物件数は、対前年同月比で4.4%減少の15,088件。在庫件数は前年同月比で2.5%減少し45,603件となっている。在庫水準は、まだ高いものの新規登録数の減少と成約件数の増加によるもので、エリアによっては需給がさらにひっ迫するかもしれない。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが、直近では在庫が増えなくなってきている。
次に地域別の中古マンション動向を見てみよう。
地域別では、埼玉県を除く地域で成約㎡単価が前年同月比で上昇。最も上昇幅が大きかったのは、都下の11.0%だ。埼玉県を除くすべての地域で7%を上回る上昇幅になっており、首都圏の多くの地域で中古マンション価格の上昇トレンドが見られる。
さらに地域を細かく見てみると、都心3区(千代田区、中央区、港区)の成約㎡単価が前年同月比17.1%上昇の183.11万円と堅調で直近の最高値を更新した。新築マンション価格も上昇しており、中古に目を向ける人も多いようだ。
郊外エリアでは、川崎市の成約㎡単価の上昇が目立つ。2024年6月度の成約㎡単価は、前年同月比14.7%上昇の74.36万円。東京都に隣接しているエリアでもあり人口も増加傾向にある。
その代表的な街が、交通利便性と生活利便性がそろった武蔵小杉駅。同駅が立地する川崎市中原区は、社会増加と自然増加により2023年1月1日時点平均年齢は、神奈川県で最も若い41.71歳だ。
次に今月の注目マンション「リビオシティ文京小石川」を紹介する。
文京区最大級の大規模レジデンス「リビオシティ文京小石川」
東京都文京区小石川4丁目で建設中の分譲マンション「リビオシティ文京小石川」のゲストサロンが2024年7月オープンし、事前案内会がスタートした。
小石川植物園に近接し豊かな緑に囲まれた立地特性を生かし、「都心の杜」をコンセプトとした文京区最大級(総戸数522戸×敷地面積12,000㎡)となる大規模マンションだ。
敷地内は、緑量の確保、多彩な樹種の配置に配慮した植栽計画としており、快適性と省エネを両立するZEH-M Oriented、地球環境に配慮する認定低炭素住宅の認証を予定。環境にも配慮したプロジェクトだ。2024年7月上旬時点で、8,000件超のエントリーがあり、事前案内会の予約も順調と注目を集めている。
「総戸数500戸以上」×「敷地面積1万㎡以上」×「文京区内」の物件は、 1995年 1月~2023年11月15日までの発売物件では、同マンションのみとのこと。ゲストサロンでは、スケールを活かした共用部のつくりなどを「イマーシブシアター」などで確認できる。
土地の権利は、賃借権で借地の種類・期間は、2022年6月1日~2097年7月31日までの一般定期借地権となっている。引き渡し可能日は、2027年3月中旬を予定している。
「リビオシティ文京小石川」の注目点として挙げられるのは、敷地面積12,000㎡超、総戸数522戸のスケールを活かしたランドマーク性の高い外観デザインだ。
成熟した住宅街である文京区で、これほどのスケールのある敷地をもつマンションには、早々出会えない。敷地面積1万㎡超、総戸数500戸超を満たす文京区のマンションは、「パークコート文京小石川ザ・タワー」ぐらいだろう。
ロングファサードの外観フォルムは重厚感があるつくりで、ランドマークとしての価値を感じるつくり。エントランスホールは、二層吹き抜けで奥には、しだれ桜の植えられた中庭がのぞく。
マルチラウンジや屋上テラス、フィットネスラウンジなど共用空間も充実している。モデルルームは、中心プランとなる71㎡台3LDKと85㎡台3LDKの2タイプ。奥行きのあるカウンターのあるキッチンなど住み心地に配慮したつくりだ。文京区内からのエントリーは、取材時点で約23%とのことで想定よりも広域からの反響比率が高いとのこと。それだけプロジェクトは注目されているということだろう。
駅距離を考慮して、駅までのシャトルバスを用意する予定。24時間有人管理で、平日は1人、休日は2人のコンシェルジュも配される。大規模マンションの供給が少ない文京区だけに、スケールメリットを活かしたサービスは、評価されるはずだ。販売開始は、2024年10月上旬の予定。年内に販売開始となる都心の大規模プロジェクトは限られており、関心を集めそうだ。
2024年夏以降の物件のラインアップが充実
2024年の新築マンション市場は下半期に供給物件が多く、不動産経済研究所の予想では1.9万戸と、上半期の約2倍になる見込みだ。
2024年夏以降は、物件のラインアップが充実している。2024年5月のコラムで紹介した中野駅前の大規模再開発プロジェクト「パークシティ中野 ザ タワー」や小岩駅前の大規模再開発「パークシティ小岩 ザ タワー」の第1期の販売も2024年7月にスタートしている。
販売延期となった「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」については、施工会社から所定の工期内で引き渡しができるとの発表があった。販売が早期に再開すれば、再び注目を集めるだろう。
まとめ
東京都心のマンション市場が堅調なのは、東京駅、渋谷駅、新宿駅、高輪ゲートウェイ駅、品川駅など駅周辺部の再開発が着実に進行しており、街の将来像が想像できるからだ。
浜松町駅直結の「WORLD TOWER RESIDENCE」が全戸完売となったように、希少性の高いマンションのニーズは根強い。判断が難しいのは、将来性がどこまで価格に見込まれているか。10年後には、その答えが出るだろう。
筆者は今から10年ほど前、品川の大規模タワーマンションの購入をいくつかサポートした。将来性と希少性に着目してのことだが、当時の中古相場は坪単価200万円台後半。賃料相場は今よりも低かったが、表面利回りは5%を超えていた。資産性と収益性を求めるなら、マンションの立地選びは大切だということだ。
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