2024年10月の関西・中部圏のマンション市場(※12月現在では10月のデータが最新となる)は、先月に引き続き全体として堅調を維持している。今月も関西・中部圏の新築マンション市場動向のほか、中古マンションの市況、注目のマンションなどについて解説する。
関西・中部圏の新築マンション市況【2024年10月】
2024年10月の関西・中部圏の新築マンション市場は、おおむね堅調に推移している。関西エリアでは発売戸数の減少傾向が続く中、契約率は5カ月連続70%を超えた。詳しく解説していく。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
2024年10月の関西の新築分譲マンションデータ
2024年10月の新築分譲マンション発売戸数は1,157戸、対前年同月比10.5%ダウン、3カ月連続で前年同月を下回った。
契約率は71.4%、前年同月比6.6ポイントダウンしたものの、5カ月連続で70%超え。平均価格は3,789万円、前年同月比・前月比ともにダウンしたが、㎡単価は88.7万円で、2ケタアップとなった。ワンルームなど投資用が全体の54.5%を占めているため、価格は下落、専有面積が2ケタ縮小、㎡単価はアップすることになった。投資用を除くと価格は5,805万円。㎡単価は10月としては調査開始(1973年)以降の最高値を更新した。
未販売在庫数は10月末時点で2,420戸、前月末比53戸の増加となった。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。
近畿圏(関西)の新築マンション価格と契約率の推移
平均価格をエリア別にみると、大阪市内の平均価格は前年同月比24.4%アップの3,749万円、㎡単価では6%アップの96.1万円。一方で神戸市の平均価格は2,855万円、全エリアの中でも飛びぬけて低くなっているが、2,500万円以下の1Kなど投資用物件が7割を超えているためだ。神戸市の㎡単価は大阪市内に次ぐ92.5万円となった。
なお、2024年11月の発売戸数は1,300戸程度の見込みとなっている。2023年11月の発売戸数は1021戸だった。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
愛知県を中心とした中部エリアについては、新築マンションの月別データはない。今回は、名古屋市を中心とした愛知県の不動産・マンション市況について分析してみよう。
東京を中心とする首都圏と、大阪を中心とする関西圏でのマンション価格はこの数年で高騰しているが、名古屋ではそこまで上がらず、落ち着きを見せている。
中古マンション価格において、5〜6年前と比べると、東京都心部ではおよそ1.5倍、大阪市中心部ではおよそ1.4倍値上がりしているのに対し、名古屋市中心部では1.2倍、この1年では横ばいか下がっていることもある。
リニア開業を控えている条件から考えれば、東京レベルとは言わないまでも大阪よりは値上がりしてもおかしくないにもかかわらず、ずいぶん控えめな動きだ。マンション価格が値上がりしているのは建築コストや人件費の影響が大きいが、それは東京と大阪に限ったことではない。考えられる要因の一つは、海外からの投資マネーということになる。
海外から見て名古屋の知名度が低いのは、インバウンドの来客・宿泊者が少ないことを見てもはっきりしている。東京・大阪に続いてインバウンド訪問者が多いのは千葉(成田やディズニーランドによる)、次いで京都、福岡、神奈川となっており、3大都市圏のひとつであるはずの愛知県は奈良県や山梨県より低い11位という現実がある。細かいデータは不明だが、訪問者は観光目的だけとは限らない。
2023年 都道府県別訪問率ランキング
さらに2024年に施行された「金融資産運用特区」に名古屋が入らなかったという影響もあるだろう。
ただし、これらはそもそも愛知県の県民性を反映したものと見ることもできる。愛知県民には、東京や大阪には見られない独特の文化のような性質がある。住まいを検討する際に、マンションという選択肢が薄く、できれば一戸建てに住みたいという傾向が他エリアより強いのだ。
戸建て志向が強い理由として、土地が安いこと以外に車がある。トヨタのお膝元である愛知県は車の所有率が東京や大阪、さらに神奈川や福岡と比べてもかなり高いため、2台を自分の土地に止めること、中には庭をつぶしてでも3台分確保するというケースも珍しくない。
あくまで肌感覚だが、マンションの眺望や高さの価値が低く、実利を取る傾向が強い。トヨタが名古屋駅前のミッドランドスクエアビルを建てるとき、中部地方で最も高いビルを目指して近くのゲートタワービルを大きく超える高さを当初は設計していたが、最終的には1mでも高ければいいと変更されたり、巨大な吹き抜け空間の設計を縮小するなど、実利を取る傾向の強さを表すようなエピソードが多い。
愛知県人が「地べた」というフレーズを多用するのも無関係ではないだろう。車をはじめとした「ものづくり」という地元文化を重視し、観光や投資で盛り上げようという意欲が低い愛知県人の堅実で真面目な性質は、良くも悪くもそのまま地価に反映されているかもしれない。
関西・中部圏の中古マンション市況【2024年10月】
次に関西・中部圏の中古マンションの市況を見ていく。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
近畿圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年10月】
近畿圏の中古マンション成約件数は前年比マイナス5.1ポイント減、5カ月ぶりで前年同月を下回った。新規登録物件数は22カ月連続で前年同月を上回った。
成約㎡単価は16カ月連続で前年同月を上回り、引き続き高額な中古マンションに対する強い需要がみられた。新規登録㎡単価は5カ月連続で前年同月を上回り、その上昇率は成約㎡単価を上回る。売り物件の高額化が続いている。
成約件数をエリア別にみると、大阪市や神戸市、阪神間(尼崎市・西宮市・芦屋市・宝塚市・伊丹市)、京都市など主力エリアで減少した。
成約㎡単価は主力エリアで上昇した一方、大阪府東部(門真市・守口市・枚方市・寝屋川市・東大阪市など)、大阪府南部(堺市・羽曳野市・藤井寺市・富田林市・大阪狭山市・南河内郡・岸和田市など大和川以南)で減少した。大阪市は16カ月連続で上昇し、依然として高額物件に対するニーズが続く状況にある。ただし、阪神間や京都市などは下落し、上昇傾向に地域差もみられた。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏(関西)の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。
近畿圏(関西)の中古マンション在庫件数、成約㎡単価、在庫㎡単価の推移
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
中部圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年10月】
成約件数は前年同月比3.2ポイントアップ、成約価格も平均で2,506万円と前年同月比18.4ポイントアップ。平均成約㎡単価と新規登録㎡単価もアップという結果になった。専有面積も前月比・前年同月比ともに増加している。新規登録物件数が減少したのは1年以上ぶりとなる。
エリア別にみると、取引のメインとなる愛知県が全体の数値とほぼ比例している。
今月の注目のマンション 「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」
次に、今月の注目マンション「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」を紹介する。東急不動産は、兵庫県西宮市池田町に地上35階、高さ128mのタワーマンションを計画している。総戸数は377戸。JR西宮駅南西地区市街地再開発計画の一環で、3つの街区のうちC街区に建設される。
関西エリアの住みたい街ランキングでも一、二を争う人気エリアでの開発とあって注目を集めている。128mという高さのタワーマンションは、西宮市内でもっとも高い建物になる。
交通ロケーションについて
「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」の交通ロケーションは、下記の通りだ。
・阪神本線・西宮駅まで850m、徒歩12分
※筆者の計測によります。エントランスの位置などにより変わることがあります。
エントランスからJR西宮駅南口まで直通の歩行者専用通路ができる。まだ詳細は分からないが、屋根付きであれば雨でも傘なしで移動できるかもしれない。
JR西宮駅から大阪駅までは快速で12分、神戸三宮駅は19分(JR三宮駅まで急行15分、そこから神戸三宮駅まで徒歩4分)。JR西宮駅は現在3本の線路が封鎖されて使われていないので、今回の開発を機に新快速停車駅になる可能性もある。阪神本線・西宮駅からは難波方面へも行ける。
現地の様子は
「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」の現地は着工したばかりで、2027年7月末に竣工する予定だ。接道は南側に幹線道路である阪神国道2号。
東側約30mの位置には、17階建てのヴィエント西宮がある。東向きの中層階までは視界に入りそうだ。北側にはすぐに線路があるため、六甲山方面の眺望は期待できそうだ。
周辺は駅前エリア、ショッピング施設を中心にドラッグストアやコンビニがあり、生活に困ることはない。
開発エリアに高い建物の計画はなく、全体的な眺望は良さそうだ。
「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」予想価格は
「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」の販売価格はいくらになるだろうか。現在新築マンションはJR西宮駅圏内に分譲されていないが、近くでは阪神西宮と今津駅のあいだで販売中のマンションがある。価格は4,830万~5,680万円、専有面積59.50㎡〜70.21㎡、坪単価では260万円台。
駅周辺の中古マンションは少なく、築年数が古いものが多いため参考にするには難しい。
しかし「(仮称)ブランズタワー西宮プロジェクト」は駅前といえるロケーションのため、西宮市のブランドエリアといえる西宮北口の相場、坪単価400万円近くになる可能性は十分ある。
現時点ではプランの設定などがわからないが、低層階は坪単価で300万円前後から、高層階で400万円、100㎡クラスの3LDKなら1億円超えもありえる価格帯になりそうだ。
まとめ
東京カンテイの調査によれば、2023年に販売された新築マンションの年収倍率は全国平均で10.09倍(前年比0.43倍拡大)と集計開始以来で初めて10倍を超えた。
三大都市圏では、首都圏が13.07倍(同0.6倍拡大)、近畿圏が11.32倍(同0.39倍拡大)、中部圏は9.27倍(同0.04倍縮小)となった。
首都圏・近畿圏では新築マンションの価格高騰が影響して倍率が拡大した一方、中部圏は新築価格の上昇に比べて平均年収の上昇幅が上回り、前年より倍率が下がっている。金利の上昇傾向を考慮すれば、2024年以降は首都圏と近畿圏でマンションが買いづらい状況が続きそうだ。今後は在庫が増える傾向になりかねず、市場の動きに注意していく必要があるだろう。
※関西圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県エリア
※中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県エリア
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