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新築マンション購入者の失敗例から学ぶ「現地見学」4つのチェックポイント新築マンション購入前の注意点(2)

2020年8月29日公開(2020年9月14日更新)
高田七穂:住生活ライター

マンションを購入する際、事前に周辺環境を十分に把握しているのとしていないのとでは、居住後の住み心地がまったく違ってきます。特に「青田売り」である新築マンションの場合は入居後、「想像と違った…」という不満の声も少なくありません。今回は、購入前には予想できなかった事例から、新築マンション購入前に必要な現地でのチェックポイントを整理していきます。(不動産・住生活ライター・高田七穂)

チェックポイント①
現地見学は曜日や時間帯を変えて何度も足を運ぶ

 実際に現地を見学しても、それが毎回同じ曜日や時間帯であれば、購入前には思ってもみなかった事態に遭遇することも。まずは2つの失敗例を見てみましょう。

ケース1 駐車場からなかなか出られない!

現地チェック:マンション駐車場
出所:PIXTA

 「現地には何度も足を運んだのですが、休日にしか見に行けなかったんですよね。全く気づきませんでした…」

 そう話すのは、ある都市に住むAさん。車通勤のため、住人分の駐車場が完備されているこのマンションが気に入って購入を決めました。マンションは幹線道路に面していて、すぐに駐車場から道路に出られて車通勤に便利だろうと思ったのです。

 ところが入居してみると、平日の朝の通勤時間帯は、幹線道路に車が列をなし、非常に混雑している状態。すぐ近くに交差点があり、赤信号で多くの車が止まっています。前後には、同じ時間帯にマンションを出る住民の車が並んでいて、なかなか車を動かすことができません。毎朝20分近く、車の列を見ながらわずかに車間が空くチャンスを待っているというのです。結局、朝の忙しい時間帯に余分な時間がかかることとなりました。

ケース2 暗い夜道を帰る娘が心配

 「“閑静な住宅地”というのが気に入って、あまり考えず、すぐに購入を決めてしまいました。でも、日が暮れると駅からマンションまでの道が暗いことが分かりました。うちには娘がいるのですが、帰ってくる時はできるだけ迎えに行くようにしています」

 Bさんはある街に永住を決めて、環境を重視した物件選びをしました。落ち着いた街の雰囲気は気に入っていて、住んで良かったと思っています。しかし、生活を始めてみると、駅からマンションへ帰る途中に、暗く人通りが少ない場所があることが分かったのです。

 Bさんが気がかりなのは中学生の娘さん。彼女が一人で帰ってくる時はとても心配だと言います。「ここには何度も見学に来ましたが、休日の昼間だけだったんですよ」と残念そうな口ぶりです。

■購入前に現地で日常生活をシミュレーションしてみよう

 AさんやBさんのように、現地見学に行っても、特定の曜日や時間帯に偏っていては、正確な情報を収集したことにはなりません。

 朝、昼、晩と時間を変えて行ってみることが大切です。また、違う曜日、天候が異なる日にも現地へ足を運びましょう。「忙しいから平日は行けない」というのは、一生に一度の買い物をするわりにはちょっとお粗末な考え方です。その環境は、これから何年も生活するエリアなのです。

 物件にターゲットを絞ったら、地図とメモを持って何度も行くこと。歩いている途中で気づいたことや疑問点をメモし、あとで営業マンに聞いてみるのもいいでしょう。

 また、現地では、日常生活を再現してみるのが有効です。電車通勤ならば、その時間帯に電車に乗って会社に行く、という“模擬行動”をしてみると、思わぬことに気がつくかもしれません。たとえば、

  • ・途中に開かずの踏切や、信号がなかなか変わらない道があった
    ・通勤経路に長期工事をしている道路があり、スムーズに幹線道路に出られない

    ・雨の日は電車が混むなど天候の影響を大きく受ける場所だった

 などです。また、帰りも会社から現地まで直接帰ってみましょう。この時、最終電車やバスの時間帯もチェックしておくことをおすすめします。

チェックポイント②
現地見学の際は図面を持参し、想像力を働かせる

 モデルルームでは、予想される眺望写真などを見ることができるものの、現地には必ず行くようにしたいものです。そして、実際にマンションが建ったときの状況をイメージしながら見学することが大切。それができていなかったために、購入後に「想像していた生活と違った…」と不満を話す購入者の失敗例を見てみましょう。

ケース3 隣接住戸の陰になって、午後は日が当たらない!

現地チェック:マンション日当たり
出所:PIXTA

 「建っていないものを買うのですから、もっと想像力を働かせるべきでした。建物が西から東に階段状になっているマンションなんですが、予想外だったのは、午後になるとすぐに日光が入らなくなることです」とCさん。

 このマンションは、住戸を斜めにずらして配置する「雁行(がんこう)型」と呼ばれる形状で、プライバシーが重視できるタイプとして人気がありました。

 「確かにスタイリッシュですし、独立感もありますね。でも、隣の突き出た住戸でうちが陰になるんですよ。午後は早い時間帯から日当たりがよくないんです。そこまでは想像力が及びませんでした。せっかく南向きなのに残念です…」とCさんは言います。

 マンションが建つのを楽しみに待っていましたが、実際に入居してみると、隣の陰でベランダや室内に日光が差さなくなることが分かったのです。予想外の出来事にCさんは残念そうです。

ケース4 事務所ビルに面したリビング!?

 部屋からの眺望が確認できなかったために、不満を持つことになった人もいます。

 「すぐ近くに事務所などが入ったビルがあるんですよ。こちらが電気をつけると、部屋の中が丸見えになるので、夕方の早い時間からカーテンを閉めなければなりません」

 10階建てマンションの7階に住むDさん。入居前は、周囲にそれほど高い建物がなかったため、眺めに期待していました。ところが入居してみると、リビングルームが近くにある雑居ビルの非常階段に面していることが分かりました。裏口ということもあってか、従業員たちがよくその非常階段を上り下りしたり、長電話している人も。なんとなく、話をしながらこちらを見ているような感じがして落ち着かないと言います。

■想像力を働かせながら現地をチェックしよう

 CさんやDさんのような状況を避けるために、現地ではパンフレットの図面集にある建物全体の平面図や立面図を見ながら、方角と照らし合わせたり、付近に高い建物があれば、居住予定の住戸と同じ高さ程度まで上って景色を確認するのもいいでしょう。その際、以下の点をチェックしておきましょう。

  • ・希望する住戸はどの位置になり、どの向きに面することになるのか
    ・部屋からの眺望はどうなるのか
    ・窓から太陽が差し込む時間はどのくらいか
    ・風が強すぎることはないか

 このように想像力を働かせることも必要になります。

チェックポイント③
生活に影響を与えるマンション周辺はよく調査する

 マンションの立地だけを気に入って、すぐに購入を決断するのはちょっと早すぎるかもしれません。生活を始めると、マンションを取り巻く広いエリアが自分の日常になり、生活に影響してくるからですモデルルームだけでなく、周辺環境をしっかりチェックすることも大切なポイントです。

ケース5 風にのって漂う匂いは、1km先の工場が原因!

 「風向きによっては甘いお菓子のような匂いが漂ってくるんですよ。子どもがお菓子食べたい、食べたいって騒ぐんですよね。私は甘いものが苦手だからちょっと気持ち悪くなる時があるんです。天気が良いのに窓を閉め切っている日もあります」

 と話すのは、新築マンションを購入したEさん。入居したマンションの1kmほど北側には、比較的大きな製菓工場がありました。風のある日は、工場から出る甘い匂いがマンションにまで運ばれてきます。こんな時は窓を閉めてしまうのですが、春先や秋口など過ごしやすい季節に、風を通せなくなるのが残念でならないと言います。

 Eさんの例は、良いほうだといえるでしょう。もし、これが工場の煙や不快な臭気であったなら深刻です。

 マンションの周りが住宅街であっても、近くの道路1本隔てただけで、がらりと環境が変わってしまうことがあります。グーグルマップのストリートビューなどを利用すれば、周辺の様子を見ることもできますが、実際に自分で歩き、五感を働かせることでしか得られない情報もあるのです。気に入った物件を見つけたら、建物の近くだけでなく、マンション周辺に行動範囲を広げて、実際に歩いてみることをおすすめします。

■商店街に行って、直接聞いてみるのもよし

 また、病院、商店街、スーパーなど、日常利用する施設からマンションまで歩き、自分の足で何分ぐらいかかるかを把握することも大切です。施設の定休日や営業時間をメモしておけば新しい生活がスムーズにスタートするでしょう。

 そしてもうひとつ、確認しておいたほうがいいのは学校です。子供がいる家庭の場合、どの学校がマンションの通学区内にあるのかを前もって調べておくことが必要です。

 一方、もし居住したいと思う場所が過去に震災や水害の被害を受けた地域であれば、当時の状況について知っておきたいものです。契約前の重要事項説明でも、水害リスク情報が追加されましたが、検討段階でも、自分でハザードマップなどで確認しておきましょう。また、こうしたマンションを取り巻く環境について、一番よく知っているのは、昔からそこに住んでいる商店の人などです商店街に足を運び、気軽にたずねてみるとよいでしょう。自分が気づかなかったことまで教えてくれることもあります。

チェックポイント④
マンション建設の反対運動があることも

 マンションを取り巻く環境は、周辺環境や地盤など立地に関することだけではありません。マンション建設そのものに周辺住民が反対するという事例もあります。

ケース6  現地に「マンション建設反対」の看板が

新築マンション建設反対運動
出所:PIXTA

 あるマンションの購入を検討中のFさん。ある日、早めに現場を見ておこうと思い、基礎工事が始まったばかりの現地へ出かけてみました。しかし、そこで目にしたものは、建設反対運動の看板の数々。すっかり嫌気がさしてしまい、ほかのマンションを探すことにしました。

 「いやあ、現地を見に行ったらね、周り中“マンション建設反対!”の看板ばかりなんですよ。なんか不愉快になって、買うのをやめました」

ケース7 建築前のいざこざが原因で無視される?

 ある新築マンションを購入して、自治会長になったGさんがぽつりと言いました。「地域の自治会の会合でね、マンション周辺の戸建て住民で僕らを無視する人たちがいるんですよ」

 Gさんは、地域の自治会長が集まる会に何度か顔を出しています。会では、地域の問題について話し合われていますが、Gさんを無視する人が何人かいるのが気にかかっていました。

 「運動会とか防災訓練とか、地域の活動もあるし、できたら上手にやっていきたいんですけどね。どうやら建設前に近隣ともめたらしいんです。結局不動産会社がゴリ押ししたらしいんです」とGさん。

 Gさんはその後、マンションの理事会で近隣との関係を取り上げ、自治会担当を2人に増やしました。そして、マンション内にある会議室や運動施設を近隣の人たちに開放し、関係修復のために努力を重ねました。そして今では、戸建てとマンションの住民が一緒になって運動会を開催できるまで関係を修復することができました。

 Gさんはそれまでのトラブルを知らない居住者で、近隣関係を作ってきました。「地道に時間をかけて取り組んできましたよ。やっぱり災害が起こった時なんかには地域の力が大きいでしょう」と言っています。

■周辺住民とのトラブルがないかをチェックしよう

 新しくマンションを建てる場合、近隣では、各自治体に定められた条例に基づいて説明会などが行われます。ただし、一定規模以上の計画であることなど、条件に合致している場合が対象で、それ以外は説明会が行われないこともあります。また、説明会が開催されたとしても、一方的な内容になることがあり、対応は不動産会社の姿勢に任されています。

 思わぬトラブルに巻き込まれないためには、周辺住民とトラブルがないか、しっかり下調べをしておくことが大切になるでしょう。反対運動があるからといって購入をやめる必要はありませんが、入居後、地域との交流を一層意識した暮らし方が必要になるのではないでしょうか。

現地での生活をイメージしながら見学することが失敗を防ぐポイント!

 ここまでさまざまなケースを紹介してきましたが、現地見学の際に周辺環境まで十分にチェックできていれば防ぐことができたケースです。

 ほかにも、近くに幹線道路や航空機の飛行ルートがあり、大きな音が発生する可能性がある場合は、特に音に意識を向けてみることも大切です。最近では、都市型集中豪雨で1階住戸やエレベーター、駐車場が水害にあった話もあります。マンションがくぼ地に建っていたり、駐車場などが地盤面より低く設計されていたりしたことなどが原因のようです。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で立地の災害リスクを確認することなどはもちろん、気になる点は、営業担当者に聞いてみましょう。

 購入するマンションが建設前の新築マンションの場合は、現地チェックが特に大切になります。後悔することがないように何度も現地に出かけて、できる限り生活イメージを広げ、細部を確認しておくことが、失敗を防ぐためのポイントです。

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