マンション購入後に不動産会社(デベロッパー)が倒産すると、最悪のケースでは手付金が戻らない可能性があります。こんなときのために「手付金等の保全措置」を知っておくのは大切です。また、アフターサービスへの対応、「住宅瑕疵担保履行法」の適用範囲、不動産会社の見分け方も知識として頭に入れておくことで、今後起きるであろうトラブルへのリスクはぐっと小さくなります。(不動産・住生活ライター・高田七穂)
不動産会社が倒産したら、手付金は返還される?
コロナ禍により、さまざまな業種の将来に暗雲が垂れ込めています。2008年のリーマン・ショック後、倒産してしまった不動産会社も少なくありません。近年、マンション分譲は体力のある財閥系を中心とした大手にシフトしているものの、地元で事業を続ける中小企業の不動産会社もあり、どのような場合でも経営に注視していきたいものです。
もし、入居後に不動産会社(デベロッパー)が倒産したらどうなるのでしょうか?
不動産会社の倒産で大きな問題となるのは、マンションの売買契約を行う際に支払った手付金が返還されるのか、ということです。
手付金は未完成物件の場合、物件価格の5%(または1000万円)を超えていれば、「手付金等の保全措置」が取られます。売主である不動産会社が倒産しても、指定保証機関が売り主と連帯して手付金を返済する義務を負うことになります。ただし、5%(または1000万円)以下の金額を支払った場合には、その範囲ではありません。
そのため、未完成物件の手付金は必ず5%以上を支払い、保全措置の対象となっており保証証書などがあるかを確認しましょう。ただし、「不動産会社が倒産した物件はイメージが悪い」などと引き渡しを自分から取りやめると、自己都合解約とみなされ、手付金が戻らない可能性があります。
居住後のアフターサービスは受けられる?
マンションを購入しても不動産会社との関係は続きます。これは、不動産会社には居住後の一定期間、売買契約に基づき無料で補修を行う「アフターサービス(無償点検)」があるからです。
たとえば、入居後、「扉の立て付けが悪い」「換気扇に作動不良がある」といった不具合に気づくかもしれません。こういったとき、購入者は、事前に受け取る「アフターサービス規準」に定められた範囲であれば、一定期間、費用の負担なしに修理を行ってもらえます。
ただ、アフターサービスは不動産会社があくまで「サービス」として行っているものです。修理に対して、法的な定義があるわけではありません。もしも不動産会社が倒産し、補修工事の期限到来に気付かないままでいると、修理はされなくなるかもしれません。
そこで、不動産会社の倒産を知ったときにはすぐに管理会社に連絡をして、マンションを施工した建設会社に、アフターサービスに対応してくれるか、確認してもらいましょう。実際に修理を行うのは、建設工事を請け負った建設会社ですから、無償点検期間内で建設会社の不備による不具合であれば、受けてくれる可能性があります。
ただし、交渉には時間を要す場合もあります。さらに、建設会社も倒産している場合、アフターサービスを受けることは難しくなりそうです。そのため、入居したらすぐに、アフターサービスがいつごろ行われるのかを確認しておきましょう。
構造部分の補修は「住宅瑕疵担保履行法」でカバーできる
もし、入居後に雨漏りなどの大きな問題が発生しているのに、不動産会社が倒産してしまっていたら、どうなるのでしょうか。
そんなときのために、不動産会社がかけた保険や供託金を元に、契約不適合に該当する箇所の修繕ができる「住宅瑕疵担保履行法」という法律があります。
この法律が対象とする修繕部分は、雨水の浸入などを防ぐ箇所などの基本的な構造部分に限定(図表1参照)されていますが、管理組合は得られる保険金などで修繕費用を賄うことになります。
あくまで基本的な構造部分のみとなるため、万全とは言えませんが、覚えておいて損はないでしょう。ただし、不具合が構造部分でないうえ、売り主が倒産していれば、自分たちで補修しなければならなくなります。
【図表1】住宅瑕疵担保責任の範囲は?
不動産会社の倒産により、入居後のマンション管理に影響は及ぶのか?
入居後は、不動産会社の子会社(グループ会社)の管理会社に、マンションの管理を委託するケースも少なくありません。しかし、親会社の倒産により、グループの管理会社が連鎖倒産することも考えられます。
このような事態になると、不動産会社は経営立て直しのため、子会社である管理会社を売却することがあります。そうなると、新たに親会社となる不動産会社の経営方針が、以前の不動産会社の意向と異なり、マンション管理に影響を及ぼすことが予測されます。
たとえば、新しい親会社の指示で、管理会社は管理組合(住民)に対し、管理会社に毎月支払う「管理委託費用」の値上げを要請してくるかもしれません。管理会社への委託費を増やした場合、将来的に各戸が毎月支払っている管理費をアップせざるを得なくなる可能性が出てきます。
ここで管理組合が値上げに「NO」と言えば、管理会社側から「管理は受けられません」といわれる事例も出てきそうです。そうなると、今までと同額で管理を受けてくれる会社を探すことになりますが、新しい管理会社の選定は大変なうえ、管理の質がどうなるかは分かりません。
このように、不動産会社が倒産すると、購入者にさまざまな影響が及びます。リスクを最小限にするためにも、可能な限り購入前にデベロッパーの情報を得ておきたいものです。
営業マンの対応で、信頼できる会社かどうかを判断する
マンション選びの際、営業マンの対応から会社の実力を見極める方法があります。たとえば、ある人はモデルルームへ行く時に、下記のような自分たちで作った営業マンへの質問表を持参することにしています。
- ・床下配管の通り道は?
- ・各設備の寿命と取り換え方法は?
- ・トラブルがあったときの窓口と対処方法は?
- ・最近のマンション市場の動向は?
このような幅広い質問をしていくうちに、「大丈夫です。それは責任もってやりますから」と言うだけでそれ以上説明しない営業マン、一方で、図面を出して理由を説明したり、「設計の担当部署から回答しますから、こちらに質問の詳細をご記入下さい」と答える営業マン、あるいは質問表を見ただけで不愉快そうな感じの営業マンなど、対応の差がいろいろと見えてきたと言います。
ここで、営業マンが新人ということもありますから、答えられないことが多い人だなと思ったら、一度は担当者を代えてもらいましょう。それでも返答がはっきりしないようなら、不動産会社の姿勢の問題ではないでしょうか。
モデルルームで見る営業マンの姿勢は、信頼できる会社かどうかを判断するひとつの材料となりそうです。
最新の企業情報をチェックし、安心できる不動産会社を見極めよう
しっかりと不動産会社のチェックをしたいのであれば、会社の現状を調べてみることをおすすめします。上場会社なら、会社のホームページで財務体質などをくまなくチェックしてみます。どんな団体に加盟しているかというのも参考にします。また、大手の建設会社にどの程度、マンション建設を依頼しているかといったこともポイントになりそうです。
さらに、知り合いに不動産関連の業務に携わっている人がいれば、気になる会社のことを尋ねてみましょう。このようにいろいろな方向から調べることがポイントです。また、不動産業界は入れ替わりの激しい業種です。バブル期以前に設立され、リーマン・ショックも乗り越えてきた企業であれば安心感は高まります。
このように、不動産会社の倒産の危険性を察知するには、営業マンの顧客対応や会社の財務状況のチェックなどが重要になるでしょう。トラブルを避けるためには、できるだけ事前に調べるようにしたいものです。
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