晴海フラッグといえば、抽選の高倍率や転売ヤー(商品を高値で転売する人たち)の出現など、話題にこと欠かない。とうとうタワーマンション「HARUMI FLAG SKY DUO」も発売され、盛り上がりに拍車をかけている。そもそもなぜこんなに話題になっているのか? その魅力はどこにあるのか? 転売ヤーからでも買うべき物件なのか、など考察してみた。(マンショントレンド評論家・日下部理絵)
晴海フラッグはなぜこんなに人気なのか?
「きゃぁあああー本当?!」
「当たったの?! 信じられない!!」
歓声をあげる人、涙ぐむ人、なかには驚きのあまり倒れる人もいたという。これは、「晴海フラッグ」抽選会場での出来事である。
例えば、最終期の抽選結果は、販売戸数631戸に対して5546組の応募があり、平均倍率は約8.7倍。「PARK VILLAGE」の最高倍率は最上階の部屋で111倍、「SUN VILLAGE」の最高倍率はなんと266倍。これだけの高倍率なら歓声もうなずける。
晴海フラッグは、東京都が所有する中央区晴海5丁目にある東京国際見本市会場跡地の約18ヘクタールを、都および三井不動産レジデンシャルなどデベロッパー11社が開発した。この場所はオリンピックの選手村が建設されていたことでも有名な土地だ。
計画戸数は24棟5632戸で、うち商業施設が1棟、賃貸住宅が4棟1487戸、7割超にあたる19棟4145戸が分譲対象となっている。
この分譲対象のうち、タワマンに対して“板マン”といわれる板状のマンションは17棟2690戸。そして、地上50階建ての超高層免制震タワーマンション2棟「HARUMI FLAG SKY DUO」が1455戸を占める。
この2棟は「SUN VILLAGE」と「PARK VILLAGE」の街区(下記の図参照)、それぞれに1棟ずつ建設される。
晴海フラッグがここまで盛り上がったのは、周辺相場から考えたときの圧倒的な価格の安さだ(その他の魅力やデメリットに関しては後述する)。
そして、最終販売期を終えている板状棟に関してはデベロッパーからの直接購入は難しい状況である。ここで出現したのが、物件を転売して利益を得ている転売ヤーの存在なのだ。
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なぜ、転売ヤーが出現しているのか?
先にいうと転売ヤーは、意図してそうしている、していないにかかわらず、どの物件にも少数ながらわりと存在する。
そして転売ヤーほどの目利きと言われるプロから見ても、晴海フラッグは最寄り駅の都営大江戸線・勝どき駅まで最短で徒歩16分、海沿いの埋立地という立地を疑問視する声が当初はあった。
しかし、2013年ごろから新築マンションの価格高騰が止まらない。
それはアベノミクスに端を発した日銀の金融緩和策、東京オリンピック・パラリンピック決定による建設需要の高まりにもかかわらず、建設業界の人手不足による人件費増や、建築資材・燃料費などの値上がりによって建築費が上昇したことが主な要因とされる。
また、インバウンドの増加も、商業施設との用地取得の競合により、地価上昇に拍車をかけた。
さらに、ウクライナ戦争や、マンションを「終の棲家(ついのすみか)」とする世帯の増加、超パワーカップルと呼ばれる共働き世帯の増加、バブル期とは違う低金利による住宅ローン返済の負担減、売り急がないデベロッパーの姿勢もこの動きを後押しした。
こうした地価・建築費の上昇要因、社会情勢の変化という複合要因により、マンション価格は上昇を続け、頭打ちが見えない状況だ。こうした要因が、晴海フラッグの割安感をさらに際立たせている。
この価格高騰の状況をチャンスと見た成約者の一部が、
転売価格は? 上乗せ価格でも買い手がつく理由
気になるのは、その価格だ。
不動産検索サイトを見ると、たとえば売出価格8000万円台だった部屋が1億6000万円台、売出価格5000万円台だった部屋が9100万円で販売されている。
つまり、転売価格はおよそ2倍!
坪単価も200万円台から、400万〜500万円台に跳ね上がっている。もしこの価格で売れれば、不動産業者に払う仲介手数料や諸費用、税金などを引いてもゆうに数千万円はもうかるであろう。
当然ながら、売り出しても買い手がつかなければ、もうからないわけだが、この「転売価格」が上乗せされた晴海フラッグは、
おそらく高すぎなければ、時間はかかっても売れるというのが多くの投資家(転売ヤー)の見解である。
それは、
ここ数年間の都心のマンション価格高騰で、転売価格が上乗せされたとしても無抽選で確実に買えるのなら、許容範囲と感じる人はいると思われるためだ。
まさに抽選に当たらない希少性、新線(湾岸地下鉄)や街の発展が見込める将来性などの魅力、また皮肉にも話題になっていることが、興味や関心をひき購入者の需要をアシスト、結果として受給のアンバランスに拍車をかけている。
またデベロッパーの気持ちを考えると、これだけの戸数をさばくのは至難の業である。たくさん買ってくれるに越したことはないというのが本音であろう。
似たようなケースで、2008年に竣工した「シティタワー品川」がある。72年の定期借地権のため、破格の安さで販売され、抽選倍率が数百倍になった部屋もあった。
そのため、当初から5年間は転売、賃貸の禁止、自己居住専用という条件が設定され、違反が判明した場合は10%の違約金を引いてデベロッパーが買い戻すという買い戻し特約までつけられた。
晴海フラッグにはそのような制約がないため、次々と転売する購入者が現れたのである。いま思えば、はじめから条件を設定すればよかったし、引き渡し後も多くの売り物件が出る可能性が高いのではないだろうか。
どうしても晴海フラッグが欲しい…転売物件を買うのはあり?
まずは「HARUMI FLAG SKY DUO」を検討
どうしても晴海フラッグが欲しいが、抽選に外れた、どうすべきか、と悩んでいる人も多いであろう。転売物件を買う前に価格帯が合うのであれば、現時点では「HARUMI FLAG SKY DUO」にチャレンジすべきである。
先に発売された板状棟ほどではないものの、晴海、勝どきなどで分譲されてきたタワーマンションなどの新築、中古相場と比較するとまだ割安感もある。そして、板状棟は中古ともいえるが、「HARUMI FLAG SKY DUO」は新築である。
おそらくチャンスは数回あるし、転売ヤー対策として、個人でも法人でも1名義2戸までの申し込みという販売制限もかかり、以前よりは当たりやすいのではないか。
もし、すべて抽選に外れてしまったら、その時にはじめて転売物件を視野に入れるとよいというのが筆者の意見だ。ただし、転売物件は価格のみならず、デベロッパーによるアフターサービスなどの保証がない点は注意したい。
ちなみに、若干戸数、板状棟の販売もあるという話も聞こえてくる。実際のところは不明であるが、少なくともキャンセル物件は出てくるのではないだろうか。
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引き渡し後、中古物件を検討する
そして晴海フラッグに限らず、大型物件に多い傾向にあるが、中古物件が歯抜けで売りに出てくる際、早く売却したいがために、値下げ合戦が起こる可能性が高い。
晴海フラッグは、物件数が多いだけに常に数十~100近い部屋が売りに出ていると推察できる。
さらにシティタワー品川のように5年間は転売、賃貸の禁止、自己居住専用という条件がないため、引き渡し後からもたくさんの部屋が売りに出てくるだろう。
そのため、その際に再度、購入を検討するのもありだ。資金力のある転売ヤーと違い、個人の所有者であればそこまでふっかけにくいとも思える。
むしろ、心配なのは購入後、将来的に買い替えを検討するときである。常に売り物件が多いと推察できるだけに希望価格で売却できるか、そもそも売ることができるかが懸念される。その出口戦略についてはしっかり考えておいたほうがいいだろう。
【関連記事】>>晴海フラッグの転売住戸を買ってもいい? 住宅ローンが通らない可能性があるなど、注意点を要チェック!
晴海フラッグの魅力とデメリットとは
最後に晴海フラッグの魅力とデメリットに関して、改めてまとめておきたい。
晴海フラッグの魅力
なんといっても18ヘクタールという規模の大きさ、東京都中央区アドレスにもかかわらず周辺相場からして圧倒的な価格の安さが挙げられる。さらに、将来性やオリンピックレジェンドとしての付加価値もあるであろう。
ただマンションが建つのではなく、「街全体」が一体となって開発。分譲住宅・賃貸住宅に住む人の利便性を第一にした道路などが作られ、バリアフリーな街並みが同時に準備される。商業施設、保育施設、介護住宅などの整備も進められている。
個人的には、街全体をつなぐエリアネットワークWi-Fiはテレワークがしやすそうだし、街中に51個もある共用室や、街の交流拠点の創出は、カルチャースクールさながらのコミュニティが生まれるのではと期待せずにいられない。
混み合いそうではあるが、全住民がタワー棟「HARUMI FLAG SKY DUO」48階を相互利用できるのは、板状棟の購入者にとってもメリットであろう。共用施設に関して街区を横断した複層的な使い方を想定しているのは、他のマンションにはない面白い試みとも言える。
さらに2つの公園、スーパーマーケットなどの商業施設、小中学校、保育施設などが街の中にそろっており、子育て世代にはありがたい環境である。
規模が大きいため、晴海フラッグ内で完結できることも多い。そのため、眺望やBRT(バス高速輸送システム)までアクセス、生活利便施設への距離など生活のしやすさも晴海フラッグ内での資産価値に関係する。
晴海フラッグのデメリット
一方で価格は安いが、最寄り駅「勝どき」駅まで、各棟入り口から16分から20分超。棟内移動などを加味すれば30分以上と、交通利便性に疑問符がつく。
虎ノ門、新橋までBRTでつながり、都心部への通勤はむしろ快適。いずれ湾岸地下鉄が実現するだろうから気にしないという声も多いが、通勤を主体とする勤労者には決して良い条件とはいえないだろう。
また気になるのが、引き渡し時期の大幅な遅延だ。当初の予定では、2020年に五輪が終了した後に改修して、2023年3月ごろから購入者への引き渡しが始まることになっていた。しかし、新型コロナの影響で五輪は1年延期、引き渡しも後ろ倒しになった。
つまり、築浅とはいえるものの築4年から5年経過した物件になるのだ。立地から海風をまともに受けているため、今後の大規模修繕工事なども少し早めに覚悟しておく必要がありそうだ。
実際に毎月支払わねばならない管理費、修繕積立金の合計額も、板状棟のSUN VILLAGEで27,000円から50,000円、SEA VILLAGEで40,000円から56,000円となっている。
駅から遠いため車利用で補う人も多そうだが、そうなると駐車場代もばかにならない。駐車場の使用料も月額28,500円から36,000円と分譲マンションの駐車場使用料としては決して割安とはいえない。
つまり、晴海フラッグを買ったのちも、車まで所有すれば毎月住宅ローン返済などとは別に55,500円から90,000円以上の負担を求められることになる。
晴海フラッグは「未来型都市団地」である
晴海フラッグは、まさにレガシーにふさわしく、東京のどまんなかに新しく造りあげられた「未来型都市団地」である。約12,000人がこの街でどのようなドラマを繰り広げていくのか、楽しみで仕方ない。
人生で一番高い買い物ともいわれるマイホーム。ライフスタイルを鑑みて、「自分たちが住居に何を求めているのか」を今一度、じっくり検討し、くれぐれも後悔のないよう慎重に選んでいただきたいものだ。
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