2024年2月22日、日経平均株価がバブル期の1989年12月29日につけた史上最高値3万8,915円を34年ぶりに更新した。好調な株式市場は、富裕層の資産形成にもつながり都心部のマンション市場にもプラスの影響を与えている。一方で、2023年の出生数は75万8631人となり過去最少を更新。少子化が進んでおり今後の不動産市場への影響が懸念されるところだ。今回も首都圏の新築・中古マンション市況を解説していく。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
全国の2023年新築マンション市場動向は? 供給戸数1位は三井不動産レジデンシャル
まずは2023年度の新築マンション市場動向について見ていく。新築マンションの販売戸数は、首都圏と地方圏ともに建築費上昇の影響を受け、全国的に減少傾向である。また売主・事業主別の供給は、JV開発を含め再開発を伴う大規模マンションの供給実績がある企業が上位を占める傾向になっている。(出典:不動産経済研究所)
全国の新築マンション供給動向(出典:不動産経済研究所)
2023年の全国の発売戸数は6万5,075戸で、前年の7万2,967戸よりも7,892戸、10.8%の減少となった。平均価格は790万円アップの5,911万円、1㎡単価は12.7万円アップの92.0万円。ともに7年連続で最高値を更新。
首都圏の販売戸数は2万6,886戸で、前年比9.1%減少、近畿圏1万5,385戸で、13.8%減少、東海・中京圏6,144戸で3.3%減少と3大都市圏すべてで減少した。
地方圏は、北海道1,574戸で26.3%減少、東北地区1,656戸で43.8%減少、首都圏以外の関東地区は1,461戸で25.4%減少、四国地区405戸で65.9%減少、九州・沖縄地区8,111戸で4.0%減少となった。
一方、北陸・山陰地区は617戸で12.4%増加、中国地区2,836戸で44.7%増加。地方都市では、北陸新幹線の延伸が予定されている北陸・山陰地区の供給が伸びるなど供給動向が分かれた結果になった。
主な地方中核都市の発売戸数と前年との比較は、札幌1,543戸で22.0%減少、仙台市900戸で40.8%減少、名古屋市4,470戸で11.0%減少、広島市1,508戸で119.2%増加、福岡市2,946戸で15.6%減少。広島市以外は、減少している。
首都圏と同じように地方圏でも建築費上昇の影響は大きく受けている。いわゆるパワーカップルが需要を支える首都圏市場と異なり、仙台市などの地方都市では、共働き層でも予算を抑える傾向がある。建築費上昇の価格転嫁が難しければ、今後さらに供給が減るかもしれない。
売主・事業主別供給傾向(出典:不動産経済研究所)
また、売主・事業主別発売戸数は下記の順位になっている。三井不動産レジデンシャルは、2013年以来10年ぶりの全国1位となった。
2位 プレサンスコーポレーション3,390戸
3位 野村不動産3,061戸
4位 住友不動産2,859戸
5位 三菱地所レジデンス2,093戸
首都圏のTOP5は下記の通りだ。
2位 野村不動産2,262戸
3位 住友不動産2,011戸
4位 三菱地所レジデンス1,720戸
5位 日鉄興和不動産1,147戸
全国上位5社のうち4社が首都圏上位の企業で、建築費が上昇する中で首都圏の供給戸数が多い企業が上位を占める傾向になっている。
供給上位の企業は、JV開発を含め再開発など大規模マンションの供給実績が多い。首位の三井不動産レジデンシャルは、「幕張新都心若葉住宅地区」(幕張ベイパーク)において、他6社と共に推進する分譲住宅事業第3弾の「幕張ベイパークミッドスクエアタワー」(分譲済み)が2024年2月27日に竣工。スケールの大きな街づくりを着実に進めている。
今年も総戸数807戸の「パークシティ中野 ザ タワー」、総戸数768戸の「幕張ベイパーク ライズゲートタワー」、総戸数2046戸の大規模複合再開発「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」の供給が控える。
これから企画が始まる大規模マンションは、建築費上昇の影響をさらに受けるのは必至で、3物件とも注目を集めそうだ。
また、存在感を示しているのが首都圏で2年連続5位に入った日鉄興和不動産。全戸完売した総戸数1000戸の「セントガーデン海老名」など、大規模プロジェクトの供給が目立つ。都心8区を中心にマンション用地の仕入れを進めており、2024年2月22日に、総戸数815戸地上34階建て超高層分譲タワーマンション「リビオタワー品川」と総戸数522戸の「リビオシティ文京小石川」(定期借地権)を発表した。
ともに都心の人気エリアだけに注目を集めそうだ。
最新の首都圏新築マンション市況【2024年1月度】
続いて、2024年1月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。
2024年1月度は好調を示す結果となっている。新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べ402戸増加の1,112戸。契約率は、前年同月比18.2ポイントアップの72.8%だ。また、首都圏新築マンションの1戸当たり平均価格は、前年同月比で22.2%アップの7,956万円となっている。
また、販売在庫は5,921戸で、前月よりも366戸の減少。2023年1月末の販売在庫は5,610戸だったので、昨年対比で在庫が若干の増加となった。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。契約率は好調ラインの70%を上回る結果となった。
首都圏新築マンションの地域別の発売状況
続いて、首都圏新築マンションの地域別の発売状況について詳しく見ていく。
エリア別の平均価格を見ると、東京23区が前年同月比で36.7%アップの1億1,561万円。東京都下が9.7%ダウンの5,288万円、神奈川県が14.6%アップの6,297万円、埼玉県が0.2%ダウンの4,989万円、千葉県は、63.0%アップの6,592万円。
千葉県の大幅な上昇は、浦安市で全戸80㎡超の「プラウド新浦安パークマリーナ」の第1期販売がスタートした影響だ。こちらは、発売住戸の9割超に申し込みが入っている。東京23区以外でも、都心アクセスが良好な場所は、価格が大きく上昇しているということだ。
地域別で見ると、好不調の目安となる契約率70%を上回ったのは、都下と神奈川県。供給戸数が、前年同月比で大きく伸びている都区部や千葉県も65%を上回っており、新築マンションの売れ行きの堅調さは、維持されていると言えそうだ。
首都圏の中古マンション市況【2024年1月度】
続いて、中古マンション市場を見てみよう。前月に続き好調に推移している結果となった。
2024年1月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比5.0%上昇の2,711件と8カ月連続で対前年比プラスになっている。
成約価格は、前年同月比13.7%上昇の4,860万円。平均成約㎡単価も対前年同月比11.2%上昇の75.98万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、45カ月連続となる。地域別では、成約件数について神奈川県以外は増加。成約㎡単価は、すべての地域で上昇した。
また、2024年1月の新規登録物件の㎡単価は、74.93万円となっていて前月よりも-0.4%、前年同月比で-0.5%となった。
2024年1月の新規登録物件数は、対前年同月比で0.4%減少の16,526件。在庫件数は、先月よりも増加し47,449件となっている。前年同月比で8.6%増加しており高水準が続く。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが、2023年夏以降は、鈍化している。
次に地域別の中古マンション動向を見てみてみよう。
2024年1月度の成約㎡単価(前年同月比)は、
地域別の新規登録物件数を見ると、都心、城南、城西、城東、城北と東京23区は、対前年比で売物件数が減少している。
首都圏全体でみると、中古マンション在庫は増加しているものの前述のエリアは、在庫が減少もしくは横ばいで推移している。新築マンション価格がさらに上昇すれば、もう一段価格が上昇するかもしれない。
湘南エリア最高層となる地上29階建て「THE TOWER 湘南辻堂」
次に、今月の注目マンション 「THE TOWER 湘南辻堂」を紹介する。
「THE TOWER 湘南辻堂」は、JR東海道線辻堂駅東口徒歩2分に誕生する湘南エリア最高層となる地上29階建、商業施設との一体型駅直結複合タワーだ。
建物内には、高層棟の5〜29階部分に総戸数196戸の分譲マンション、高層棟 1〜3階部分および低層棟には商業施設が入る。辻堂駅の東改札から広がるペデストリアンデッキをレジデンスフロアまで延長し駅直結2分となる予定だ。
その注目度は高く、2023年12月1日からの物件エントリー数は東京都内からの約1,000件を含む4,000件超となっている(2024年2月22日時点)。このエリアで、新築タワーレジデンスが分譲されるのは14年ぶりとなる。
辻堂駅からは、東京駅・上野駅方面のJR東海道本線(上野東京ライン)と新宿駅方面のJR湘南新宿ラインの2系統が停車。東京駅までは約50分台、新宿駅までは約60分台と都心とスムーズに結ばれる。
物件の外観、住宅エントランスなどのデザインは、GLAMOROUS co.,ltd. CEO/デザイナー森田恭通氏を起用。緑と海という自然に恵まれた街「辻堂」と共存し、寄り添うようなデザインを提案している。
ライフシーンに合わせ、ワークラウンジやオーナーズラウンジ、ゲストルームなどの共用施設も用意されている。
モデルルームを見学して感じたのが、湘南エリアの眺望価値。辻堂海岸に向かって第一種低層住居専用地域が広がる一戸建て中心の街区。中層階からも海と美しい街並みが広がる。東側には、片瀬江ノ島などの景勝地が、西側には富士山(高層階のみ)。これだけぜいたくな眺望には、早々出会えないだろう。
モデルルームタイプ(18階相当)のリビング・ダイニングの天井高は、約2.5m確保しておりとても開放的。コーナーサッシを採用し空間に広がりを感じる。各居室も柱型がなくスッキリとしたつくりで、アーバンリゾートといった雰囲気だ。
建物2階部分と辻堂駅南口がデッキで結ばれるのも魅力で、辻堂駅北側の開発街区「湘南C-X」には、テラスモール湘南や湘南藤沢徳洲会病院など多くの都市機能が集積。辻堂駅を起点に便利で快適な暮らしがかないそうだ。
まとめ
インフレによる物価上昇が続く中で、賃上げの行方が今後の不動産価格にも影響を与えそうだ。また、若手社員の人材獲得競争が激化する中で初任給の引き上げに動く企業も多い。近年は、資産形成も兼ねて20代からマンション購入を検討する人も目立つようになったという話も聞く。
非課税期間が無期限となる新NISA制度も新たにスタートする中、20代のマンションの購買行動がどうなるかも気になるところだ。
マイナス金利解除の予想が強まる中、東証市場に上場する不動産投資信託の株価指数である東証リート指数は弱含みで推移している。価格上昇の局面だからこそ、自分にとってのマンションの価値をよく見極める必要がありそうだ。
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