2024年2月の首都圏マンション市場は堅調で好調さを維持している。新築市場では供給減や契約率の下落が一部見られるも、中古マンション市場は好調。引き続き、価格は上昇傾向で、3月26日に発表された地価公示においては、地価上昇が注目される。地価公示にも触れながら、今月も2024年2月度の首都圏新築・中古マンション市況、注目のマンションを紹介していく。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
2024年地価公示発表! 新築マンション価格との関連性は?
2024年3月26日、国土交通省から2024年1月1日時点の地価公示が発表された。
地価公示は、地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が、一般の土地の取引価格の指標とすることなどを目的に、都市計画区域等における標準地を選定。毎年1月1日時点の1㎡当たりの正常な価格を判定し公示するものである。
わかりやすく言うならば、一定の決まりに基づいて、国から公表される土地価格であり、それが土地取引の指標となる。つまりは住んでいる土地や、住もうと思っている土地が今いくらなのか。その目安になるものだ。
まず、全国平均価格では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で前年度より上昇。上昇率も拡大している。
全国のエリア別に見ると、価格が上昇した都道府県の数は、住宅地が前年の24から29へ、商業地が23から29へと増加している。その中でも5%を超える上昇率を示したのが住宅地では沖縄県、福岡県、商業地では福岡県、東京都、神奈川県、千葉県、京都府、大阪府、北海道だった。
東京圏住宅地の変動率
そのほか、半導体工場の進出によってオフィスや住宅需要が拡大している熊本県や北海道千歳市の住宅地や商業地の伸びが顕著だ。また、北海道の富良野市や長野県白馬村といったインバウンド需要が伸びている地域の地価も大きく上昇している。
首都圏の住宅地では、子育て層の注目を集めている流山市が上昇率上位に。その変動率は、10.1%となっており、東京圏住宅地変動率1位の市川市の10.6%次ぐ2位となっている。また「流山市おおたかの森南1丁目9番16」エリアの地価公示は、32万円/㎡で、変動率は+17.2%という高い上昇率となった。
ちなみに3位は、浦安市の9.9%。上位を都心アクセスの良い千葉県の市区が占める。この地域は、中古マンション価格の上昇も目立っている。
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東京23区の地価も堅調だ。都区部・住宅地の変動率は5.4%上昇、商業地は7.0%上昇と高水準。経済活動の復活でテレワークから通勤への移行が進みオフィス需要も堅調。さらに、インバウンド需要は、2024年2月度に訪日外国人数が単月で過去最高になるなど急上昇。東京都消費者物価指数2024年2月度(速報値)によれば、宿泊料は前年同月比で33%もの上昇となっている。
日鉄興和不動産株式会社がレジデンシャルホテル第1号となる『& Here TOKYO UENO』を2024年3月に開業するなどホテル事業に進出・拡大する企業も目立つようになってきている。
浅草や上野などのコンテンツがある台東区の商業地変動率は、東京23区トップの9.1%。千代田・中央・港の都心3区に限らず中野区・杉並区・豊島区・荒川区の商業地変動率も8%以上。東京23区すべての地価が上昇傾向を示している。
今後、ホテル事業とマンション事業の用地取得競争の激化も予想されホテル需要の高い立地の新築マンション価格は、用地費の上昇を踏まえると下がりにくい状況だ。通常、用地取得からマンション分譲に至るまでは一定期間を要する。建築費も高止まりしており、東京23区の新築マンション価格は原価ベースで考えると数年先まで上昇しそうだ。
最新の首都圏新築マンション市況【2024年2月度】
続いて、2024年2月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。前月と比べると、落ち込んで見えるものの、まだまだ好調をキープしていると言える結果だ。
2024年2月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べ502戸減少の1,319戸。前年同月比で27.6%ものマイナスとなる。契約率は、前年同月比3.4ポイントダウンの69.9%となっている。
また、首都圏新築マンションの1戸当たりの平均価格は、前年同月比で346万円、5.1%アップの7,122万円となった。
販売在庫は5,748戸で、前月よりも173戸の減少。2023年2月末の販売在庫5,452戸だったので、昨年対比で在庫が若干の増加となっている。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。契約率は好調ラインの70%を下回る結果となったが、ほぼ横ばいと言えるだろう。
首都圏新築マンションの地域別の発売状況
首都圏新築マンションの地域別の発売状況は下表のようになっている。
首都圏すべての地域の新築マンション価格が対前年同月比で上昇している。東京23区が前年同月比で1.0%アップの9,110万円。東京都下が15.4%アップの5,816万円、神奈川県が20.6%アップの6,096万円、埼玉県が7.0%アップの5,066万円、千葉県は、14.9%アップの5,079万円という結果だ。
契約率においては、好不調の目安となる70%を上回ったのは、神奈川県と千葉県。60%を割る地域はなく、依然として新築マンションの売行きは、堅調と言えそうだ。
続いて中古マンション市場を見てみよう。
首都圏の中古マンション市況【2024年2月度】
2024年2月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比3.4%増加の3,350件と9カ月連続で対前年比プラスになっている。
成約価格は、前年同月比11.5%上昇の4,859万円。平均成約㎡単価も対前年同月比9.9%上昇の75.52万円。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、46カ月連続となる。地域別では、神奈川県以外は成約件数が増加。成約㎡単価は、前年同月比ですべての地域で上昇した。
また、2024年2月の新規登録物件の㎡単価は、74.23万円となっていて前月の73.93万円よりも増加した。中古マンション市場の好調さを表していると言えるだろう。
2024年2月の新規登録物件数は、対前年同月比で2.4%増加の16,730件。在庫件数は、2カ月連続増加し47,628件となっている。前年同月比で6.4%増加しており高水準が続く。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが2023年夏以降は、鈍化している。
次に地域別の中古マンション動向を見てみよう。東京都区部の成約㎡単価は、前年同月比で+12.5%となっており高い伸びを示す。
2024年2月度の成約㎡単価は、すべての地域が上昇し首都圏平均で9.9%の高い伸びを示している。2024年2月度の首都圏新築マンション供給戸数は27.6%も減少しており需給バランスの面で中古マンションの価格を押し上げている。
地域別の中古マンション在庫件数を見ると、東京都心に加え、城東、城西、城南、城北と東京23区のすべての地域が減少している。新築マンション価格の高止まりが続くなか、中古マンション価格の上昇が当面は続きそうだ。
今月の注目物件は三越千葉店跡地の免震タワーマンション「Brillia Tower 千葉」
「Brillia Tower千葉」は、JR千葉駅徒歩4分の三越千葉店跡地に誕生する地上23階建て・総戸数491戸の大規模タワーマンションだ。売主は、東京建物株式会社、野村不動産株式会社、株式会社中央住宅、ファーストコーポレーション株式会社の4社となる。
京成千葉駅を含め2駅8路線が利用可能。千葉駅周辺では2018年の千葉駅舎・駅ビル建替えを皮切りに再開発が続いており、千葉市が掲げる「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」の「駅前業務・商業コア」を形成する。
高さ約80m、地上23階建ての建物には、2階と3階の間に免震装置を設置した中間層免震構造を採用。基礎免震に比べて免震装置の引張力を減少させ、揺れへの対応力を強化している。また、3階~23階の住居フロアには各階に防災備蓄倉庫を設置し、災害時の入居者の安全を確保する。
「Brillia Tower 千葉」は、低層階に商業施設・保育所を併設した住商一体の複合開発。1階に商業施設、2階に商業施設、保育所を計画。駅前大通りと、南側のマルシェ通りに沿って商業施設を配置することで、人の流れを生み出し、街のにぎわいを創出している。
大規模レジデンスならではの多彩な共用施設も特徴で、2階にはエントランスラウンジ、フィットネスルーム、ゴルフレンジ、マルチスタジオ、近隣住民も利用できるコワーキングスペースを配置。3階には、ゲストを迎えるオーナーズスイート2室とパーティールームを配置するなど、居住者の多様なライフスタイルを演出する。
3~22階は、30㎡台・1LDKから90㎡台・4LDKまで、多様なライフスタイルに対応したプランニングに。最上階(23階)は、全住戸100㎡超のラグジュアリーなプレミアムを用意している。また、全住戸に専用トランクルームを設置している。
2024年2月25日時点で、2023年9月のホームページ開設以来の総エントリー数が2,800件超。モデルルームの延べ来場者数は、700組を超え堅調なスタート。最高価格2億9,998万円だった第1期の受付は、2024年3月20日締め切られ第1期2次の販売は、2024年5月下旬予定となっている。
まとめ
大企業を中心とした賃金の引き上げや全国的な地価上昇、日経平均株価の最高値更新など明るい話題も目立つが、日米の金利差もありドル円相場はおよそ34年ぶりの円安水準となっている。円安が進めば輸入物価の上昇により、さらなる建築費の上昇となるかもしれない。
また、日銀は、2024年3月19日に行われた金融政策決定会合で2016年1月から始めたマイナス金利政策を解除することを決定した。
金利が上昇するのは17年ぶりとなり金利を抑えるイールドカーブコントロールも廃止。日本株ETFやREITの購入も廃止となり長く続いた日銀の異次元緩和が終了。日本銀行が普通の金融政策に移行していく中で金利動向も気になるところだ。
好調なマンション市場に対し、首都圏の新築戸建市場では在庫件数が高水準のままで、一部の地域では成約価格の下落も見られる。令和6年地価公示で住宅地の地価が大きく伸びたつくばエクスプレス線「流山おおたかの森」駅の開業は、2005年8月。街が成熟するには、ある程度の期間が必要であることを示している。人生100年時代といわれる今、街選びも長期視点で考えるべきだろう。
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