大阪・関西万博で地価と不動産価格の上昇は続く? 過去事例と相関関係から今後を予測

2025年6月17日公開(2025年6月17日更新)
神納まお:フリーライター

2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪湾の夢洲で開催される大阪・関西万博(以降、大阪万博)。2,820万人の来場者と約2.9兆円の経済効果が見込まれているこの大規模イベントが、大阪の不動産市場、地価にどのような影響を与えるのだろうか。今回は過去に開催された万博が地価、不動産価格に与えた影響を検証することで、今後の不動産市場の動向を予測していく。

過去事例から読み解く!万博がもたらす不動産市場への影響

 万博は人、モノ、カネを呼び寄せる大型プロジェクトであり、不動産市場に大きな影響を及ぼす。まずは、1970年の大阪万博(以降、EXPO'70)と2005年の愛知万博(以降、愛知万博)が、どのような変化をもたらしたのかを振り返ってみる。

1970年大阪万博開催後、大阪府の人口は800万人を突破

EXPO’70の当時の風景(出典:PIXTA)

 大阪万博(EXPO’70)はアジア初の日本万国博覧会として注目を集めた。約6,422万人が来場をし、戦後復興後の著しい高度経済成長を象徴するイベントとなった。

 吹田市と豊中市に跨がる千里丘陵エリアを中心に、大規模開発だった千里ニュータウンまちびらき、並行して進んだ交通網、道路網のインフラ整備により、住民が暮らしやすい街へと変化していった。

 当時の地価データは存在しないが、EXPO'70の開催が決まった1965年から人口が順調に増え続けて、10年間で800万人を突破している。これが地価や不動産価格が押し上げられた要因のひとつと推測される。

■大阪万博(EXPO’70)前後の大阪府の人口推移

大阪万博前後の人口推移
人口(人)
1945年[昭和20年] 2,800,958人
1950年[昭和25年] 3,857,047人
1955年[昭和30年] 4,618,308人
1960年[昭和35年] 5,504,746人
1965年[昭和40年] 6,657,189人

1970年[昭和45年]

(大阪万博開催)

7,620,480人
1975年[昭和50年] 8,278,925人
1980年[昭和60年] 8,473,446人
1985年[平成2年] 8,668,095人
1990年[平成7年] 8,734,516人
1995年[平成12年] 8,797,268人
※参考:大阪府「平成27年国勢調査 大阪府の人口(統計表) 第1表 人口の推移 - 大阪府(大正9年~平成27年)

 一方で、1974年にはオイルショックの影響により景気後退で地価が下落する地域も見られた。つまり、万博は地価や不動産価格を押し上げたものの、長期的な動向としては、経済や政策に左右されたことがわかる。

2005年愛知万博開催後、都市中心に地価が上昇

万博跡地の「愛・地球博記念公園」(撮影:著者)

 万博跡地のジブリパークの活況が続き、観光客が後を絶たない「愛・地球博記念公園」。

 愛知万博が開催された年には、愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)が開業。リニモ沿線を中心に住宅地や商業施設の開発が進み、それに伴い地価が上昇している。

 たとえば、万博開催地の長久手市の公示地価の推移は以下の通りとなる。

■長久手市の公示地価(住宅地)の推移

地価平均/㎡あたり 坪単価平均 変動率
2005年[平成17年] 11万7600円 38万8760円 -3.24%下落
2006年[平成18年] 11万8233円 39万853円 +0.28%上昇
2007年[平成19年] 12万3100円 40万6942円 +4.12%上昇
2008年[平成20年] 13万2186円 43万6980円 +7.14%上昇
2009年[平成21年] 13万200円 43万413円 -2.83%下落
2010年[平成22年] 12万6142円 41万7001円 -2.95%下落
2011年[平成23年] 12万5000円 41万3223円 -0.09%下落
2012年[平成24年] 11万8257円 39万932円 +0.00%横這い
2013年[平成25年] 11万9771円 39万5938円 +0.99%上昇
※参考:不動産情報ライブラリ「長久手市の土地価格相場・公示地価・基準地価マップ・坪単価過去データ

 長久手市は緑豊かな環境と名古屋市や豊田市へのアクセスの良さからベッドタウンとして人気が高まっている。また、年少人口(15歳未満)比率が愛知県内で第1位になるなど、若者の増加が顕著な街である。

 リニアモーターカーの利用者は期待を下回ったものの、博覧会跡地は愛・地球博記念公園(モリコロパーク)として再整備された。2022年、同園内にオープンしたジブリパークは予約が取れないほどの活況が続くなど地域活性化に寄与している。

 一方で、万博後に地価が下落した点には注意が必要だ。2008年のリーマンショックが影響していると考えられるものの、万博需要が一巡したことによる反動も影響した可能性がある。

 過去の事例を紹介したが、これらから2025年に開催される大阪万博においても不動産市場の活性化は期待できるものの、長期的な視点を踏まえると地価上昇の持続には「跡地利用計画」と「外部経済要因」が重要であると考えられる。

大阪万博での地価と不動産価格の変動

大阪万博2025
大阪万博の様子(出典:PIXTA)

 現在の大阪の不動産市場は活況を呈している。実際に大阪府の地価と不動産価格を見てみよう。

 2025年(令和7年)の地価公示結果では、大阪府の住宅地は前年比で2.3%上昇しており、商業地では7.6%と大きく上昇した。全体を見ても地価は上昇傾向にあることがわかる。

■公示地価の変動率(単位:%)

地域 住宅地 商業地
R6 R7 R6 R7
大阪府全域 1.6% 2.3% 6.0% 7.6%
大阪市 3.7% 5.8% 9.4% 11.6%
北大阪地域 2.0% 3.0% 4.0% 6.0%
東部大阪地域 1.2% 2.0% 2.6% 3.3%
南大阪地域 0.6% 0.8% 2.5% 3.2%
※参考:大阪市計画調整局「令和7年地価公示結果について(大阪市)

 また、地価公示結果データを基にした、全用途価格および地価上昇率上位10位は以下の通りとなる。

■大阪市の公示地価の上昇順位表

順位 地点(住所) 対前年変動率(%) 価格(円/㎡)
1 中央区道頓堀1-6-10【中央5-19】 22.6% 7,600,000円
2 住之江区南港中1-2-90【住之江2-6】 19.3% 173,000円
3 福島区福島6-20-2【福島5-3】 18.8% 1,480,000円
4 浪速区元町3-1-4【浪速5-12】 18.6% 1,340,000円
5 西区西本町2-1-34【西5-7】 18.4% 1,270,000円
6 浪速区日本橋2-11-20【浪速5-7】 18.4% 682,000円
7 西区江戸堀1-3-7【西5-7】 18.2% 2,280,000円
8 北区天神西町4-3【北5-4】 18.1% 2,050,000円
9 西区江戸堀1-10-8【西5-10】 17.8% 4,400,000円
10 中央区東心斎橋1-8-2【中央5-15】 17.6% 10,000,000円
※参考:大阪市計画調整局「令和7年地価公示結果について(大阪市)

 商業の中心地である北エリアと観光の中心地である南エリアを結ぶライン上がランクインされており、前年比で10%を超える成長を記録している。

 なお、万博会場のある此花区は入っていないが、万博会場への直通シャトルバスが運行されている住之江区南港は第2位である。

大阪万博開催が決定以降の地価は上昇傾向

 大阪万博の開催が決定したのは2018年11月。それ以降の大阪市の地価の変動率を見ると、2021年と2022年は新型コロナ感染拡大の影響で下落しているものの、全体的に上昇傾向にあることがわかる。

 夢洲が位置する此花区でも地価が上昇した。万博開催前から、大阪の主要エリアにおいて不動産取引の活況と価格上昇が見られたということがわかるだろう。

大阪市 此花区
2018 +3.87% +0.08%
2019 +4.68% +0.27%
2020 +6.03% +2.36%
2021 -1.82% +0.66%
2022 +0.04% +1.05%
2023 +2.42% +2.63%
2024 +6.16% +4.21%
2025 +8.23% +5.57%
※参考:不動産情報ライブラリ「国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索

 ただ、新型コロナの感染拡大を含めこの時期の上昇は全国的なトレンドとみることもできるつまり万博がなかったとしても、インバウンド需要、都市再開発、金融緩和などにより上昇したという見方も可能だ。
 

大阪万博、今後の地価と不動産価格の予想

 次に過去の事例を踏まえ、万博と地価・不動産価格との相関関係を考察してみよう。

 大阪万博会場へ直接乗り入れる唯一の鉄道手段として、大阪メトロ中央線の延伸部(コスモスクエア駅から夢洲駅間)が開業したため、夢洲周辺の不動産の価値が上昇すると予測できる。

 もともと大阪府は、東京に次ぐインバウンド需要が見込まれていたが、大阪万博による認知度が世界的に広がれば、さらなる需要増が見込まれるであろう。

 また、今回の大阪万博の経済効果は約2.9兆円(経済産業省)と試算されている。万博の閉幕後の跡地には日本初となるカジノ施設を含めた統合型リゾートIRが完成し、今後も不動産価格が上昇すると予想できる。

 一方で、万博閉幕後は、不動産市場が一時的に調整局面を迎える。万博による高揚感が冷めたことで、価格が一時的に下落する、あるいは横ばいとなる可能性もある。

大阪万博後も地価、不動産価格の上昇が期待されるエリア

 大阪万博後も地価、不動産価格が期待できるエリアを3つ紹介しよう。

大阪市中心部(北区、中央区、福島区)

グランフロント大阪
うめきたプロジェクト1期で完成したグランフロント大阪(出典:PIXTA)

 JR大阪駅北側に位置する旧梅田貨物駅跡地を指すうめきた地区。鉄道4社7駅が乗り入れ、1日240万人が行き交う西日本最大のターミナルエリアでは大規模都市開発では「うめきたプロジェクト」が進行中だ。 

 中之島エリアでは「(仮称)中之島5丁目計画」のフラッグシップとなるタワーマンションが2030年の完成を目指している。なにわ筋線の新駅と一体型となるということで、地価、不動産価格が上昇すると思われる。

 中央区では関西国際空港と直結しており、また、2031年開業のなにわ筋線の開通などにより、国内外の観光客が集まるハブ機能を目指す「グレーターなんば構想」があり、引き続き高い賃貸の需要が見込まれるだろう。

【関連記事はこちら】>>「中之島5丁目計画(仮称)」の予想価格は? 新駅誕生の大阪・中之島再開発エリアに200m級タワマン計画中 

ベイエリア(夢洲、此花区、住之江区、港区)

統合型リゾートIR
万博跡地に建設予定のカジノを含む統合型リゾートIR(出典:統合型リゾート 大阪IR)

 万博跡地には、前出のように統合型リゾート(IR)が建設予定となっており、すでに、カジノ法案(IR整備法)が成立している。

 此花区はユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどアクティビティが充実しているが、夢洲にも近いため万博開催後に地価の上昇が見込まれる。

 ベイエリアの一部である住之江区や港区、コスモスクエア駅周辺は「都市再生緊急整備地域」に指定されており、産学連携を可能とする研究開発拠点として今後の発展が期待されている。

スーパーメガリュージョン構想エリア(淀川区、東淀川区)

リニア中央新幹線
東京・名古屋・大阪の大都市圏を約1時間で結ぶリニア中央新幹線(出典:リニア中央新幹線)

 淀川区、東淀川区では巨大都市圏首都圏を創造する計画「スーパーメガリュージョン構想」が注目を浴びている。

 2035年リニア中央新幹線の全面開業(見通し)により、東京・名古屋・大阪の三大都市圏が約1時間で結ばれることになる。これにより、近畿圏、中部圏、関東圏が一体化し、7000万人規模の都市圏が誕生することになる。

 新大阪駅では、現在進められているリニア中央新幹線、すでにある東海道・山陽新幹線、関西国際空港へアクセスできるなにわ筋線も結節する予定だ。さらに、2031年には新大阪駅と十三駅・淡路駅とを結ぶ路線として「新大阪連絡線」が開業する予定もあり、ポテンシャルが改めて評価されている。

大阪万博で地価と不動産価格の上昇は続く?

 大阪の不動産市場は活況を呈している。対前年比で10%を超える異例の成長を記録している地点もある。

 大阪万博の終了後、2030年にはカジノを含む統合型リゾートIRが開業する予定のため、今後も大阪の地価や不動産価格の上昇は続くだろう。

 経済情勢や万博後の冷え込みなどの外的要因で価格が下落する恐れがあることも見込まなければならないが、うめきたは注目のエリアだ。

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