新築分譲マンションの価格上昇が一服し、市場は「投資から実需へ」と静かに舵を切り始めた。そんななか、筆者が15年ほど続ける独自調査「新築マンション人気指数」の最新集計(2026年4〜6月)で全国1位になったのは、東京都港区の「パークホームズ虎ノ門」である。総戸数わずか37戸の小規模マンションが、なぜ人気を集めたのか。実需層に選ばれる物件の条件と、市場変化の実像を読み解く。(住宅評論家・櫻井幸雄)
2026年(4〜6月)の人気指数1位は「パークホームズ虎ノ門」
「新築分譲マンション価格の上昇が止まった」「中古マンションが成約に時間を要するようになり、売り手の期待通りの価格で売りにくくなった」…。2026年に入り、マンション市況の変化を示す声が多くなった。以前のように、「都心マンションならば高くても売れる」時代ではなくなったのは事実だろう。
その状況下でも人気を集めている新築分譲マンションは、どんな物件なのか。日本全国の新築分譲マンションを対象にした調査の最新版がまとまった。15年ほど前から行っている「新築マンション人気指数」調査の最新集計結果を報告したい。
今回の調査期間は、2026年4月1日から6月30日。多くの不動産会社にとって新しい年度が始まり、力の入った分譲マンションが新規発売されることが多い時期だ。
その中で、全国で最も高い人気指数を記録したのは「パークホームズ虎ノ門」(人気指数6.7)。三井不動産レジデンシャルが東京都港区内で発売した新築分譲マンションである。
「やはり東京都港区か」「やはり三井不動産レジデンシャルか」と納得する人。もしくはそのイメージだけで購入を諦めてしまう人もいるのではないか。
都心の人気エリアで、人気売主のマンションなので、高額でも購入希望者が殺到し、購入するのが困難なマンションだと思ってしまうだろう。
しかし、「パークホームズ虎ノ門」は、近年の都心物件の中では驚くほど高額ではないし、投資目的の購入者が殺到し、販売現場がオーバーヒートしているわけでもない。自ら住む目的、もしくは家族に住まわせる目的の購入者が注目し、粛々と販売が進んでいるマンションなのである。
なぜ「パークホームズ虎ノ門」に人気が集まったのか
「パークホームズ虎ノ門」の立地条件には注目すべき要素が多い。
まず、東京都港区という立地である。超都心とされる千代田、中央、港の3区内でも、利便性と将来性、希少性の高さで群を抜くのが港区だ。スケールの大きな再開発で誕生した虎ノ門ヒルズまで徒歩3分であり、東京メトロ銀座線虎ノ門駅から徒歩6分で、東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅からも徒歩6分。交通利便性と生活利便性も優れている。
そして、マンションの売主は三井不動産レジデンシャルなのだから、もうそれだけで、値上がり間違いなしと半ば腰を浮かせる人も出てくるだろう。しかしながら、同マンションには地味な要素もある。
それは地上14階建て、全37戸という小規模マンションとなる点だ。高さ60m、階数にしてだいたい20階を超えれば「超高層」ということになるのだが、その基準に満たず、大規模といえる戸数もない。
そして、建設地に足を運んでみると、よくいえば落ち着いたマンションエリア。ズバリ言ってしまえば、地味な場所である。「再開発エリアの大規模超高層マンション」のような華やかさを求めると、がっかりするかもしれない。ビルやマンションに囲まれた一画である。
それでも、「パークホームズ虎ノ門」は多くの人の心をつかんでいる。資料請求数は1,000をゆうに超え、販売拠点となる「三井の住まい新宿サロン」に足を運んだ人数は3カ月で134組。37戸しか販売されないマンションにそれだけの関心が集まったため、筆者が算出する「マンション人気指数」で最高値を記録したのである。
居住用として購入を検討する実需層から人気
全37戸の「パークホームズ虎ノ門」は、なぜ、そんなにも注目を集めているのか。売主の三井不動産レジデンシャルに聞くと、実需層に支持されたことが大きいという。
実需層、つまり自ら住む目的、もしくは家族に住まわせる目的でマンションを購入する人たちを指す。多くの場合、「実需層」という言葉は転売目的の投資家ではない、という意味で用いられる。
金儲けのためにマンションを買う人ではなく、実際に住む目的なので、住み心地を重視する。外観に個性や美しさも求める。長く所有し、住み続けるつもりなので、それは当然だろう。
加えて、販売価格に対してもシビアだ。投資目的の場合「高額マンションほど、さらに値上がりする可能性が高い」と考える。「高額なのは、ピカイチの立地である証拠」だし、「多くの人が欲しがるマンションである」と判定するからだ。
しかし、実需層は転売するつもりがないので、あまりに高額なマンションは敬遠する。都心の港区に立地するマンションといっても、納得できる価格設定の物件を探すわけだ。
「虎ノ門ヒルズ」徒歩圏内、2LDKで2億円以内に収まる価格設定
そう考えると、「パークホームズ虎ノ門」には好ましい要素が多い。
港区内で、「虎ノ門ヒルズ」まで徒歩3分なのだが、その販売価格には納得感がある。取材した8月上旬時点で販売されていた住戸は約55㎡の2LDKが1億6,390万円からと、2億円以内に収まる価格設定だ。
不動産経済研究所が8月20日に発表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年7月」によると、首都圏の新築分譲マンションの平均価格は1億6,493万円。東京23区では、平均価格はじつに2億6,520万円にのぼる。
「パークホームズ虎ノ門」で8月上旬時点に販売されていた住戸は、約55㎡の2LDKで1億6,390万円から。港区の物件でありながら、23区の平均価格(2億6,520万円)を1億円以上も下回る。
もっとも、単純な比較には注意も必要だ。首都圏平均の1億6,493万円は70㎡(3LDK相当)換算の価格であり、55㎡・2LDKの「パークホームズ虎ノ門」とは広さが異なる。同じ1億6,000万円台でも、面積あたりの単価で見れば「パークホームズ虎ノ門」のほうが高い。
それでも、港区で「虎ノ門ヒルズ」まで徒歩3分という立地を考えれば、この価格は割安といえる。面積単価の高さより、立地の価値を重く見る—それが実需層の発想である。
足元(建設地周辺)が地味であることは決定的な短所ではない。購入者が「それは問題なし」と納得していれば済む話だし、この先、どのように変わっていくかわからない。
実需層はそのような「名より実を取る」立地を好む。表通りから一歩奥に入った場所は、むしろ落ち着いていてよろしい、と評価するわけだ。
加えて、「パークホームズ虎ノ門」は、外観が極めて個性的である。ガラス面が多く、変化に富んだデザインは完成したときに真価を発揮するだろう。
「パークホームズ虎ノ門」は、最新のマンション市況を暗示する物件だと感じる。すなわち「投資から実需へ」の転換期であることを示すマンションなのだ。
従来、都心マンションは小規模が当たり前で、目立たず、ゆっくり販売されてきた。購入者はそれをこまめに探し出し、時間をかけて検討し、購入を決めた。投資家から実需層にプレイヤーが変わったことで、好まれるマンションも変わってきた、ということだろう。
首都圏で人気となった新築分譲マンションは?
「マンション人気指数」は、筆者が2011年から行っている新築分譲マンションの調査データ。物件ホームページでの「資料請求数」の10分の1の数字と販売センターへの「来場者(組)数」の合算値を総戸数で割って「人気指数」を算出している。
人気指数が1以上となるマンションが人気物件となり、人気指数が5以上だと即日完売が予測される高人気物件となる。
今回の調査期間は2026年4月1日から6月30日まで。その期間、販売を行っていたマンションで人気物件の目安となる人気指数「1」以上を記録したのは全国で113物件となった。
郊外、地方都市でも鮮明な「投資から実需へ」の動き
そのなかで、人気指数「5.0」以上となった高人気指数マンションは、以下のとおりだ(パークホームズ虎ノ門は除いている)。
・ザ・ライオンズ南浦和(全41戸、人気指数6.0)
・リビオ吉祥寺南町(全14戸、人気指数5.6)
・Brillia 上野松が谷 The Residence(全26戸、人気指数5.4)
すべて、総戸数が50戸に満たないマンションで、小規模に分類される。そして、2LDKが1億円程度で購入できる物件が目立つ。小規模であること、そして1億円程度であることから、実需層(自ら住む目的の購入者)が注目していることが分かる。
大規模物件で人気の新築マンション
次に、総戸数が100戸以上の大規模で人気指数1以上になった物件は、全国で12件が該当した。物件名は以下のとおりだ。
・ザ・パークハウス門前仲町(東京都江東区)
・ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ(神奈川県川崎市)
・リビオシティ船橋北習志野ミッドレジデンス(千葉県船橋市)
・パークホームズ船橋(千葉県船橋市)
・ウエリス船橋北習志野(千葉県船橋市)
・ローレルスクエア長岡京 勝竜寺城公園(京都府長岡京市)
・ザ・パークハウス大阪上本町タワー(大阪市天王寺区)
・ローレルスクエア出戸ザ・ランドマークス ノース(大阪市平野区)
・ジオ神戸相生町(神戸市中央区)
・グランドメゾン福岡THE FLAG(福岡市中央区)
・ブライトクロス橋本駅前(福岡市西区)
これらのマンションは郊外に立地し、3LDKが4,000万円台、5,000万円台で購入できるものも含まれる。当然ながら、投資向きではなく、実需層のためのマンションが並んでいる。
自ら住む目的でマンションを購入する人向きのマンションといっても、「資産性を重視して選ぶ」という購入スタンスに変わりはない。
「将来、手放すときに値下がりしにくい物件、できれば値上がりする物件を買いたい」という気持ちがマイホーム購入の根底にある。一方で、あまりに高額のマンションは狙わない。無理なローンを組んで購入することは避ける傾向も出ている。
結果として、都心の外周部、首都圏でいえば東京23区内でJR山手線の外側に位置するエリアや23区に隣接する近郊外のマンション、もしくは郊外で駅に近いマンションが人気になりやすい。大規模の高人気のマンションは、そのいずれかに該当するものばかりだ。
全国版の人気マンションリストは、筆者のオフィシャルサイトで公開している。オフィシャルサイトでは、販売センターが開く前の人気物件も公開しているので、マイホーム探しの参考にしていただきたい。
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