「新百合ヶ丘」の不動産は“買い”か? 2030年地下鉄ブルーラインの延伸と新都心機能の向上で、地価上昇は必至!?

2019年9月7日公開(2019年9月7日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

小田急線沿線の「新百合ヶ丘」駅エリアの不動産は”買い”なのか? 新百合ヶ丘は、住環境のバランスが整っていることから、現在も住宅地として人気が高い。2030年には横浜市営地下鉄ブルーラインがあざみ野駅から延伸することが決まり、交通の便も含めさらに大きな変貌が期待されるエリアだ。そんな「新百合ヶ丘」の不動産の将来性を検証する。(フリージャーナリスト・福崎 剛)

2030年に向けブルーライン延伸が決定、利便性の向上が約束された駅「新百合ヶ丘」

急行を使えば、都心まで30分でアクセスできるのも魅力「新百合ヶ丘」
「新百合ヶ丘」は川崎市にあるが、急行を使えば、都心まで30分でアクセスできるのも魅力だ(出所:PIXTA)

 「新百合ヶ丘」駅は、都心へのアクセスが良い。新宿駅までは小田急線の快速急行で24分、渋谷なら下北沢乗り換えで約30分。「登戸」駅でJR南部線に乗り換えれば川崎や立川へのアクセスもスムーズだ。都心まで30分圏内の利便性があり、快速やロマンスカーの停車駅という点は、不動産価値としても高く評価される。

 2019年1月、そんな新百合ヶ丘駅に、横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸計画が発表された。2030年には、あざみ野から新百合ヶ丘間の約6kmをつなぐ路線が、新駅とともに開業する予定だ。川崎市北部・多摩地域と横浜間が乗り換えなしでつながるため、今以上にアクセスが向上する。

 これにより新百合ヶ丘エリアは、広域拠点都市を担うことが明確になったといえるだろう。このニュースは、周辺のまちづくりはもちろん、将来的な都市構想から不動産価格にも大きな影響を与える。これが、今「新百合ヶ丘」に着目する理由だ。

都市機能がありながら豊かな緑を残す、バランスの取れた住環境が最大の魅力

 新百合ヶ丘は、川崎市麻生区に位置する。麻生区は、1982年の行政区再編により多摩区から分区して誕生し、川崎市の新都心として位置づけられている。

 1974年に小田急線新百合ヶ丘駅、京王相模原線若葉台駅が開設、2004年にははるひ野駅が誕生し、広域交通網が整った麻生区。その中心的な地域が新百合ヶ丘になるが、ここはもともと「農住都市構想」をもって開拓された場所で、現在も農地や山林などが区面積の約3分の1を占めている

南口側には商業施設がそろい、買い物には不便がない
南口側には商業施設がそろい、買い物には不便がない(出所:PIXTA)

 一方、新百合ヶ丘駅の南口側には、駅に直結した「小田急マルシェ新百合ヶ丘」をはじめ、「新百合ヶ丘エルミロード」「イトーヨーカドー」「イオン」「新百合丘オーパ」といったショッピングエリアが集中している。北口側には「Odakyu OX MART 新百合ヶ丘駅北口店」もあり、日々の買い物に不自由することはない。休日には周辺の駅からも買い物客が訪れ、特に南口側は活気づいている。

 駅前にはシネマコンプレックスや音楽ホールなどもあり、文化的なイベントに触れる機会も多い。快速で8分の町田駅前には、小田急デパートや町田マルイもあるため、ほとんどすべての買い物を近隣でまかなうことができる

ペデストリアンデッキで結ばれる商業施設
ペデストリアンデッキで結ばれる商業施設

 新百合ヶ丘は、駅前には商業・業務の都市機能が集積しているが、それ以外の場所は、駅周辺から住宅地が広がっている。工業系土地利用の割合が低く、その点からも住環境の良さが際立っているため、住宅地としての人気が高いのだ。

 農地と都市を融合させることを意識して作られてきた新百合ヶ丘駅周辺エリアは、緑地も多く起伏のある地形、多様な自然環境など、今もその意思が色濃く残っている。こうした「資源を守るまち」として、エリアによっては用途地域を「田園住居地域」に切り替える構想もあり、行政側も良好な住環境を維持しようとしている。若い世代に偏るニュータウンのようなまちづくりとは異なり、各世代にとって住みやすい良好な住環境が整っていて、街全体でバランスの取れた機能を果たしている。

住民から「しんゆり」の呼称で愛される、芸術・文教の街

 「しんゆり」と呼ばれて住民から親しまれる新百合ヶ丘は、芸術の街としても知られている。「昭和音楽大学」や「日本映画大学」などの芸術系大学があり、1945年から活動を続ける新劇団「劇団民藝」や「日本読売交響楽団」も新百合ヶ丘に拠点を構えている。

 街全体にはアートセンターやコンサートホールが点在しており、文化・芸術関連施設が充実している。近年では、川崎市が主体となって「アルテリッカしんゆり(しんゆり芸術祭)」「KAWASAKIしんゆり映画祭」といった、大規模なアートイベントも定期的に開催しており、「しんゆり・芸術のまち」として存在感を高めている。

 文化的な側面もさることながら、教育環境が整っている文教都市として、幼い子どものいる家庭には恵まれた街だといえるだろう。「川崎市麻生スポーツセンター」は、区民が利用しやすい低料金で子どもの習い事ができる。区内にある明治大学黒川農場では、農業体験・調理体験をしたり、川崎フロンターレと共同での少年サッカー教室など、多様な経験ができる催しが多い。

 習い事とともに、子育て世代が気にしているのが保育園や幼稚園の数だろう。川崎市は全体を通して待機児童が少ないのが魅力だ。2019年4月時点での川崎市の待機児童数は14名で、麻生区だけに絞ると0人だ。また、麻生区では「遊びの会」「相談会」「子育て講座」などを開催し、地域での子育て支援を積極的に進めている。

川崎市の待機児童数
写真を拡大 川崎市は待機児童数が少ないが、中でも麻生区は2年連続0名の実績

現在は人口減している町丁でも、ブルーライン延伸によって住宅ニーズの向上が見込まれる

 新百合ヶ丘駅周辺の発展のきっかけは、昭和58年に長期構想「2001かわさきプラン」が発表され、川崎市の新都心として位置付けられたことだ。これにより川崎市は、商業・行政の拠点を含む複合的な都市づくりを目指して、新百合ヶ丘駅周辺の土地区画整理を行ったのである。そうして、人口も急増した。

 「新百合ヶ丘ポータルサイト」を見ると、土地利用の変化が1971年、1990年、2008年で明確に異なることが示されており、駅を中心に宅地開発され、計画的にまちづくりが行われてきたことがよく分かる。

 だが最近は、駅周辺地域での人口増がある一方、駅から離れた丘陵部では人口減の町丁が多く見られる傾向がある。これは、利便性などを求めるとともに、居住地域の集約化傾向とも受け取れる。

 しかし、2030年には横浜地下鉄ブルーラインがあざみ野から延伸し、新百合ヶ丘との中間地点に新駅が開設される予定だ。このことで、人口減に転じていた町丁の住宅ニーズが高くなり、沿線周辺の不動産価値も上昇するのは必至だろう

出典:「横浜市営地下ブルーライン『あざみ野〜新百合ヶ丘』を延伸へ!」(鉄横浜市・川崎市報道発表・平成31年1月23日)
写真を拡大 出所:「横浜市営地下ブルーライン『あざみ野〜新百合ヶ丘』を延伸へ!」(鉄横浜市・川崎市報道発表・平成31年1月23日)

 麻生区の人口は現在約17.8万人(2017年)だが、「川崎市都市計画マスタープラン麻生区構想」(平成31年3月)によれば、麻生区の人口は2030年まで増加し続け、その後減少に転じると見込まれている。人口増は、当然住宅ニーズを押し上げることになる。

物件が豊富で、割安感がある新百合ヶ丘エリア

 現在の、新百合ヶ丘の不動産価値を見てみよう。大手不動産ポータルサイトの土地価格相場によると、百合ヶ丘が85.2万円/坪で、新百合ヶ丘は79.9万円/坪と、百合ヶ丘駅の方が高価格の評価となっている。小田急多摩線沿線の近隣駅、小田急多摩センターは81.8万円/坪と、こちらも新百合ヶ丘よりも高い。

■新百合ヶ丘駅と周辺駅の土地価格相場
・百合ヶ丘      85.2万円/坪
・小田急多摩センター 81.8万円/坪
・新百合ヶ丘     79.9万円/坪
・はるひ野      77.7万円/坪
・読売ランド前    69.9万円/坪
・柿生        65.8万円/坪
(出所:住宅情報サイトSUUMO

 新百合ヶ丘は、多摩センターや百合ヶ丘とは違い、住宅街であるがゆえ物件数が多い。中古マンションなども多いため、土地価格の平均値は決して高くないのだろう。しかし、これから購入を検討している人にとっては、物件が多く出回っているほど選択肢は多くなり、割安な物件を選びやすくなる。

 麻生区全体だとどうだろうか。麻生区は74.4万円/坪の土地価格で、新百合ヶ丘駅周辺に絞った場合と比べると平均的に割安だ。この価格は、多摩地区とほぼ同じ土地価格相場といえるだろう。しかし、横浜市営地下鉄ブルーラインが延伸すれば、沿線周辺の宅地やマンションは軒並み価格が上昇すると想定できる。

 次に、地価公示価格で最近の土地価格の変動を見てみよう。2019年発表された公示価格によると、新百合ヶ丘駅北口から100mほど離れた場所で前年比7.66%も上昇し、59万円/㎡(195万円/坪)。駅から650mほど離れた閑静な住宅地のあたりで33.8万円/㎡(111.7万円/坪)になり、前年比3.05%の上昇がみられる。

 駅の南側も上昇傾向で、駅南口から200mほどの上麻生では前年比約6.31%アップし、118万円/㎡(390万円/坪)であった。駅の北側、南側ともにゆるやかな上昇傾向があり、今後も地価が上昇すると見込めるだろう。

まとめ 人口増が本格的に始まる前に、物件をじっくり吟味したい

 新百合ヶ丘は住環境の良さから、マンションも戸建て住宅も多い。売出し物件を参考に、物件相場を確認したい。

 新築分譲中のマンションを3つほど見てみよう。それぞれ駅から徒歩9〜13分ほどで、総戸数は19~65戸。主なターゲットはファミリー層で、2LDKから3LDKの間取りが中心となり、価格帯は4000万円~6000万円ほどだ。もちろん、設備や立地などの細かい違いがあるため、単純な比較はできないが、決して割高な印象はない。

 一方、中古マンションでは、駅から徒歩12分の3LDK(76.11㎡)が、4,480万円(築8年、5階建5階)で販売している。駅から徒歩16分の3LDK(69.09㎡)なら、3,350万円(築9年、9階建5階)。駅近の物件であればもう少し価格は高くなるだろうが、手頃感がありそうだ。

 先にも述べたが、新百合ヶ丘は周辺駅と比較すると中古物件数が多い。これは、戸建てにもマンションにも共通している。2030年に完成する横浜市営地下鉄ブルーライン延伸と、新駅開業により麻生区全体の地価が上昇する可能性は濃厚だ。購入を検討している人は、土地価格が急騰しないうちに、いまから時間をかけて物件探しをするのがいいだろう。

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