かつては”タワマン”、“超高層”というだけで売れ、完成後の資産価値も向上したものだが、それが続くとは限らない。超高層マンションが増え続けて希少性が失われているからだ。今後は超高層マンションにおいても一般的なマンションと同様に、物件を見極める選択眼が求められるようになっている。
即日完売する超高層マンションも珍しくなかったが……
マンションは最高階数に応じて、5階建てから10階建てまでを「中層マンション」、11階建て以上20階建て未満を「高層マンション」、20階建て以上を「超高層マンション」と呼ぶのが一般的だ。
従来、わが国では20階建て未満の中層マンション、高層マンションが中心だったが、1990年代から2000年代にかけて、20階建て以上の超高層マンションが急速に増加して、注目度が高まった。
眺望の良さ、ランドマークとしての希少性などから高く評価され、売りに出せば買い手が殺到し、すぐに完売した時代だった。なかには、売り出した当日にすべて申し込みが入り、即日完売する物件も珍しくなかったという。
しかし、それもいまは昔。超高層マンションがあちこちで増加し、希少性が失われ、超高層だからという理由だけで売れる時代ではなくなっている。
民間調査機関の不動産経済研究所では、毎月首都圏と近畿圏のマンション市場動向について発売戸数、平均価格などのデータを分析しているが、そのなかに契約率も含まれている。発売戸数に対して、発売月中に契約が成立した戸数の割合を示すもので、一般的には70%が好不調のボーダーラインといわれている。
70%を超えればまずまず好調で、80%、90%なら絶好調、反対に70%を切ると不調で、50%を切れば絶不調ということになる。
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超高層マンションの契約率が3割を切ったことも
その契約率が、2024年4月においては、首都圏の平均は62.4%だった。2023年4月は73.7%だったので、前年同月比では11.3ポイントのダウンで、やや売れ行きが鈍化している。
なかでも、超高層マンションだけに限ると、図表1にあるように2024年4月は48.3%と50%を切る絶不調だった。2023年4月の超高層マンションの契約率は92.7%だったから、前年同月比では44.4ポイントも落ち込んでいることになる。
しかし、それは特に驚くべきことではないのかもしれない。このところの高層マンションの契約率を見ると、話題性の高い注目物件が出たときには、90%前後の高い契約率になることもあるが、逆に50%を切ることも珍しいことではなく、直近では2023年10月に28.1%と3割を切ったこともあるのだ。
図表1 2022年4月~2024年4月の首都圏超高層マンション発売戸数と契約率
マンションの8戸に1戸は超高層マンション
こんなに超高層マンションの契約率が低下している背景には、超高層マンションの増加が挙げられるだろう。高層というだけでありがたがられる時代ではなく、超高層のなかでも選別が進んでいるのではないだろうか。
超高層マンションは周辺の価格相場に比べると価格が格段に高いけれど、それなりの特徴がある魅力的な物件なら高い契約率で完売する。しかし、一方では、価格が高いだけでさほど魅力のない物件は売れ残ってしまう――そんな二極化が進んでいるのだ。
希少性が失われつつあるのだから、それも仕方のないことだろう。図表2でも分かるように、2022年に首都圏で分譲された新築マンションのうち、12.9%を超高層マンションが占めている。新築マンションのうちおよそ8戸に1戸は超高層マンションであり、年次によっては超高層マンションの割合が45.6%と半数近くに達したこともある。これでは、希少性が失われるのも当然のことだろう。
図表2 首都圏のマンションと超高層マンション供給戸数と超高層マンションのシェア
これからも超高層マンションは増え続ける
しかも問題なのは、今後も相変わらず超高層マンションが増え続けるということだ。図表3をご覧いただきたい。
図表3 高層マンションの完成・予定年次別棟数(首都圏)
(単位:棟)
都区部 | 都下 | 神奈川 | 埼玉 | 千葉 | |
---|---|---|---|---|---|
2014年 | 20 | 0 | 1 | 3 | 0 |
2015年 | 23 | 1 | 6 | 0 | 3 |
2016年 | 12 | 2 | 1 | 1 | 2 |
2017年 | 13 | 0 | 4 | 3 | 0 |
2018年 | 11 | 3 | 2 | 0 | 3 |
2019年 | 22 | 2 | 4 | 0 | 0 |
2020年 | 11 | 3 | 4 | 1 | 2 |
2021年 | 14 | 0 | 3 | 2 | 3 |
2022年 | 7 | 1 | 1 | 0 | 1 |
2023年 | 12 | 0 | 2 | 2 | 1 |
2024年 | 17 | 2 | 3 | 1 | 2 |
2025年 | 17 | 0 | 5 | 0 | 1 |
2026年 | 20 | 5 | 9 | 1 | 7 |
2027年 | 12 | 0 | 1 | 4 | 2 |
2028年以降 | 64 | 5 | 9 | 2 | 5 |
資料:不動産経済研究所「超高層マンション動向2024」
これは、首都圏の高層マンションの年次別の完成・予定棟数を示しているが、2020年代に入ってから、供給の中心地である都区部では、年間10棟の前半台、また10棟以下にとどまっているが、2024年以降の竣工予定をみると、2024年から2026年までは10棟台の後半から20棟であり、これまで以上のピッチで超高層マンションが増えることになる。
周辺3県でも、神奈川県では2026年には年間9棟の超高層マンションが完成するなど、これまでにないペースでの増加が見込まれている。また、千葉県も同様で2026年は7棟の完成予定と、これまでになかった供給が予定されている。東京23区だけではなく、周辺エリアでもますます増え続けそうだ。
2026年には2万戸近くの超高層が完成
戸数を見ると、もっとハッキリする。図表4にあるように、このところの首都圏では年間の超高層マンションの完成戸数は4000戸前後から8000戸台で推移しているが、2026年には首都圏で合計1万9000戸近い高層マンションが完成する予定だ。
首都圏での新築マンションの完成戸数は、このところ年間3万戸前後だから、2026年には半数以上を超高層マンションが占めることになる。半数どころか超高層マンションが6割以上のシェアになる可能性もありそうだ。
そうなると、超高層マンションだからという理由だけで、資産価値の向上などが期待できるわけではなくなる。超高層マンションといえども、通常の中高層マンションと同様に、価格や住み心地などを総合的に判断して、購入するかどうかを選択することが重要になってくる可能性が極めて高い。
価格が高いだけに、それにふさわしい物件を見極める必要があるという意味では、一般の中高層マンションより一段と厳しい選択眼が求められるといってもいいのではないだろうか。
図表4 超高層マンションの完成・予定年次別戸数(首都圏)
(単位:戸)
都区部 | 都下 | 神奈川 | 埼玉 | 千葉 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2014年 | 4609 | 0 | 170 | 841 | 0 | 5620 |
2015年 | 10233 | 72 | 2284 | 0 | 1035 | 13624 |
2016年 | 5300 | 476 | 813 | 638 | 630 | 7857 |
2017年 | 4000 | 0 | 1454 | 446 | 0 | 5900 |
2018年 | 2703 | 819 | 1043 | 0 | 1115 | 5680 |
2019年 | 7457 | 283 | 807 | 0 | 0 | 8547 |
2020年 | 2891 | 792 | 2109 | 200 | 1585 | 7577 |
2021年 | 4509 | 0 | 848 | 466 | 1028 | 6851 |
2022年 | 2511 | 520 | 539 | 0 | 231 | 3801 |
2023年 | 5939 | 0 | 609 | 654 | 397 | 7599 |
2024年 | 5228 | 664 | 919 | 522 | 1366 | 8699 |
2025年 | 7174 | 0 | 1576 | 0 | 150 | 8900 |
2026年 | 7984 | 1834 | 5212 | 525 | 3441 | 18996 |
2027年 | 4533 | 0 | 702 | 866 | 836 | 6937 |
2028年以降 | 29985 | 2431 | 2699 | 700 | 2767 | 38582 |
資料:不動産経済研究所「超高層マンション動向2024」
千葉県の超高層マンションは1億円以下も
その点で筆者が注目したいと考えているのが、今後超高層マンションが増えそうな千葉県だ。
超高層マンションだからと、資産価値向上狙いで購入するのではなく、居住性などの実質重視で選ぶと、千葉県の超高層マンションが狙い目になってくる。
周知のように千葉県の新築マンション価格は、東京都や神奈川県などに比べるとリーズナブルな価格帯になっている。それに対して東京都、なかでも東京23区の高層マンションは富裕層向けの超高額物件にシフトする傾向が強く、億ションが当たり前になっており、物件によっては平均価格が2億円台といった超高層マンションも登場している。
それに対して、現在販売されている千葉県の超高層マンションは1億円以下で購入できる物件が多い。たとえば、「幕張ベイパーク ライズゲートタワー」(千葉市美浜区)は、2024年6月の第2期販売の117戸は71㎡台が5300万円台、98㎡台が8900万円台となっている。
JR京葉線の海浜幕張駅から徒歩16分とやや所要時間が長くなっているが、首都圏最大級の住商複合開発なので、開発エリア内に大規模スーパー、ブリュワリー、コワーキングスペースなど、日常生活に必要な機能がそろっている。総戸数が768戸の大規模物件で、地上38階建てで免震装置が採用されている。安心感があるのも魅力だろう。
幕張ベイパーク ライズゲートタワー(物件詳細はこちら)
- 価格
- 一般販売住戸:未定
- 完成時期
- 2025年10月
- 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1-13
- JR京葉線「海浜幕張」駅 徒歩16分 ・メインエントランス18分(15分)・サブエントランス18分(15分)・西側通用口16分(14分) ※()内分数は、2025年新改札開業後の分数を表示しています
- 間取り
- 一般販売住戸:2LDK~4LDK
- 専有面積
- 一般販売住戸:63.14㎡~106.35㎡
- 総戸数
- 768戸
- 売主
- 三井不動産レジデンシャル株式会社【国土交通大臣(4)第7259号】、野村不動産株式会社【国土交通大臣(14)第1370号】、三菱地所レジデンス株式会社【国土交通大臣(16)第408号】、伊藤忠都市開発株式会社【国土交通大臣(6)第5744号】、東方地所株式会社【千葉県知事(17)第359号】、株式会社富士見地所【千葉県知事(17)第286号 】、袖ヶ浦興業株式会社【千葉県知事(8)第11138号】
- 施工会社
- 株式会社熊谷組
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※データは2024年9月25日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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千葉市の中心市街地に建つ超高層マンション
千葉市中央区の「Brillia Tower千葉」は、JR総武線千葉駅から徒歩4分という駅近マンションで、建物は地上23階建て、総戸数が491戸となっている。先の「幕張ベイパーク ライズゲートタワー」と同様に免震装置が採用されている。
2024年6月の第1期3次販売は、33㎡台から96㎡台で、価格帯は未定だが、先着順受け付け中の住戸は、専有面積58㎡台が6700万円台、79㎡台が9900万円台となっている。
千葉駅から徒歩4分の市街地に建設されるので、千葉駅の駅ビルや近隣のそごう千葉店などの商業施設が充実しているうえ、千葉ポートパーク、千葉公園、千葉市動物公園などの自然環境にも恵まれている。
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Brillia(ブリリア)Tower 千葉(物件詳細はこちら)
- 価格
- 第1期3次 5,828万円~1億498万円
- 完成時期
- 2026年8月下旬予定
- 千葉県千葉市中央区富士見二丁目6番1他(地番)
- 総武線 「千葉」駅 徒歩4分
- 間取り
- 2LDK・3LDK
- 専有面積
- 56.91㎡~83.11㎡
- 総戸数
- 491戸 (販売住戸481戸、募集対象外10戸、他店舗7区画、保育所1区画)
- 売主
- ファーストコーポレーション株式会社
- 施工会社
- ファーストコーポレーション株式会社
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※データは2024年6月時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
まとめ
超高層マンションによる資産価値向上狙いではなく、こうした安心感があり、生活利便施設が充実した高層マンションで快適な暮らしを目指すのが、これからの超高層マンションの選び方のスタンダードになるのではないだろうか。
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