以下は、2024年6月の関西・中部圏版の市況記事です。
2024年4月の関西・中部圏のマンション市場(※6月現在では4月データが最新となる)は、先月に引き続き全体として好調を維持している。今月も新築マンションと中古マンションの最新市況、そして注目のマンション「ソルティア東梅田」について解説する。
関西・中部圏の新築マンション市況【2024年4月】
不動産各社の2024年3月期決算をみると、全体的に好決算を出している。大手5社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングス)を見ると、三菱地所のみが経常減益となったものの最終利益は全社で過去最高を記録している。
この不動産大手5社に関しては、マンション分譲事業も堅調で25年3月期も増収増益の見通しだという。これをみる限り、今後のマンション市況も長期的には明るい兆しが見える。それでは今月も最新の関西・中部圏の新築マンション市況について、詳しく見ていこう。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
2024年4月の関西の新築分譲マンションデータ
2024年4月 | 前年同月比 | |
発売戸数 | 1,095戸 | +31.0% |
契約率 | 68.5% | +0.7% |
平均価格 | 5,157万円 |
−0.7% |
㎡単価 | 81.0万円 | +1.8% |
未販売在庫数 | 2,722戸 | −19.0% |
(出典:不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向2024年4月」)
2024年4月の新築分譲マンションは発売戸数は1095戸、対前年同月比31%増、対前月比24.4%減となり、5カ月連続で前年同月を上回った。契約率は68.5%、前年同月比0.7ポイントアップ、前月比では13.7ポイントダウンという結果に。
平均価格は5,157万円で、わずかながら6カ月ぶりのダウン、㎡単価は81.0万円で、前年同月比+1.4万円(+1.8%)となり、6カ月連続のアップとなった。販売在庫数は3月末時点で2722戸、前月末比36戸の減少となっている。対前月比では数字が落ちているところがあるが、前年同月比では全体的にアップしており、好調を維持していると言える。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。好不調ラインの70%を割ったのは3カ月ぶりとなった。
平均価格をエリア別に見ると、大阪市内の平均価格は前年同月比5.1%アップの5,173万円。神戸市は5,592万円、兵庫県下では7,677万円と大阪市内を大きく上回っている。兵庫県下の平均価格アップは主に西宮市、芦屋市で供給された高額マンションの影響とみられる。
また供給戸数をエリア別に見ると、下記の通りになる。
2024年4月の関西のエリア別供給戸数
エリア | 供給戸数 | 前年同月比 |
---|---|---|
大阪市部 | 193戸 | −55.7% |
大阪府 | 347戸 | +622.9% |
神戸市部 | 71戸 | +129.0% |
兵庫県下 | 117戸 | −16.4% |
京都市 | 235戸 | +209.2% |
京都府下 | 7戸 | −88.7% |
奈良県 | 12戸 | −40.0% |
滋賀県 | 21戸 | +16.7% |
和歌山県 | 92戸 | +174.0% |
(出典:不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向2024年4月」)
大阪府での実需ファミリー向けマンションの供給増に加え、京都市の倍増によって、相対的に大阪市のシェア率が圧迫された形だ。
なお、2024年5月の関西エリア全体の発売戸数は1,000戸程度の見込みとなっている。2023年5月の発売戸数は1,024戸だったので、やや減少する見込みだ。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
名古屋を中心とする東海エリアは月別のデータがないが、建築動態統計調査(国土交通省のページ)に基づく愛知県内の建築住宅着工統計によると、2024年3月の新築マンション着工戸数は1,881件、前年同月比+204.9%。2023年3月分617件、2022年3月分は690件。2023年度の着工戸数は9,971件、前年比+34.0%、2022年度は7,442件だ。
マンションの供給は全体的に増加している。前月の市場動向(次ページ参照)で見たように、価格も高騰しているとみられる。
建設コスト高は、郊外ほど割高感が表れてしまうため、今後はいっそう都心・駅近・人気立地の傾向が進むだろう。とはいえ、不動産中堅デベロッパー・不動産用地バイヤー(住宅建築用土地を仕入れて、住宅を企画する人たち)は、「情報がないうえに競合に入り込めず、用地仕入れがいよいよ難しい」とこぼす。
関西・中部圏の中古マンション市況【2024年4月】
次に、中古マンションの市況を見ていく。
公益財団法人不動産流通推進センターが発表した「指定流通機構の活用状況について(令和6年4月)」によると、全国で新規登録件数(売り物件全体)が増加するなかでも近畿圏の2万1,772件(12.3%増)と中部圏の9,303件(11.5%増)だけが、前年より2ケタ増だった。
売り物件全体の成約件数は近畿圏で4,017件(7.5%増)、中部圏で1,375件(7.3%増)。全体的に好況と捉えていいだろう。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
近畿圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年4月】
2024年4月 | 前年同月比 | |
成約件数 | 1,500件 | +7.9% |
平均成約㎡単価 | 44.28万円 | +11% |
新規登録物件数 | 5,847件 | +9.1% |
新規登録㎡単価 | 44.65万円 | +1% |
近畿圏の中古マンション市場動向(出典:公益社団法人近畿圏不動産流通機構発表「マンスリーリポート 2024年5月号」)
関西エリアの成約件数と平均成約㎡単価の上昇率は高い水準を維持しており、高額物件を中心に取引は堅調に推移している。新規登録物件数は16カ月連続で前年同月を上回ったが、半年ぶりに前年比1ケタ伸びに下がった。
成約件数をエリア別に見ると、大阪市と神戸市、阪神間南部などは前年比2ケタ増となった。大阪市は8カ月連続で増加し、神戸市は9カ月ぶりに増加に転じるなど、京阪神を中心に取引は堅調となった。
成約㎡単価は全体的に上昇傾向が続き、大阪市と大阪府東部、神戸市、兵庫県南部他は前年比で2ケタ上昇となった。大阪市と大阪府北部、神戸市は10カ月連続で上昇。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏(関西)の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。在庫件数は右肩上がりに伸びている。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
中部圏の中古マンションの市場動向や需給状況【2024年4月】
2024年4月 | 前年同月比 | |
成約件数 | 487件 | +9.2% |
平均成約㎡単価 | 31.04万円 | +2.5% |
新規登録物件数 | 2,397件 | +7.7% |
新規登録㎡単価 | 33.73万円 | −0.5% |
中部圏の中古マンション市場動向(出典:公益社団法人中部圏不動産流通機構発表「月例速報 マーケットウォッチ」)
成約件数・新規登録物件数ともに前年同月比アップ、他の項目も大きなマイナスはなく、成約価格は平均で2304万円と高い水準をキープ。中部エリアも全体の市況は好調を維持している。
在庫件数は8564件と増えており、価格、㎡単価はほぼ前年並み。需給バランスはなんとか維持しているといっていい。エリア別に見ると、在庫件数は石川県以外ですべて増えている。石川県は成約件数と㎡単価も下がっている。ただ、1月の震災や3月の北陸新幹線福井開通となんらかの関連があるかは定かではない。
今月の注目のマンション「ソルティア東梅田」
次に、今月の注目マンション「ソルティア東梅田」を紹介する。本物件は、大阪府大阪市北区西天満に建設中で15階建て、総戸数は42戸。完成予定年月は2024年9月末日、引き渡し可能年月は2024年11月末日となっている。
西道路と北道路の角地に立地し、南北には12、13階建てのビルが立っている。現地は梅田の繁華街から1街区西側に入り、少し落ち着いた雰囲気のオフィス街だ。梅田に近い市街地エリアのため周りにビルは多いが、本マンションから北西の梅田方面にはちょうど寺院があつまるエリアがあり、高い障害物がない。
つまり「ソルティア東梅田」自体は高層建物ではないにもかかわらず、梅田の夜景もHEPFIVEの観覧車までよく見えるというロケーションになっている。
交通ロケーションについて
「ソルティア東梅田」の交通ロケーションは、
-
OsakaMetro谷町線・堺筋線「南森町」駅 徒歩8分
OsakaMetro谷町線「東梅田」駅 徒歩9分
特定の駅に近いというわけではないが、梅田と南森町駅の中間にあり、徒歩11分圏内に広げるだけでOsakaMetro谷町線・堺筋線に加え、阪神電車の大阪梅田駅、JR東西線、さらに京阪電車も利用できる。JR大阪駅や阪急電車の大阪梅田駅も徒歩14分。
道路の向かい側にはOsakaMetroのバス停があり、10分から15分間隔で大阪駅と南森町を結んでいる。
ショッピング施設はライフ太融寺店へ徒歩2分など困ることはなく、大きな公園も近い。小・中学校も徒歩5、6分圏内と生活ロケーションにも恵まれ、生活利便性も良い。
「ソルティア東梅田」販売価格は
「ソルティア東梅田」の販売価格は、現在販売中の2LDKタイプが6000万円前後、3LDKタイプが7000万円前後。どちらも3部屋ずつの計6戸が販売中で、すべて角部屋だ。階数による価格差は少なく、2LDKタイプでは5900万から6100万円。
坪単価にすると340万〜360万円ほど。近くで完成している「Brillia 淀屋橋」の中心坪単価400万円台と比べると割安に見える。
また、梅田市街地で販売中の住友不動産「梅田ガーデンレジデンス」は、坪単価が定期借地権で400万円台後半から800万円。こちらは立地に違いがあるため単純比較はできないものの、距離は500mほどだ。
「ソルティア東梅田」の購入層は今のところ20代・30代が多く、単身とカップルと子供一人の世帯がほぼ同割合だという。むろん単身は投資目的が多いだろう。
大々的な販売宣伝は控えめで戸数も少なく、目を引くような共用施設もないノーマルマンションだが、立地や眺望や角部屋といった諸条件からすれば割安とみることができ、穴場のマンションと言えるかもしれない。
まとめ
日銀の利上げを受け、一部の銀行は短期プライムレートを引き上げた。メガバンクにまだ動きはないが、追加利上げがあった場合、複数のメガバンクは短期プライムレートを引き上げる意向を示しており、変動金利が上がる可能性は高い。
マンションの価格は、引き続き高い水準を維持しているが、マイナス金利解除後の金利情勢はオフィスや商業施設だけでなく不動産市場に悪化材料として影響するおそれがある。またそれには物価高や円安に伴うコストアップも加わるだろう。
現時点で新築マンションは底堅い需要が続くとみられるが、価格高騰により手が届きにくい状況で、中古マンションや一戸建てに需要が傾きはじめている。住宅ローン金利が上昇に転じれば、値崩れが始まるかもしれない。
※関西圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県エリア、中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県
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