以下は、2024年5月の関西・中部圏版の市況記事です。
2024年3月の関西・中部圏のマンション市場(※5月現在では3月データが最新となる)は全体として好調を維持している。3月に発表された公示地価では、全国平均(全用途平均)・住宅地・商業地のいずれも、3年連続で上昇。全体として、堅調な市場を維持している。今月も新築マンション市場動向のほか、新築マンションと中古マンションの市況、そして注目のマンションについて解説する。
※関西圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県エリア
※中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県。
関西・中部圏の新築マンション市況【2024年3月】
ここからは、関西・中部圏の新築マンション市況について、詳しく見ていく。公示地価は大阪圏の住宅地で3年連続の上昇、商業地は2年連続の上昇、名古屋圏は住宅地・商業地ともに3年連続で上昇。全体として、堅調な市場を維持している。短期的に見ると好材料のほうが多く、しばらくは好調に推移しそうだ。一方で長期的には価格高騰への不安などから需給バランスの偏りの兆候も見られる。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
2024年3月の新築分譲マンションデータ
2024年3月 | 前年同月比 | |
発売戸数 | 1,448戸 | +1.7% |
契約率 | 82.2% | +8.5% |
平均価格 | 5,037万円 |
+7.1% |
㎡単価 | 86.4万円 | +14.7% |
未販売在庫数 | 2,758戸 | -21.0% |
(出典:不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向2024年3月」)
不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向」によると、2024年3月の新築分譲マンション発売戸数は1,448戸で4カ月連続で前年同月数を上回った。対前年同月比1.7%増、対前月比36.7%増となっている。
契約率は82.2%、前年同月比 8.5 ポイントアップ、前月比では 5.1 ポイントアップ。2カ月連続で好調ラインの70%を上回った。平均価格は5037万円、前年同月比で+333万円(7.1%
1㎡当たりの単価は86.4万円で、前年同月比11.1万円(14.7%)、前年同月比で戸当り価格とともに5カ月連続のアップである。販売在庫数は3月末時点で 2758戸、前月末比285戸の減少となった。
全体的に前年同月比でアップしているが、前月(2024年2月)比では平均価格と㎡単価は下がっている。高額物件の「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」など市街地で1億円以上の物件販売が落ち着いたことが平均価格・単価を下げている。
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下のグラフは、過去3年間の近畿圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。
エリア別の平均価格について
平均価格をエリア別にみると、大阪市内の平均価格は前年同月比3.3%アップの5,612万円。神戸市を中心に兵庫県・京都府でも平均価格は上がっている。神戸市内と京都市内では大阪市内を上回っている。
長期的には大阪市中心部のマンション需要の強さが継続している。資産性と利便性が高い市街地エリアの梅田や堂島、中之島、本町などにタワーマンションの供給が続き、人気・集客も維持している。大阪城周辺の開発エリアや心斎橋、なんばエリアも供給が多い。
2024年3月に御堂筋線の延伸が開通した箕面市の箕面船場阪大前駅では「ブリリアタワー箕面船場」が竣工、門真市でも住友不動産が総戸数648戸の官民複合大規模開発「シティータワー古川橋」を発表するなど、タワーマンションの需要は大阪市の郊外にまで及ぶとともに不動産相場が引き上げられている。また関西エリアでの投資用物件は9物件、計429戸に及ぶ。
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大阪・関西万博のオープンまで1年となり、6年先に大阪統合型リゾート(IR)がスタート。2031年には梅田と関西国際空港をつなぐ鉄道新線の「なにわ筋線」の開通を控えている。大阪市の好景気は続きそうだ。
2024年3月の関西エリア新築マンション市況の特徴をまとめると、下記の通り。
2. 投資用を除いた契約率も 80.0%と好調
3. 単価は3月としては調査開始(1973 年)以降の最高値を更新した
なお、2024年4月の発売戸数は1,000戸程度の見込みとなっている。2023年4月の発売戸数は836戸だった。2023年度(2023年4月〜2024年3月)の供給戸数は、前年度(1万7252戸)比8.5%減の1万5788戸。2年連続の減少となった。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
名古屋を中心とする東海エリアは月別のデータがないが、「中部圏主要駅別新築マンション70㎡換算価格」(東京カンテイ)によると、平均価格(70㎡換算)は前年比+ 9.0%の4,934万円で、最高値は名古屋市営地下鉄東山線「池下」の9,639万円。名古屋市内で6000万円を超える高額ゾーンは名古屋駅周辺や名古屋市営地下鉄東山線沿線だけでなく、丸の内や高岳などの桜通線沿線、ほかに名城線の矢場町や上前津というエリアも入っている。
一方、郊外では4000万円台の価格エリアに、名鉄本線の新安城や豊橋、大府、尾張一宮、西春、三重県の桑名が入る。リニア開業に向けて盛り上がりを見せていた名古屋市市街地エリアだったが、先月の開業延期の正式発表によっていったん足踏み状態となりそうだ。
関西・中部圏の中古マンション市況【2024年3月】
次に中古マンションの市況を見ていく。成約平均価格は、近畿圏(関西)の3034万円(前年同月比8.9%増)、中部圏の2360万円(前年同月比6.9%増)と、揃って上昇した。全体として高値が続く中、好調に推移しているといえる。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
中古マンションの市場動向や需給状況【2024年3月】
2024年3月 | 前年同月比 | |
成約件数 | 1,797件 | +10.7% |
平均成約㎡単価 | 44.21万円 | +7.5% |
新規登録物件数 | 5,973件 | +11.4% |
新規登録㎡単価 | 44.27万円 | +0.4% |
近畿圏の中古マンション市場動向(出典:公益社団法人近畿圏不動産流通機構発表「マンスリーリポート 2024年4月号」)
成約件数と新規登録物件数が前年同月比1割以上、上回っている。これは順調に取引が続いていることと、供給が増えていることを示している。
成約件数をエリア別にみると、取引状況にエリア差がある。大阪市は7ヶ月連続で増加、大阪府や滋賀、奈良、和歌山も2ケタアップする一方で、神戸市と京都府、2ケタ減となった。神戸市は8ヶ月連続で減少。
成約㎡単価は全体的に上昇傾向だが、阪神間(尼崎市・西宮市・芦屋市)や兵庫県郊外で減少している。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏(関西)の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
中古マンションの市場動向や需給状況【2024年3月】
2024年3月 | 前年同月比 | |
成約件数 | 577件 | +12.3% |
平均成約㎡単価 | 32.25万円 | +5.9% |
新規登録物件数 | 2,326件 | +15.2% |
新規登録㎡単価 | 34.72万円 | +1.1% |
中部圏の中古マンション市場動向(出典:公益社団法人中部圏不動産流通機構発表「マーケットデータ 月例速報 マーケットウォッチ」)
成約件数は577件と2ケタアップ、新規登録物件数は2326件とこちらも2ケタアップしている。㎡単価も成約・新規登録ともにアップし、前年同月比も上回っている。成約価格は平均で2360万円と高い水準をキープ。全体の市況は好調を維持している。
ただし、在庫件数が8445件と増え続けている点が気になる。前年比でいうと+17.5%だ。新規登録物件数が1年以上にわたって増え続けているからだ。これは今後も成約件数の好調が続けば問題ないだろう。
エリア別にみると、富山県・福井県といった北陸方面での平均成約㎡単価と平均価格がこの1年ほど下落傾向なのが目立つ。データの多くを占める愛知県の数字に左右されるため、愛知県以外でのマンション市況は必ずしも一致するわけではない。
今月の注目のマンション「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」
次に、今月の注目マンション「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」を紹介する。セキスイハウスによる「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」は、名古屋の高級人気エリアである名古屋市千種区池下に建設中。予定戸数は200戸程度だが、2024年5月時点で公式ホームページは開設されておらず、一般公開販売されていない。
ロケーションについて
名古屋市営地下鉄東山線「池下」駅の北側に立地している。
名古屋市営地下鉄東山線「池下」駅へは徒歩1〜2分。ルートは本マンションから西側と南側との2ルートが考えられるが、いずれにしても地下鉄ホームの上に位置する「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」は駅前物件と言える。
周辺施設は、駅ビルにスーパーの「パルマルシェ池下店」のほか「ダイソー」や「マツモトキヨシ」もあり、生活利便性も良い。
「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」現地の様子
現地はすでに10階程度まで立ち上がっており、完成予定は2025年11月下旬予定という。左側のマンションが、10年前の「グランドメゾン池下ザ・タワー」。
接道は北側道路。東向きが「グランドメゾン池下ザ・タワー」とバッティングする位置関係になる。
「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」販売価格は
「グランドメゾンThe池下ガーデンタワー」の気になる販売価格はいくらくらいになるのだろうか。ネット上の情報などを総合すると、低層階の1LDK・60㎡台でおよそ6000万円前後〜高層階の3LDK・200㎡台でおよそ6億円前後までの幅があるようだ。
坪単価にすると300万円~900万円台。近くで販売中の同じセキスイハウス「グランドメゾンThe覚王山向陽町」は坪500万円台ということを考えると、高層階の価格はかなり力の入ったフラッグシップ住戸といえるだろう。
先行優先分譲ですでに半分以上が売れているという情報もあり、残りは100戸を下回るもようだ。一般公開販売の予定は明らかになっていないが、セキスイハウスがこれだけ注力するフラッグシップタワーマンションを公開しないとは考えにくい。
まとめ
引き続き、マンションの価格は高値を維持している。一時的には株価アップの恩恵で、一時的には投資家だけでなく一般サラリーマンなども資金に余裕が生まれ、マンションの購入に動く層もいるようだ。
大手デベロッパーの話では、大阪市街地で外国人(投資家に限らず)が購入するケースが急増しているともいう。地価も資材も上がり、今後もしばらくは高値を維持する可能性が高いと言えるが、さらに上昇するかどうかとなると限度があるだろう。とはいえ、このまま円安が進めば資材・建設費はさらに値上がりするリスクもある。
データや数値のみで確かなことはいえないし、集計や対比方法によって見方が変わることはいうまでもない。好調に見える裏にあるリスクを考えなくてはならない。
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