以下は、2024年3月の市況記事です。
新築マンションの販売戸数は、首都圏と地方圏ともに建築費上昇の影響を受け、全国的に減少傾向である。その中でも供給が多い売主・事業主は再開発を伴う大規模マンションの供給実績がある企業となった。そして供給数は減少傾向ながらも、2023年1月度の平均価格、契約率は好調を示す結果に。新築・中古マンション市況に何が起こっているのか。今月も注目のマンションとあわせて解説していく。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
目次
全国の2023年新築マンション市場動向は? 供給戸数1位は三井不動産レジデンシャル
まずは2023年度の新築マンション市場動向について見ていく。新築マンションの販売戸数は、首都圏と地方圏ともに建築費上昇の影響を受け、全国的に減少傾向である。また売主・事業主別の供給は、JV開発を含め再開発を伴う大規模マンションの供給実績がある企業が上位を占める傾向になっている。(出典:不動産経済研究所)
全国の新築マンション供給動向(出典:不動産経済研究所)
2023年の全国の発売戸数は6万5,075戸で、前年の7万2,967戸よりも7,892戸、10.8%の減少となった。平均価格は790万円アップの5,911万円、1㎡単価は12.7万円アップの92.0万円。ともに7年連続で最高値を更新。
首都圏の販売戸数は2万6,886戸で、前年比9.1%減少、近畿圏1万5,385戸で、13.8%減少、東海・中京圏6,144戸で3.3%減少と3大都市圏すべてで減少した。
地方圏は、北海道1,574戸で26.3%減少、東北地区1,656戸で43.8%減少、首都圏以外の関東地区は1,461戸で25.4%減少、四国地区405戸で65.9%減少、九州・沖縄地区8,111戸で4.0%減少となった。
一方、北陸・山陰地区は617戸で12.4%増加、中国地区2,836戸で44.7%増加。地方都市では、北陸新幹線の延伸が予定されている北陸・山陰地区の供給が伸びるなど供給動向が分かれた結果になった。
主な地方中核都市の発売戸数と前年との比較は、札幌1,543戸で22.0%減少、仙台市900戸で40.8%減少、名古屋市4,470戸で11.0%減少、広島市1,508戸で119.2%増加、福岡市2,946戸で15.6%減少。広島市以外は、減少している。
首都圏と同じように地方圏でも建築費上昇の影響は大きく受けている。いわゆるパワーカップルが需要を支える首都圏市場と異なり、仙台市などの地方都市では、共働き層でも予算を抑える傾向がある。建築費上昇の価格転嫁が難しければ、今後さらに供給が減るかもしれない。
売主・事業主別供給傾向(出典:不動産経済研究所)
また、売主・事業主別発売戸数は下記の順位になっている。三井不動産レジデンシャルは、2013年以来10年ぶりの全国1位となった。
2位 プレサンスコーポレーション3,390戸
3位 野村不動産3,061戸
4位 住友不動産2,859戸
5位 三菱地所レジデンス2,093戸
首都圏のTOP5は下記の通りだ。
2位 野村不動産2,262戸
3位 住友不動産2,011戸
4位 三菱地所レジデンス1,720戸
5位 日鉄興和不動産1,147戸
全国上位5社のうち4社が首都圏上位の企業で、建築費が上昇する中で首都圏の供給戸数が多い企業が上位を占める傾向になっている。
供給上位の企業は、JV開発を含め再開発など大規模マンションの供給実績が多い。首位の三井不動産レジデンシャルは、「幕張新都心若葉住宅地区」(幕張ベイパーク)において、他6社と共に推進する分譲住宅事業第3弾の「幕張ベイパークミッドスクエアタワー」(分譲済み)が2024年2月27日に竣工。スケールの大きな街づくりを着実に進めている。
今年も総戸数807戸の「パークシティ中野 ザ タワー」、総戸数768戸の「幕張ベイパーク ライズゲートタワー」、総戸数2046戸の大規模複合再開発「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」の供給が控える。
これから企画が始まる大規模マンションは、建築費上昇の影響をさらに受けるのは必至で、3物件とも注目を集めそうだ。
また、存在感を示しているのが首都圏で2年連続5位に入った日鉄興和不動産。全戸完売した総戸数1000戸の「セントガーデン海老名」など、大規模プロジェクトの供給が目立つ。都心8区を中心にマンション用地の仕入れを進めており、2024年2月22日に、総戸数815戸地上34階建て超高層分譲タワーマンション「リビオタワー品川」と総戸数522戸の「リビオシティ文京小石川」(定期借地権)を発表した。
ともに都心の人気エリアだけに注目を集めそうだ。
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最新の首都圏新築マンション市況【2024年1月度】
続いて、2024年1月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。
2024年1月度は好調を示す結果となっている。新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べ402戸増加の1,112戸。契約率は、前年同月比18.2ポイントアップの72.8%だ。また、首都圏新築マンションの1戸当たり平均価格は、前年同月比で22.2%アップの7,956万円となっている。
首都圏の新築マンション市場動向2024年1月
新規販売戸数 | 1戸当たり平均価格 | ㎡単価 | 契約率 | |
2023年1月 | 710戸 | 6,510万円 | 100.1万円 | 54.6% |
2023年12月 | 5,975戸 | 6,970万円 | 107.2万円 | 66.1% |
2024年1月 | 1,112戸 | 7,956万円 | 115.4万円 | 72.8% |
首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2024年1月」)
また、販売在庫は5,921戸で、前月よりも366戸の減少。2023年1月末の販売在庫は5,610戸だったので、昨年対比で在庫が若干の増加となった。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。契約率は好調ラインの70%を上回る結果となった。
首都圏新築マンションの地域別の発売状況
続いて、首都圏新築マンションの地域別の発売状況について詳しく見ていく。
首都圏新築マンションの販売動向(2024年1月)
新規販売戸数(前年同月比) | 契約率 | 平均価格 | |
東京23区 | 389戸(+40.9%) | 65.3% | 11,561万円 |
都下 | 198戸(+104.1%) | 85.9% | 5,288万円 |
神奈川県 | 274戸(+67.1%) | 80.7% | 6,297万円 |
埼玉県 | 48戸(-61.6%) | 50.0% | 4,989万円 |
千葉県 | 203戸(+322.9%) | 69.0% |
6,592万円 |
エリア別の平均価格を見ると、東京23区が前年同月比で36.7%アップの1億1,561万円。東京都下が9.7%ダウンの5,288万円、神奈川県が14.6%アップの6,297万円、埼玉県が0.2%ダウンの4,989万円、千葉県は、63.0%アップの6,592万円。
千葉県の大幅な上昇は、浦安市で全戸80㎡超の「プラウド新浦安パークマリーナ」の第1期販売がスタートした影響だ。こちらは、発売住戸の9割超に申し込みが入っている。東京23区以外でも、都心アクセスが良好な場所は、価格が大きく上昇しているということだ。
地域別で見ると、好不調の目安となる契約率70%を上回ったのは、都下と神奈川県。供給戸数が、前年同月比で大きく伸びている都区部や千葉県も65%を上回っており、新築マンションの売れ行きの堅調さは、維持されていると言えそうだ。
首都圏の中古マンション市況【2024年1月度】
続いて、中古マンション市場を見てみよう。前月に続き好調に推移している結果となった。
2024年1月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比5.0%上昇の2,711件と8カ月連続で対前年比プラスになっている。
成約価格は、前年同月比13.7%上昇の4,860万円。平均成約㎡単価も対前年同月比11.2%上昇の75.98万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、45カ月連続となる。地域別では、成約件数について神奈川県以外は増加。成約㎡単価は、すべての地域で上昇した。
また、2024年1月の新規登録物件の㎡単価は、74.93万円となっていて前月よりも-0.4%、前年同月比で-0.5%となった。
首都圏の中古マンション市場動向2024年1月
成約件数 | 平均成約㎡単価 | 新規登録件数 | 在庫件数 | |
2023年1月 | 2,581件 | 68.31万円 | 16,588件 | 43,688件 |
2023年12月 | 2,941件 | 74.82万円 | 14,774件 | 46,528件 |
2024年1月 | 2,711件 | 75.98万円 | 16,526件 | 47,449件 |
首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2024年1月度の中古マンション月例速報」)
2024年1月の新規登録物件数は、対前年同月比で0.4%減少の16,526件。在庫件数は、先月よりも増加し47,449件となっている。前年同月比で8.6%増加しており高水準が続く。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが、2023年夏以降は、鈍化している。
次に地域別の中古マンション動向を見てみてみよう。
首都圏の中古マンション成約㎡単価(2024年1月)
東京23区 | 都下(多摩) | 横浜・川崎市 | 神奈川県その他 | 埼玉県 | 千葉県 | |
---|---|---|---|---|---|---|
成約㎡単価 | 108.72万円 | 58.89万円 | 62.83万円 | 45.61万円 | 43.42万円 | 39.38万円 |
前年同月比 | +8.7% | +17.5% | +5.3% | +19.4% | +8.6% | +8.3% |
前月比 | +0.5% | +16.2% | 0.0% | +0.3% | -3.0% | +7.5% |
(出典:東日本不動産流通機構発表「2024年1月度の中古マンション月例速報」)
2024年1月度の成約㎡単価(前年同月比)は、
地域別の新規登録物件数を見ると、都心、城南、城西、城東、城北と東京23区は、対前年比で売物件数が減少している。
首都圏全体でみると、中古マンション在庫は増加しているものの前述のエリアは、在庫が減少もしくは横ばいで推移している。新築マンション価格がさらに上昇すれば、もう一段価格が上昇するかもしれない。
湘南エリア最高層となる地上29階建て「THE TOWER 湘南辻堂」
次に、今月の注目マンション 「THE TOWER 湘南辻堂」を紹介する。
「THE TOWER 湘南辻堂」は、JR東海道線辻堂駅東口徒歩2分に誕生する湘南エリア最高層となる地上29階建、商業施設との一体型駅直結複合タワーだ。
建物内には、高層棟の5〜29階部分に総戸数196戸の分譲マンション、高層棟 1〜3階部分および低層棟には商業施設が入る。辻堂駅の東改札から広がるペデストリアンデッキをレジデンスフロアまで延長し駅直結2分となる予定だ。
その注目度は高く、2023年12月1日からの物件エントリー数は東京都内からの約1,000件を含む4,000件超となっている(2024年2月22日時点)。このエリアで、新築タワーレジデンスが分譲されるのは14年ぶりとなる。
辻堂駅からは、東京駅・上野駅方面のJR東海道本線(上野東京ライン)と新宿駅方面のJR湘南新宿ラインの2系統が停車。東京駅までは約50分台、新宿駅までは約 60分台と都心とスムーズに結ばれる。
物件の外観、住宅エントランスなどのデザインは、GLAMOROUS co.,ltd. CEO/デザイナー森田恭通氏を起用。緑と海という自然に恵まれた街「辻堂」と共存し、寄り添うようなデザインを提案している。
ライフシーンに合わせ、ワークラウンジやオーナーズラウンジ、ゲストルームなどの共用施設も用意されている。
モデルルームを見学して感じたのが、湘南エリアの眺望価値。辻堂海岸に向かって第一種低層住居専用地域が広がる一戸建て中心の街区。中層階からも海と美しい街並みが広がる。東側には、片瀬江ノ島などの景勝地が、西側には富士山(高層階のみ)。これだけぜいたくな眺望には、早々出会えないだろう。
モデルルームタイプ(18階相当)のリビング・ダイニングの天井高は、約2.5m確保しておりとても開放的。コーナーサッシを採用し空間に広がりを感じる。各居室も柱型がなくスッキリとしたつくりで、アーバンリゾートといった雰囲気だ。
建物2階部分と辻堂駅南口がデッキで結ばれるのも魅力で、辻堂駅北側の開発街区「湘南C-X」には、テラスモール湘南や湘南藤沢徳洲会病院など多くの都市機能が集積。辻堂駅を起点に便利で快適な暮らしがかないそうだ。
まとめ
インフレによる物価上昇が続く中で、賃上げの行方が今後の不動産価格にも影響を与えそうだ。また、若手社員の人材獲得競争が激化する中で初任給の引き上げに動く企業も多い。近年は、資産形成も兼ねて20代からマンション購入を検討する人も目立つようになったという話も聞く。
非課税期間が無期限となる新NISA制度も新たにスタートする中、20代のマンションの購買行動がどうなるかも気になるところだ。
マイナス金利解除の予想が強まる中、東証市場に上場する不動産投資信託の株価指数である東証リート指数は弱含みで推移している。価格上昇の局面だからこそ、自分にとってのマンションの価値をよく見極める必要がありそうだ。
THE TOWER 湘南辻堂
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2025年11月中旬予定
- 東海道本線「辻堂」駅 徒歩2分(南口まで)
- 間取り
- 1R~4LDK
- 専有面積
- 34.90㎡~92.01㎡
- 総戸数
- 未定
- 売主
- リストデベロップメント株式会社
- 施工会社
- 株式会社鴻池組
※データは2024年1月17日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
注目の大規模マンション
パークシティ中野 ザ タワー エアーズ/ザ タワー ブリーズ(物件詳細はこちら)
- 価格
- 一般販売住戸:6,000万円台~40,000万円台(1,000万円単位)(予定・本販売期以降に対応)
- 完成時期
- 2025年12月
- 東京都中野区中野4丁目2番他
- JR中央線「中野」駅 徒歩6分~8分 ※ペデストリアンデッキ(完成予定時期:2030年度)および西側南北自由通路(完成予定時期:2026年度)完成後は、「中野」駅からザ タワー エアーズのエントランスまで徒歩4分、ザ タワー ブリーズのエントランスまで徒歩5分となります。※事業完了予定時期は遅れる場合がございます。、JR総武線「中野」駅 徒歩6分~8分、東京メトロ東西線「中野」駅 徒歩6分~8分
- 間取り
- 一般販売住戸:1DK~3LDK
- 専有面積
- 一般販売住戸:30.65㎡~125.12㎡
- 総戸数
- 807戸
- 売主
- 三井不動産レジデンシャル株式会社
- 施工会社
- 東急建設株式会社
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2024年1月17日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
リビオシティ文京小石川(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2026年7月
- 東京都文京区小石川4丁目70番17(地番)
- 東京メトロ丸ノ内線「後楽園」駅 徒歩12分 サブエントランスより/8番出口まで、都営大江戸線「春日」駅 徒歩11分 サブエントランスより/A5出口まで、都営三田線「白山」駅 徒歩10分 メインエントランスより/A1出口まで
- 間取り
- 1LDK~4LDK
- 専有面積
- 35.89㎡~95.57㎡
- 総戸数
- 522戸
- 売主
- 日鉄興和不動産株式会社、東京建物株式会社(国土交通大臣(17)第6号)、中央日本土地建物株式会社(国土交通大臣(16)第125号)、住友商事株式会社(国土交通大臣(16)第189 号)
- 施工会社
- 株式会社長谷工コーポレーション
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※データは2024年1月17日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
リビオタワー品川(物件詳細はこちら)
- 価格
- 未定
- 完成時期
- 2026年5月
- 東京都港区港南3丁目7-2(地番)
- JR山手線「品川」駅 徒歩13分(港南口)、JR京浜東北・根岸線「品川」駅 徒歩13分(港南口)、京急本線「品川」駅 徒歩17分(高輪口)
- 間取り
- 1LDK~3LDK
- 専有面積
- 42.10㎡~130.24㎡
- 総戸数
- 815戸
- 売主
- 日鉄興和不動産株式会社、関電不動産開発株式会社首都圏事業本部、九州旅客鉄道株式会社、京浜急行電鉄株式会社、中央日本土地建物株式会社
- 施工会社
- 株式会社長谷工コーポレーション
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2024年1月17日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY(物件詳細はこちら)
- 価格
- 一般販売住戸:未定
- 完成時期
- 2026年11月予定
- 東京都中央区豊海町41番
- 都営大江戸線「勝どき」駅 徒歩10分
- 間取り
- 一般販売住戸:1LDK~4LDK
- 専有面積
- 一般販売住戸:32.92㎡~156.56㎡(トランクルーム等除く)
- 総戸数
- 2,046戸
- 売主
- 三井不動産レジデンシャル株式会社【国土交通大臣(4)第7259号】、東急不動産株式会社【国土交通大臣(16)第45号】、東京建物株式会社【国土交通大臣(17)第6号】、野村不動産株式会社【国土交通大臣(14)第1370号】、三菱地所レジデンス株式会社【国土交通大臣(16)第408号】、清水建設株式会社【国土交通大臣(14)第1081号(更新中)】
- 施工会社
- 清水建設株式会社
Yahoo!不動産詳細へ
※データは2024年1月13日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
マンション相場の仕組みと調べ方を解説!
価格が上がっているのはなぜ?
マンション価格は、コロナ禍以降の3年間で大きく上昇
2022年度の首都圏新築マンション発売戸数は、前期(3万3,636戸)比12.1%減少の2万9,569戸。平均価格は、前年度比8.6%上昇の6,288万円となり、年度ベースで過去最高値を大きく更新した。
なお、東京23区は前年度比0.7%減の8,236万円となっている(参考:不動産経済研究所発表の「2022年度首都圏 新築分譲マンション市場動向」)。
中古マンション価格の上昇も続いている。2022年度の首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年度比10.0%上昇の4,343万円。1㎡あたりの単価は、11.7%上昇の68.55万円となっている(東日本不動産流通機構発表の「年報マーケットウォッチ2022年度」)。
コロナ禍前の2019年度の首都圏新築マンションの平均価格は、5,980万円。東京23区は7,286万円だった。コロナ禍以降の3年間で首都圏平均で5.0%、東京23区では13.0%超も上昇したことになる。
こうした新築・中古マンション価格の上昇は長期間にわたっている。不動産市場価格の動向を表すものとして国土交通省が作成しているデータに「不動産価格指数」がある(下図)。
不動産価格指数の推移
2010年を100として指数化したもので、マンション(区分所有)、戸建て住宅、住宅地など種別ごとに公表している。
2022年5月末時点のマンション(区分所有)の不動産価格指数は、全国で188.6、東京都で185.6となっており大きく上昇していることがわかる。
一方で、他の不動産価格指数を見ると戸建て住宅は、全国で116.5、東京132.7、住宅地は、全国111.1、住宅地123.5とマンション(区分所有)と比べ上昇幅が小さい。
ではなぜ、マンション(区分所有)と戸建て住宅でこのような価格差が生まれたのであろうか。相場形成の要因について考えてみたい。
なぜマンション価格は上がっているのか?
オープンなマーケットでは、価格は需要と供給によって変動する。比較的堅調なマンション市場を支えているのは、低金利下でマンションを購入する30代から40代の1次取得層(初めて物件を購入する世帯主)だ。
2022年の新築マンション購入者のうち30代・40代の占める割合は、68.2%と約7割を占める(参考:「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査(株式会社リクルート)」。
また、共働き比率の増加もマンション需要を後押しする。令和4年就業統計基本調査によれば、育児をしている者に占める有業者の割合は、85.2%であり10年前の71.1%より大きく上昇している。
こうした傾向は、新築マンション購入者動向にも表れており、2022年新築マンション購入者の既婚世帯の共働き比率は、73%となっている。
一方、新築マンションの供給戸数はピーク時よりも大きく減少している。不動産経済研究所のデータによれば、首都圏の供給戸数のピークは、2000年の9万5,635戸。直近の7年間は4万戸を下回っており、2022年は2万9,569戸と3万戸を割り込んだ。リーマンショック前の2007年の6万1,021戸と比べると50%未満の水準だ。
供給戸数が減っているのには理由がある。一つは、都市の市街化が進む中でマンション供給に適した用地が減っていること。かつては、工場や倉庫跡地、社宅跡地などが資産の見直しで市場に放出され、大規模マンションなどに生まれ変わった。
そうした事業用地の転用が一巡し、近年は事業化に調整を要する再開発や建て替えプロジェクトが目立つようになっている。
もう一つの要因が建築費の上昇だ。建築費は、人件費や原材料費、輸送費などに影響される。もともと上昇トレンドにあったが、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によってより顕著になった。
一般財団法人建設物価調査会発表の2023年8月度の集合住宅RCの建築費指数は、工事原価が124.0。この指数は、2015年平均を100としており、2020年平均は104.2だった。工事費がこの3年間で大きく上昇していることを示唆する。
新築マンションの原価の多くは、土地原価と建物原価が占める。建築費の上昇は、土地が比較的安く、建物原価の割合が高い郊外エリアなどの事業性に影響を与え、供給戸数を抑制する。そして需要に対して十分な供給戸数がなければ価格上昇につながっていく。
新築マンションと中古マンションを並行して検討している人は、2022年は54%に上る。従って、新築マンションの需給動向は、中古マンションの需給にも影響している(参考:「新築マンション契約者動向調査(株式会社リクルート)」)。
日本は、長期間デフレ下にあり大きな課題であったが、2023年7月度の消費者物価指数の全国総合指数は、前年同月比で3.3%上昇とインフレ基調にある。
ガソリン価格の上昇や人件費アップなど建築費を押し上げる要素は今後も多い。また、インバウンド需要の回復などにより都市部の用地取得競争も激しくなっている。原価が上昇しても需要が弱ければ価格は上昇しにくいが、今後の価格動向には注意が必要だ。
マンション相場を調べるには?
ここ数年は、マンション価格が大きく上昇したこともあり、マンション相場を把握することが難しくなっている。取引価格の目安にもなる公示地価が発表されている土地価格と異なり、マンション価格は個別性が強く、一般の人が理解するのは容易ではない。では、どうやって相場を把握するのか。
まず、新築マンションについては、売り出し中の物件の公開されている価格から調べることができる。最近では、販売住戸の価格をすべて開示するマンションもあり把握しやすくなった。
また、正式価格発表前の予定価格の場合は、反響件数を獲得するため最低価格や最多価格帯をやや低めに設定するケースが多い。例えば、3LDKタイプの最多価格帯が5,900万円台とあれば、中心価格帯は、6,000万円台以上と思ってよいだろう。
・地価LOOKレポート
将来の新築マンション価格動向の参考になるのが「地価LOOKレポート」(主要都市の高度利用地地価動向報告)だ。地価LOOKレポートとは、四半期ごとに地価動向を把握し、先行的な地価動向を示したもの。対象地区は、三大都市圏、地方中心都市などで、特に地価動向を把握する必要性の高いところとなっている。
不動産鑑定士が情報を収集し、結果を国土交通省が集約し、公表している。中心市街地のマンション価格は、土地価格が占める割合が高いのでマンション価格動向を知るヒントになる。
▪マンションレビュー
中古マンションデータなら、ワンノブアカインドが運営する「マンションレビュー」がおすすめだ。全国の100万棟を超えるマンション・アパートが登録されており、会員登録すればマンション名を入力するだけで、今のマンション相場や住戸ごとの推定価格をリサーチできる。情報の更新頻度も高く、プロから見た実感相場にも近い印象だ。
中古マンションの新築時からの上昇率、中古物件の販売価格の履歴や賃料相場なども確認でき、相場の推移や賃貸する場合の利回りなども計算できる。専有面積や方位、階数などの入力で住戸の推定相場も算出され、便利である。 「中古マンションランキング」では、人気マンションの相場をエリアごとにチェックすることができる。また、有償であるが、過去に分譲されたマンションの新築時の価格表もデータで入手可能だ。
現地へも足を運ぼう
新築マンションや中古マンションの相場を知ることは、納得感のあるマンション選びをするための重要なポイントだ。そして、3000物件以上のモデルルームや現場を見た筆者の意見として一番のおすすめは、モデルルームの見学や現地を回り自分の目で確かめること。
「百聞は一見に如(し)かず」とは、マンション選びにも言えることで、相場が把握できるだけでなく、モデルルーム見学で本当は、どんな暮らしがしたいかもイメージできる。納得のあるマンション選びのためには、相場を確認するだけでなく実際の現場を回ることが大切だろう。
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