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新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説!【2024年11月版】

2024年11月11日公開(2024年11月11日更新)
岡本郁雄:不動産アナリスト

以下は、2024年5月の市況記事です。

マンション価格上昇が止まらない。2023年度の首都圏新築マンションの平均価格は7,566万円。平均価格は、3期連続のアップで、㎡単価は12期連続のアップとなる。また、中古マンション価格も上昇トレンドが続いており、2023年度首都圏中古マンション成約価格は11年連続上昇の4,700万円だ。今回も、2024年3月度の首都圏新築・中古マンション市況を解説し、注目のマンションを紹介する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)

2023年度の首都圏新築・中古マンション市場

 2023年度の首都圏新築分譲マンションの発売戸数は、前年度よりも6.4%減少の2万6,798戸。2年連続の3万戸割れとなった。また、平均価格は7,566万円で前期比よりも659万円アップ。㎡単価は、11.2万円上昇の115.1万円でこちらは、10.8%の上昇となった。

 初月契約率は、69.9%となり好不調の目安とされる70%近辺で推移。価格上昇にもかかわらず、堅調な売れ行きが続く。

 価格の上昇は、都心での大規模・高額物件の供給に加え、施工費や用地費の高騰などによるもの。エリア別では、東京23区が10,464万円で5.7%の上昇。東京都下が5,375万円、神奈川県6,145万円、埼玉県4,890万円、千葉県5,067万円。埼玉県以外の地域で価格が上昇している。中でも、直近3年間の東京都区部の上昇が目立つ。

地域別平均価格の推移

 この1年間で為替相場は、大きく円安に振れた。2023年3月31日に132円台だったドル-円相場は、2024年3月31日には、151円台に。2024年4月24日時点では、1990年6月以来の約34年ぶりとなる155円台に上昇している。

 円安は、海外客から見た日本の物価を押し下げる。日本政府観光局発表の訪日外客数(推計値)は、3,081,600人となり前年同月比で69.5%増。単月として初めて300万人を超えた。

 円が安くなったのは、対ドルだけではない。コロナ禍前の2020年1月度に1元に対し15円台だった元-円レートは、2024年4月には、21円台に。約3割も元に対して下落している。

 ここ数年、首都圏都心部のマンション売買市場で外国人の存在感が増しているが、ほとんどの通貨に対して弱くなった円レートも大きな要因として考えられる。2019年度の東京23区の新築マンション平均価格は7,400万円。2023年度は1億464万円で実に4割超も上昇している。

 しかし、ドル換算(2020年1月は、おおよそ110円台)で考えると、約4割も円が下落しており、マンション価格はほぼ横ばい。海外から注目されるもの当然だろう。

東京都区部新築マンション平均価格(ドル換算)の推移 新築マンション価格は、不動産経済研究所調べ。ドル-円レートは、同年度9月末時点(日本銀行HP)で試算
東京都区部新築マンション平均価格(ドル換算)の推移 新築マンション価格は、不動産経済研究所調べ。ドル-円レートは、同年度9月末時点(日本銀行HP)で試算

 コロナ禍によって2020年以降の訪日外客数は、激減していた。2023年以降は、韓国、中国、台湾、香港といった2019年に約7割のシェアを占めていた東アジアの訪日客が回復。4つの地域だけで、2023年の訪日外客数は、1570万人にも上る。

 円安効果もあり、自国より安く価格も上昇基調にある東京都心のマンションに関心が集まるのも当然だろう。

 中古市場にもインバウンドの影響があり、外国人富裕層が好む千代田区、港区、新宿区といった都心の中古マンションも上昇基調が続いている。東日本不動産流通機構発表の「首都圏不動産流通市場の動向(2023年度)」によれば、2023年度における首都圏中古マンションの成約件数は、36,595件で2年ぶりに前年度を上回った。

 成約物件の平均単価㎡は、7.5%上昇の73.67万円で、11年連続の上昇。11年間で実に91.8%も上昇している。2024年3月度の都心3区(千代田区・港区・中央区)の成約㎡単価は、177.16万円で、前年同月比では、17.5%の大幅アップだ。

 日本銀行は、マイナス金利を解除し17年ぶりに政策金利を引き上げたが、日米欧の金利差は、依然として大きい。円安は、外国人から見た不動産価格を抑えるだけでなく、輸入物価を押し上げ建築費の上昇にもつながる。都心マンション価格の高止まりは、まだまだ続きそうだ。

最新の首都圏新築マンション市況【2024年3月度】

 続いて、2024年3月度の首都圏新築マンション市場を見てみたい。

 2024年3月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月と比べほぼ横ばいの2,451戸。契約率は、前月比2.2ポイントアップの72.1%となっている。

 また、首都圏新築マンションの1戸当たりの平均価格は、前年同月比で6,737万円ダウンの7,623万円となっているが、これは2023年3月度に都心高額マンションの分譲が集中し、平均価格が押し上げられていたため。前月の7,398万円より上昇しており、新築マンションの価格水準は2024年3月度も高いままだ。

首都圏の新築マンション市場動向2024年3月

  新規販売戸数 1戸当たり平均価格 ㎡単価 契約率
2023年3月 2,439戸 1億4,360万円 199.9万円 79.5%
2024年2月 1,319戸 7,122万円 108.4万円 69.9%
2024年3月 2,451戸 7,623万円 113.5万円 72.1%

首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2024年3月」)

 また、販売在庫は5,665戸で、前月末よりも83戸の減少。2023年2月末の販売在庫は5,189戸だったので、昨年対比で若干の増加となっている。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。契約率は好調ラインの70%を少し超える結果に。ほぼ横ばいと言えるだろう。

過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成
過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移 不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 

首都圏新築マンションの販売動向(2024年3月)

  新規販売戸数(前年同月比) 契約率 平均価格
東京23区 687戸(-48.2%) 78.2% 1億2,476万円
都下 123戸(-21.2%) 43.1% 5,363万円
神奈川県 720戸(+50.9%) 71.5% 6,082万円
埼玉県 375戸(+71.2%) 65.9% 4,853万円
千葉県 546戸(+109.2%) 75.8%

5,963万円

(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2024年3月」)

 エリア別の価格は、東京23区が1億2,476万円。東京都下が5,363万円、神奈川県が6,082万円、埼玉県が4,853万円、千葉県は、5,963万円。東京都以外の新築マンション価格が対前年同月比で上昇している。

 地域別で見ると好不調の目安となる70%を上回ったのは、東京23区と神奈川県、千葉県。新築マンションの売れ行きは、堅調さを維持している。

首都圏の中古マンション市況【2024年3月度】

  続いて、中古マンション市場を見てみよう。2024年3月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比10.7%増加の3,810件と10カ月連続で対前年比プラスになっている。成約価格は、前年同月比8.7%上昇の4,821万円。平均成約㎡単価も対前年同月比8.6%上昇の75.88万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、47カ月連続となる。

 また、2024年3月の新規登録物件の㎡単価は、73.81万円となっていて、前月の74.23万円より若干下落した。

首都圏の中古マンション市場動向2024年3月

  成約件数 平均成約㎡単価 新規登録件数 在庫件数
2023年3月 3,442件 69.83万円 17,230件 45,125件
2024年2月 3,350件 75.52万円 16,730件 47,628件
2024年3月 3,810件 75.88万円 16,846件 46,351件

首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2024年3月度の中古マンション月例速報」)

 2024年3月の新規登録物件数は、対前年同月比で2.2%減少の16,846件。在庫件数は減少し46,351件となっている。前月比で2.7%減少したものの、高水準が続く。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが、2023年夏以降は、鈍化している。

 次に、地域別の中古マンション動向を見てみてみよう。

 地域別では、すべての地域で成約件数が増加。中でも埼玉県は、22.6%の大幅増加となっている。成約㎡単価も対前年同月比で埼玉県以外の地域で上昇。東京都区部の成約㎡単価は、前年同月比で+8.7%となっており、㎡単価は、109.48万円と高水準が続く。

首都圏の中古マンション成約㎡単価(2024年3月)

  東京23区 都下(多摩) 横浜・川崎市 神奈川県その他 埼玉県 千葉県
成約㎡単価 109.48万円 55.18万円 64.41万円 43.71万円 44.23万円 40.28万円
前年同月比 +8.7% +7.0% +7.2% +12.7% -0.6% +9.6%
前月比 -1.6% -4.5% +0.3% +0.2% -2.8% -2.1%

(出典:東日本不動産流通機構発表「2024年3月度の中古マンション月例速報」)

 さらに地域を細かく見てみると、都心3区(千代田・中央・港)の価格上昇が続いており2024年3月度は、成約㎡単価が前年同月の150.81万円を大きく上回る177.16万円に。実に17.5%もの上昇となっている。

 同じく城西地区(渋谷・新宿・杉並・中野)も2023年3月度の112.15万円から131.62万円と17.4%も上昇。東京23区の中でも伸びが顕著だ。東京23区においては、新規登録物件も前年同月比で減少しており売物件数の減少傾向が続いている。新築マンションの分譲も限られており、中古マンション価格がさらに押し上げられるかもしれない。

 

注目マンション「パークシティ中野 ザ タワー エアーズ/ザ タワー ブリーズ」

1万件を超えるエントリーで案内予約も堅調

「パークシティ中野」の外観完成予想CG(出典 公式HP)
「パークシティ中野」の外観完成予想CG(出典 公式HP

 中野駅北口にて開発中の新街区「パークシティ中野」に建設される2棟の住宅棟「パークシティ中野 ザ タワー エアーズ」、「パークシティ中野 ザ タワー ブリーズ」のレジデンシャルサロンの事前案内会が、2024年5月3日から始まった。

 同物件は、「囲町東地区第一種市街地再開発事業」において建設される2棟合わせて全807戸の大規模レジデンス。官民一体の中野駅前開発における約2.0haの大規模複合再開発街区に、オフィス・商業棟「中野 M-SQUARE」とともに一体開発が行われる。

 第1期1次の予定販売価格は、1億2,000万円台~4億円台(1,000万円単位)。予定最多販売価格帯は、1億4,000万円台(1,000万円単位) 中心。平均坪単価は、700万円を超える見込みだが、2023年9月の物件HP公開以降、既に1万件を超えるエントリーを獲得。事前案内会の予約も堅調で、すぐに予約枠が埋まる状況だ。

 先行して販売される「パークシティ中野 ザ タワー エアーズ」の第1期1次の販売開始は、2023年7月下旬予定。中野区以外からの反響が9割を占め、地方都市からのエントリーもあるなど注目度の高さががうかがえる。筆者は、コンセプトルームなどの物件のプレゼンテーションを既に見学した。レジデンシャルサロンで感じたプロジェクトの魅力を紹介する。

中野駅からペデストリアンデッキで結ばれる、人と緑をつなぐ新街区に誕生

パークシティ中野の現地案内図(出典 公式HP)
パークシティ中野の現地案内図(出典:公式ホームページから

 中野駅周辺は、11もの開発プロジェクトが進行中で、街の姿を大きく変えつつある。2024年5月には、中野区役所が新しく完成した新庁舎に移転。中野駅上では、中野駅西側南北通路および橋上駅舎・駅ビルが建設され、中野駅新北口広場も整備される予定だ。

 「パークシティ中野」は、2030 年度の中野駅新北口広場供用開始(2024 年 1 月時点)に併せ、中野駅からパークシティ中野へのペデストリアンデッキ接続に向けて、中野区と協働して整備を推進。工事完成後は、信号のないフラットアプローチで接続されることとなる。

中野駅周辺の開発現場を住友不動産中野駅前ビルより撮影(2024年4月 筆者撮影)
中野駅周辺の開発現場を住友不動産中野駅前ビルより撮影(2024年4月 筆者撮影)

 また、旧警察大学校等跡地地区に大学のキャンパスや公園が整備された中野四季の都市(まち)とつながる広大な緑地空間を形成。防災公園・商業施設・オフィス・病院・大学などからなる、「中野四季の都市」(2012年完成)に隣接しており、約1.5haの豊富な緑を有する「四季の森公園」は「パークシティ中野」の緑豊かなランドスケープともつながる。

 街区内のオフィス・商業棟「中野 M-SQUARE」の1階~2階の商業施設フロアには、大型スーパーマーケット、飲食店舗、物販店舗などを誘致(店舗面積計約 5,000㎡)。2階~11階を構成するオフィスフロア(床面積約12,000㎡)の3階専有部からつながる屋外テラスは、ワーカーの憩いの場となる。また、歩行者空間の緑とともに街区全体に立体的な緑地空間を作り出していく。

 建設地は、海抜約40mの安定した武蔵野台地の中央部に位置し、地盤沈下や地震の揺れ、液状化や大規模な水害などの災害リスクが比較的小さいエリア。地震時に建物への力を伝えにくくし、躯体への負担を軽減する免震構造を2棟ともに採用している。デザインは、光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所が担当。ファサードは、空と緑を結ぶスタイリッシュなつくりだ。

 多彩な共用施設も魅力で、ライブラリーラウンジやパーティールーム兼ゲストルーム、 フィットネスルーム、テラス、エントランスラウンジやファミリーラウンジなどを用意。街区南側に遮る建物がなく、日当たりの良さと開放感を生かした南向き住戸はワイドスパン中心のプラン構成。リビングダイニングの最高天井高は約 2,650mm(プレミアムフロア約 3,000mm)と、専有面積以上のゆとりある住空間を届けている。

コンセプトルーム(筆者撮影)
コンセプトルーム(筆者撮影)

 さまざまなライフスタイルに応える、全105タイプ、1DK~4LDKの豊富なプランバリエーションを用意。快適な暮らしをサポートする各種設備も注目ポイントで、パークシティシリーズで初めて東京ガスとパナソニックが開発した「熱交換気システム・AIR TES」を全住戸に採用している。

 AIR TESは機械換気により外気を室温に近づけて室内に取り入れるため、室内の温度変化を抑えることで、いつも快適・省エネな生活を支援。花粉やPM2.5の少ない良好な室内環境を保てるのも魅力だ。

 「ザ タワー エアーズ」の一般販売住戸のうち、23階・24階のプレミアムフロアの住戸は17戸。4階~22階の住戸のうち、3LDKが154戸と最も多く、2LDKは46戸、1LDKは1戸、1DKが21戸とファミリータイプ中心の構成のため、30代から40代の2人から3人の家族の反響が多いようだ。

まとめ

 ここ数年の急激な円安は、輸出企業の業績を押し上げ国内へのインバウンド需要を拡大させる一方で、輸入物価の上昇や建築費の高騰など負の側面も表れつつある。さらに、日本銀行の金融緩和策の修正は、工期が長期に及ぶ再開発事業のコスト増にもつながり加速した再開発の動きのブレーキとなる可能性もありうる。「パークシティ中野」のような大規模再開発の希少性は、より一層高まるかもしれない。

 中野駅の南口駅前広場に面した中野二丁目地区では、中野二丁目地区第一種市街地再開発事業として整備された住友不動産中野駅前ビルと賃貸レジデンスである中野ステーションレジデンスが今春に開業。地上20階建てのオフィスは、中野駅のフットワークの良さと駅前立地の希少性が評価され、すべて埋まったという。

 既に入居が始まっている中野ステーションレジデンスも賃貸戸数394戸うち、約3割に申し込みが入っている。都心の好立地は、オフィスやホテル、賃貸住宅となるケースが目立つ。将来価値を求めるなら東京都心で活発化している再開発に目を向けることをおすすめしたい。

パークシティ中野 ザ タワー エアーズ/ザ タワー ブリーズ(物件詳細はこちら)

価格
一般販売住戸:6,000万円台~40,000万円台(1,000万円単位)(予定・本販売期以降に対応)
完成時期
2025年12月
  • 東京都中野区中野4丁目2番他
  • JR中央線「中野」駅 徒歩6分~8分 ※ペデストリアンデッキ(完成予定時期:2030年度)および西側南北自由通路(完成予定時期:2026年度)完成後は、「中野」駅からザ タワー エアーズのエントランスまで徒歩4分、ザ タワー ブリーズのエントランスまで徒歩5分となります。※事業完了予定時期は遅れる場合がございます。、JR総武線「中野」駅 徒歩6分~8分、東京メトロ東西線「中野」駅 徒歩6分~8分
間取り
一般販売住戸:1DK~3LDK
専有面積
一般販売住戸:30.65㎡~125.12㎡
総戸数
807戸
売主
三井不動産レジデンシャル株式会社
施工会社
東急建設株式会社
成約で5万円分のPayPayポイントがもらえる!(対象物件のみ)
パークシティ中野 ザ タワー エアーズ/ザ タワー ブリーズ資料請求はこちら
Yahoo!不動産詳細へ

※データは2024年1月17日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。

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マンション相場の仕組みと調べ方を解説! 
価格が上がっているのはなぜ?

マンション価格は、コロナ禍以降の3年間で大きく上昇

 2022年度の首都圏新築マンション発売戸数は、前期(3万3,636戸)比12.1%減少の2万9,569戸。平均価格は、前年度比8.6%上昇の6,288万円となり、年度ベースで過去最高値を大きく更新した。

 なお、東京23区は前年度比0.7%減の8,236万円となっている(参考:不動産経済研究所発表の「2022年度首都圏 新築分譲マンション市場動向」)。

 中古マンション価格の上昇も続いている。2022年度の首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年度比10.0%上昇の4,343万円。1㎡あたりの単価は、11.7%上昇の68.55万円となっている(東日本不動産流通機構発表の「年報マーケットウォッチ2022年度」)。

 コロナ禍前の2019年度の首都圏新築マンションの平均価格は、5,980万円。東京23区は7,286万円だった。コロナ禍以降の3年間で首都圏平均で5.0%、東京23区では13.0%超も上昇したことになる。

 こうした新築・中古マンション価格の上昇は長期間にわたっている。不動産市場価格の動向を表すものとして国土交通省が作成しているデータに「不動産価格指数」がある(下図)。

不動産価格指数の推移

不動産価格指数の推移
不動産価格指数の推移(出典:国土交通省「不動産価格指数」

 2010年を100として指数化したもので、マンション(区分所有)、戸建て住宅、住宅地など種別ごとに公表している。

 2022年5月末時点のマンション(区分所有)の不動産価格指数は、全国で188.6、東京都で185.6となっており大きく上昇していることがわかる。

 一方で、他の不動産価格指数を見ると戸建て住宅は、全国で116.5、東京132.7、住宅地は、全国111.1、住宅地123.5とマンション(区分所有)と比べ上昇幅が小さい。

 ではなぜ、マンション(区分所有)と戸建て住宅でこのような価格差が生まれたのであろうか。相場形成の要因について考えてみたい。

なぜマンション価格は上がっているのか?

 オープンなマーケットでは、価格は需要と供給によって変動する。比較的堅調なマンション市場を支えているのは、低金利下でマンションを購入する30代から40代の1次取得層(初めて物件を購入する世帯主)だ。

 2022年の新築マンション購入者のうち30代・40代の占める割合は、68.2%と約7割を占める(参考:「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査(株式会社リクルート)」。

 また、共働き比率の増加もマンション需要を後押しする。令和4年就業統計基本調査によれば、育児をしている者に占める有業者の割合は、85.2%であり10年前の71.1%より大きく上昇している。

 こうした傾向は、新築マンション購入者動向にも表れており、2022年新築マンション購入者の既婚世帯の共働き比率は、73%となっている。

 一方、新築マンションの供給戸数はピーク時よりも大きく減少している。不動産経済研究所のデータによれば、首都圏の供給戸数のピークは、2000年の9万5,635戸。直近の7年間は4万戸を下回っており、2022年は2万9,569戸と3万戸を割り込んだ。リーマンショック前の2007年の6万1,021戸と比べると50%未満の水準だ。

首都圏 新築分譲マンション供給戸数の推移
首都圏 新築分譲マンション供給戸数の推移(出典:不動産経済研究所)

 供給戸数が減っているのには理由がある。一つは、都市の市街化が進む中でマンション供給に適した用地が減っていること。かつては、工場や倉庫跡地、社宅跡地などが資産の見直しで市場に放出され、大規模マンションなどに生まれ変わった。

 そうした事業用地の転用が一巡し、近年は事業化に調整を要する再開発や建て替えプロジェクトが目立つようになっている。

 もう一つの要因が建築費の上昇だ。建築費は、人件費や原材料費、輸送費などに影響される。もともと上昇トレンドにあったが、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によってより顕著になった。

 一般財団法人建設物価調査会発表の2023年8月度の集合住宅RCの建築費指数は、工事原価が124.0。この指数は、2015年平均を100としており、2020年平均は104.2だった。工事費がこの3年間で大きく上昇していることを示唆する。

 新築マンションの原価の多くは、土地原価と建物原価が占める。建築費の上昇は、土地が比較的安く、建物原価の割合が高い郊外エリアなどの事業性に影響を与え、供給戸数を抑制する。そして需要に対して十分な供給戸数がなければ価格上昇につながっていく。

 新築マンションと中古マンションを並行して検討している人は、2022年は54%に上る。従って、新築マンションの需給動向は、中古マンションの需給にも影響している(参考:「新築マンション契約者動向調査(株式会社リクルート)」)。

 日本は、長期間デフレ下にあり大きな課題であったが、2023年7月度の消費者物価指数の全国総合指数は、前年同月比で3.3%上昇とインフレ基調にある。

 ガソリン価格の上昇や人件費アップなど建築費を押し上げる要素は今後も多い。また、インバウンド需要の回復などにより都市部の用地取得競争も激しくなっている。原価が上昇しても需要が弱ければ価格は上昇しにくいが、今後の価格動向には注意が必要だ。

マンション相場を調べるには?

 ここ数年は、マンション価格が大きく上昇したこともあり、マンション相場を把握することが難しくなっている。取引価格の目安にもなる地価公示が発表されている土地価格と異なり、マンション価格は個別性が強く、一般の人が理解するのは容易ではない。では、どうやって相場を把握するのか。

 まず、新築マンションについては、売り出し中の物件の公開されている価格から調べることができる。最近では、販売住戸の価格をすべて開示するマンションもあり把握しやすくなった。

 また、正式価格発表前の予定価格の場合は、反響件数を獲得するため最低価格や最多価格帯をやや低めに設定するケースが多い。例えば、3LDKタイプの最多価格帯が5,900万円台とあれば、中心価格帯は、6,000万円台以上と思ってよいだろう。

・地価LOOKレポート

 将来の新築マンション価格動向の参考になるのが地価LOOKレポート」(主要都市の高度利用地地価動向報告)だ。地価LOOKレポートとは、四半期ごとに地価動向を把握し、先行的な地価動向を示したもの。対象地区は、三大都市圏、地方中心都市などで、特に地価動向を把握する必要性の高いところとなっている。

 不動産鑑定士が情報を収集し、結果を国土交通省が集約し、公表している。中心市街地のマンション価格は、土地価格が占める割合が高いのでマンション価格動向を知るヒントになる。

▪マンションレビュー

 中古マンションデータなら、ワンノブアカインドが運営する「マンションレビュー」がおすすめだ。全国の100万棟を超えるマンション・アパートが登録されており、会員登録すればマンション名を入力するだけで、今のマンション相場や住戸ごとの推定価格をリサーチできる。情報の更新頻度も高く、プロから見た実感相場にも近い印象だ。

マンションレビューの表示例
マンションレビューの表示例(画像出典:公式ホームページから)

 中古マンションの新築時からの上昇率、中古物件の販売価格の履歴や賃料相場なども確認でき、相場の推移や賃貸する場合の利回りなども計算できる。専有面積や方位、階数などの入力で住戸の推定相場も算出され、便利である。 「中古マンションランキング」では、人気マンションの相場をエリアごとにチェックすることができる。また、有償であるが、過去に分譲されたマンションの新築時の価格表もデータで入手可能だ。

現地へも足を運ぼう

 新築マンションや中古マンションの相場を知ることは、納得感のあるマンション選びをするための重要なポイントだ。そして、3000物件以上のモデルルームや現場を見た筆者の意見として一番のおすすめは、モデルルームの見学や現地を回り自分の目で確かめること。

 「百聞は一見に如(し)かず」とは、マンション選びにも言えることで、相場が把握できるだけでなく、モデルルーム見学で本当は、どんな暮らしがしたいかもイメージできる。納得のあるマンション選びのためには、相場を確認するだけでなく実際の現場を回ることが大切だろう。

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