新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説!【2023年9月版】

2023年9月12日公開(2023年9月27日更新)
岡本郁雄:不動産アナリスト

以下は2023年3月の市況記事です。

新築・中古マンションの最新市況を、解説したい。2022年、全国の発売戸数は、前年比5.9%減少の7万2,967戸と2年ぶりの減少。三大都市圏が落ち込む一方で、北海道、東北、四国、九州などは増加となっている。また、1戸あたりの平均価格は、5,121万円で6年連続の上昇。1㎡あたりの単価は、79.3万円で10年連続の上昇。三大都市圏の発売戸数が減少する中でも価格上昇が続いている。札幌や福岡など地方都市でも億ションの分譲が目立つようになってきている。(不動産アナリスト:岡本郁雄)

2023年コロナ収束後の住宅事情はどう変わる?

 コロナ禍の収束が見えつつある中、東京都の人口が増加に転じている。東京都発表の2023年1月1日時点の人口は、対前年同月比で46,732人増加の14,034,861人。コロナ禍で、弱含んでいた東京都の人口は、回復傾向にある。なかでも、いわゆる都心通勤の利便性が高い都心ないし都心近接エリアで増加傾向が見られた。

 厚生労働省発表の都道府県別有効求人倍率でも、東京都への流入理由がわかる。2021年12月の東京都の有効求人倍率1.23倍に対し、2022年12月は、1.68倍へと大きく増加。全国の求人倍率は、この間で1.17倍から1.35倍への増加だから求人ニーズの高まりが一目瞭然だ。これらの傾向から徐々に住宅事情にも影響が出始めることが予想される。

最新の首都圏新築マンション市況は?

 続いて、2023年1月度の首都圏新築マンション市場を見てみよう。下の表のとおり2023年1月の首都圏新築マンションの供給戸数は、対前年同月比37.1%減少の710戸。対前年同月より418戸減少した。

首都圏の新築マンション市場動向2022年12月
首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2023年1月」)

 新築マンションの1戸当たりの平均価格は6,510万円、前年同月(6,157万円)比で5.7%のアップ。1㎡当たりの単価は100.1万円、前年同月(94.7万円)比で5.7%の上昇。契約率は54.6%で、前年同月(58.4%)比では3.8ポイントのダウン、前月(74.8%)比では20.2ポイントダウンした。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 販売在庫は、5,610戸で前月よりも309戸の減少。例年、1月は発売戸数が少なく在庫も増えていないことから売れ行きに大きな変化はないといえる。

 また、新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のようになっている。

2023年1月度の首都圏新築マンション新規発売戸数および契約率、平均価格

東京23区……276戸(前年同月比-40.3%) 46.7% 8,455万円
都下………97戸(前年同月比-18.5%) 38.1% 5,858万円
神奈川県…164戸(前年同月比-54.7%) 72.0% 5,494万円
埼玉県……125戸(前年同月比+23.8%) 65.6% 5,000万円
千葉県……48戸(前年同月比-42.9%) 45.8% 4,043万円

 東京23区の平均価格は、8,455万円となっており対前年比で13.0%の上昇。㎡単価も136.3万円でこちらも13.2%の上昇だ。値頃感のあるマンションの販売は堅調で、三田ガーデンヒルズなどフラッグシップな高級マンションの販売も2月以降始まっている。2023年上半期で、価格はもう一段上昇しそうだ。

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首都圏の中古マンション市況は?

 次に中古マンション市場を見てみたい。

 中古マンション成約㎡単価は、前年同月比6.4%上昇。成約件数は6.5%減少。2023年1月度の首都圏中古マンションの成約件数は、下記の表の通り2,581件となっており前年同月(2,760件)比で6.5%減少した。対前年同月比で減少するのは6カ月連続で売れ行きの鈍化傾向が続いている。

首都圏の中古マンション市場動向2022年12月
首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2023年1月度の中古マンション月例速報」)

 首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で3.1%上昇の4,276万円。平均成約㎡単価は、68.31万円で+6.4%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、33カ月連続だ。

 また、成約㎡単価は前月よりも2.3%下落した。成約㎡単価が69万円を下回るのは、2022年8月以来となる。いっぽう、2023年1月の新規登録物件の㎡単価は74.31万円となっており、前月比1.9%上昇と売り手の意向は強気だ。

 留意したいのは、新規登録物件数が16,588件と一気に増えた点。コロナ禍以降で、新規登録物件が16,000件を超えたのは、2020年6月以来。実に2年半ぶりとなる。成約件数が減少する中、新気登録物件が増えたことで在庫件数は43,688件となった。在庫件数が43,000件を上回るのは、2020年7月度の44,350件以来だ。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

 また、地域別の動向を見てみよう。

首都圏の中古マンション成約㎡単価

都区部……………100.05万円(前年同月比+5.5%)
都下(多摩)……50.11万円(前年同月比-1.2%)
神奈川県
横浜・川崎市……59.69万円(前年同月比+5.3%)
神奈川県その他…38.21万円(前年同月比+5.9%)
埼玉県……………39.98万円(前年同月比+4.8%)
千葉県……………36.34万円(前年同月比+4.5%)

 地域別の成約㎡単価は、都下を除き対前年同月比プラスだ。また、都区部の伸びは対前年同月比で+5.5%だが、直近1年間では最も伸び率が低くなっている。

 2022年12月に日本銀行は、これまで±0.25%としていた長期金利の変動幅を拡大し±0.5%にするイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直しを行った。

 これにより長期金利は上昇し、固定型の住宅ローン金利も影響を受けた。2023年3月も長期固定型の住宅ローンやフラット35の金利は上昇しており借入額が大きくなりがちな都区部の価格動向にも影響が出そうだ。

【関連記事】2023年の住宅ローン金利見通しは今後どうなる?日銀の政策転換で長期固定金利は上昇、変動金利も銀行の運用方針転換で上昇も

首都圏の賃貸需要が上昇している

 冒頭で東京都の人口が増加していることや求人ニーズが高まっていることを紹介したが、外国人旅行者の受け入れなどサービス関連の需要が増えたことで、求人数が増加している。この影響を受けているのが、首都圏の賃貸市場だ。なかでも、顕著なのはカップルやファミリー向けの賃貸需要だ。

 「例年に比べて更新時の解約が少なく紹介できる物件が少ない」(神奈川県川崎市の業者)、「シェアハウスなどからワンルームに変更するなどランクアップする客が目立つ」(東京都都心の業者)といった声も。

 価格の上昇で、住宅購入を先送りする人が増えていることも賃貸需要が堅調な要因だろう。公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会および不動産総合研究所2023年1月発表の「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書」によれば、2023年1月の賃料の上昇指数は、+3.2とコロナ禍以降初めて1ポイントを超える上昇となっている。

高級賃貸も好調!表参道駅5分「クラス青山」の募集戸数は1戸

クラス青山の外観(画像出典:「クラス青山」公式ホームページから )
クラス青山の外観(画像出典:「クラス青山」公式ホームページから

 高級賃貸も好調だ。コロナ禍の真っただ中の2020年に竣工した表参道駅から徒歩5分、地上25階建て賃貸戸数229戸の大規模レジデンス「クラス青山」。都営住宅団地を高層・集約化して建て替え、豊かな自然を再生する約3,500㎡の森と複合市街地を形成したプロジェクト。ラウンジやフィットネスルームなど共用部も充実している。

 コロナ禍で外国人の流入が減ったこともあり、募集当初は申し込みのペースも緩やかだったが、記事執筆時点で募集戸数は1戸。立地の良い高級レジデンスの賃貸需要の強さを示している。

大規模複合再開発では外国人向け住宅の整備も

 2023年東京都心では、「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」(名称:Shibuya Sakura Stage)、「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業」(名称:麻布台ヒルズ)など注目の再開発プロジェクトが続々竣工する。ホテル・商業・オフィス・住宅が一体で整備される大規模複合再開発で、外国人向けの住宅も整備されている。

「Shibuya Sakura Stage」の断面図(画像出典:「Shibuya Sakura Stage」ホームページより)
「Shibuya Sakura Stage」の断面図(画像出典:「Shibuya Sakura Stage」ホームページから)

 「Shibuya Sakura Stage」では、サービスアパートメントとして「ハイアット ハウス 東京 渋谷」を設置。中⾧期滞在者や外国人ビジネスパーソンなどの多様なニーズに合わせ、快適な滞在を提供する。

 また、子育て支援施設「CTIS Kindergarten, Shibuya」では、2~5 歳の未就学児を抱える世代の子育てを支援。港区南麻布でインターナショナルスクールを運営する株式会社 CTIS が運営を行い、幼稚部のサービスを提供。日本語、英語、中国語などに対応する。また、麻布台ヒルズでは、都心最大級の生徒数を誇るインターナショナルスクール「THE BRITISH SCHOOL IN TOKYO」を誘致する。

インバウンド需要や外国人居住者の動向に注目

 2023年1月時点の東京都在住の外国人人口は、581,112人。対前年同月比で、63,211人増加している。実に10%を超える高い伸びだ。東京23区に限れば55,000人の増加となっている。増加数トップは、新宿区の6,372人。次いで、豊島区が4,733人、江東区が4,116人。この3区は、人口伸び率上位5区にも入っており、外国人居住者の動向が各区の人口動態に大きな影響を与えていることを示している。取材時点におけるクラス青山の外国人居住者の割合は約2割だった。

 日本政府観光局発表の2023年1月度の訪日外国人数は、1,497,300人となっており前年同月比で約8327倍。2020年1月度が2,661,022人だからコロナ禍前の56%の水準まで回復した。

 水際対策が強化されていた2023年1月度の中国人訪日客数は、31,200人。緩和が進めば、訪日客数がさらに増加しホテルの稼働率や売り上げもアップしそうだ。東京都は、全国トップの外国人人口を誇るが、少子高齢化で人口減少を迎える日本において、インバウンド需要を含め外国人の動向は今後の不動産価格にも影響を与えそうだ。

野村不動産が「プラウドギャラリー新宿」をオープン

プラウドギャラリー新宿の商談ゾーン(画像:筆者撮影)
プラウドギャラリー新宿の商談ゾーン(画像:筆者撮影)

 野村不動産株式会社は、東京都内で分譲する新築分譲マンションシリーズ「プラウド」を比較検討できる新たな販売拠点として、「プラウドギャラリー新宿」を2023年2月18日に開設した。ギャラリーでは、都心エリアを中心に物件を紹介する予定。開設時点では、「プラウド阿佐谷南二丁目」(東京都杉並区/総戸数:47戸)と「プラウド王子神谷」(東京都北区/総戸数:79戸)が対象物件となる。

既存のプラウドギャラリーにはないデジタルデバイス

 ギャラリーでは、既存の首都圏のプラウドギャラリーにはない取り組みとして、さまざまなデジタルデバイスを活用した「LABO ZONE」を設置。バーチャル音声案内システムによる情報収集、VR 模型、3 面スクリーンへのプロジェクター投影を活用した間取りの可変性体験など、住まいの検討をサポートするプレゼンテーションが用意されている。

 また、国産木材・再生材の積極活用による環境対応を行うとともに、世界的な基準で健康・安全性を評価する国際認証「WELL Health-Safety Rating」を国内のマンションギャラリーとしては初めて取得した。働く社員の顔が見えるガラス張りの「オープンオフィス」を採用するなど、さまざまな新たな取り組みも行われる。

 野村不動産でこうした拠点を設けるのは、名古屋、武蔵小杉など他にもある。複数の物件を販売するマンションギャラリーは、多くのデベロッパーが導入しており珍しくはないが、約1400㎡もの広さがあり社員のワーキングスペースが覗けるなど新しさを感じる。商談コーナーは、緑豊かなオープンなつくりでクローズされたブースが多い昨今の販売センターとは雰囲気が異なっている。

プラウド王子神谷外観完成予想CG(画像出典:公式ホームページから)

 ギャラリーで設備スペックの近いプロジェクトを提案することで、設備・仕様のコストを抑え顧客満足度の高い暮らしを提案することも可能となる。例えば、フィオレストーン天板のキッチンなど上質感ある設備を「プラウド阿佐谷南二丁目」、「プラウド王子神谷」ともに採用している。

「プラウド阿佐谷南二丁目」の内装テイストも確認

 「プラウド阿佐谷南二丁目」は、JR中央線「阿佐ケ谷」駅徒歩3分の地上13階建て全47戸(非分譲14戸含む)のマンション。敷地の南方面は住居系用途地域が広がるロケーションで、落ち着いた街並みを望む立地環境。

プラウド阿佐谷南二丁目外観完成予想CG(画像出典:公式ホームページから)

 南道路に敷地が面し、全戸南向きとなっており日当たりと開放感を享受できる。間取りは、1LDK~3LDKで専有面積は、38.48 ㎡~122.15 ㎡。エントランスホールを二層吹き抜けとするなど、上質感あふれるプランニングだ。

 居室の内装テイストは、ギャラリーに設けられたコンセプトルームで確認できる。阿佐ケ谷駅から中杉通りを渡りパール商店街を抜けてすぐの場所。希少なロケーションだけに、既に多くの問い合わせがあるという。

【関連記事】>>「プラウド」の野村不動産は、なぜ人気があるのか? マンションのブランド化と環境を意識した最新スペックがカギ!

人気エリアで検討するなら、好立地の物件が購入できるチャンス

 地価は、高止まりし建築費が上昇する中、人気エリアでマンションを検討する場合、ある程度予算が上がってしまうのは致し方ない面がある。購入を先送りするのも、一つの考え方だろう。

 しかし、人気エリアで検討するなら好立地のマンションが購入できるチャンスはそうそうない。価格が高止まりする今だからこそ、実現したいライフスタイルを重視してマンションを選ぶべきではないだろうか。

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