【2024年版】新築マンションを値引きする会社はどこ? 住友不動産や野村不動産などデベロッパーの懐具合から傾向を分析

【2024年版】新築マンションを値引きする会社はどこ? 住友不動産や野村不動産などデベロッパーの懐具合から傾向を分析
2023年1月26日公開(2024年2月1日更新)
千日太郎:住宅ローン・不動産ブロガー

以下は2023年版のデータです。

高騰続く新築マンションを値引きして買おう!

 コロナ環境下で新築マンション価格は依然として高騰を続けており、買い手としては厳しい環境となっています。 

 特に、首都圏の新築マンション平均価格は、コロナショックの2020年度にバブル期以来の6000万円を突破し、2022年も右肩上がりで上昇を続けています。

 このような時期に新築マンションを購入する我々としては、高づかみしないようにしなければなりません。そこで重要になってくるのが値引き交渉ですが、昨年に引き続き不動産会社の売り手市場が続いています

 しかし、それでも値引きしてもらって買う人が一定数いることは確かなのです。そこで本記事では、新築マンションの主要なデベロッパーの懐具合から、値引きにどのくらい対応してくれそうなのか、会社ごとに2023年の値引き交渉の傾向と対策を考えてみましょう。

デベロッパーの平均販売戸数上位ランキング

 まず、新築マンションの販売戸数の上位にどんな会社が名を連ねているのか見てみましょう。不動産流通推進センターの統計調査結果から、過去3年間(2019年から2021年)で常に上位20位以内に入っているマンションデベロッパーの平均販売戸数で順位を付けました(図表1)。

図表1 デベロッパーの平均販売戸数ランキング(全国)

順位 デベロッパー 平均販売戸数
1位 プレサンスコーポレーション 4,532
2位 野村不動産 3,915
3位 住友不動産 3,804
4位 三井不動産 2,890
5位 大和ハウス 2,458
6位 三菱地所 2,449
7位 エスリード 2,157
8位 あなぶき興産 1,902
9位 東急不動産 1,680
10位 タカラレーベン 1,576

不動産流通推進センターの統計調査結果から 2019年~2021年の平均

 トップ3は長らく旧財閥系で占めていたのですが、新興の「プレサンスコーポレーション」が2019年から急伸してきており、2022年には3年平均の販売戸数でトップとなっています。

 次に首都圏を見てみましょう。

図表2 デベロッパーの平均販売戸数ランキング(首都圏)

順位 デベロッパー 平均販売戸数
1位 野村不動産 3,103
2位 住友不動産 2,609
3位 三井不動産 2,354
4位 三菱地所 1,925
5位 大和ハウス 1,211
6位 新日本建設 1,172
7位 日鉄興和不動産 1,155
8位 東急不動産 1,123

*2019年~2021年の平均

 首都圏ではまだ旧財閥系が強いですね。全国ランキングで1位の「プレサンスコーポレーション」は入っていません。マンションは用地取得が重要となってくるため、首都圏で新興企業が食い込むのはなかなか難しいようです。

 最後に近畿圏のランキングです。

図表3 デベロッパーの平均販売戸数ランキング(近畿圏)

順位 デベロッパー 平均販売戸数
1位 プレサンスコーポレーション 3,015
2位 エスリード 1,662
3位 関電不動産開発 728
4位 日商エステム 675
5位 住友不動産 661
6位 阪急阪神不動産 633
7位 近鉄不動産 631
8位 和田興産 630

*2019年~2021年の平均

 近畿圏は、全国とガラっと変わります。全国ランキングで1位の「プレサンスコーポレーション」は、近畿圏で大半の物件を販売しているということです。

 2位の「エスリード」、3位の「関電不動産開発」、4位の「日商エステム」、6位の「阪急阪神不動産」、7位の「近鉄不動産」、8位の「和田興産」は全国ランキング、首都圏ランキングに出てこなかった会社です。これらは関西の地場で強い業者ということですね。

在庫が多くても、売り急がないデベロッパーが増加

 これらランキング上位のデベロッパーの「値引き傾向」を反映するもの、それは決算書の数字です。「分譲売上高」(※1)と「販売用不動産」(※2)に注目します。

(※1)「分譲売上高」は文字通り、売上高です。マンションが完成して、購入者に鍵を引き渡した時点で計上されます
(※2)「販売用不動産」は在庫です。完成して、まだ売れていないマンションの原価が計上されます

 このルールは全ての会社に共通のルール(会計基準)です。つまり、こういうことが言えるのです。

・「販売用不動産÷分譲売上高」が高い
売上高に対して多くの在庫を抱えている

・「販売用不動産÷分譲売上高」が低い
売上高に対して少しの在庫しか持たない

 そこで、マンション販売戸数上位ランキングの会社を、「販売用不動産÷分譲売上高」を横串で比較してみましょう。

 同じような大手のデベロッパーであっても、その会社によって全然違うということが見えてきます。

 そして、そのデベロッパーごとにみると、年度によってそれほど大きな動きはありません。つまり、当該会社の営業方針が如実に表れているのです。

図表4 全国マンションデベロッパー別の売上高に対する在庫数(過去3年間の販売用不動産÷分譲売上高)

全国マンションデベロッパー別の売上高に対する在庫数
写真を拡大 ※ 平均的な在庫水準を比較するため3月の本決算ではなく期の真ん中の第2四半期(9月)を使いました。3月決算の会社以外は直近の第2四半期を3期間比較しています。 非上場会社(阪急阪神不動産など)は四半期決算を行っていないため、3月の本決算を使い、分譲売上高は2分の1にしました。

 ここで、図表4の見方をご説明しましょう。実は、在庫が多いマンションデベロッパーほど売り急がない傾向があります

 かつては「在庫」は悪ととらえられていました。在庫が膨らめばそれだけ金利の支払いも多くなり、財務を圧迫するからです。

 しかし、2008年の不動産バブル崩壊により、財務状態が悪いデベロッパーはほとんど破綻してしまい、現在は財務状態が良好なデベロッパーだけが残っているという状況です。

 こうなると、在庫が多くても売り急ぐ必要がなくなり、完成後もじっくりと販売していくデベロッパーが増えています

 一方で、在庫はほとんど持たないというデベロッパーも存在します。在庫を持たない方針を明確にしているデベロッパーは、期末に売れ残り物件があれば、比較的容易に値引きに応じてくれます。

新築マンションを値引きする会社は?
デベロッパー別の販売傾向と値引き交渉術

 そこで、2023年におけるデベロッパーごとの値引きの難易度をS(難しい)、A(可能性あり)、B(可能性大)の3つにランク分けしてみました(図表5)。

図表5 デベロッパーごとの値引き難易度【2023年版】

値引き難易度 デベロッパー 在庫の状況 販売方針と値引きの傾向
S
難しい
住友不動産
野村不動産
三井不動産
大和ハウス
東急不動産
東京建物
阪急阪神不動産
100%を大きく上回る
(売り上げに対して多くの在庫を抱えている)
高いブランドイメージを守る企業が多く、値引き交渉が最も困難なグループ
A
可能性あり
タカラレーベン
エスリード
和田興産
100%を少し下回る
(売り上げに対してやや多くの在庫を抱えている)
ブランドイメージよりも在庫を抱えることは嫌がる。いわゆる売れ残り物件であれば値引きの可能性がある
B
可能性大
三菱地所
プレサンス
あなぶき興産
大和地所
明和地所
新日本建設
100%をかなり下回る
(ほとんど完成在庫を持ち越さない)
完成在庫を持たない。売れ残りそうになったら早期に値引き販売する

 それぞれ、どんな販売方針を持っているデベロッパーで、2023年にはどの程度、値引き交渉の余地があるのか、ワンポイントアドバイスを書きましょう。

住友不動産  値下げしなくても売れる

 旧財閥系のトップ4社の中でも頭一つ抜けて販売戸数を維持しているのが、住友不動産です。ほかの会社は売り上げに対する在庫の割合が増えたり減ったりしていますが、住友不動産は安定して在庫の割合を増加させているように見えますね。売れずに困っているのでしょうか?

 いいえ、その反対です。特に住友不動産が大型のタワーマンションを販売する場合は、売上高を平準化させるために完成後から数期に分けて販売する方式をとっています。完成在庫をあえて持ち、数期間に分けて販売していることが理由です。

 住友不動産のマンションで、「値下げしなくても売れています」と営業マンが言うのはブラフ(ハッタリ)ではありません。

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野村不動産  大幅な増収増益、完成在庫も減少傾向で売り急ぎはない

 2022年第2四半期の決算短信では、住宅部門の売上高は42.4%の大幅増加、事業利益も107.8%増とほぼ2倍となっており、大幅な減収増益となっています。完成在庫割合も減少傾向にあり、契約進捗率は中間期で93.8%とかなり順調なので、売り急ぐことはないでしょう。

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三井不動産  利益の見込みを大幅上昇修正で、売り急ぎはない

 三井不動産の完成在庫の割合は低下傾向となっており、契約進捗率については中間期で91%と順調です。さらに2022年第2四半期では、通期の売り上げ見込みは2,850億円で据え置きのまま、事業利益の見込みを330億円から380億円に大幅に上方修正しています。まず売り急ぐことはないでしょう。

【関連記事はこちら】>>三井不動産のパークマンションはなぜ人気がある? 戸建てやマンションブランドの「格付け」と、注目マンションを解説

三菱地所  決算前の2月が値引き交渉の狙い目

 三菱地所は、基本的に完成在庫を嫌うタイプの会社ですので、決算前には値引きを期待できます。上期の住宅事業は2期連続で減収減益となっています。1戸当たりの売上単価は増加しているのですが、売上戸数が減少しているためです。

 契約進捗率は開示していないので内情は分かりませんが、計画達成のために値引きに応じる可能性はあります。物件の完成月前後と決算月の直前(2月)をピンポイントに狙って値引き交渉することをおすすめします

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プレサンスコーポレーション  完成物件を値引きする可能性は高い

 近畿圏(関西)でトップのプレサンスコーポレーションは、ここ数年で販売戸数を急激に伸ばしており、とうとう全国でも1位となりました。

 直近の決算では、決算月を3月から9月に変更したことで比較しにくくなっていますが、契約高が前年同期比77.7%と減少傾向にあり、完成在庫の割合は今後増える可能性があります。

 もとから完成在庫を持たない傾向の強い会社の在庫が増えているということですから、完成物件については値引きの可能性は比較的高いといえるでしょう。

大和ハウス工業  増収増益で、値引き難易度は高め

 大和ハウス工業は、タイプとしては住友不動産に近いタイプで、値引きが困難な部類に入ります。さらに、2022年第2四半期のマンション事業は売上高で14.1%の増収、営業利益で222.7%の大幅な増益となっています。そのため、値引き交渉は困難でしょう。

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東急不動産    契約進捗率好調で、値引き難易度は高め

 東急不動産は住宅事業については好調ですが、販売戸数が減っているため、通期予想は前年を割る見込みとなっています。ただし、完成在庫の割合に増減はなく、契約進捗率は90%と好調なため、値引き交渉は難しそうですね。

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タカラレーベン   大幅増収、契約進捗率も順調で難易度は高め

 タカラレーベンは、基本的に完成在庫を持ちたくないタイプの会社です。2022年上半期の不動産販売事業は53.8%の大幅増収になっており、契約進捗率も94.2%と順調なので、値引き対象となるような、滞留物件はあまり残っていないでしょう。

あなぶき興産  販売好調なため、値引きに応じる可能性は低い

 あなぶき興産も、基本的に完成在庫を持ちたくないタイプの会社ですが、新築マンション事業においては売り上げ増となっており、2023年6月期の第1四半期では通期販売戸数1,921戸のうち、未契約住戸は90戸を残すのみとなっています。値引きに応じる可能性は低いでしょう。

エスリード   販売好調であり、値引きの難易度が上昇中

 エスリードは、ほぼ近畿圏(関西)のみでマンションを販売している会社で、近畿圏ではプレサンスコーポレーションに次ぐ2位です。2022年上半期の売上は0.6%増、利益は12.1%増となっています。売上増加率より利益の増加率の方が大きいということは、値引きせずに売り上げを伸ばしているということなので、値引きは難しいでしょう。

一建設 大和地所 明和地所 新日本建設  積極的に値引き交渉したい

 これらは首都圏を中心として戸建てとマンションを供給している会社です。大和地所、明和地所、新日本建設は3年間平均して在庫の割合が少ないです。これは方針として完成在庫を持たず、完成が近づいたら値引き販売していることを意味します。売り出しから随時交渉していくべきでしょう。

 一方、一建設は売り上げに対して多額の在庫をかかえています売却が進んでいない理由が値引きを拒否しているからなのか、決算数値からだけでは見えません。しかし、分類Sのように高いブランドイメージはありませんので、滞留在庫を減らしていかなければならない財務状態であることは確かです。

和田興産 売れ残り物件の値引きが期待できる

 和田興産は、近畿圏(関西)でマンションを販売している会社です。基本的に完成在庫を持ちたくないタイプなので、決算月まで待つことなく、物件の完成月までにはほとんどの部屋を売り切ります。そのため、随時値引き交渉すべき会社です。

 ただし、直近のプレスリリースによると、2023年2月期の税引き利益が前期比2.7%増の24億円になる見通し、従来予想の20億円(前期比14.4%減)から上方修正しており、営業利益は前期比10.7%増の43億円(従来予想は前期比4.7%減の37億円)、経常利益は同10.7%増の35億円(従来予想は同8.3%減の29億円)と、それぞれ予想を引き上げています。

 前年より悪いと予想したのが前年より良くなるのですが、こうしたタイミングで過去の滞留在庫を損切りして売却する可能性が高いです。売れ残り物件にフォーカスすれば値引きが期待できるでしょう。

阪急阪神不動産  値引き交渉は難しい

 阪急阪神グループは、関西では絶大なブランドイメージを誇ります。電鉄系のデベロッパーの特徴として、鉄道というインフラ事業から安定的な資金が供給されるので、在庫を抱え続ける資金力もあります。基本的に値引き交渉は難しい部類ですが、物件によっては数百万円値引きしてもらえたという情報もあります。

新築マンションの値引き交渉を成功させるコツ

 デベロッパーごとの値引きの難易度を見てきましたが、実際に値引きしてもらいやすくするためのコツとして、以下の3つのポイントが挙げられます。

① 購入に前向きな姿勢を示す
② 周辺相場をチェックしておく
③ 資金の調達準備をしておく

 特に③の資金については、デベロッパーは敏感です。住宅ローン事前審査をあらかじめ行っておけば、物件購入ができることをアピールできます。もちろん現金一括購入できるなら言うことはありません。

値引き交渉のタイミングは決算月

 次に、交渉のタイミングについてです。これは、①決算月である3月を意識して、2月末~3月、②完成済み物件で残り戸数が少ないとき、が特に狙い目と言えるでしょう。

 どうしても、売り出した直後はデベロッパーも強気ですから、値引きの可能性は低くなります。マンションが完成してある程度時間がたった物件の方が値引きはしやすくなります。

 また、値引き率は5%~1割程度が多いようです。5%といってもマンション価格の5%ですから、これはかなり大きいですね。

デベロッパーの煽り文句に騙されないために

 コロナ禍にあって、新築マンション価格はバブル期並みに高騰しており、不動産業界は好調です。そのため、営業マンにこんなふうに言われて背中を押される人は多いです。

 営業マン「早くしないと売れてしまいますよ」
 営業マン「市況によっては、次期の販売では値上げするかもしれません」

 確かに売れてしまう可能性もありますが、過度に焦ったり迷ったりすれば誤算を誘発します。こんなはずじゃなかった…。そんな失敗をしないためには、一度立ち止まって視野を広く持ち、またいろいろな角度から見る必要があります。

 そして、こうして決算から見ると全ての不動産会社が好調というわけでもないことが見えてくるかと思います。値段交渉するうえでせひ参考にしてくださいね。

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