以下は2023年5月の市況記事です。
新築・中古マンションの最新市況を解説したい。不動産経済研究所の発表によると、2022年度の首都圏新築マンションの平均価格は6,907万円、1㎡あたりの単価は103.9万円となり過去最高値を更新した。都心での高額物件の供給がその要因だと考えられる。今月も最新のマンション市況のほか、2023年の注目マンションを紹介する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
最新の首都圏新築マンション市況【2023年3月度】
マンション価格の高騰が止まらない。不動産経済研究所の発表によると、2022年度(2022年4月〜2023年3月)の首都圏新築マンションの市場動向は過去最高の価格となり、2年連続で過去最高値を更新(平均価格は6,907万円、1㎡あたりの単価は103.9万円)した。
都心での高額物件の供給がその要因で、2022年度の東京23区新築マンション平均価格は、前年度比17.2%上昇の9,899万円となっている。一方で発売戸数は、2万8,632戸で前期よりも12.9%減少し、2年ぶりの3万戸割れとなった。
2023年3月、首都圏新築マンション平均価格が1億超に
2023年3月度単体で見ると、新築マンションの1戸当たりの平均価格は14,360万円、前年同月比で120.3%の上昇。また1㎡当たりの単価は199.9万円、前年同月比で104.8%のアップとなった。

一方、首都圏新築マンションの発売戸数は、対前年同月比2.1%減少の2,439戸、対前年同月より53戸減少している。
供給数が減っているものの、大幅な価格上昇の理由はそれではない。販売住戸の平均価格が4億円を超えた三田ガーデンヒルズ、2億円を超えたWORLD TOWER RESIDENCEといった都心の大規模高級レジデンスが分譲されたからだ。
このことで、3月度の新築マンションの平均価格は首都圏で1億円超え、さらに東京23区だけでみると2億円を超えている。
そして、三田ガーデンヒルズおよびWORLD TOWER RESIDENCEは、高価格帯にもかかわらず、ともに販売好調で首都圏のマンション市場を牽引。2023年3月期の首都圏平均契約率は79.5%となり前年同月比で+4.3ポイント、前月比では+6.2ポイントとなった。
なお、販売在庫は5,189戸で、前月よりも263戸の減少。2022年3月末の販売在庫は5,881戸だったので、在庫は低水準のままである。
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下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。

また、首都圏新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のようになっている。
首都圏新築マンションの販売動向(2023年3月)
新規販売戸数 | 前年同月比 | 契約率 | 平均価格 | |
東京23区 | 1,326戸 | +26.4% | 84.5% | 21,750万円 |
都下 | 156戸 | -36.8% | 76.9% | 6,741万円 |
神奈川県 | 477戸 | -23.9% | 76.3% | 5,865万円 |
埼玉県 | 219戸 | -32.6% | 61.6% | 4,804万円 |
千葉県 | 261戸 | +7.0% | 76.2% | 4,908万円 |
平均価格は、神奈川県が5,865万円。埼玉県が4,804万円、千葉県が4,908万円と新築マンション価格の急激な上昇は郊外部では見られない。
ただし、地価は高止まりし建築費の上昇が続く中では、郊外エリアも将来的には価格上昇圧力が強まる可能性は高いと考える。予算重視で、郊外エリアのマンションを検討している人は、価格動向に注意すべきだろう。
首都圏の中古マンション市況【2023年3月度】
次に中古マンション市場を見てみたい。首都圏中古マンションの市場動向も、新築マンション同様、価格上昇が続いている。
首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で6.8%上昇の4,441万円。平均成約㎡単価は、69.83万円で+6.8%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、35カ月連続となる。
2023年3月の新規登録物件の㎡単価は、72.38万円となっていて前月より2.3%下落した。
2023年3月度の首都圏中古マンションの成約件数は、下記の表の通り3,442件となっており、前年同月(3,405件)比で1.1%増加した。前年比で増加するのは、2カ月連続となる。

2023年3月の新規登録件数は17,000件を超えており、在庫件数は前月より0.8%上昇し、昨年同時期よりも19.8%増えている。在庫の増加トレンドは継続しており、価格上昇圧力は下がっているようだ。
平均成約価格は上昇しているが、一部の都心エリアは下降傾向
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。

地域別の成約㎡単価は、前年同月比では1都3県全てプラス。東京23区は前月よりも上昇し、再び㎡単価が100万円を超えた。
首都圏の中古マンション成約㎡単価(2023年3月)
成約㎡単価 | 前年同月比 | |
東京23区 | 100.68万円 | +3.7% |
都下(多摩) | 51.57万円 | +6.1% |
横浜・川崎市 | 60.08万円 | +9.1% |
神奈川県その他 | 38.78万円 | +4.3% |
埼玉県 | 44.52万円 | +9.8% |
千葉県 | 36.74万円 | +4.1% |
しかし、千代田区・港区・中央区の2023年3月度の成約㎡単価は、150.81万円。これは、1年前の153.01万円を下回る。
新築マンション市場は、都心高級レジデンスの相次ぐ分譲で活況だが、需要が重なるため、それは、中古マンションの販売にはマイナスに影響したのだろう。
港区、千代田区のブランドエリアの新築マンション分譲は今後も続くので、需給が改善するまで都心の高額マンションを高値で売るのは、容易ではないかもしれない。
都心の高級マンションの売れ行きが好調な理由
「三田ガーデンヒルズ」のような高価格帯のマンションの好調要因として、日本における富裕層の増加が挙げられる。
2023年3月1日に野村総合研究所(NRI)から発表された「2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計」によれば、『純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると 148.5万世帯で、内訳は、富裕層が139.5万世帯、超富裕層が9.0万世帯』となっている。
その純金融資産総額は364兆円と推計している。富裕層の世帯数は、推計を開始した2005年以降、最も多かった2019年の132.7万世帯からさらに15.8万世帯増加している。

同社によれば、『過去10年近くにわたって富裕層・超富裕層の世帯数および純金融資産保有額が増加している要因は、株式などの資産価格の上昇により、富裕層・超富裕層の保有資産額が増大したことに加え、金融資産を 運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したため』としている。
仮に、1年間に148.5万世帯いる富裕層の一部がマンション購入を検討するだけでもかなりの需要数になる。
実際には、図1にある純金融資産5,000万円以上1億円未満の準富裕層(推計325.4万世帯)や、3,000万円以上5,000万円未満のアッパーマス層(726.3万世帯)も億ションの購入層になっているので、高額マンション需要の裾野は、かなり広いと言えるだろう。
総合マンションギャラリーなどの販売拠点を都心エリアに設置し、都心の超高層タワーもラインアップにそろえている住友不動産によれば、いわゆる年収2千万円前後のパワーカップルで、新宿区などの都心エリアのタワーマンションを1億5,000万円前後で検討する人は多いという。
高級賃貸マンション「ラ・トゥール」が好調
しかし、供給戸数や供給物件数が増えない中でラグジュアリーな、都心のタワーの選択肢が少ないと感じている人は目立つようだ。
こうした富裕層の増加は、高級賃貸市場にも影響している。2000年以降、全国で28棟、約4,000室の高級賃貸マンション「ラ・トゥール」を展開している住友不動産によれば、高級賃貸市場は堅調さを示している。
例えば、同社が新規で賃貸募集を進めている2023年4月から入居がスタートする「ラ・トゥール新宿ファースト」(総戸数170戸 同社持ち分166戸)。70.35㎡~297.33㎡のゆとりあるプランで、110㎡台の2LDKタイプで募集賃料は70万円台。
160㎡台の3LDKの募集賃料の目安は130万円台と高額だが、入居開始前に約半数の住戸に申し込みが入るなど賃貸状況は好調だ。
全住戸が80m以上となる19階から35階の高層エリアに位置。分譲マンションでも供給が少ない100㎡超えのゆとりあるプランで24時間のコンシェルジュサービスや同社の新宿エリア初となるバレーサービスなどホスピタリティーの高いサービスも特徴で、富裕層からの引き合いは多いという。

住友不動産が展開する高級賃貸市場において、150㎡以上の住戸の契約単価は2013年3月からの10年間で1.72倍に上昇している。また、「ラ・トゥール」シリーズの2023年3月時点の入居率は、98%と好調だ。

この10年間で、顧客層も変化している。同社の資料によれば、「ラ・トゥール」契約者の日本人比率は、2013年の76%から2023年は86%に拡大。2003年は、49%だったので外国人比率は大きく低下してきている。供給戸数は拡大しているので増加分の多くを日本人が占めたということだ。
また、40代以下の入居者割合も増加している。2013年は、39%だったのが59%に。富裕層といえば、まずは高齢者が思い浮かぶが、2023年では60歳以上は18%にとどまる。起業家などいわゆるニュー富裕層と呼ばれる人が増えているようだ。
野村総合研究所の2023年3月1日のニュースリリースによれば、「我が国の富裕層は、事業オーナーである場合が多く、金融資産1億~5億円の富裕層では、その約3分の1が事業オーナーである」と記されている。こうした富裕層の増加が、高級賃貸市場や高額マンション市場の好調要因だ。
パワーカップルの都心回帰傾向も顕在化しており、都心のフラッグシップ物件の活況は、今後も続きそうだ。
今月の注目マンション 「HARUMI FLAG SKY DUO」パビリオン見学

「HARUMI FLAG」分譲街区の売主10社は、「HARUMI FLAG SKY DUO」の販売開始に向けて新「HARUMI FLAGパビリオン」を開設し、2023年4月8日(土)から事前案内会を開始した。
同マンションは、2023年6月下旬より第1期販売開始を予定しており、販売予定価格は、4,800万円台(1LDK)~34,900万円台(3LDK)となっている。
筆者は、メディア向けに先行して実施された、「HARUMI FLAG SKY DUO」のパビリオン内覧会を見学。商品企画の素晴らしさから板状棟に続き、「SKY DUO」も人気が集まることを実感した。
海に囲まれた場所だからこその眺望は大きな魅力で、レインボーブリッジや都心の高層ビル群を楽しめる48階スカイラウンジなど板状棟と同様に共用部が充実。安心・安全と快適性を追求した先進のすまいであることもSKY DUOの特徴で、免制震ハイブリッド工法と長期優良住宅認定を取得。免震構造と制震装置も採用することで、地震に対する安全性を追求している。

専有部の平均面積は約74㎡、標準タイプのリビングダイニングの天井高は約2,600mmというゆとりのある住空間。廊下の有効幅は約1,000mm、サッシュ高は約2,100mmもあり、フルフラット設計など暮らしに配慮した工夫が随所に見られる。
さらに、日本では初めてとなる蓄電池とエネファームの両方を全住戸に設置という特徴に加え、一次エネルギー消費量の削減を目指した計画のもと、HEMS 、節水機能の高い水栓の採用等により、高い省エネ性能を持つ住宅であることを示す「低炭素建築物認定」を取得。
モデルルームを見学すると、眺望だけではない専有部の魅力が実感できる。パイプスペースを住戸の外に配したスケルトン・インフィル工法でつくられているので、無駄なスペースがなく収納などが多い。玄関部分も折り上げ天井で演出し、キッチンゾーンの天井高は、約2300mm、廊下は約2250mm、ユニットバスは約2200mmとゆとりがある。
49階と50階については、プレミアムフロアになっており天井高が高く、専有部を外に出すことでより開放的に。全館空調システムエアロテックも採用されている。
また、今回の「HARUMI FLAG SKY DUO」の魅力として、セレクトプランやカラーセレクトができ住戸がまだ多くあることが挙げられる。
既に下層階は難しいようだが、1期のかなりの数の住戸はセレクトプランやカラーセレクトの対象になるようだ。カラーセレクトは、8バリエーションあり、好みのテイストに仕上げられるのは第1期で購入するメリットだろう。
2024年春には、新設される小・中学校が開校するほか、約1万㎡の店舗面積に、スーパーマーケットや保育園、ウェルネス施設など、多様な店舗が出店する「三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAG」も開業予定だ。
街づくりが進めば、注目度がさらに高まる可能性は高い。マンション購入の候補に考えている人には、第1期からの検討をおすすめしたい。
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手の届きそうな新築マンションはまだある。まずは検討を
エネルギー価格の高騰や資源価格の上昇、労働需給のひっぱくなどマンションの建築費は、今後も上昇トレンドが止まりそうもない。原価ベースでの価格上昇が避けられないことは、マンション検討者にも浸透しつつあるようで、好調な売れ行きの一因となっている。
建築物価調査会発表の建築費指数データによれば、集合住宅(鉄筋コンクリート造)の2023年3月の工事原価は、前年同月比で9.1%上昇した。
今月紹介した、「HARUMI FLAG SKY DUO」のように建物や設備スペックが充実していながら手の届きそうな新築マンションはまだある。建築業界においては、2024年4月に「働き方改革関連法」が適用されることによる労働力不足の懸念もあり、建築費の上昇トレンドはまだ続くと見られている。
希望条件に合った新築マンションがあれば、まずは検討することをおすすめしたい。
なお、2023年4月28日、日本銀行の金融政策決定会合において、イールドカーブコントロールなど従来の金融緩和政策が維持されることになった。住宅ローン金利は低水準が続きそうだが、インフレ率は上昇傾向にあり、先々を考えると過度の借り入れは留意すべきだろう。
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