新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説!【2024年4月版】

2024年4月8日公開(2024年4月11日更新)
岡本郁雄:不動産アナリスト

以下は、2023年12月の市況記事です。

2023年10月度の首都圏新築分譲マンション初月契約率は60.9%で好不調の目安とされる70%を大きく下回った。首都圏の中古マンション市場では、10月度の成約㎡単価が直近では最高値となる74.55万円に。成約件数も前年同月比7.0%増加の3,287件と好調だ。その他、11月に渋谷サクラステージ、麻布台ヒルズといった大規模な再開発の一部が開業し、都心に新たなにぎわいが生まれている。今月も新築マンション市況と中古マンション価格動向、および注目マンションを紹介したい。(不動産アナリスト・岡本郁雄)

最新の首都圏新築マンション市況【2023年10月度】

 まずは、2023年10月度の新築マンション市場を見てみよう。新築マンションは今月から不調を示す結果となった。

首都圏の新築マンション市場動向2023年10月

  新規販売戸数 1戸当たり平均価格 ㎡単価 契約率
2022年10月 2,768戸 6,787万円 99.5万円 61.9%
2023年9月 2,120戸 6,727万円 101.8万円 67.7%
2023年10月 1,486戸 6,567万円 101.0万円 60.9%

首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2023年10月」)

 2023年10月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月比46.3%ダウン1,282戸減少の1,486戸。契約率は、前年同月比11.0ポイントダウンの60.9%となっている。 

 また、1戸当たり平均価格は、前年同期比で3.2%ダウンの6,567万円。そして、上の表にはないが、販売在庫は4,756戸で、前月よりも19戸の増加。2022年10月末の販売在庫は4,945戸だったので、この1年を通して在庫増加は見られない。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。

不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成
過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 続いて、首都圏新築マンションの販売状況を地域別で見ていくと、下表のようになっている。

 エリア別の平均価格は、東京23区が8,709万円で前年同期比7.0%のダウン。東京都下が5,624万円、神奈川県6,555万円、埼玉県5,118万円、千葉県4,528万円。神奈川県が前年同月比10.9%アップと大きく上昇した。東京23区が大きくダウンしたものの、変わらず23区とその他の地域の価格差は大きい。

首都圏新築マンションの販売動向(2023年10月)

  新規販売戸数(前年同月比) 契約率 平均価格
東京23区 479戸(-55.6%) 40.3% 8,709万円
都下 128戸(-24.7%) 65.6% 5,624万円
神奈川県 378戸(-40.2%) 68.8% 6,555万円
埼玉県 203戸(-56.3%) 66.0% 5,118万円
千葉県 298戸(-29.4%) 78.5%

4,528万円

 地域別で見ると好不調の目安となる契約率70%を上回ったのは、千葉県のみで、東京都区部は40.3%と低調「HARUMI FLAG SKY DUO」などの好調物件の継続期販売が10月になかったことも契約率を押し下げた要因だ。

 契約率は、大きく低下しているが「HARUMI FLAG SKY DUO」第1期2次の販売結果は約20倍の倍率がついた。需要が落ち込んでいるという話は供給大手からは聞こえてこない。

 2023年10月度に限れば8,000万円以上の高価格帯の申込率の低さが目立っているが、マンション価格が上昇する中で物件の選別化が進んでいると言えるだろう。 

首都圏の中古マンション市況【2023年10月度】

 続いて中古マンション市場を見てみよう。新築マンションと変わって、中古マンションの売れ行きは変わらず堅調が続く。

 新築マンションと比べ、中古マンションは大きく物件のラインナップが変化しにくい。中古マンションの注目度がさらに高まっていると言えるだろう。

首都圏の中古マンション市場動向2023年10月

  成約件数 平均成約㎡単価 新規登録件数 在庫件数
2022年10月 3,072件 69.40万円 16,446件 40,300件
2023年9月 3,191件 72.44万円 17,006件 46,291件
2023年10月 3,287件 74.55万円 17,036件 46,312件

首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2023年10月度の中古マンション月例速報」)

 2023年10月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比7.0%上昇の3,287件と5カ月連続で対前年比プラスになっている。成約価格は、前年同月比8.4%上昇の4,765万円。平均成約㎡単価も対前年同月比7.4%上昇の74.55万円だ。

 成約㎡単価が前年同月を上回るのは、42カ月連続となる。また、2023年10月の新規登録物件の㎡単価は、72.15万円となっていて前月よりも-0.9%、前年同月比で-1.1%となった。なお、成約㎡単価は、前月よりも2.9%上昇しており直近の最高値を更新している。 

 2023年10月の新規登録件数は、対前年同月比で3.6%増加の17,036件。在庫件数は、先月よりも増加し46,312件となっている。前年同月比で14.9%増加しており、高水準のままだ。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。

 2023年春にかけて在庫件数が大きく伸びたが、2023年夏以降は伸びが鈍化している。より良いマンションへの住み替えは、マンションを売却する理由の一つだが、価格が上昇し供給戸数が減る中では、より良い物件への住み替えは難しい。

 新築マンションの供給戸数が減れば、在庫件数の伸びは期待できないかもしれない。 

次に地域別の中古マンション動向を見てみよう。

首都圏の中古マンション成約㎡単価(2023年10月)

  東京23区 都下(多摩) 横浜・川崎市 神奈川県その他 埼玉県 千葉県
成約㎡単価 107.29万円 55.44万円 64.83万円 41.21万円 42.36万円 40.49万円
前年同月比 +4.1% +5.9% +14.5% +8.5% +5.9% +12.4%
前月比 +4.0% +4.6% +3.8% -0.8% -0.5% +0.5%

 

(出典:東日本不動産流通機構発表「2023年10月度の中古マンション月例速報」)

 2023年10月度の成約㎡単価は、前年同月比で全エリア上昇。中でも、横浜・川崎市と千葉県は、前年同月比で10%を超える高い伸びを示す。

渋谷サクラステージ、麻布台ヒルズが開業

 2023年11月、東京都心のフラッグシップとなるプロジェクトが渋谷と麻布台で開業した。東急不動産が中心となって渋谷駅前で開発を進めている「渋谷サクラステージ」と森ビルが麻布台で開発を進めている「麻布台ヒルズ」だ。

 ともに都心のビジネスシーンだけでなくライフスタイルも変えるプロジェクトであり、周辺エリアへの波及効果も十分期待できる。

渋谷サクラステージ

 渋谷駅周辺は、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラスといったプロジェクトが既に完成している。渋谷駅周辺は、谷状の地形でかつJR線や国道246号線によって街が分断され高低差もあることから、回遊性に課題があった。

 今回、渋谷サクラステージが開業することにより、(仮称)北自由通路や渋谷駅西口の歩道橋デッキで結ばれこうした課題を解決。将来的には、JR渋谷駅の新改札口もできる予定で街の回遊性は大きく高まる予定だ。

 さらに、エスカレーターで上階へ移動するアーバンコアを整備し、地下から上への移動もスムーズになる。

渋谷サクラステージのSAKURAタワー(筆者撮影)
渋谷サクラステージのSAKURAタワー(筆者撮影)

 渋谷サクラステージの街区は、オフィスと商業施設、住宅で構成され「働く、遊ぶ、暮らす 多様な人が集う渋谷」の特徴を推進。オフィスの賃貸面積は、約10万㎡あり、渋谷駅最大級の賃貸面積となり約1万人が働く予定。エンターテインメントやITなどの企業を中心に、既に9割を超えるスペースが契約済みだ。

 また、約15,200㎡の商業スペースは、体験や発信を通じてカルチャーを創出する場を中心に100店舗超が入る。広場でのライトアップやさまざまなイベントも行われる予定だ。

 さらにサービスアパートメント「ハイアット ハウス」や中心地区で唯一となる住宅となるブランズ渋谷桜丘も誕生する。子育て支援施設や起業支援施設、国際医療施設なども入る予定だ。

 次世代のアーティスト支援やMITとの産学連携によるスタートアップの支援など、ハード面だけでなくソフト面においても街づくりに関わっている点が注目ポイント。筆者は、38階の企業支援施設「manoma」と37階のオフィススペースを見学したが、世田谷方面や代々木公園方面を見晴らす眺望は、圧巻だった。

 オフィススペースが限られる渋谷での1万人の就業者は、インパクトがあり、代官山など渋谷周辺だけでなく、東急田園都市線や東急東横線などのマンション価格にもプラスの影響がありそうだ。なお、各施設は順次開業され、街全体がオープンするのは2024年7月の予定となっている。

麻布台ヒルズ

 森ビルが中心となって開発した麻布台ヒルズが、11月24日に開業した。"Green& Wellness"を軸に、"Modern Urban Village~緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街~"がコンセプト。人々が自然と調和しながら、心身ともに健康で豊かに生きることを目指している。

麻布台ヒルズのガーデンプラザ(筆者撮影)
麻布台ヒルズのガーデンプラザ(筆者撮影)

 約8.1haの区域に、約24,000m²もの緑が広がり、さまざまな機能が複合する都市づくり。オフィス、住宅、ホテル、商業施設、文化施設、インターナショナルスクール、予防医療センター、ベンチャーキャピタル拠点など、いろいろな施設が集積する。筆者は、開業初日に多くの人でにぎわう街区を訪ねたが、高低差を活かしつつ緑をまとったような街づくりに圧倒された。

 敷地内には約320種の多様な植物を配し、果樹園や菜園などもあってブルーベリー、レモン、モモなど11種の果樹をはじめ、ハーブやエディブルプランツなどを育てる。街全体に開花時期の異なる桜が植えられており、桜のシーズンが楽しみだ。

 麻布台ヒルズの就業人口は、約2万人の見込み。六本木ヒルズやアークヒルズ、虎ノ門ヒルズといった森ビルが展開する開発街区との回遊性も高まるだろう。虎ノ門エリアから麻布台、六本木にかけて渋谷駅周辺同様に国際的なビジネス・商業の拠点になりそうだ。

 麻布台ヒルズの開業で注目されるのは、最寄り駅である神谷町駅を通る東京メトロ日比谷線沿線。中央区はもちろん、中目黒や東急東横線などこの地域にアクセスの良い場所の住宅ニーズは高まりそうだ。

 なお、ガーデンプラザのラグジュアリーブランドや多彩な飲食店が入る麻布台ヒルズマーケットは、2024年以降に順次開業予定。オープンすれば、さらに街に活気を生み出しそうだ。

【関連記事】
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全戸天然無垢フローリング採用 「ザ・パークハウス 上野毛テラス」

 次に、今月の注目マンション「ザ・パークハウス 上野毛レジデンス」を紹介する。

 「ザ・パークハウス 上野毛テラス」の建物内見学会が11月中旬より始まった。三菱地所レジデンスが展開するザ・パークハウスシリーズでは、初の全戸天然無垢フローリング採用マンション。また省エネ性能に優れた「ZEHOriented」を採用し低炭素建築物にも認定されている。

「ザ・パークハウス 上野毛テラス」のモデルルーム(筆者撮影)
「ザ・パークハウス 上野毛テラス」のモデルルーム(筆者撮影)

 立地は、東京都世田谷区中町4丁目の東急大井町線徒歩8分の第一種低層住居専用地域・第一種住居地域に位置する。

 周囲は戸建て住宅など、低層の建物が立つ住環境良好なロケーションだ。全戸天然無垢フローリングを採用することで、夏は涼しく、冬は温かい風合いを感じ調湿作用により、室内の湿度を調整して快適な湿度を保てる。

「ザ・パークハウス 上野毛テラス」の専用ルーフテラス(筆者撮影)
「ザ・パークハウス 上野毛テラス」の専用ルーフテラス(筆者撮影)

 全29邸の「ザ・パークハウス 上野毛テラス」には、らせん階段でつながる専用ルーフテラスをはじめとした多彩なプランが用意されている。

 建物は、プライバシーを守る内廊下設計。明るく開放的なワイドスパン住戸やウォークインクローゼットなど、幅広い世代やライフスタイルに対応する多彩な2LDKを中心に、1LDK~3LDK、13タイプのプランバリエーション。そして、非常時に備えた防災備蓄倉庫を全戸に設置。救急セットやミニラジオ、簡易トイレなど、インフラが復旧するまでの間に必要とされるものを保管できる。

 最上階のMrタイプ84.64㎡は、角部屋を活かした全てバルコニーに面した居室の配置や動線が使いやすく、2WAYキッチンなど住み心地に配慮した間取りとなっている。

 屋上のルーフテラスからの見晴らしも良く、川崎市。世田谷区で行われる花火大会も楽しめそう。2023年8月1日からの資料請求件数は、2023年11月25日時点で1,450件を超えている。第1期の販売開始は2024年2月上旬とのことだが、かなりの人気を集めそうだ。

「HARUMI FLAG SKY DUO」次期案内は、2024年4月以降。再開発物件が続々デビュー

 最後に、2024年の注目プロジェクトについて紹介したい。2024年も注目物件がめじろ押しで、中野駅前の再開発プロジェクト「パークシティ中野ザタワー」や中央区豊海の再開発物件「THE TOYOMI TOWER MARINE & SKY」、向ケ丘遊園の駅前再開発「パークタワー向ヶ丘遊園」など都心およびその近郊エリアでの供給が活発化する。

 また、「プラウド新浦安パークマリーナ」「幕張ベイパーク ライズゲートタワー」など人気住宅地の新街区もデビュー。こちらも注目を集めそうだ。

 2023年に最も注目を集めた「HARUMI FLAG SKY DUO」、第1期2次527戸の登録が2023年11月に締め切られたが、最高倍率129倍、平均倍率約20倍と平均倍率約15倍だった第1期1次を上回る人気を集めた。

 次回の販売は2024年4月下旬の予定。総戸数2046戸の大規模タワーレジデンス「THE TOYOMI TOWER MARINE & SKY」の第1期1次販売開始は、2024年4月上旬予定となっており、東京ベイエリアでマンションを探している人は、選択を迫られそうだ。

まとめ

 2024年は、各地の紛争に加えアメリカの大統領選挙、台湾の総統選挙など世界情勢を左右するイベントがあり、経済や金利、インフレなどの見通しが2023年以上に不透明だ。金利動向などは、ある程度上昇の可能性がある前提で住宅購入は検討したほうが良いだろう。

 まもなく迎える2024年、これから住まいを購入する方々に良き出会いがあることを願う。

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