マンションでよく使われる「専有部」「共用部」という言葉。何となくはわかっているという人も、玄関ドアの外側や窓枠、バルコニーなどが「共用部」だということを知らない人もいるでしょう。「専有部」「共用部」の範囲を正確に理解しておかないと、リフォームを行う際に問題になることがあります。(不動産・住生活ライター・高田七穂)
「専有部」は個人の、「共用部」は居住者全員のもの
一戸建ての住宅ならば、建物の全ては持ち主個人の財産です。しかし「分譲マンション」では、一つの建物を多くの人で購入しています。そのためマンションの財産は、購入した個人の持ちものである「専有部」と、建物内に居住する人全員の持ちものである「共用部」とに分けられます。
「専有部」は、個人で所有する室内にあたります。主に、床や壁、天井、窓に囲まれた空間です。間違えやすいものとして、玄関ドアがあります。部屋の室内にあたる内側は「専有部」となりますが、外部廊下に面したドアの外側は「共用部」となります。
「共用部」はほかに、エントランスやエレベーター、ゲストルームなどがあります。専有部と共用部は、管理規約で定められています。あるマンションでは、専有部となっている箇所が、別のマンションでは共用部になっている例もあります。以下は、専有部と共用部の例です。
専有部と共用部(例)
・玄関ドアの内側、および錠
・壁紙などの仕上げ材
・天井の内側
・床下配管
主な「共用部」
・玄関ドアの外側
・窓枠(サッシ)
・戸境壁
・バルコニー
・外部廊下
・エントランス
・エレベーター
・ゲストルーム
・屋上
マンションを購入すると「専有部」だけが自分の財産のような気がしますが、「共用部」も立派な財産です。世帯数などにもよりますが、価格の比率から考えると、支払った代金の2~3割程度が「共用部」と考えられます。
「共用部」の個人の持ち分は?
では、すべての住民で共有する「共用部」の、個人の持ち分はどのくらいになるのでしょうか。分譲マンションの利用と管理の仕組みを定めた法律である『区分所有法』では、所有者の共用部分の持ち分を、「専有部分の床面積の割合による」としています。他の住戸と比べて広い専有面積を所有している人は、共用部分の持ち分割合も多くなります。
また、「共用部」の維持管理に必要な管理費や修繕積立金の金額は、各自「専有部」の面積に応じて計算され、徴収されます。
なお、マンションの火災や水濡れなどを保証する火災保険については、「共用部」は管理組合で加入しますが、「専有部」は個人でそれぞれ加入する必要があります。
【関連記事はこちら】>>分譲マンションに火災保険の加入は必要? 専有部分は個人で加入、共用部分は管理組合で加入して、災害への備えが必須!
自由に変えられる「専有部」
勝手に変えられない「共用部」
知っておきたいのは、「専有部」と「共用部」の使い方にルールがあるということです。
リフォームなど個人で勝手に手を入れられる場所は「専有部」に限られます。「共用部」は、購入した人全員のものなので、自分の好みで手を加えることはできません。
たとえば、「部屋の前の外廊下とバルコニーに、防犯カメラをつけたい」「隣の部屋を買ったので、壁を抜いて大きな部屋にしたい」という要望を出す人もいますが、これらの工事は、自分で費用を出すからといって勝手に行うことはできません。廊下や壁、バルコニーは購入者全員の財産ですし、壁を抜く工事などは建物全体の構造耐力に影響を及ぼすことがあるからです。
ですから、たとえば防犯対策をしたいときは、所有者全員で、建物のどこに防犯カメラを置くかなどの対策を話し合ったうえで方策を決めることになります。こうしたルールを無視して「共用部」の改造を行えば、トラブルになります。
以前、許可なくバルコニーに大きな物置小屋を設置したり、玄関ドアに暗証番号方式のカギを勝手に取り付けたりした居住者がいました。その後、彼らは所有者らから訴えられたという事例もあります。裁判所は工事を実施した人に対し、元に戻さなければならない旨の判決を下しています。
このように「共用部」に勝手に手を入れられないことは、区分所有法に規定されています。
「専有部」と「共用部」の範囲は各マンションで異なる
「専有部」と「共用部」は、「管理規約」に示されているとお伝えしました。「管理規約」とは、住む人が快適な暮らしを送っていくために基本的なルールを定めたものです。
「管理規約」をしっかり読んでいるという人は少ないと思いますが、「専有部」と「共用部」の境界によって、リフォーム工事などを行える範囲が異なってくるので、よく確認しておきましょう。またこの時、「共用部」に触れる工事であっても、工事内容を「管理組合」へ届け出て承認を受ければ、工事ができる仕組みになっているマンションもあります。
このように、「専有部」と「共用部」の範囲は各マンションで異なり、リフォームなどの工事が行える範囲も変わってくるので、自分のマンションのルールをしっかりと確認しておくことが大切です。
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