新築マンションの価格はどのように決められるのでしょうか? また、高い価格設定がされる部屋とそうでない部屋の違いはどこにあるのでしょうか? マンション購入は人生最大の買い物。その前に、マンション価格の仕組みを知っておきましょう。(不動産・住生活ライター・高田七穂)
新築マンションの販売価格は、2段階方式で決まる
年収の数倍~数十倍の価格がつく新築マンション。その価格はどのように決められ、内訳はどうなっているのでしょうか。新築マンション販売価格の中身を、おおまかに見ていきましょう。
新築マンションでは、2段階方式で価格が決められます。第1段階で行われるのは、「原価の積み上げ」です。
①「原価の積み上げ」でマンション全体の売上総額を見積もる
まず最初に、デベロッパー(不動産開発業者)や不動産会社は、土地を取得した段階で事業全体の売上総額を見積もります。このアウトラインを決めるときには、次のような項目を積み上げて決めていきます。
(1)土地代
(2)建設費
(3)モデルルーム・広告宣伝費
(4)金融機関から借りた建設資金の支払い利息
(5)営業利益など
それぞれの項目がどれくらいの割合を占めるのかを見てみましょう。
(1)土地代と(2)建設費が
価格の7〜8割を占める
価格を左右する大きな要素は、土地代と建設費で、全体の70%~80%近くになります。土地代には、土地の購入価格のほか、デベロッパーや不動産会社が土地を購入する時の仲介手数料や土地取得時の不動産取得税・登録免許税などが含まれています。また、建設費にはマンションの設計費も含まれています。
(3)広告宣伝費と(4)金利
モデルルーム設置などの広告宣伝費は、全体の3%~5%程度です。また、土地を取得してから販売までの間に、銀行に支払う利息は、全体の4%~7%程度といったところでしょう。
(5)デベロッパーや不動産会社の利益は10%程度
新築マンションの販売価格から、デベロッパーや不動産会社はどれぐらいの利益を得ているのでしょうか。これは、建設戸数にもよるものの、だいたい事業全体の10%前後を占めているようです。
利益率は決して高いとは言えないため、中小の不動産会社では、「1つのマンションで3戸売れ残ると採算が取れない」ともいわれています。不動産会社によっては、わずか1戸の売れ残りでも事業全体が赤字になることもあるのです。
②見積もった売上総額から住戸ごとに価格を割り振る
第2段階では、各戸の平均価格を算出します。これは、第1段階で見積もった売上総額から、予定する住戸数の床面積で割って算出されます。
そこから、各住戸のメリット・デメリット(ルーフバルコニーや1階の庭の有無、南向きなど)を踏まえて、平均価格からプラスマイナスしていきます。
最終的には、近隣で販売されているほかのマンションの価格や売れ行きを視野に入れながら、販売直前に価格が決定されることになります。
価格が高い住戸と安い住戸の違いは?
次に、各住戸の価格設定について考えてみましょう。同じマンション内の専有面積が同じ部屋でも、住戸の位置や向きによって価格差が見られます。どのような条件の部屋になると、価格が高くなるのでしょうか。
高価格になる住戸
一般的には、①高層階住戸、②角部屋がほかの住戸より高い価格設定となります。これらの住戸は、ほかの住戸と比べてプライバシーが守られやすい位置にあるからです。
加えて、高層階は一般的に眺望が良い、角部屋は採光、通風面で優れているなどの理由があります。また、最上階は上階からの音が発生しないというメリットもあります。
ただし、デメリットもあります。たとえば、高層階住戸の中でも最上階は、中・低層階住戸と比べると、屋根が直射日光にさらされているので、その熱が室内に入り込んで暑くなりがちです。角部屋も外部と接触する面が多いので温度変化の影響を受けやすいのです。
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このほか、専用庭がついている1階住戸など、低層階でも割高な価格設定がされるなど、不動産会社独自の判断により値付けに差があるので、価格表と住戸プランをよく比較することが大切です。
低価格になる住戸
では、低価格になる住戸はどうでしょうか。
比較的低価格の設定になっているのは、中・低層階住戸のほか、南向き以外の住戸です。とくに北向きの場合、価格は南向きに比べて安く設定されるのが一般的です。家で過ごす時間帯やライフスタイルを考えて、南向きにこだわる必要がないと判断すれば、こうした住戸はお買い得と言えるでしょう。
とくにタワーマンションの上階では、周囲にさえぎるものがなければ、北向きでも十分な明るさを感じることが多く、割安感のある住戸があります。
デベロッパーが展開する「ブランドマンション」は、仕様の違いで価格が異なる
最近では、デベロッパーが自社の主力マンションにブランド名を付け、高い品質のマンションを提供するようになりました。
また、同じデベロッパーが販売する物件でも「~シリーズ」といったブランド名によってグレード分けされ、価格帯が違っていることがあります。グレードは、建物の設備や室内の仕様、共有施設の内容などが変わり、グレードが高くなるほど、マンション販売価格にも差が出ます。
ブランドマンションにはどのような物件がある?
一例ですが、三井不動産の場合、主力のマンションブランドは、「パークホームズ」です。ほかに、大規模開発物件は、「パークシティ」、タワーマンションは「パークタワー」というシリーズ名がつきます。また、上位ブランドとして、「パークコート」、最上位は都心の一等地に建つ「パークマンション」となります。
そのほか、三菱地所レジデンスでは「ザ・パークハウス グラン」、住友不動産では「グランドヒルズ」などがあります。
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共用部の豪華な設備が、管理費としてのしかかってくることも
新築マンションでは、共用部分を含めて、さまざまな最新設備が導入されていることが少なくありません。豪華な共用施設には高揚感を覚えます。
ただ、居住後に、意外と使い勝手がよくなかったり、メンテナンス費用がかかったりという理由から、数年後に使われなくなるものもあります。また、それらを維持したり、修繕したりするために、管理費や修繕積立金が高額になることがあります。
導入されているマンション設備では、デメリットについても情報収集する必要があります。新築マンションを選ぶときには、室内設備や共用施設が自分のライフスタイルに合っているのかを考えてみましょう。
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