2024年10月の住宅ローンの金利推移・動向は、変動型は上昇、10年固定は引き下げ、35年固定は据え置きとなっています。フラット35(買取型)は1.820%で前月から据え置きとなりました。変動型は基準金利が上がったとはいえ史上最低金利を維持しています。本記事では、住宅ローンの金利推移を中心に金利動向も解説します。
住宅ローンの金利推移(変動金利、フラット35)
まずは住宅ローン金利の、過去約40年分の長期的推移を見てみましょう。
1990年代前半のバブル崩壊以降、住宅ローン金利はほぼ一貫して下落してきました。当時は変動金利が8.0%以上という時期もありますが、現在は0.5%を切る低金利になっています。
全期間固定金利の「フラット35(2003年以前は住宅金融公庫)」の金利もほぼ一貫して下落してきましたが、日銀による異次元金融緩和の終了に伴って、近年は上昇傾向にあります。とはいえ、長期的に見ればなお低金利といえます。
それでは、変動金利、10年固定金利、35年固定金利それぞれの金利推移や動向、最新のランキングを見ていきましょう。
住宅ローン「変動金利」推移、動向、最新のランキングは?
では、諸費用などを加味した「実質金利」ベースで、本当に割安な住宅ローンを見ていきましょう(表面金利が低くても、諸費用が高ければ意味がありません。両者を合計したのが実質金利です)。
最新の変動金利ランキングは以下のような結果となりました。
2024年10月の「変動金利(新規・借り換え)」の実質金利ランキングについては、auじぶん銀行がトップとなりました。
注意点としては、ランキングの金利の安さだけを見るのではなく、各銀行の条件や適用される優遇について詳しく理解することが重要です。
例えば、1位のauじぶん銀行の最低金利は、「住宅ローン金利優遇割」が適用された場合のものです。この優遇割引には以下のような条件があります。
- ・「auモバイル優遇割」を適用すると0.07%の金利引き下げが可能
- ・ただし優遇割引は場所や時期により新規申し込みが停止していることがある
- ・回線が2回線以上必要で「家族割プラス」の契約が必須
- ・povo2.0やUQ mobileは対象外
- ・電話契約を解除すると優遇も終了
各銀行の詳細な条件はホームページに記載されていますが、見つけるのが難しいこともあります。契約前にしっかりと確認するようにしましょう。
上位銀行の変動金利の推移
以下は、新規借入の上位銀行の変動金利(表面金利)推移(前月比)です。
1位、auじぶん銀行 年0.329%(前月比+0.150%)住宅ローン 全期間引下げプラン(新規借入、住宅ローン金利優遇割)
2位、三菱UFJ銀行 年0.345%(前月比±0.000%)住宅ローン(事務手数料型)
2位、三菱UFJ信託銀行 年0.345%(前月比±0.000%)三菱UFJネット住宅ローン・三菱UFJ信託銀行専用・変動金利タイプ
4位、みずほ銀行 年0.375%(前月比±0.000%)みずほネット住宅ローン(固定金利選択、ローン取扱手数料型、新規借入)
5位、SBI新生銀行 年0.420%(前月比+0.130%)住宅ローン 変動金利半年型タイプ 手数料定率型(新規借入)
2024年10月の「変動金利(新規借入)」は、調査した主要14銀行の住宅ローン金利について、10行が引き上げ、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ銀行、ソニー銀行が金利を据え置きました。
変動金利はもっとも利用者が多く、金利競争の主戦場となっています。10月には基準金利が引き上げられましたが、それでも過去最低水準です。
変動金利の推移(主要銀行)
以下は、主要銀行の変動金利の推移(2018年1月〜現在まで)です。
変動金利の動向
2024年7月の日銀の金融政策決定会合で「ゼロ金利政策」が解除され、金利のある時代に突入することとなりました。
これを受けて、多くの銀行が預金金利を引き上げると同時に、メガバンクや地銀も短期プライムレートを引き上げると発表しており、短期プライムレートに連動する変動金利は上昇していくと考えられます。
auじぶん銀行は10月から金利引き上げ
auじぶん銀行の田中社長は「日銀が金利を上げたら住宅ローンの金利を上げる」と取材で答えていましたが、日銀の利上げと同時に10月1日から基準金利を0.25%引き上げました。
auじぶん銀行は、2023年度で預金残高4兆円、住宅ローン残高が4.5兆円も積み上がっており、預金金利は+0.08%に、住宅ローン金利は+0.25%とそれぞれ引き上げを発表しています。
年末までに最大+0.25%を目指して上昇か
ようやく変動金利が0.2〜0.3%台から抜け出す兆しが見えてきたと思われます。ただ、行き過ぎた低金利を修正する銀行もあれば、修正を行わない銀行と、二極化していくと考えています。
上昇幅についてですが、7月末の利上げを契機に株式市場が大暴落をしたことから、おそらく年内の利上げはないものと予想していて、年内は上昇しても0.1~0.25%程度に収まると考えています。
この7月末の利上げがあったといっても、わずか0.25%です。一般的に中央銀行の金融政策は、実質政策金利がマイナスであれば金融緩和、プラスであれ金融引き締めであると判断されます。
現時点の実質政策金利を正確に計算することは難しいのですが、概算すると△2%前後(名目金利0.25%-消費者物価指数2.5%前後)と大幅なマイナスであることから、いまだ緩和状態だといえるでしょう。
この利上げは、景気に大きな影響を与えることはないと考えられ、株式市場が落ち着いたら、追加利上げの議論が再燃すると予想しています。
住宅ローン「10年固定金利」推移、動向、最新のランキングは?
2024年10月の「10年固定金利(新規借入)」の動向は、調査した主要13行の住宅ローン金利について、7行が金利を引き下げ、SBI新生銀行、みずほ銀行、ソニー銀行は金利を据え置きました。
一方、「10年固定金利(借り換え)」は、長い間、りそな銀行とみずほ銀行が低金利を争っている状態が続いていましたが、りそな銀行は5位以下に転落。半年以上もの間トップを独占し続けるSBI新生銀行を、みずほ銀行が追う形となっています。
上位銀行の10年固定金利推移
以下は新規借り入れの上位銀行の10年固定金利の推移です。
1位、SBI新生銀行 年1.100%(前月比±0.000%)住宅ローン 当初固定金利タイプ 手数料定額型(新規借入)
2位、みずほ銀行 年1.350%(前月比±0.000%)みずほネット住宅ローン(固定金利選択、ローン取扱手数料型、新規借入)
3位、PayPay銀行 年1.115%(前月比+0.040%)住宅ローン 全期間引下げ(新規借入)頭金10%以上
4位、イオン銀行 年1.610%(前月比▼0.110%)住宅ローン 金利プラン・定率型(新規借入、頭金20%以上)
5位、三菱UFJ銀行 年1.110%(前月比+0.060%)住宅ローン(事務手数料型)
2024年10月の上位5銀行については、SBI新生銀行、みずほ銀行が金利を据え置き、イオン銀行は金利を引き下げ、PayPay銀行、三菱UFJ銀行は金利を引き上げました。
銀行は「10年固定金利」を固定金利選択型の中核に据えていることが多く、激戦区となっています。
10年固定金利の推移(主要銀行)
以下は、主要銀行の10年固定金利の推移(2018年1月〜現在まで)です。
10年固定金利の動向
10年固定金利については、10年国債金利をベースにしている銀行が多いと考えられます。
10年固定の住宅ローン金利は、今後も日銀の利上げ期待と欧米の利下げにより、細かい上下動を繰り返しながら、徐々に上昇していくものと予想しております。
金利を引き上げた三菱UFJ銀行は、2024年2月から4月には1.0%未満に金利をつけるなど、イケイケの金利設定をしており、今後の金利次第では、再び1.0%未満もあるかもしれません。(実質的な)借入期間が短い人は、注目しておいてもよいかもしれません。
住宅ローン「全期間固定金利」推移、動向、最新のランキングは?
2024年10月は前月同様、アルヒが「全期間固定金利(新規借入)」の実質金利ランキングで1位。SBI新生銀行が2位となりました。
今回のランキングで1位となったアルヒの「スーパーフラット5(4ポイント)」では、自己資金50%以上、かつ、一定の要件を4項目以上満たしていることが前提なので、簡単に達成できるわけではありませんが、当初5年間の金利は、10年固定金利よりもはるかに低い金利です。
みずほ銀行やりそな銀行などメガバンクの全期間固定金利は以前とは異なり、金利が魅力的ではなくなっています。しかし、SBI新生銀行は変わらず魅力的な金利を提供しているので、確認しておいてください。
上位銀行の全期間固定金利推移
以下は、上位銀行の全期間固定金利の推移です。
1位、アルヒ 年0.660%(前月比±0.000%)住宅ローン スーパーフラット・4ポイント(新規借入・頭金50%以上)
2位、SBI新生銀行 年1.700%(前月比±0.000%)住宅ローン ステップダウン金利タイプ(新規借入)
3位、住信SBIネット銀行 年0.750%(前月比±0.000%)フラット35S・保証型・ZEH・長期優良(4ポイント、頭金20%以上)
4位、優良住宅ローン 年1.320%(前月比±0.000%)フラット35S・金利Aプラン(頭金10%以上)
5位、三井住友信託銀行 年1.320%(前月比±0.000%)フラット35S・手数料定率・金利Aプラン(頭金10%以上)
2024年10月の「全期間固定・35年固定金利(新規借入)」は、調査した主要7行の住宅ローン金利(フラット35除く)について、5行が金利を据え置きました。フラット35(買取型)の金利は据え置きで、1.820%でした。
35年全期間固定金利の推移(主要銀行)
以下は、主要銀行の35年固定金利の推移(2018年1月〜現在まで)です。
35年全期間固定金利の動向
超長期金利は、2年前より上昇トレンドに入ったと考えていましたが、約2.0%で頭打ちになっていると、見方を変更します。
ただ、欧米の景気減速が鮮明になってきたため、国内金利の上昇は鈍化すると見ています。場合によっては金利が下がる局面があるかもしれません。
そのような場合には、全期間固定金利が相対的に魅力的に見えることでしょう。
市場金利(長期金利)の動向と推移
住宅ローン金利に影響を与える日本の市場金利も見ておきましょう。
市場金利と住宅ローンの関係は?
住宅ローンの全期間固定(フラット35)、10年固定金利などは、10年国債金利と連動性が高いと言われています。
住宅ローンの変動金利は、日銀の政策金利(7月の金融政策決定会合で0〜0.1%程度から0.25%程度に引き上げ)との連動性が高いと言われています。
どちらも日銀の政策次第で、将来的には上昇していく可能性があります。
国債買い入れ額の減額で長期金利は上昇に向かうか
2024年3月に開かれた金融政策決定会合では、マイナス金利政策と長期金利をコントロールするYCC政策が、ともに撤廃されました。
ただし、長期金利が急激に上昇する場合は、機動的に国債の買入れ額の増額などで対応するとしており、金融緩和的な立場は継続していました。
そして7月の金融政策決定会合で、国債の買入れ減額を決定。毎月6兆円程度買入れていた国債は四半期ごとに4000億円ずつ減額され、2026年1〜3月に3兆円まで減らす方針としました。
国債買い入れの減額となると、長期金利は上昇すると考えられます。住宅ローンの固定金利は長期金利に連動するため、今後は固定金利のさらなる上昇が予想されます。
2024年10月1日の10年国債金利は0.855%です。2024年5月に10年国債金利は11年ぶりに1.0%超えとなりましたが、8月以降は0.8%台〜0.9%台を推移しています。引き続き、今後の金利動向に注視する必要があります。
世界的な金利高の中で、日銀は今なお低金利政策を継続しています。そのため円安が進んでいるのが現状です。円安はインフレを加速する可能性があり、今後の金利動向は予断を許しません。
なお、市場金利が上昇することで、銀行の資産運用のスタンスが変更となる可能性があります。
これまでは国債金利が0%近辺であったため運用の魅力が乏しく、住宅ローンを積極的に獲得してきましたが、国債金利が上昇してくれば、「安全な国債で資産運用しよう」という銀行が増える可能性があり、結果として住宅ローンを無理に低金利で獲得する必要がなくなります。
こうした銀行の資産運用の面からも、住宅ローン金利が上昇する可能性があります。
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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淡河範明さん
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