住宅ローンの10年後の金利は、どのくらい上昇するのか予想できないのでしょうか。実は、各銀行はさまざまな固定期間の金利を設定しており、それから変動金利が将来どうなると予測しているのか計算できるのです。そこで主要12銀行について変動金利の予想を試算しました。また、変動金利を借りた場合のリスクを抑える方法も紹介します。(住宅ローンアドバイザー・淡河範明)
住宅ローンの10年後の変動金利を試算する方法とは
住宅ローンの金利は、市場の金利や日本銀行の金融政策を参考にしつつ、銀行の経営方針に応じて設定してきたと考えられます。ただ、前例のないような長期間の超低金利が続いていて、銀行の金利決定を行う担当者は、金利を何%にすればよいか日夜悩んでいるに違いありません。
そこで注目されるのが、住宅ローンの店頭金利です。店頭金利は固定期間ごとに、景気の先行きや金融政策の変化を織り込みつつ、自行の経営スタンスを反映して設定されていると考えられるからです。店頭金利を分析することで、それぞれの銀行の先行きの見通しを計算できます。
これは、「インプライド・フォワードレート」と呼ばれるものです。「長期の固定金利が複数設定されていれば、将来の金利が推計できる」という考え方です。
その計算方法を解説しましょう。まずは次のような金融商品があるとします。
- ・商品Aは、1年物で金利年1%
- ・商品Bは、2年物で金利年2%
という運用があるものとして、例に取ってみます。
この運用実績は以下のようになります。
- ・商品Aを100円分購入すると、1年後に101円
- ・商品Bを100円分購入すると、2年後に約104円
もし、商品Aを購入した人が、1年後に再び1年間の金利が1%の商品を購入するのなら、101円は、2年後に約102円にしかなりません。しかし、商品Bを購入した人は、2年後に約104円となります。1年後の1年間の金利が1%と分かっていたら、誰も商品Aを買わないでしょう。
では、1年後に1年間の金利が3%という商品Cがあると想定されたらどうでしょう。
- ・商品Aを買って、1年後に商品Cを買う人は、100円が2年後に約104円になります。
- ・商品Bを買った人も、100円が2年後に約104円になります。
この場合、商品A+C、商品Bのどちらを買っても同じなので、どちらかが有利というような状態にはなりません。
このケースでは、1年後の1年金利について、約3%のリターンが期待できると考えているから、商品Aは成立しているのです。
もし、どちらかがよりもうかると予想する人がいれば、もうかる商品が買われます。買い手が増えれば、利回りは下がって、どこかで落ち着くはずです。取引がたくさん行われて、商品Aと商品Bの利回りが落ち着いたら、「将来の金利について、合意が形成された」と考えるのです。
つまり、1年固定と2年固定の金利があれば、1年後の1年金利の予測ができるのです。この考え方に基づいて将来の変動金利を予想しましょう。なお変動金利は、「半年ごとに金利を見直す」という商品なので、半年固定金利と考えて試算します。
12銀行の10年後の変動金利を試算!
まずは、12銀行の10年後の変動金利を試算してみましょう。各銀行が発表している固定金利から試算すると以下のようになりました。試算の結果は、絶対的なものではなく、あくまでも参考値だと思ってください。
10年後の変動金利を試算した結果、最低はソニー銀行の0.716%で、最高はイオン銀行の2.250%です。現在の変動金利は0.3%〜0.5%程度であるため、10年後の金利の高さに衝撃を受ける人が多いと思います。しかし、過去の変動金利を長期で見れば、決して高い金利ではありません。1990年代には変動金利が8%を超えた時期もあります。
また、各銀行の10年固定金利と見比べてみて、特徴的なのは、表の上から1~9番目くらいまでは、10年固定金利の適用金利よりも10年後の変動金利の方が高くなっているという点です。つまり、12行中、9行は変動金利の上昇を強く見込んでいるようです。
変動金利は、日銀の金融政策次第で大きく変わりますが、各銀行は10年後に上記の変動金利になると予想のもと、金利を設定しています。最近は超低金利が常態化しているため、「変動金利は上がらない」と考える人は多いのですが、銀行はそう思っていないということがわかったと思います。
変動金利の上昇時期・上昇幅を試算
次に、各銀行が金利の上昇時期をどのように想定しているのか、試算してみました。
日銀の異次元緩和解除は何年後?
日銀による「異次元緩和」は、マイナス金利および長短金利操作(YCC=イールド・カーブ・コントロール)が主な政策であり、これが解除されれば金利は上昇します。日銀による金融政策導入のタイミングで大手銀行の住宅ローンの変動金利は0.5%程度下落しました。それからすると異次元緩和が解除されると、変動金利は1%を超えると予想しています。
試算した結果は以下のとおりです。
2年以内に金融緩和解除の動きが何もないと予想しているとみられる銀行は、みずほ銀行、ソニー銀行、SBI新生銀行、auじぶん銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行、の6行でした。
昨年のほぼ同時期に確認した時は、同じように見ている銀行が7行だったので、金利が上がらないと考える銀行が減ったことがわかります。これらの銀行の多くは、変動金利を0.3%前後まで引き下げていることから、将来の金利上昇は5年以内にはないと考えているのが、要因なのかもしれません。
この、当面は金利は上昇しないという予測は、「今後とも、金融政策、財政政策の実効性を疑問視している」のか、「金融緩和を続けることによって起こる弊害が小さいと見込んでいる」のか、「営業的な観点のみで金利を設定している」のか、断定はできません。いずれかだと思いますが、個人的には、「営業的な側面で予測よりも低めの想定にしている」のが主たる理由と考えます。ないとは思いますが、「上司にいわれて適当に金利設定をしている」のかもしれません。
日銀のゼロ金利解除は何年後?
先程の異次元緩和の解除(変動金利が1%を超える)からさらに一歩踏み込み、日銀による「ゼロ金利政策」の解除が検討されるのは何年後でしょうか。ゼロ金利解除時は、変動金利が1.875%程度だったので、それを超える時期を試算してみました。
質的・量的金融を解除はするものの、景気の好循環に向かうための準備段階であり、本格的な回復期には至っていないという段階ですが、金利は本格的に上昇を始める時期です。
5年以内にゼロ金利解除を予想しているのは、たった2社しかありません。それだけ景気回復が正常なサイクルに入るのが難しいと考えているのでしょう。 6~10年以内であっても、たった2社しかありません。
銀行は、融資業務を通じて日本の経済実態を観察しているでしょうから、今後も日本の経済成長について期待していないということなのかもしれません。
SBI新生銀行は、今後20年以内には変動金利は1.875%以上にはならないと予想しているようです。これは、住宅ローンの金利水準が変わってしまった、または、日本の経済成長はゼロ成長のまま、と考えているのでしょう。確かに、「住宅ローン金利にもニューノーマルが来てしまった」という恐れは否めないところです。
主要な銀行12社13商品について、インプライド・フォワードレートを計算してみました。銀行は、以下の銀行です。
・大手銀行=みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行
・ネット銀行など=イオン銀行、SBI新生銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、楽天銀行、りそな銀行、auじぶん銀行、PayPay銀行
※住信SBIネット銀行は、ネット用の商品と対面用の商品があるので、2商品を対象
今回は、銀行ごとに金利がどのように推移すると予測しているかを把握するため、各行のサイトに掲載されている固定期間別の店頭基準金利(2022年4月現在)をもとに、変動金利(基準)のインプライド・フォワードレートを計算します。変動金利(基準金利)を算出したら、それぞれの銀行の「金利優遇幅」を差し引いて、変動金利(適用金利)を算出します。※全期間固定は除いて計算。なお、市場金利を用いてインプライド・フォワードレートを計算すると、市場関係者の予測を把握できる
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2023年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年5月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.298%
- 総返済額 3156万円
- 表面金利
- 年0.169%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 73,566円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.419%
- 総返済額 3221万円
- 表面金利
- 年0.290%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,123円
手数料5.5万円〜と安く、自己資金が少ない人におすすめ
- 実質金利(手数料込)
- 0.428%
- 総返済額 3226万円
- 表面金利
- 年0.298%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,227円
①3大疾病50%保障+全疾病保障が無料
②先進医療特約も無料で付帯
③無料団信でも、急性心筋梗塞・脳卒中の手術をすれば、ローン残高の50%を保障するなど手厚い対応
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。